19歳の記憶








この日はサムの19歳の誕生日だった。
化粧台の前で彼女はしばし物思いにふけっていた。
鏡の中の自分を19歳になったばかりのサムはどう見ているのだろうか?
胸の奥底にどんな熱い思いを秘めているのだろうか?


僕の過去の記憶は驚くほど稀薄だ。
小学校、中学校、高校のクラスメートの名前どころか、先生の名前もほとんど出てこない。
過去に付き合った女性たちが想い出話をはじめるとき、スイートな想い出のほとんどを僕が覚えていないことを彼女たちは悟り、僕的には完全否定したいところだが、彼女たちはそれが僕の愛の重さだと判断する。
子供たちでさえ僕のことをMr.ノーメモリーと呼んでときどきバカにする。
子供たちも女たちと同様想い出話が大好きだ。


そんな僕だから19歳の時の記憶などほとんどないにきまってる。
たぶんその頃、デザイナーズブランドの洋服に有り金をはたく病気から卒業しバイクで旅することに夢中になりはじめたかもしれない。
今と違って当時は音楽なしの生活など考えられなかったし、頭の中の80%以上は女の子のことで占めていたことだろう。
政治経済、社会の出来事、世界の出来事、そんなものにはまったく興味なかった。
本もあまり読んでいなかったし、写真など撮って喜んでいる奴には気持ち悪くて近づきたくなかったタイプの人間だ。
19歳、お金のことも、生活のことも、キャリアも、健康も、守るべき人たちのことも、自分が成し遂げるべきことも、そんなことを何も考えず心配もせず生きていたに違いない。
おお、なんていうことだ、信じられない、、、。
もし今、一瞬でも19歳にかえったなら、たぶん心も身体も羽が生えて今にも飛び出しそうなほど軽く感じるのではないか?
いやいや、待てよ、そんなことはない、19歳には19歳なりの深刻な悩みがあった筈だ。
僕のことだから、きっと忘れてしまっているだけなんだ。
ということは、今僕が抱えている様々な悩みや問題も約20年後にはきれいさっぱり忘れ去ってしまっている可能性があるということか?
ちょっと信じがたいが、そう思い込んでいるフリをして毎日を過ごすのも悪くはないだろう。
過去の記憶は写真の中にきっちりと収まってさえいれば、それで十分。
フォトグラファーだから。












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by somashiona | 2009-06-26 22:14 | デジタル

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