父の視線



結婚式のセレモニーがはじまる5時間前に僕は新婦の家を訪れた。
既にヘヤードレッサーが来ていて彼女の髪の毛を整えている。

結婚式写真を撮る仕事で僕はこの時間が一番好きだ。
髪を整え、化粧をし、ウェデングドレスを着るという時間の流れとともに新婦の顔つきがだんだんと変化するのがハッキリと分かり、僕自身の気持ちも昂揚する。
新婦と最も関係の深い人たちもこの場に集まる。この時間に結婚式に参加する大切な人たちとコミュニケーションをとり、写真撮影をする部外者ではなく、この式を祝福する家族の一員となることができる。
メイクアップの仕事をしていたことがある妹さんが新婦である姉の化粧をしているとき年配の男性が部屋に入ってきた。
彼の視線は化粧をされている新婦の顔に釘付けになったまま誰とも言葉を交わさない。
新婦の顔を見る彼の眼がみるみるうちに潤んできた。
父親だ、と思った。
彼の存在に気がついた妹が「あら、お父さん、来ていたの?」と笑った。
父の顔を見つめた新婦に父親は何も言わずただ頷き、そして微笑んだ。
すると今度は娘の瞳に涙があふれた。






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結婚式写真に限らず、イベントもの、雑誌のストーリーなど人が集まる場所を撮影するときキーパーソンを素早く嗅ぎ分けないといけない。
結婚式の場合、新郎新婦がもちろん主役なわけだが、このストーリーに色を添えるキーパーソンが必ず存在するのだ。
この時、父親の眼に涙があふれるのを見て、彼がこのストーリーのキーパーソンだと確信した。






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この日、父親は愛情溢れる視線を一日中娘に注いでいたが、結婚式のセレモニーで彼が言葉を述べるときは頑に娘から視線をそらし続けていた。
どんなことがあっても娘の顔は見まい、と神に誓った神父のようだ。
チラリとでも娘の顔を見てしまうと高まった感情が爆発してしまい収拾がつかなくなってしまうことを本人が一番良く知っているからだろう。
娘もこの時は必死に父の顔から眼をそらしていた。
この二人の攻防をレンズ越しに見ていた僕は号泣寸前だったが、僕が二人から眼をそらすと仕事にならないところが辛いとこ。





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結婚式のセレモニーが終わってホッとした二人は大きな木の影で嬉しそうに頬を寄せ合っていた。






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by somashiona | 2009-01-07 23:06 | 仕事

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