ライトルーム アドベンチャー 2008 イン タスマニア Vol.5





一日ブルース氏と時間を共に過ごしただけで、実に多くのことを学んだ。
僕はスポーツ雑誌で仕事をしていたフォトグラファーなので両目を開けながら写真を撮るクセがある。
ブルース氏はそんな僕を見て片目を閉じるべきだとアドバイスしてくれた。

「片目を閉じることによってファインダーから見える世界を限りなく一次元の世界に近づけるんだ。開けている方の目も薄目を開ける形にし、まつげの隙間から被写体を見ることによってコントラスト、光の濃淡を見極めるのだよ。レンズの目になるということだ。出来上がるプリントのイメージで被写体を見るのだ。」

アンリ・カルティエ・ブレッソンに憧れ、ライカから写真をはじめたと教えてくれた彼はニコンD3に最新のナノコーティングのズームレンズを3本という装備で撮影をしていた。もちろんカメラバックの中には予備のボディーが2台にラジオスレーブを付けたニコンのスピードライトも2台用意してある。
ブルース氏はメカニカル的なことに強いフォトグラファーであり、新しい機材にどんどん挑戦する。
D3がどんなに素晴らしいカメラか、ナノコーティングのレンズがいかにシャープかを語る氏はカメラファンそのものだ。

フィルム時代を長く経験し、デジタル時代に入った今、ブルース氏の写真が変化したかどうかを聞いてみた。

「デジタルの変化は君も知っての通りここ数年目を見張るものがあるね。私たちフォトグラファーにとってデジタルの恩恵は計り知れないものがあるよ。クオリティも充分高いし私はデジタルに充分満足している。ただひとつ忘れてはいけないと思っていることがあるがね。」

「どういうことでしょう?」と僕。

「過去、数々のフォトグラファーが素晴らしい写真をものにしてきた一番の理由は何だと思う?それはズバリ『Anxiety』(心配・不安)だよ。アサイメントを与えられ、あらゆる角度から手を尽くす。これでもか、これでもか、とシャッターを切り、いくつかの手応えを感じる。デジタルならプレヴュー画面を見て手応えのあったショットを確認すればそこで仕事が終わるだろう。フィルムの時代はそれが出来ないから心配で、不安で仕方がないんだ。それでまた何度も、何度もシャッターを切る。じつはその後で切ったシャッターの中に後世に語り継がれる写真が生まれることが多いのだよ。いい写真を生み出す一番の秘訣は、これで終わり、と思わないことなんだ。わかるかい?」








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その夜、ホテルのワークルームではその日ブルース氏が撮った写真がどのようにマックのモニターに現れるのか、僕は楽しみでブルース氏の横に張り付いていた。
雨にぬれたクレイドルマウンテン周辺の自然がモニターに浮かび上がると、僕は思わず唸ってしまった。
ブルース氏がその日どういうカットを撮ったのか楽しみにしているのは僕だけではない。

ブルース氏の肩越しにオーストラリアのフォトグラファーが言った、「素晴らしい写真じゃないか、ブルース。どんなフォトショップの処理をしたんだい?」

ブルース氏は「おい、おい、これはまだRAWファイルだよ」と笑う。

そう、ブルース氏の写真はどれを見ても撮った時点で完成されている。
プロなのだから当たり前、と言いたいところだが実はそうでない。
プロの撮ったカットには捨てる写真もたくさん存在するのが一般的だ。
ブルース氏の写真を見る限り、露出、フォーカス、構図の全てがどの写真も良く、捨ててもいいような写真が見当たらないのだ。
一緒に歩いていて、時折どうしてこんな所にレンズを向けているのだろうか?と思うことが度々あった。
モニターに現れた写真に「こんな所」と思わせる写真など一枚もない。
「こんな所」が「素晴らしい所」として再現されている。
そんな完成された数々の写真の中からベストショットを注意深く選ぶ。
そして選んだカットに対して、かなりの時間をフォトショップに費やす。
プリント段階ではなおさらだ。

「写真はね、結局人間の目のようには写らないのだよ。私はフォトショップで、自分が見た世界を再現しようとしているだけだ。プリントはモニター以上に目で見えたものとの誤差が生じる。だからそれを調整する為にはフォトショップの作業は欠かせないのだよ」

参加したフォトグラファーたちは自分のプリントを終えると、やはりブルース氏に見てもらいたがる。
そしてブルース氏の遠慮深いが実に的を得たアドバイスに皆真剣に耳を傾ける。
写真に対して妥協を許さないブルース氏だが、いい写真を見ると思わず顔がほころぶ。

本当に写真が好きなのだ。








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by somashiona | 2009-08-06 08:47 | 仕事

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