お気に入りのFストップ





写真好きの人と一緒にいるとき、撮り方についての質問をよくされる。
残念ながら、僕は写真に関して技術を追求するタイプのフォトグラファーじゃないので、目から鱗が落ちるような話をしてあげられない。
僕が知っているようなことは、写真好きなら既にみんな知っているようなことばかりだし、僕自身、絞りとシャッタースピードの関係さえ分かれば写真は撮れると思っているタイプだからだ。
ただ、アマチュアのフォトグラファーたちや、時にはプロのフォトグラファーたちが写真を撮るのを見ていてよく気がつくことがある。
それは写真をとるその瞬間に、あれや、これやと色んなことをしすぎ、その結果、いい瞬間を撮り逃しているという点だ。

このブログを見ている人たちにこんな話をしても「はい、はい、そんなこと知ってます」と言われるだけかもしれないが、写真撮影は「Simple is best」。

毎回、毎回、違うレンズを使っているより、悲しいけどこれしか持ってないの、と言いながら同じレンズで撮っている人の方がいい写真を撮れる可能性が高いと思うし、それはレンズだけでなくカメラのボディも同じだと思う。

カメラをデジタルに変えてから僕が今まで仕事で使っているカメラはキャノンの10D、30D、40Dだ。
それらのカメラでスポーツ、ポートレイト、風景、物撮り、フードフォト、なんでも撮る。(田舎に住むフォトグラファーの宿命:何でも撮らないと生きていけない)
こんなカメラで仕事しているフォトグラファーはタスマニアといえどもあまりいない。(汗)
キャノン派のプロならやはり1D系か5Dだ。
それでも僕は大きさ、重さの点でフラグシップ機を持つ気になれない。(体力がない)
5DMarkllが欲しいという欲望はあるが、APS-Cサイズのフォーマットに慣れている僕がフルサイズのカメラを使うことは、特にAPS-Cサイズとフルサイズを一台ずつ持って仕事をすることは、有利な点より、とっさの時の判断が鈍る怖さの方が勝ってどうしても手が出ない。
そう考えると次のカメラは7Dになるだろう。(いつになるか分からないが)

僕は動いている被写体を撮るのが好きだ。
ポートレイトでも何かしらの動きが欲しいと思うタイプだ。
スポーツ写真を撮る仕事をしていた時に嫌というほど思い知らされたことは、オートフォーカスを信用するな、と言うことだった。
その時代の癖か、今でもオートフォーカスを全面的には使わない。
カメラの背面にあるフォーカスボタンを使い大まかなピントを掴み、あとはマニュアルファーカスで微調整する。
フォーカスポイント(AFセンサー)は中央一点しか信用していない。
目の前でとっさに動く被写体やストリートショットにはマニュアルファーカスのほうが断然有利だと思う。

新しく登場するカメラのフォーカスポイント(AFセンサー)はどんどん増えている。
7Dのフォーカスエリアは19点だ。(30D、40Dは9点)
ひょっとすると、自分の使っているフォーカステクニックはもう時代遅れで、フォーカスポイントを自由自在に変えながら右へ、左へと動き回る被写体を捉えられるようにならなければこれから出てくる新しいカメラに対応できなくなるかもしれないと思い、カメラボディの背面ではなく、シャッターボタンとAFセンサーを使ってフォーカスを合わせる練習をしばらくやってみた。

今週やったウェディングの仕事でさっそくこの新方式を試みた。
しかし、仕事開始15分で従来の方式に変えた。
練習では心に余裕があるだけでなく、撮り逃しても何が起こるという訳ではないのでAFセンサーを使い楽ちんフォーカスを楽しんだが、本番の仕事ではカメラの操作ではなく、被写体との会話、神聖な式の記録、美しい瞬間、感動の瞬間を捉えることに全神経を集中しているので、カメラの操作のことなど考える余裕はまったくない。
気がつけばいつもの癖で、親指で動かないフォーカスボタンを押し、あれれ、ピントが合わない、と慌てふためく始末だった。
一度身体が覚えてしまったやり方を変えるのは、とても難しい。




僕のまわりにいるプロのフォトグラファーたちに「お気に入りのFストップ(絞り値)は何?」と聞くとほとんど全員が即答してくれる。
皆それぞれ、自分が最も多用するFストップを持っている。
ちなみに、写真を撮る人は絞りで絵を作る人とシャッタースピードで絵を作るひとに分かれるだろう。
僕は完全に絞り派だ。
Fストップのだから「F派」と呼んで欲しい。
シャッタースピード派は「S派」だ。
かなりシャッタースピードにこだわる人は「ドS派」と呼ばれ、最近では「東京下町派」、もしくは「軽井沢派」とも呼ばれているようだ。

こんなことを言うと驚くかもしれないが、東京で雑誌の仕事をしていたとき、たぶん僕の撮る90%以上はf2.8かf4を使った写真だった。
後楽園ホール、東京ドーム、両国国技館、そういった会場でタングステンフィルムを使って撮るスポーツ写真はどんなレンズを使おうと絞りはf2.8、デイライトフィルムを使いフラッシュで撮る写真はf4と決まっていた。
これが僕の設定で(優秀な先輩フォトグラファーから教えられた)、これと違うことをやるということは、大切なシーンを逃す可能性が大きいことを意味していた。(優秀な先輩フォトグラファーたちは違うことをやってもしっかり撮れていた)
いつも同じ絞りを使っているので、撮った写真の善し悪しは別として、さすがに撮るスピードは早くなる。

その時代の癖が身に付いているせいか、今でも僕の撮る写真の50%がf4、30%がf2.8、15%がf8、そしてほんのわずかな残りのパーセンテージが他の絞り値だ。

僕にとってf4っていうのは、実に頼りになる奴なのだ。
f2.8のピントの不安から開放されるおかげで伸び伸びと写真が撮れ、望遠レンズだけでなく、広角でさえ距離を詰めればほどよいボケ味を得ることが出来る。
ピントのことだけでなく表現力という点でも、お隣のf5.6だとシャッターを切った後不安が残る撮影も、f4であれば、なぜかきっと大丈夫さ、という気になれる。
パンチのない表現をするf値だが、自然さが売りだ。
一目惚れする写真は撮れなくても、長い間付き合っていこう、と思える写真に仕上がる。
僕が持つレンズのほとんどは開放がf2.8なのでf4周辺はシャープで解像力も高い。
僕にとってf4はフィルムカメラの50mmレンズのような存在だ。
永遠のスタンダード、物事の標準、安定と落ち着きのオアシス、ああ、f4よ、君はなんて素敵なんだ。

「それでもお前はプロかぁ〜!」と怒られそうだが、カメラの操作は案外そういうもの。
ワンパターンな方法をとる分、露出や被写界深度のことであまり悩む必要はない。

例えば、天気の良い日の野外はいつもISO200に設定しているが、ストリートショットを撮ろうと思えばf8、シャッタースピード1/800、レンズはフィルム換算で28mmから50mm、ピントはマニュアルで1.5mか2mあたり、これで決まりだ。
このセッティングで街を闊歩すれば自分の目の前のちょうどいい距離で起こるできごとを自然な空気感と共にさくりと撮れる(晴天、順光で)。
ただただ、構図とタイミングだけ考え、シャッターを押すだけだ。
これが僕にとってもっとも自由な撮り方で、この大雑把な撮り方は仕事の写真でも多用する。
そして、この撮り方で撮った写真が新聞や雑誌などで使われる頻度がとても高い。

まばたきするように写真が撮れたらどんなにいいか。
そのためにはやはり「Simple is best」だろう。

あなたにもお気に入りのFストップがあるだろうか?

「f22です」と答える人は8x10カメラの使い手かもしれないし、「僕はf2だなぁ」と言う彼は女性のまつげのピントのシャープさに恍惚とするフォトグラファーかもしれない。

こんな話でここまで引っ張る僕も僕だが、「fストップ性格・相性判断」で盛り上がれる人は僕以外にも沢山いるだろう。むふふ。



















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写真はテキストと無関係、サーフィンの穴場として人気のある日曜のクリフトンビーチ。
サーファーたちの飼い犬がビーチで波と戯れるご主人様を待つ。
砂浜に転がっていた松ぼっくりを海に放り投げたのが運のつき。
「あしょんでぇ〜、あしょんでぇ〜、ぼぐだち退屈なのぉ〜」
ソーマとシオナ、たっぷり2時間犬たちと遊そんだ。
アプリコットがいたらよかったのに。














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by somashiona | 2009-09-24 23:53 | ソーマとシオナ

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