幸せでいられる確率




この日、僕は友人たちとサラマンカのギリシャレストランで食事をした。
クリスマス前の金曜の夜、誰も家の中でじっとしていられない。
どこのレストランも満席だった。
人気のギリシャレストランも人でごった返し、野外のテーブルしか空いていなかった。
料理は素晴らしいのだが夏だというのにとても寒い夜で、僕は震えで終始ガチガチと歯を鳴らし、会話の内容に集中できなかった。
ギターを抱えたスーパーマリオみたいな顔をしたおじさんが素晴らしい声で唄うどこか知らない国の民謡がなければ、たぶんそんなに長くは席に座っていられなかっただろう。
友人たちとの集まりは午後10時に解散した。
家に帰る前に暖かいものを一杯だけ飲みたいなと思っていると「ホットチョコレートとか飲みたい気分じゃない?」とコニーがいってきたので、僕は大賛成した。
午後10時、この時間にホバートでまだ営業しているカフェは極々限られる。
僕とコニーはノースホバートのケオスカフェへ向かうことにした。
カフェに入った途端、チョコレートの匂いのする暖かい空気に全身が包み込まれ、僕たちはお互いの顔を見てにんまりと微笑んだ。

甘いホッとチョコレートをすすりながら僕たちは近況を報告し合った。
彼女のことはもう3年以上も前から知っているが、二人だけで会ったことがないので、こうして差し向かえで話をすると、僕は彼女のことを実は何も知らないのだということに気がつく。
彼女は38歳、二人の子供がいる。
二人の子供はそれぞれ父親が違い、彼女は一度も結婚の経験がなく、しばらく特定の人との付き合いもないらしい。
僕の世代の独身の男女が語る話題はとても共感する内容であることが多い。
キャリアのこと、お金のこと、子供のこと、人間関係に関すること、どれも毎日の生活に重くのしかかるテーマだ。
そして特に男女関係に関することを話すとき、僕の世代のシングルが心の底にいつも抱えるある種の寂しさをお互いから感じ取るが、そのことをあえて言葉に出して確認しあうことはない。
人びとが愛を確認し合うクリスマスの時期はなおさらこのフィーリングに敏感になる。

「この前ね、私の娘が大切な話があるから聞いて欲しいっていうの」とコニー。

「妊娠でもしたの?君の娘さん、いくつだっけ?」と僕。

「エルザは17歳になったばかりよ。彼女はまだヴァージンなの」といってホットチョコレートに浮かぶマシュマロをスプーンですくう。

「そういうことって知ってるものなの?」僕もマシュマロを食べる。

「私たちは何でも話すのよ。私の性的体験も彼女に話して聞かせるから、ヴァージンでも知識だけはもう立派な熟女よ」と笑うコニー。

「ふ〜ん、僕は自分の子供にその手の話、出来ないと思うなぁ、、、。で、エルザの話って何だったの?」

「それがね、彼女決心したらしいの。バイセクシャルな女になるんだって」というコニーの表情は心配そうな顔でなく、かといって笑っているわけでもない。

「男を知らないうちから女ともするって決めちゃうんだ。でも、どうしてそういう考えになっちゃうの?」

「エルザ曰く、男と女の両方から愛し愛された方が、男だけのそれよりも幸せでいられる確率が高いから、だそうよ」

「そうか、確率の問題かぁ。でも、生理的に女も愛せると彼女は思っているの?」と素朴な疑問を抱く僕。

「それは絶対大丈夫だっていう自信があるみたい」

「ふ〜ん、そういうもんか、、、」マシュマロがもっと欲しいと思いつつ、この問題を考える。「君も女性の経験あるの?」と念のため聞いてみる。

「あるわよ。でも、私は最終的にはやっぱり男が好きだって分かった。あれがついていないと物足りないのよね」といってから、にやりと笑うコニー。

「ふ〜ん、そういうもんか、、、」マシュマロのことで頭が一杯な僕は上手く会話のキャッチボールが出来ない。
「で、エルザに何ていったの君は?」

「両方試してから好きな方を選びなさいっていったわ。もし両方好きだったら、そのままでいなさいともね。男が好きでも、女が好きでもどちらでもいいから、誰かを本気で愛して、本気で愛される人になりなさいっていったわ。それと、たくさん、たくさん幸せになりなさいっていった。何が自分を幸せにするのか、どんな状態なら幸せなのか、はっきりと分かる人になりなさいっていったわ」と語気を強めるコニー。
朝仕事に行く前に鏡に映る自分の顔を見て、夜寝る前、ベッドの中で枕を抱えて、コニーはいつもそんなことを自分に言い聞かせているのかもしれない。












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写真はシドニー、ゲイ&レズビアン・マルディグラ・パレード2008
今年のマルディグラパレードは今夜行われる。
さぞかし盛り上がることだろう。














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by somashiona | 2010-02-27 08:24 | 仕事

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