綺麗な花嫁さん、好きですか?





ウェディング写真を撮る度、幸せになろうとする人たちからパワーをもらう。
結婚は個人の人生の中の大きな出来事ベスト5に入るだろう。
結婚は未来への飛躍を願うことであり、責任を背負うことであり、腹をくくることである。
腹をくくった人を相手に仕事をするのだから、話していても、写真を撮っていても清々しい。
結婚までたどり着いたカップルたちの話を聞いていつも思うことは、やはり幸せというのは努力して得るものなのだということ。
そして幸せのベクトルに自分を向かわせるのは、男子より女子の方が数段上手だと、男子の僕は感じてしまう。


依頼を受けて良かったなぁ、と心から思ったウェディングのひとつに九州での仕事がある。
実は式の一年以上前から花嫁になる女性のオファーを受け続けていた。
とにかく、写真を写されることが大の苦手、自分の写真はほとんど持っていないし、レンズを向けられると顔を背けてしまうタイプだと彼女にメールには書いてあった。
僕のブログを見てくれていて、このタスマニアの人なら自然な表情の写真を撮ってくれるのでは、と思ってくれたらしい。
まったく、フォトグラファー冥利に尽きる。
でも、ウェディングの撮影でオーストラリアから九州まで飛ぶのは、僕には現実的な話ではなく、その時にたまたま日本にいるという状況でなければ無理だという返事を僕は彼女に伝え続けていた。
それでも彼女は諦めることなく、定期的に僕に依頼のメールを送り続けてくれた。
彼女のメールには結婚というものに対する彼女の強い意志がハッキリと表れていた。
彼女が指折り数えて待つ結婚式を自分の思い描く形に近づけることは、これから迎える新しい人生に対し自分がどんなふうに付き合っていこうとしているのか、その態度を表しているかのようだった。
僕のそのお手伝いが出来るのなら出来る限りのことをすべきであろうと、いつの間にか思うようになっていた。
スポーツでも、アートでも、ビジネスでも、強い意志を持って行動する人の周りには磁石のように人が寄せ付けられ、その人のために動こうとする人間がどんどん出てくるが、彼女もやはりそのタイプで、彼女のメールに僕は突き動かされ、日本へ行く日を指折り数えるようになっていた。









式の前日、彼女が用意してくれたホテルの部屋にチェックインし、それから一時間もしないうちにドアからノックの音が聞こえた。
この瞬間から僕の仕事は始まる。
明日の式までに僕や僕のカメラに慣れてもらわないといけない。
この一日に勝負がかかっている。
初対面の彼女と初対面ならではの挨拶をし、早速部屋の中で彼女を撮りはじめることにした。
彼女が言っていたとおり、なかなかレンズを直視してくれない。
レンズを見たかと思うと、直ぐに照れて笑ってしまう。
けれど、窓の外から聞こえる雨の音、僕のカメラがたてるシャッター音、そして「ごめんなさい、がんばります」という彼女の声がホテルの部屋で混ざりあうと、いい仕事ができる予感が身体の中で沸き上がってきた。








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その日は仕立て屋に出していたドレスとりにいった後に僕の下見も兼ねてウェディング会場へいき、彼女は式の担当者と最後の打ち合わせをした。

その後、そのまま彼女の実家に向かいご両親に挨拶をし、嫁入り前の親子のポートレイトを撮った。
結婚をするカップルだけでなく、ご両親や友人、親族の方々に結婚式の前に会えるチャンスがあるのなら、僕は出来るだけその機会を作るようにする。
式に参加する人たちは皆、僕の大切なモデルさんたちだ。
事前にコミュニケーションをとっていた方が本番はお互いに楽しめる。

お腹がすいたので僕のリクエストでラーメンを食べにいくことにした。
ラーメンの食べ歩きが趣味だと言うだけあって、彼女が連れて行ってくれたお店のラーメンは美味しかった。
ラーメンを食べる彼女の姿、なんだかとても粋だった。








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移動時間中、彼女が運転する車の中で僕たちは様々なことを話した。
まるでひさしぶりに再会した友人同士のように。
犬の話から人生の話まで、話題は尽きなかった。

最後に式の前日にも関わらず、夜遅くまで仕事をしていた花婿さんとスターバックスで落ち会い、お互いに挨拶をする。
彼女が選んだ男性は僕の予想通り誠実でとてもしっかりした九州男児らしい男性だった。
北海道の男は九州男児にちょっとした憧れを持っている。
彼らは僕たち道産子には持っていない何かを確実に持っているような気がするのだ。それは何か歴史とともに細胞に刻み込まれている類いのもので、歴史の浅い北海道人には決して手の届くことがないもののような気がする。





式の当日、彼女の顔は昨日とはまったく違っていた。
もの凄く落ち着いていて、透明感があった。
戦に向かう前の武士はきっとこんなオーラを漂わせていたんじゃないだろうか、と僕はウェディングとはまったく関係ないことをしばし考えていた。








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本当にひさしぶりの日本でのウェディング、進行の早さに眼が回りそうだった。
それでも、観察すべきこと、撮るべきものはいつもと同じ、焦るな、人々の感動を記録するんだ、と自分に言い聞かせた。
九州男児の花婿さんはカチンカチンに緊張していたが(笑)、素晴らしい結婚式だった。
披露宴では僕も紹介され、少し照れてしまった。
前日すっかり彼女と仲良しになった僕は、まるで自分の妹(娘ではない)の結婚式に出席している兄貴の心境だった。
神父の声を聞く表情も、涙を拭くその眼にも、迷いのない綺麗な心が宿っていて、誇らしい気持ちさえした。
写真を撮りながら、ここまで来て本当に良かったな、と心から思った。








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綺麗な花嫁さん、素晴らしい時間をありがとう。
これからも旦那さまと一緒に幸せな日々を過ごしてくださいね。

















注)前回の記事、問題の答え
フラッシュ無しの写真は上から6枚目の一枚だけです。










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by somashiona | 2010-06-30 02:33 | 仕事

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