「空の暴走族」




東京の新小岩駅界隈に住んでいたとき、うんざりしていたのは暴走族の存在だった。
蒸し暑い夏の夜中、生まれたばかりのソーマがやっと寝付いてくれたと思ったら、窓の外から「ぶ〜ん、ぶ〜ん、ぶ〜ん、パラリラ、パラリラ」と爆音がとどろき、また泣き出す。
時にはパトカーのまわりを囲み挑発するのだが、警察は手も足も出せない。
次にマンションの下を彼らが通ったら生卵をぶつけてやろう、と何度も本気で考えた。
ロスアンジェルスに住んでいたときにも僕のような善良な市民に迷惑をかける人たちがたくさんいたが、怖かったのはそんな迷惑野郎よりもLAPD (Los Angeles Police Department)と呼ばれるポリスマンたちだった。
筋肉モリモリの身体のせいで制服はいつもピチピチ、黒いサングラスの奥の目はどこを見ているかわからず、LAPDの文字がなければプロレスラーかマフィアと間違えそうな人たちだ。
彼らの前でふざけた行為など全くできないし、また彼らを怒らせてボコボコにされている若者を何度か見たことがある。
赤信号を無視して走り過ぎる若者たちの横で、駐車違反をしているお年寄りの車の切符を切る警察などなど日本にしか存在しないのではないか?
仕事に行こうとしている僕を捕まえ職務質問をはじめた新小岩駅前の交番のおまわりさんにこの件について訊ねてみると「ほらね、奴らはみんな未成年者でしょ、追いかけてケガでもされると市民から責められるのは結局私たちなんですよ」とへらへら笑って答えた。
こういう態度って、とても日本的だと思う。

タスマニアのポリスたちには太った人が多い。
タスマニアはオーストラリア全州の中で一番犯罪が少ない州。
彼らの体型は平和の証と言えなくもないが、制服の下のお肉を揺らしながら歩く彼らを見ていると、それじゃ逃げる悪党を捕まえられないよなぁ、、、と思う。
そんなことを感じていたのはやはり僕だけではなかったようで、今年オーストラリア全土の警察官に対して身体に関する新しい基準が設けられたそうだ。
100mの泳ぎ、握力、走る能力、体重などなど、これからポリスになろうという若者たちはもちろん、ながいキャリアのあるポリスたちにもこの基準が採用されるらしい。
この基準を測定するテストにパスできなければ、職を失う可能性もあるというのだから、焦っているベテラン警官たちはかなり多いだろう。
ちなみに警察官のくだけた言い方として「The thin blue line」(細く青い線)というのがある。(たぶんイギリス英語)
善良な市民と無秩序な悪の間に引かれた細く青い線が警察官なのだろう。(警察官は一般的に青い制服を着ている)
タスマニアで太った警察官に「The thin blue line」と言ったら、おもいっきり睨まれそうだ。

平和なタスマニアには暴走族など無縁だろう、という僕の期待は簡単に打ち砕かれた。
改造車を走らせ、問題行動を起こし、善良なオーストラリア市民の眉をひそめさせるオーストラリア版暴走族のことを「Hoon」(フーン)と呼ぶ。集団なら「Hoons」(フーンズ)だ。
「ふ〜ん、なるほどねぇ」と思ったあなた、その「ふ〜ん」の発音は正しい。


クラス(階級)のない日本人を無理やり見た目で分けるなら:どう見てもお金持ち、一般市民、アルバイター、ヤクザなどの堅気(かたぎ)じゃない人たち、暴走族、ホームレス、みたいな感じになると思うが(かなり無理がある)、オーストラリアもその構造は似たりよったりだ。
フーンを暴走族と括ってしまうのは、実は少し違う。
ヘルスエンジェルスなどの、それはもう怖い、怖いバイカーたちも暴走族のカテゴリーに近いが、もう少し彼らはマフィア寄りだろう。
フーンはもっと僕たちの周りに沢山いる身近な存在だ。
普通に仕事もしているし(失業者も多いが)、家や家族も持っていたりする。
でも、服装や言動をみるとすぐに「あっ、この人はフーンだな」とカテゴライス出来る人達なのだ。(もちろんとても失礼な見方だし、ある意味上から目線だとも言えなくないが)
彼らフーン層はオーストラリアの社会を語るとき、無視できないくらいこの社会に確固たる位置を占めている。
僕の知り合いにもたくさんフーンと呼べる人たちはいるし、彼らひとりひとりは決して悪人ではない。
しかし、彼らはフーンなのだ。フーンとしか言いようがない人種なのだ。
オーストラリアに住んでいてフーンを語れない人は、たぶんこの社会への理解がまだ浅い人だろう。
オーストラリアであるタイプの人達を見て「この人達ってマナブさんがブログで書いていたフーンだろうか?」とふと思い、本人に「失礼ですけど、あなたはフーンですか?」などと間違っても聞かないで欲しい。
フーンというカテゴリーに属さない人に「あなたはフーンのように見える」というのは最上級の侮辱であり、仮に彼らが正真正銘のフーンであっても、人には一つや二つ、本人は認めていても他人からは言われたくない言葉というのがあるだろうから。






徹夜したときに限って、お昼前後に窓を揺らすほどの轟音でベッドから飛び起きることがある。
はじめての時は、本当に、本当に驚いた。
地震か、それとも隕石や爆弾でも落ちたのではないか、と思うほど大きな音だったのだ。
カーテンを開け、窓の外を見るとオーストラリアの国旗の向こうに編隊を組んで飛ぶ飛行機が見えた。










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「え、あの音?」と片目をこすりながら、寝起きの朦朧とした頭で必死に考えてみる。
そうすると、飛行機たちは横になったり、逆さまになったりしながら、あっという間にホバートの中心部へ戻ってきた。










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間違いない、奴らの音だ。
ものすごい音だ。
しかも、ビルや橋のすぐ上を飛んでやがる。










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沢山の人が仕事をしている街の上空で好き放題に飛んでやがる。










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何だこいつら、危ないじゃないか、間違って落ちたらどうなるんだ!
あ、あらら、まるで僕の心の声に反応したかのように、彼らは大きく旋回し、僕の住むフラットめがけて飛んでくるではないか、、、。










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おい、おい、よせって、やめとけって、腕がいいのは認めるよ、でも、猿だって木から落ちることがあるんだから、、、。










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「ちぇっ、だらしねぇ奴だぜ」と冷笑を浮かべながら(たぶん)、彼らはまるで僕を挑発するように僕の住むフラットの窓の前で四方八方に飛び散り、そしてまた編隊を組み、山の向こうへ消えていった。

年に何度か現われる彼らを、僕は心のなかで「空の暴走族」と呼んでいる。




















オーストラリアのお巡りさんも困ったチャンたちには手を焼いています












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by somashiona | 2010-09-27 18:26 | デジタル

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