スケッチでアートな気分 #1



子供たちと過ごす週末、どしゃ降りでどこにも行く気になれない時があった。
そう、ちょうどクイーンズランド州がまるで映画のセットのような洪水で大変なことになっていた時だ。
クリスマスプレゼントとして母親から買ってもらったipod タッチに朝から張り付いていた子供たちに「ipod ノータッチ命令」を発令すると、いったんしかめっ面で自分の部屋に入ったソーマがスケッチブックを手にリビングルームに戻り、おもむろに窓際に座った。
彼はしばらくぼぉ~と土砂降りの窓の外を見つめた後、背中の中央にあるスイッチを押された時のオモチャの人形のように眼の中に光が宿り、突然猛烈に鉛筆をスケッチブックの上に走らせた。
すぐにシオナもソーマの横に椅子を持ってきてスケッチをはじめた。
外の景色を鉛筆やペンで描くなんて、僕は小学校の写生会以来一度もやったことがないし、それをやろうという考えすら頭の片隅によぎったこともない。
でも、良く考えてみると、写真を撮る僕の姿を彼らがいつも目にするように、画家である彼らの母親がスケッチブックに何かを描いている姿を日常的に目にしているのだろう。
彼らにとってスケッチは自然な行為なのかもしれない。
自分の子どもだからそう見えるのかもしれないが、窓の外を眺め夢中で鉛筆を走らせる彼らの姿は美しかった。
そして、話しかけることが出来ないオーラすら、彼らは放っていた。
スケッチが終わった後、彼らが持っていたスケッチブックを見せてもらった。
そこには彼らの生活の一部として切り離すことが出来ない彼らを取り巻く環境が素朴に描かれていて、僕は少し感動してしまった。
スケッチブックに描かれた彼らの絵を見て、それがどこなのか僕にはわかる。
それらはまるで、写真で言うところの日常の何気ないスナップショットのようだった。
建物や風景を好んで描いているソーマと違って、シオナのスケッチには身の回りの物や人物が描かれている。
彼らが写真をやればきっとソーマが風景写真中心、そしてシオナは僕のように人物写真を撮るようになるだろう、となんとなく想像がつく。
人には持って生まれた興味の対象というものがあるような気がする。
プラモデルや鉄道に興味を持ち始める男の子と虫や動物の図鑑を読みあさる男の子に分かれるように。    
僕は小学校の4、5年生の頃に人間への感心が芽生えたのをはっきりと憶えている。
彼らのスケッチブックを見せてもらいながら「一枚絵を描くのに30分くらい外に座っているの?」ときくと、シオナは真面目な顔をして「ダディ、スケッチはね、時間をかけちゃダメなものなのよ」と答える。
最近、子供たちは年下の子どもに向かって口を聞くような態度で僕と話をすることがある。
それが彼らの得意分野のことだとなおさらに。
「え、シオナ、じゃあ、一枚の絵にどれくらい時間をかけるの?」
「一枚の絵に5分以上かけちゃいけないっていうルールなの」腕組みするシオナはまるでスケッチの専門家だ。
「マミーから言われているの、ぜったい5分以上はダメだって。それとできるだけ自分の目はその時に描いているものを見つめ続けて、手元のスケッチブックを見ないようにするの」
僕はジェスチャーではなく、本当に驚いて「スケッチブックを見ないで鉛筆を動かしたって、何を描いているのか分からないでしょ!」というとシオナは厳しい目で僕を見つめ「訓練すれば、出来るようになるのよ」と答え、そして「私はまだダメだけど、、、」と言って目を伏せた。
それからまた顔を上げて「ソーマはとっても上手で、あまり手元を見ないからいつも2、3分でスケッチが終わってしまうの」と教えてくれた。
兄妹というものは些細なことでも競う合い、小さな優劣に自信を持ったり劣等感を感じたりする。
シオナ、どうやらスケッチでも兄との差を少しでも埋めようともがいている様子だ。
そのままで十分なのに。

それにしても、手元のスケッチブックを見ずに描いているものを見続けるなんて、写真と同じじゃないか!
写真撮影はモニターは勿論、カメラの中の情報を見なくても自分が撮っているものの仕上がりがわかるようになることがとても大切だ。
とにかく被写体を見つめること、観察すること、予期すること、これに気持ちを集中しなければいけない。
表現したいものを見つづけるときのあの感覚は素晴らしいものだ。
頭の中から雑念が消える。
シオナと話していて、なんだかすっかりアートな気分になった。
アートな時間にじっくりと浸かってみたい気分になった。

「ねえ、明日さ、もし天気がよかったら、みんなでどこか遠くにスケッチ旅行に行こうか?ダディもスケッチブックと鉛筆買うからさ。どう?」と聞く。

「イエ~ィ!ダディ。スケッチ旅行だ!行こう、行こう!」と子供たちは飛び上がり、雨ざあーざあーの日だったけれど、みんなかなり明るい気分でその日は過ぎていった。










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ソーマのスケッチブックの中の一部。
そういえばソーマ、随分前から古い建物が好きだった。
スケッチの時も建物を描くのが好きだと言っていた。










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シオナのスケッチブックのなか。
風景、カップ、愛犬アプリコットや花瓶の花。










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花の絵がマティスの絵に見えるのは父親の贔屓目(ひいきめ)?










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マミーの顔が結構似ていたので、ダディの顔はないの?と聞くとニヒヒと笑って見せてくれた。










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かなり前に彼女が描いてくれた僕の似顔絵はマンガチックで可愛らしかったのに、、、。
腕が上がるに従って彼女の描く僕の顔は醜くなるのだろう。
シオナが描いた僕の顔の絵、たしかに車を運転しているときセクシーウーマンを見つけるとこんな目になるよなぁ、、、。


つづく




















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by somashiona | 2011-01-22 11:09 | ソーマとシオナ

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