燃えよドラゴンで撮った写真




昨年、僕が敬愛するトラベルジャーナリストの寺田直子さん経由で商店建築という雑誌の為の撮影依頼を受けた。
商店建築という雑誌は建築やインテリアに関わるプロフェッショナルな人たちが読む雑誌なので、写真のクオリティはメチャ高い。
取材対象は以前僕のブログで紹介したことがあるタスマニアに新しくできたMONAという美術館とその敷地内にある宿泊施設だ。
音楽にクラッシック、ロック、ジャズなど様々な分野があるように、写真にも人物、動物、フード、スタジオ、スポーツ、建築などそれぞれ専門分野というものがある。
スモーク・オン・ザ・ウォーターが完璧に弾けるんだから、アルハンブラの想い出も出来るでしょ、というわけにはいかないのだ。
東京に住んでいるならまだしも、僕のように田舎に住んでいるフォトグラファーは何でも撮らなければ仕事にならない。
一応、ひと通りは出来るということになっているが、実を言えば、建築写真が一番苦手な分野。
今までも不動産関係の仕事で何度か建築系の写真を撮ったことがあるが、その度にこういう写真がいかに苦手なのかを痛いほど思い知らされた。
ライン(線)に強い人は写真を見てすぐに分かる。
僕の親友のピーターの写真など良い例だ。
ポートレイトを撮っていても背景の処理を建物や道や影でできたラインを利用してとても綺麗にまとめる。
僕はバイクのライディングも写真もライン取りが上手く出来ないのだ。
建築写真はラインとの戦い。
しかし、だからといって負け戦をするわけにはいかない。

MONAの撮影の80%以上は撮影前のキュレーターとのメールのやり取り、ミーティング、撮影許可証の書類の作成、スケジューリング、そういうことで費やされた。(もちろん全て英語で)
あれはダメ、これはダメ、ということが多く、撮影中も美術館の担当者が付ききり。(撮影してはいけないものが美術館の中に沢山あるから)
美術館は絶えず入館者たちがレンズの前を横切りまともな写真を撮るチャンスがなかなか無く、宿泊施設は宿泊客がチェックアウトをし、部屋の清掃が済み、次の予約客が来るまでの短い時間で初めて僕が目にする場所をフレームに収めなければならない。
どんな撮影でも毎回最大限の努力をしているつもりだが、今回の撮影はこれまでにないほど撮影前に建築写真とは何かを考えて臨んだ。
「建築写真 イコール 広角レンズ」という図式が今まで頭の中にあったが、今回ひとつ実感として学んだことは、広い空間でも、狭い空間でも、一番魅力的なポイントを標準レンズで切り取れたとき、それは安定した質の高い建築写真になりうるということだった。
フルフレームのカメラなら50mm、僕のカメラのように1.6倍なら35mmくらいのレンズでいかに一番美味しいところを切り取れるか、これが大切なのだということを学んだ。
建築写真をたくさん撮る人からすればたぶん当たり前の事なのだろうけど、僕には今さらながら大発見。
これだけ長く写真をやっていて、まだ学べることがあるなんて、写真ってなんて素晴らしいのだろう。
ほとんどのカットを編集担当者に収めた後、どうしてもMONAの外観を撮って欲しいという最後のリクエストがあった。
その時期、ちょうどいくつかの仕事が重なって進行していて、MONAの外観を締切りまでに撮るチャンスはどう考えてもたった一日、しかも午前中だけだと悟った。
あの巨大な施設の外観をいちばん綺麗に撮れる場所はどこか?
地図とにらめっこしたり、今までに他のフォトグラファーたちが撮った写真もGoogleで調べまくり、だいたいの目星はついたのだが、そこは「入っていいのかなぁ」と自分の胸に手を当てたくなる場所で、しかも柵を超え、崖を下り、とかなり困難そうな場所。
MONA外観撮影決行の早朝、コスチュームはズボンもジェケットも帽子もすべて黒ずくめ。
ブルース・リーが「燃えよドラゴン」で敵の地下麻薬工場に潜入するときのイメージだ。
三脚は忍者のように背中に背負ってある。
柵を越えるときコブラがいないか、一応チェックした。(何の話はわからない人、ごめんなさい)
崖の途中で足がすべり下までずり落ちたが、幸い川には落ちず、カメラも砂がかかっただけで済んだ。
僕が三脚を立ては場所は川を挟んでMONAの真正面の対岸。
辺りはまだ薄暗い。
空がだんだんと青くなり、太陽が顔を出したとき僕は気がついた、イケナイ、かなり逆光気味だ、、、しかも近いはずのMONAがハッキリ見えない、、、あれ、あれ、どこもかしこも霧だらけ、、、。
頭の中では朝日に照らし出され、水の上にオレンジ色に浮かび上がるMONAの姿を何度も想像していたのに、逆光だし、霧だらけで真っ白だし、朝のきれいな光の時間は刻一刻と過ぎるし、、、寒くて身体はぶるぶる震えるし、、、。
恨めしそうな顔でMONAの方向をじっと睨んでいたが、退屈になり、やがて空や川の水面や飛ぶ鳥や山に向かってシャッターを切ったり、オシッコしたり、ポケットに入れておいたチョコレートを食べたり。
霧はかなり晴れてきたが、まだイメージする光がMONAに当たらない。
ドラマチックだったはずの朝の色温度は次第に薄れ、気持ちはどんどん落ち込む。
「ああ、神様、お願いだからその雲の間から少しだけ太陽さんの顔を出してください。ほんのちょっとでいいんです。これ撮れないと、マズイんです。もう二度とこんなお願いしませんし、これからはいい子でいるって約束しますから、、、」撮影の時のお決まりのフレーズのオンパレード。
と、そのとき、あれっ、MONAに光が当たってる!!!
鳥を追いかけていたカメラのレンズを慌ててMONAに戻し、2枚だけ切ったあと、太陽はまた雲に隠れた。
え〜、なんで鳥撮ってる時にそうなるの〜?!(鳥撮ってる時に私にお願いしたのはお前だろう、と神様の声)
その後、いくら待っても太陽は雲から出ず、結局時間切れで家に帰る。
次の仕事に直行し、夜パソコンでMONAの写真を確認すると、あの2枚だけが使える写真だった。














本日の写真はMONAに良い光が当たるのを待っている間に撮った中から2枚。












f0137354_20555765.jpg













f0137354_20561013.jpg
















そして商店建築10月号に掲載されたMONAの写真。
寺田直子さんのテキスト、相変わらず素晴らしかった!
今日のテキストで書いたMONAの外観の写真は見開きの扉で大きく使われました。
あ〜、よかった〜、あちゃ〜っ!












f0137354_20562776.jpg













f0137354_20564624.jpg













f0137354_2057793.jpg













f0137354_20572626.jpg
























目標は1位だ。
本気でポチッとしてねー!
↓ ↓ ↓
人気ブログランキングへ


おっ、近づいている感じ。本日も2位。がんばれ、みんながんばれ、月は流れて東へ西へ!



燃えよドラゴンは本当に名作だ、と思った人はポチッとよろしく!









このブログへのご意見、ご感想がありましたらEメールにてtastas65*yahoo.co.jp
(*マークを@に変えてください)のアドレスにぜひお寄せください。
また、お仕事のご相談、依頼も大歓迎です!






by somashiona | 2012-01-20 21:14 | 仕事

<< previous page << ストームに襲われるホバート・シティ | ポートレイトに賞味期限は無し >> next page >>