できればそんな人間に




子供たちを乗せて車を運転していると助手席に座っていたソーマが言った。
「ダディ、あそこでやっている工事を見てよ。あれはね国が予算を消化するためにやっているとても意味のない工事なんだ。どうしてガーバメントはいつも無駄なことばかりやって僕たちを困らせるんだろう」
僕はすぐに車を道路脇に止めて、そしてソーマの顔をまじまじと見た。
「ソーマ、あれが予算を消化するための無駄な工事だってどうしてお前に分かるの?そう言い切れるだけの根拠はあるの?それは自分の頭でよく考えてからダディに言った意見なのかい?」
突然真面目な顔で自分の顔を見る僕に少し戸惑い、そしてうつむきがちに「だってみんなそう言ってるよ、、、」と答えた。
「ソーマ、あの工事をするために寝る時間を惜しんで仕事をした人たちがいるだろうし、今こうしてこんな寒い日にあんなに高いところに上がって仕事をしている人たちだっているんだよ。ひょっとすると、本当に無駄な工事かもしれないけど、それを言う前に自分でそれをしっかり調べて、そうだといえる根拠を見つけるべきだと思うよ。わかるかい、ダディの言っていることが?」と言って彼の頭に手を置くと「うん、わかるよ」とソーマは頷いた。

何か問題がもちあがると必ずそれに対する賛成意見と反対意見がある。
オーストラリアでは日本以上に自分の意見というものを何事に関しても求められる。
自分がどちらの側に立つ人間なのか常に態度で表さないといけない。
それが自立した人間としての正しい態度だと信じられているからだ。
成長するソーマの言動に自立していく自分をアピールしたい気持ちが見える。
しかし、本来なら自分の意見を確立するプロセスは簡単でない筈だ。
一つの問題に対し違う立場を取る意見を聞き、本を読み、出来る限り自分の目で見て、そして色々な事情を考慮に入れつつも自分の良心はどう感じているのか胸に手を当て考えなければならない。
森林伐採の問題、クジラの問題など人びとの議論を聞いていると、自分とは違う意見にまったく耳を傾けず、自分の信じる意見を過激なまでに押し付ける人も少なくない。

最近になって、もう若くない僕がようやく認めつつあることは、正しい答えなど世の中には存在しないのかもしれないということだ。
性格的にそういうことは言いたくないのだが、その点に関しては降伏の色が濃くなってきている。
しかし、正しいと思う答えを考え続けることはやめたくない。

まだ9歳のソーマに僕の考え方を少し押し付けがましく言ってはみたものの、そういう僕自身、一つの問題に対して根拠を明らかにして明確に意見を言える人間かというと、決してそうではない。
僕は自分の理想をソーマに押し付けてしまったのかもしれない。

持ち上がる問題や話題に関していち早く僕たちにその情報を提供するのはメディアだが、垂れ流しの彼らの情報を信じるのは論外だ。
仕事を通して僕が目にしたテレビ局のインタヴューなどはほとんど誘導尋問だし、都合の悪い話や場面は編集ですべてカットされている。
テレビを見ている僕たちは彼らが信じ込ませようとしていることを信じてしまう。
人びとの噂話もそれとどこか似ている。
事実を見たこともない人たちが人づてに話を聞き、若干自分の意見や感情を交えその話に枝葉がついてくる。

社会に出るとたくさんのルールがあることに驚き、そしてそれに縛られる。
集団の中の一人としてルールを遵守することを求められ、それに従わない人間は悪とされる。
会社などの組織に属して生きているうちに卑怯な人間や無能な人間ほどそのルールを楯にとって不条理な要求を押し付けてくることを知り、ルールそのものの是非を問おうものならその組織からすぐに抹殺されることを悟る。
問題はその後だ、反発していた自分の心が次第に大多数が信じて押し付ける考え方やルールに染まっていくのか、それともたとえ大多数を説得できなかったとしても自分はこう考えるという意見を持ち続け、そういう自分を信じ続けられるか。
海外から日本を見ていると、不条理がまかり通り、人びとは悪に眼をつぶるか、それが悪かどうか考えるのを避けている国に見える。
外国人の目でオーストラリアを見ていると、表面に現れた事象だけを論議し、それが起こってしまった背景や事情を考慮せず白黒を付けてしまう国に見える。
今の自分を見つめると、年齢を重ねるごとにますます何事に対して白黒がつけられなくなり、世の中や人生が僕の頭髪のようにグレーに染まっていくのが見える。

天邪鬼(あまのじゃく)な人間にはなって欲しくないけれど、たくさん本を読んで、多くの人と話をして、多くの現実を見て、自分の頭で考え、判断し、勇気のある行動がとれる、できればそんな人間に子供たちがなってくれるといいなと思う。













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by somashiona | 2009-06-20 12:27 | ソーマとシオナ

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