離れても好きな髪




僕の年齢になると抜け落ちる髪は脅威だ。
頭髪の75%が白髪に占領された僕の頭。
白髪の人は禿げる心配がないよ、と人はいうが、若いときと比べると僕の髪の本数はじわり、じわりと確実に減っている。
年齢を重ねるたび生きることに関する力みが抜けてくるが、髪が抜けるのは勘弁して欲しい。


僕だけではなく、多くの人が大切にしている頭髪だが、ひとたびそれが身体を離れると、とても不快なものに感じるのはなぜだろう。


床屋さんの床に散乱する色々な人の髪。
レストランでのおいしい食事に紛れ込んだ髪。
浴槽の排水溝に絡み付く髪。
図書館で借りたほんのページに挟まった知らない人の髪。
大切なビジネスの書類に紛れ込んだ誰かの髪。

それだけじゃない、ベッドの枕カバーに金髪の長い髪がどういう訳か付いていたために不本意にも起こってしまう揉め事。
素敵な女性の家の浴室で発見してしまう淡い黄色の石けんにくっきりと張り付いた陰毛。

頭髪に限らず、体毛は一度身体を離れると突然冷たく扱われる悲しい運命にあるようだ。

週末は子供たちが僕の家に泊まり、家の中は台風が去った後のようになるので、仕事が入っていない月曜の朝に僕がまずやりはじめることは部屋の掃除だ。
シャワーを浴びる前に浴室からはじめる。
バスタブの端にヘアブラシが無造作に置かれていた。
僕の家には一本だけヘアブラシがある。
僕はドライヤーもヘアブラシも使わないし、10歳の息子のソーマもまだヘアスタイルを気にする年齢じゃない。
彼の髪は真っ黒で剛毛だ。
僕の子供の頃と同じ。
ヘアブラシ使う人間はただ一人、8歳の娘、シオナだけなのだ。
そのヘアブラシを手に取って、久しぶりにまじまじと眺めるとかなりたくさんの髪が絡み付いていた。
ヘアブラシの根本から注意しながら絡み付いた髪の毛を引っ張ると、綺麗にひとまとまりになってブラシから離れた。
シオナの髪の毛は一本一本がとても細く、遠くで見ると栗色だが光を通すと明るい金色に光る。
もの凄く強いカーリーヘアなので身体からその頭髪が離れると、指先でつついたときの芋虫のように、磁石から離れたコイルのように長い髪がくるくると丸まってしまう。
彼女を抱きしめたときの髪の匂いが好きだ。
ソーマの髪の匂いはどんどん少年特有の匂いになっていくが、シオナはいつもでも優しく柔らかい。
ヘアブラシからとったシオナの髪の毛のかたまりは、僕の手のひらに可愛らしく収まっていた。
色が白ければ夏の入道雲のように見えるかもしれない。
見た目はボリュームがあるのに重さはまったく感じない。
窓辺に寄って光にかざすと、やはり綺麗な金色になる。
この手触り、前にどこかで経験したことがあるな、としばらく記憶をたどった。
牧場で刈ったばかりの羊の毛を手に乗せたときのことを思い出した。
この軽さ、柔らかさ、そう羊の毛のかたまりと同じだ。
手のひらのシオナの髪の毛のかたまりを頬に寄せるとやはり羊の毛のように柔らかく、そしてシオナの匂いがした。

身体から離れたシオナの髪の毛に微塵の不快感も感じないことに驚いた、親ばかのマンディ・モーニングだった。












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写真はテキストとあまり関係ないが、僕のフラットの玄関で爪切りに専念するシオナ。
穴の開いた服を平気で着ている子供など日本にはもういないのでは、、、?










毎月12月だったらさぞかし充実した人生が送れるだろうと思う今日この頃です。
いよいよ今年も終わり、お互いに身体に気をつけて燃え尽きましょう。










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by somashiona | 2009-12-17 21:47 | ソーマとシオナ

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