ユー・アー・ノット・アローン







しばらく雨降りの日が続き、僕のマウンテンバイク・エクササイズはお預けになっていた。
こういう時、「くそぉ〜、身体がなまっちまうよ」とか、なんとか、口では言ってみるものの、内心は「ラッキー、さぼれるぞー」と喜んでいるのだ。

雨があがって、いつもの山に入り、いつものコースを走った。
3日もエクササイズを休めば、コースのほとんどを占める上り坂、息が上がりっぱなし。
暑い日などは吐き気を催すことさえある。
下り坂、以前は調子に乗り、かなりのスピードででこぼこの下り坂を走り抜けたのだが、2回の救急病院行き、特にそのうち一回の脳しんとうでは約6ヶ月間の頭痛に悩まされ、さずがに今は安全を確保しながらゆっくりと下り坂を走るようになった。
劇作家のジョージ・バーナード・ショーは "We don't stop playing because we grow old; we grow old because we stop playing." (年を取ったから遊ばなくなったんじゃない、遊ばなくなったから年を取ったのさ)と言ったそうだが、安全を優先して下り坂を降りるようになった自分に「年寄りおやじ」の危機感を感じないわけではない。

下り坂の途中、僕の左手の沢の中に細い道があるのを一瞬、目の片隅で捉えた。
今まで全く気がつかなかった道だ。
この日は連日降り続いた雨のせいで山の中の道はまだドロドロ。
とても滑りやすく、おまけに容赦なくバイクの前輪から跳ね上がる泥のせいで、僕の胸や顔やメガネが泥だらけになり、視界が利かなかった。
なので、いつもの半分以下のスピードで下り坂を走っていたのだ。
たぶん、そのせいでこの細い道が目に入ったのだろう。

知らない道を見つけたら、その先がどこへ続いているのか知りたくなるのが人情というもの。
さっそく未知(みち)の道(みち)へ吸い込まれるように入っていった。

最初の数分、くねくねしたかなり面白い道、(といってもバイク一台分がやっと通れるくらいのけもの道)だったのだが、奥へ奥へ進むに従ってその勾配はどんどん急になり、50cmくらいの高さの太い木の根や突き出た岩の段差がこれでもか、これでもか!と言わんばかりに僕の行く手に出現し、前輪、後輪のブレーキをかけているにもかかわらず泥だらけの地面のせいで坂を下るスピードはどんどん増していくばかりだった。
「もう限界だ、このままでは危ない、バイクを降りるべきだ」と心の中の声が聞こえたが、僕の警報装置は危険に対する感度が悪いらしい。
アラームが鳴り響くのがいつだって遅すぎるのだ。
かなりのスピードで大きな岩を超えたその先には5メートルくらいのプチ谷が待ち構えていた。
こういうと大げさに聞こえるかもしれないが、気持ち的には僕は空中に3分間ほど浮かんでいたような記憶がある。たぶん大げさなのだけど。
バイクの前輪が最初に地面に触れた時点ではまだかなりの急な勾配の坂、というより沢だった。
前輪が地面に触れた次の瞬間に僕はほとんど顔面から地面に叩きつけられ、坂を転がり落ちた。
何回転もしたせいで(大げさ、たぶん5、6回転くらい)細かい記憶はないが、途中僕を追いかけるように落ちてきたマウンテンバイクちゃんがおもいっきり背中に当たったことだけはよく覚えている。
何が何だかわからないうちに、気がつけば、僕は仰向けで大の字になって寝ていた。
高い木々の隙間からは青空が見え、一度鳥がそこを横切りのを見たけれど、身体はまだ動かせなかった。
それが見えているということは、メガネもまだかろうじて顔の上に乗っているということ。
今まで何度も地面に叩きつけられているが、ヘルメットを脱がない限り、メガネはそうそう吹っ飛ばないことを知っている。
体中がジンジンと痺れるように痛かったせいもあるが、すぐに体を動かさなかったのは、正直言って怖いからだ。
頭を上げて足元をみると膝から下が不自然にねじれているとか、肩から肘と肘から手のひらまでが平行に並んでいるとか、もしくはそれを見ようと頭を動かそうとするがピクリとも動かないとか。
そういうことが怖くて、僕は大の字になったまましばらく木々の隙間の青空を眺めていた。
そして身体のジンジンが徐々に薄らぎ、ゆっくりと、普段はいない神様に祈りながら、自分の肢体の確認をした。
恐れていたことは幸いに起こっていなかったが、僕はあるものを発見し、心臓が縮みあがってしまった。
股間のすぐ下に先端が鋭い槍のように尖った40〜50cmほどの木が、僕を睨みつけるようにそそり立っているのだ。
興奮のあまり勃起でもしたのかと思ったが、40~50cmというサイズを考えると、それは違うと認めざるをえない。
危ないところだった。本当に、本当に危ないところだった
ほんの少し僕の着地がずれていたら、僕は間違いなく串刺しになっていた。
そして、絶対誰も入ってこないこんな山の中のけもの道で、痛くて、怖くて、寂しくて、絶望感に打ちひしがれて死んでいったのかもしれない。
ああ、僕たちの運命はなんて紙一重のところで成り立っているんだろう。
普段は存在感のない神様、本当にありがとう。

耳から外れてしまっていたiPod nanoのイヤフォンを差しこむとマイケル・ジャクソンが ♬You are not alone ~ For I am here with you ~ Though you're far away ~ I am here to stay ~ ♫(君はひとりじゃない 僕は君とここにいるよ 君は遠くへ離れてしまったけれど 僕はここにいるんだよ)と少し悲しそうに、か細い声を震わせて歌っていた。

お腹を串刺しされた僕が、誰もいない山の中で、血で赤く染まった手を必死に動かすのだ。
真っ白イヤホンをたぐり寄せ、赤い血でベタベタしたそのイヤホンを耳に差し込んだとき聞こえた曲がこれだったら、、、と考えると僕は一瞬泣きたい気持ちになったけれど、もう少し考えてみると何だかおかしくて、笑いがこみ上げてきた。
これがレッド・ツェッペリンの「天国への階段」だったりしたら、ブログ仲間たちは思わず失笑し、悪い冗談として語り継いだことだろう。













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写真は2006年に撮影したオーストラリアン・ナショナル・マウンテンバイク・シリーズより
以前一度ブログで紹介しています。
同じ写真をアップしている可能性あり。























速報!!
我が妹、あゆみとパートナーのフミさんがTV出演します!!

9月12日(日)夜9時30分~10時30分
フジテレビ 「エチカの鏡」


かなりしっかりと取材されたようなので、チラッとテレビに出るのではなく、しっかりとTV出演するみたいです。(日本語になっていない?)
僕は残念ながら観れません。号泣
皆さん、もし良かったらテレビ観てあげてください。
僕と妹の顔がそっくり、という噂が一部の人達の間であるようですが、妹の顔にヒゲを付け、メガネをかけされると僕になるとは思わないでください。
僕はどちらかと言えばジョージ・クルーニー似なので。
(そういえば、彼の映画「Up in the air」アップ・イン・ジ・エア、面白かった)











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2008年、夏、四万十川のほとりで幸せいっぱいの二人










そうそう、ブログの更新が滞っているのは決してマウンテンバイクでケガをしたとか、そういう理由ではありません。
擦り傷くらいはありますが、僕はピンピンです。(ビンビンだし)
やるべきことが多すぎて、心に余裕が無いだけです。
更新を楽しみにしてくれている方、スローな更新を許してください。











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by somashiona | 2010-09-11 21:46 | デジタル

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