海で泳ぐ




今年に入ってから、僕はもう7回も海で泳いでる。
砂浜に寝転がって、ビキニのお姉ちゃんたちを観察し、夏の日差しを満喫するついでに泳ぐわけではない。
仕事の合間など、2時間時間があるな、と思ったらすかさずビーチへ直行し、30分から45分くらい続けざまに泳ぐ。
海から上がると、さっさと家に帰り、熱いシャワーを浴びるのだ。
タスマニアから南極までの距離は約2000キロ。
ここの海は真夏の強い日差しの下でも痛いほど冷たい。
メインランド、とくにゴールドコーストで有名なクイーンズランド州やパースなどのウエスターンオーストラリア出身の人に言わせると、タスマニアの海で泳ぐなど、正気の沙汰でないそうだ。
実際僕も、今までタスマニアの海を楽しんだのはウェットスーツを着ている時だけだった。
去年から僕は腰の問題、膝の問題、体中の痛み等を抱え(年寄りです)まともなエクササイズが出来ずにいる。
体に対するインパクトを考えると、水泳がいいのは分かっているが、プールの水はすぐにアレルギー性鼻炎を引き起こす。
以前、友人と話していて、その友人のそのまた友達のおばあちゃんの話を聞いたことがある。
おばあちゃんはもう80歳近くなのに、ずいぶん昔から毎日、しかも一年中、タスマニアの海で泳ぐことを習慣にしている。
夏でさえあの冷たい海なのに、凍えるような冬でも水着を着て荒れ狂う波に揉まれ泳ぐなんて、、、にわかに信じがたかったが、その話をことあるごとに僕は思い出し、なぜかいつもポジティブな想像力を掻き立てられた。
勢い勇んでビーチに行っても、足の先を水につけたとたん、踵を返して車に戻ろうか、という誘惑にいつも駆られる。
そんな時は、想像の中で登場する、あの水泳おばあちゃんを頭に浮かべる。
そうすると、何故かやる気になる。
冷たい水の中を歩き、太ももまで水につかったら、心を決めて水中に頭から飛び込む。
体中が痺れ、冷たい水と水圧のせいで、肺が握り潰されるような感じがする。
体を温めるため、最初の10分くらいはクロールで勢いよく泳ぐ。
すぐに腕がだるくなるが、そうするとキック中心の泳ぎに切り替える。
僕の行くビーチは風のない日でも比較的波がある所なので、息継ぎのタイミングで波に飲み込まれ、むせ返りながら泳ぐこともある。
身体が温まってきたな、と思ったら一度泳ぎを止める。
大抵は足などまったくつかない、沖のほうまで出てしまっていて、この時、必ず言い知れぬ恐怖を覚える。
足がつったらどうしよう?サメが来たらどうしよう?リップ(引き波)にさらわれたらどうしよう?
僕はあまり強いスイマーではない。
最大の弱点は立ち泳ぎができないことと、顔を水につけない平泳ぎができないこと。
日本の25メール、足が底につくプールで泳ぎを覚えた人間特有の弱点だ。
プールでなら連続で400メートルくらい泳げるのに、それが足のつかない海となると、全く自信がなくなる。
それにもかかわらず、海で長距離を泳ぐことに関する強烈な憧れを、なぜか僕は持ち続けている。
ドーバー海峡を泳いで横断、みたいなニュースを聞くたび、胸が高鳴る。
足のつかない沖まで来てしまったとき、砂浜に向かってすぐに戻ればいいものの、僕は必ず少しだけ度胸試しをしてしまう。
さらに沖に向かって泳いでしまうのだ。
たぶん、ほんの10メートルか20メートルくらいなのだが、このときは本当に怖い。
ここで溺れても、誰も気がつかにだろう。
僕の行くビーチは砂浜に人がちらほらいて、ボディボードをやっている子供たちが何人かいる程度で、ライフセーバーなどもちろんいない。
波でうねる水面は、巨大な生き物の腹の上のように強い生命力を持って動き、泳いでいる僕の背中に波を叩きつける。
怖くて胸が締め付けられるので、息継ぎの回数を多くするのだが、それでも苦しい。
この辺りはときどきイルカやオットセイ、クジラさえも来ることがある。
こんな沖で泳いでいるとき、めだかやミドリガメより大きな生き物に遭遇したら、僕は間違いなくショックで溺れてしまうだろう。
もういい大人なのに、こういう馬鹿げたリスクを犯してしまう自分の行動の意味を僕は説明することができない。
いったいどうして沖に向かって泳いでしまうのか?
今のところ、この海での水泳で失ったものはゴーグルひとつだけだが、沖でなにか起こったら、失ってしまうのは自分自身だということは百も承知なのだが、、、。
ひとしりき泳いで、砂浜に戻り、タオルで体を拭いているとき、船酔いのように自分の身体がまだ揺れている感覚に襲われる。
実際、泳いでいるときの波のせいで船酔い状態なのだろう。
身体は芯から冷え切り、歯はカチカチと音をたてるのだが、心は思いっきり解放された気分だ。
この気分の良さ、充実感はプールでは味わえない。
やはり自然と触れ合うからなのだろう。
このとき、ああ、また泳ぎに来よう、と思う。
こんな環境が身近にあるタスマニア、なんて良いところなのだろう。


















本日の一枚

この何の変哲もない写真、僕は割と気に入っている。
海の色、水面の質感、ボートの男。
一人、ボートで沖にでていくのはどういう気分なのだろう?
ときどきシーカヤックに乗るとき、誰かと一緒だから楽しめるが、たった一人だとしたら、おそらく怖いと思うだろうとふと考える。
この怖さ、沖に向かって泳いでいくときと同じ種類のものだ。
単独ヨットで世界一周をする人がいるが、これについて考えるときの恐怖も沖に向かって泳ぐ恐怖と少し重なる。










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by somashiona | 2012-02-15 19:37 | デジタル

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