拝啓、わたし









友人宅にお邪魔したとき、美味しい夕食をご馳走になりながらいい話を聞いた。

念願だった世界を巡る旅を終え日本に帰国したとき、彼女は29歳だった。
久しぶりの実家、懐かしさすら感じる自分の部屋でボロボロになったバックパックの中身を床に広げる。
汽車のチケット、レストランのマッチ、様々な国の硬貨、そんなものたちの一つ一つがまだ記憶に鮮明だ。
ふと机の上に目をやると何年かの間に自分宛に送られた手紙やはがきの束が山積みになり崩れかけている。
彼女は立ち上がり、バックパックの整理を一度やめて、机とセットになっている椅子に座った。
好きだった洋服のお店から送られてきたバーゲンセールのDM、旅先で出会った人たちからの絵はがき、数年分の暑中見舞いや、年賀状。
その手紙の束から子供の字で書かれた自分の名前を見つけた。
見覚えのある筆跡、これは自分の字だ。
封筒を開けると便せんにはこう書かれていた。





拝啓、わたし

この手紙を読んでいるあなたは今29歳のはずです。
もしまだ結婚をしていなければ、あなたはオールドミスですね。
今の私は中学2年生、これは中2のわたしから29歳の私へのこんにちはです。

今の私の夢は世界中を旅行すること。
まだ貯金は7万5千円しかないけど、これからは毎年のお年玉にも手をつけず、100万円貯めて必ず世界中を見て回ります。
29歳の私はこの夢に向けて毎日がんばっていますか?
それとも、もう行っちゃったかな?
この手紙を読んだ後、今のあなたがわたしだった時のことを思い出してみてください。

じゃ、またね。







1985年に開催された筑波万博のイベント「ポストカプセル2001ー21世紀のあなたにお届けする夢の郵便」に学校の行事で参加し、そのとき書いた手紙だったそうだ。
僕はこのことを全然知らなかったが、きっと2001年の日本では話題になっただろう。

彼女はこの手紙を読み、胸が熱くなったそうだ。
そして、まだ結婚はしていなかったが中学2年の自分との約束をちゃんと果たした自分を褒めてあげたい気分になったという。
彼女は今可愛い二人の子供と素敵な旦那さんに囲まれ、タスマニアで幸せに暮らしている。


この話を聞いた後、僕は何度もこのことについて考えた。
中学2年の僕は大人になった自分へどんな手紙を書いただろう?
中2のときの僕は具体的な将来の夢をもっていなかったと思う。
写真の写の字も頭の中になかったし、海外で生活しているとは夢にも思っていなかった。
中2の自分が今の自分を見たら一体どう思うだろうか?
好きになってくれるだろうか?



週末、カメラについている動画機能を使って子供たちのインタヴューを撮った。
ソーマは10歳、シオナは8歳、将来の夢を話してもらった。
ソーマはいきなり「将来の夢は今のところない」と言い、それを聞いて僕は驚いた。
なぜなら考古学者になりたいと何年も前から彼は言い続けてきたからだ。
「考古学者はやめたの?」と思わず突っ込みをいれる僕。
「うん、一度中止にする」とソーマ。
「どうして?」
「だって、一つのことを集中して追い求めると、他のことを得るチャンスを失うもん」と録画中のカメラに向かって淡々と語るソーマ。
「なあ、ソーマ、それって自分で考えた意見か?」と録画中のカメラのことはもう忘れている僕。
「うん、そうだよ。どうしてさ?」というソーマの顔は早く違う質問をしてくれと言いたげ。
「自分でそう思うんなら、それでいいけどさ、、、」なんだかしっくりとしない僕。
この動画をもしソーマが16年後に見ると、いったいどんな感想を持つだろう。

彼らは彼らなりに、きっといろいろと考えているだろう。
これから先、たくさん現実の厚い壁にぶつかるだろう。
その時の自分を誇れなかったとしても、決して嫌いにはなって欲しくない。
純粋さなどとうの昔に忘れ去ったこの今の僕でさえ、この先16年未来の僕が振り返ってみると「やれやれ、まだ気づいていないんだな、こいつ。まあでも、一所懸命やってるじゃないか」と好意的に見るかもしれないし。













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by somashiona | 2010-04-04 12:46 | ソーマとシオナ

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