モッちゃんと城の写真




日本に住む僕の友人モッちゃん(仮名)の情熱は日本全国に散らばるお城を訪ね、その写真を撮ることだ。
車を持たない彼はJRでバスでそして自転車でお城を見るために本全国を旅する。
彼は旅に出ると毎回必ず僕に旅日記を送ってくれる。
写真付きのEメール。
彼の旅日記メールを受けとっても僕はすぐにそれを見ない。
もったいないからだ。
初めて訪れる城、何度も訪れている城、石垣、土塁、井戸の跡、櫓、地図や資料をカメラバックに詰め込み目的地へ近づく彼の気持ちの高まりが文章を読んでいて手に取るように分かる。
あまりにも臨場感溢れる彼の文章を仕事の途中で読んでしまうとそのあとしばらく物事が手につかない。
彼が歩いた山道を想像の中で僕も歩き、蝉の鳴き声を聞き、風の音を聞いてしまうからだ。
彼のメールには訪れるお城にまつわる歴史的な解説や銅像の人物のストーリーがとても面白くまとめられている。
日本史にめっぽう弱い僕だが彼の話に好奇心をくすぐられウィキペディアなどで関連する登場について調べまくってしまう。
それだけでない。
グーグルアースを使い彼の家から彼が乗った路線を辿り、実際に歩いた道をなぞり、メールに添付された写真一体の風景を空の上からパソコンで眺める。
彼のメールを見るとタスマニアに居ながらにして、日本を旅することが出来るのだ。


メールに添付してくる彼の写真がたまらなくいい。

峠を見下ろすと樹々の隙間からお城が見える。
戦に向かうお侍さんたち、きっとここからこの城を見たに違いない。
多くの者にとってこれが見納めだっただろう。

所狭しにひしめきあるビルの隙間からお城が見える。
その姿はまるでスーツ姿のビジネスマンの中で一人物言わず立つサムライのようだ。
今の日本人をどう思っているだろう?

一見するとただの森の中の写真のようだが、よく見ると崩れ落ち朽ち果てた石のかたまりが所々に散乱している。
城壁の跡だ。
そしてもう一度この写真をしげしげと見ると、それはもうただの森の写真ではない。
愛憎、野望、絶望のどん底から発せられた叫び声が聞こえない音となって森の中を渦巻いているようだ。

僕はまったく城のファンではないが彼が撮る城の写真には引き込まれる。
城を撮ってはいるのだが、そこに写っているのはそれを越えたものだ。
その場で彼が感じた事を僕も同じように感じることが出来る。
学校を卒業してから雑誌社の写真部で鍛え上げられた彼は数年前にそのキャリアの幕を閉じた。
僕がフリーでその雑誌の仕事をさせてもらっていた時、僕は彼から多くの事を学んだ。
プロの世界の厳しさを分かっていなかった僕の低レベルな質問にも必ず彼は快く答えてくれた。
あのとんでもなくスゴい技術を使わずこれから生きていくだなんて、僕には納得できなかった。
写真で生きてきた人間が、それに全てを捧げてきた人間がそれを捨てるなんて、僕にはどうしても納得できなかった。
「一番好きなことを、一番好きな業界で今までずっとさせてもらったのだから僕は充分幸せ者です」と彼は言うばかり。
何度見ても城の写真があまりにも良く「やはり写真を諦めるな!」としつこく彼に言ってしまう僕。
「城の写真撮ってて思うんですけど、写真がこんなに楽しかっただなんて今まで僕は気がつきませんでした。僕はやっぱり写真が好きだったんですねぇ。でも、趣味で撮るからそう思えるんですよ」と彼は答えた。
仕事の写真も確かにスゴかったが、今彼が撮っている写真は解脱した者の写真のようだ。
人それぞれ写真との付き合い方がある。
仕事でなく写真を撮る今が本当に楽しい、と言う彼の写真には確かに今の彼が溢れている。
自分の意志で選択し、人生を切り開らこうとする今の彼が溢れている。
それでいいではないか。

彼から送られてきた日本全国の城、城跡、城壁、櫓、銅像等の写真はすでに300枚を越えている。
写真部時代、デジタルに移行する前は毎月300本以上のフィルムを使ってきた男、撮影現場のベストポジションを調べ、機材を運び、光を待つ時、趣味と言いつつも、そこでは仕事も趣味も関係ない本気モードになっているに決まっている。
おそらくフォトショップもRAWファイルも一度も触った事のない彼のJPEGストレートな写真を見るたび、写真と深く関わってしまった人間の人生を考えてしまう。
紆余曲折を経験し、年齢を重ねるごとに撮る写真に重みが増すのだろうか、と思ってしまう。








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「今週のピックアップブロガー」に関する皆さんからのコメント、嬉しかったです。
どうもありがとう。
これからはヒースって呼んでね。
レジャーでもいいよ。










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by somashiona | 2009-02-25 18:58 | デジタル

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