オン アサイメント (後半)








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2回目の撮影は1月の最終週。
東京から取材でオーストラリアを訪れているトラベルジャーナリストの寺田直子さんと一緒だ。
前回は咲き乱れるケシの花の撮影。
そして今回はハーベスト、そう収穫の絵がメインだ。






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今回の取材でキーマンだったフィールドオペレーションマネージャーでるリックのインタヴュー写真をタスマニア・アルカロイズ社の会議室で撮った後ケシ畑で収穫の撮影を予定していたが、その確認を現場のスタッフと電話でとりあうリックの様子がなんだかおかしい。
実はこの日、タスマニアでは珍しい猛暑だった。
ちょうどメルボルで大規模なブッシュファイヤーが起こり、多くの人たちの命が奪われたあの時。
ケシの収穫は完全に乾燥した状態で行なわれる。
もしも現場で火の気が発生したら炎はあっという間にケシ畑を焼き尽くすだろう。
万が一に備えてこの日は夜間にケシの収穫をするという決定を会社はくだした。
タスマニア・アルカロイズ社創業以来はじめてのことらしい。






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夜間の収穫、、、え、収穫の写真、どうやって撮るの、、、?
血の気が引いた。








収穫の撮影はフィールドオフィサーのクリスが担当してくれた。
作業は午後7時開始、クリスとは午後6時に待ち合わせた。
サマータイム期間中の12月は完全に日が落ちるのが8時過ぎ。
大丈夫だ、諦めるな、きっといい写真が撮れる、、、と自分に言い聞かす。






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僕の頭の中では夕暮れ時の光が一面に広がるケシ畑を黄金色に染め、その中に働く人たちが黒いシルエットで浮かび上がる、、、そんなイメージがポカポカと浮かんでいたが現場についた時は黄金色の光は既に消えかかろうとしていた。
しかも作業がはじまる兆しはまったくなし、、、。
まずい、まずい、、、と思いつつも顔は笑顔でこの畑を持つ農家のおじちゃん、ケシを刈り取る機械を操作するオペレーターのお父さんと会話した。






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農家のおじちゃんの顔が素晴らしく、彼の顔でこの現場のワンシーンは確実に確保できるぞ、と心の中でつぶやきつつ、その他にこの場でどれだけ違う種類の写真を撮ることが可能なのか作戦を練り、その順番を頭の中で組み立てる。
それにしても、辺りが暗くなるのが妙に早い、、、気のせいか、、、。
その場にいた皆が空を見上げはじめた。
「まずいなぁ、、、来るぞ、、、」クリスが呟く。






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東の空を眺めると雨のカーテンを垂らす巨大な雨雲が接近していた。
「おいクリス、どうする?やるのか、それとも中止か?」とオペレーターのお父さん。
ち、中止って、、、もう僕の心の中は既に土砂降り。
収穫の写真を撮るチャンスはこの日だけだ。
黄金色の写真どころか、辺りはどんどん暗くなるし、まだなにも収穫作業の写真は撮っていないし、、、もし雨が降って中止になったらまわりのケシを引きちぎって口の中に詰め込んでやろうと心に決めていた。
その時「いや、大丈夫だ。もちこたえるよ」と空を見上げ農家のおじちゃんが言った。
大地とともに生きる彼の勘は天気予報より当てになる。
皆は彼の言葉を信じて作業をはじめることにした。






撮影の時間はあっという間に過ぎた。
こういう時の撮影は「やめろ」と言われなければいつまでもやり続けるくらいの勢いがあるのだが、いかんせんすぐに辺りは暗くなり撮影を終了せざるを得なかった。
イメージしていた写真は撮れなかったが、最大限出来ることはやった。
この時点で何ヶ月かにわたって関わってきたケシの撮影が完全に終了した。






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雑誌に掲載するための写真を約50カットほど選び寺田直子さんに送った。
どの写真が使われるかは僕にも直子さんにも分からない。
雑誌のグラビア担当者が決めるからだ。
数ヶ月後にはじめて雑誌を見たとき、「そうかぁ〜、なるほどなぁ〜」と呟く。
餅は餅屋で雑誌を作る人は何が読者の心掴むのか僕たちフォトグラファーより知っている。
収穫の写真は使われないかもしれないと思っていたがたっぷりと使われていた。
自分の仕事が形となって残るのがこの仕事の素晴らしいところ。
印刷された自分の仕事を見るとやはりある種の満足感に包まれる。
もちろん反省、後悔、落ち込み、恥ずかしさ、自分の仕事の能力に対して思うところはたくさんあるのだが、それが次の仕事のレベルを上げる踏み台になる。
久しぶりの日本の媒体の仕事、多いに楽しんだ。
この機会を作ってくれた寺田直子さんと週刊文春の方々、そして取材協力をしてくれた人たちへ感謝したい。






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注)
英語圏で雑誌などの記事のための仕事をアサイメントといいます。
ちなみに今回のタイトル「オン アサイメント」(On Assignment)はナショナルジオグラフィック誌の真似っこざるです。
掲載記事を担当したフォトグラファーやライターの裏話を紹介するコーナーで、僕はこの「オン アサイメント」を毎回楽しみにしています。

注)
タスマニアで収穫されたオピウム(アヘン)は精製され医薬品となり、そのほとんどはアメリカ、ヨーロッパへ輸出されます。鎮痛剤タイラノール、頭痛持ちの僕が常用しているニューロフェンなどにはタスマニア産のオピウムが入っているそうです。

注)ぜんぜん関係ありませんが、逮捕されたSMAPの草なぎさん、可哀想です。日本の皆さん、それくらいの行動、笑って見逃す度量を持ちましょう。責めるべき人間はもっとたくさん日本にいるのですから。













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by somashiona | 2009-04-27 08:24 | 仕事

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