MONA、今タスマニアで一番クールな場所



昨年末から今年にかけて、人が集まればかならずMONAの噂話で花が咲いていた。
僕はちょうどその頃、多忙な毎日が続いていて、新聞もテレビもラジオにも接することがなかったせいか、タスマニアでMONAがどれほど大きな話題になっていたのか人々の話を聞いても実感が湧かなかった。

MONA、Museum of Old and New Artの略、そう、これは美術館だ。
タスマニアに住む、オーストラリアの大富豪、デイヴィッド・ウォルシュ氏が自らのアートコレクションを展示するために作った個人の美術館だ。
このデイヴィッド・ウォルシュという人物、様々な噂がいつでも巷を駆け巡り、どこまでが本当の話なのか、僕にはまったく分からない。
彼はプロのギャンブラー、ポーカーで稼ぎに稼ぎ、巨額の富を手に入れた。
一説によると彼は自閉症を持っていて、この病気を持つ人の何パーセントかに見られる特有の記憶力を持っているらしい。
ポーカーの最中、配られるカードを次から次へと記憶し、自分に有利な予測を立て、ゲームを進めるのだ。
皆さんは「レインマン」という映画を観たことがあるだろうか?
ダスティン・ホフマンとトム・クルーズ主演の素晴らしい映画だ。
あの映画の中で、お金に困ったトム・クルーズと兄である自閉症のダスティン・ホフマンはカジノへ行き、ポーカーで大勝ちする。
デイヴィッド・ウォルシュはまさにそういう人らしいのだ。

この美術館のオープニングパーティもなにかと話題になった。
通常、こういう式典のテープカットなどは政治家や著名人たちが、この舞台を逃すものかという顔をして目立った席にしゃしゃり出るが、このオープニングではそういった人たちは一般人と一緒にもみくちゃにされていたらしい。
100%私財を使って完成させたこの美術館、彼には何のしがらみもない。
政治家たちや有名人たちにしっぽを振る必要など無いのだ。
こういう時に使えるお金の力というのは、ある意味、クールだと思う。
式典では彼はスピーチを拒んだ。
その代わり、その時彼が着ていたTシャツには ""F○○k the art, let's rock'n'roll.''とプリントされていたらしい。
この美術館を訪れた人たちのほとんどは「アメイジング!」「オーサム!」「クール!」(素晴らしい)など感嘆していたが、「グロス!」(気持ち悪い)「ジャスト ポルノ」(ただのポルノでしょ)「キャント テイク マイ チルドレン ゼア」(私の子供は連れていけないわ)という声もかなり耳にした。










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2月になって時間がとれた僕は、遅ればせながらMONAを訪れた。
MONAはデイヴィッド・ウォルシュが持つワイナリー(ワインを作る場所)、モリラエステイトの敷地内にある。
車を駐車場に停めた後、青空の下に広がるぶどう畑の間を美術館に向かって歩いていく。
とにかく、表示や案内のようなものがほとんどなく、敷地内に入っても「美術館はどこ?」建物前に立っても「入り口はどこ?」と田舎から上京したおのぼりさん状態だった。ここは田舎なのに。
壁なのか、ドアなのかわからないアーティスティックな入口を入ると、マイケルジャクソンのバックで踊っているようなイデタチの人たちがたくさんいて、彼らが僕にiPod Touchとヘッドフォンを渡す。
「館内には表示が一切ありません。あなたが歩く周辺の作品、アーティストの情報は常にiPod Touchで表示されます。さらに詳しい情報が知りたければ、音声でアーティストのインタヴューや関連作品など様々な情報を得ることが出来ます。ところで、iPodの使い方はわかりますよね?」
恥ずかしがり屋の僕は、よくわかりません、と言えなかった、、、。










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この美術館は地下3階建てだ。
個人のコレクションを展示する、個人の美術館なのだから、大きさは知れているだろうと思っていたが、期待は大きく裏切られた。いい意味で。
中はもう別世界。
砂岩を利用した壁に囲まれた空間。
はじめてロスアンゼルスのユニバーサル・スタジオに行ったときのバックドラフトがテーマのあの空間で感じたような、いつ何が起こるのかわからない未知の緊張感みたいなものに包まれ、感性のアンテナがグルグルと回った。
展示作品がまた面白い。










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まさにNewとOldの混合なのだが、とくに新しいアートが光る。
国が持つ美術館のキュレーターなら絶対こういうチョイスはしないだろう、というデイヴィッド・ウォルシュの個人の好みが100%反映されている。
ミリオネアの彼がどれほどセックスと死の強迫観念に囚われているのかが痛いほどわかる。
この美術館の中には「子どもに見せるなら、親の責任のもとで」というエリアがあり、今回僕が一人でここへ来たのも子どもたちをつれてくる前に自分で確認しておきたかったからだ。
実際、そういうエリアの作品を見ると、僕的には十分面白いのだけど、子供にはもう少し大きくなってからかなぁ、と思えるものが数多くあった。
ある意味、ショッキングな作品がたくさんあるのだ。
もちろん、こういう作品はブログでも見せられないが(この美術館、フラッシュを焚かなければ写真撮影OK)、それは十分見る価値のあるものだった。
というか、こういう作品はなかなか他の美術館じゃお目にかかれないと思う。










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この美術館の中にはもちろん写真のプリントも作品として何枚か展示されている。
いつも思うのだが、こういうアート作品の中で写真というのはなんだかパッとしない存在だ。
日本では人気のロック歌手が海外の音楽祭で大物アーティストに囲まれたとき、その輝きが失せて見えるのと、何だか似ている。
こういう作品たちと張り合える写真とは、いったいどういうものだんだろう?
ジョエル=ピーター・ウィトキンの写真ならMONAできっと十分に張り合えただろう。


彼はこの美術館を「大人のディズニーランド」と呼んでいるらしいが、これは彼の桃源郷だろう。
2度目は子供たちを連れてきた。
アダルトなエリアには近づかないよう気をつけて歩いていたのだが、僕たちが歩く通路に白い帆立貝の貝殻のようなものがたくさん並んでいるのに気づき、よく見てみるとそれは全て石膏で型をとった様々な女性の本物の女性器だった。
「あれっ、ソーマ、シオナ、あっちを見てごらんよ!あそこに何か面白そうなものがあるよ!」と彼らの視線が違う方へ向くように、冷や汗ものでその場を切り抜けた。(どうして美術館でそんな苦労を、、、)
もう一度一人で来て、白い石膏の中からお気に入りを見つけることにしょう。

とにかく、いろいろと言われているがデイヴィッド・ウォルシュ、実に素晴らしい物をタスマニアに作ってくれたと思う。
入場料は無料。
僕が訪れたときはまだ建設中だった美術館の中の美術書専門のライブラリーも完成したらしい。
快適な空間で、快適なソファーに座りながら、心ゆくまであらゆる美術書を眺められるなんて、夢のような話ではないか。

タスマニアを訪れる機会があったら、ぜひMONAに立ち寄ってほしい。
ここは間違いなくタスマニアで一番クールな場所だ。










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by somashiona | 2011-05-19 18:04 | デジタル

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