浄められた僕



ヴァイオリニストとしてヨーロッパで活躍する女性と3日間ほど過ごす機会があった。
5歳の時にヴァイオリンと出会い、それからは自分の情熱と人生をずっと音楽に捧げている。
若い頃にオーストラリアを飛び出て、ヴァイオリンを手に一人ヨーロッパで20年以上生活している彼女からは揺るぎないものを感じ、とても良いエネルギーをもらった。

もともと質問魔の僕だが、何か専門的な仕事についている人に会ってしまうと、僕の質問マシンガンはもう止まらない。

なぜヴァイオリンなのか、他の楽器には興味ないのか、一番好きな音楽家は誰、ロックも聴くのか、自分の能力をさらに上げるためにどんな努力を日々しているのか、自分の才能を疑ったことがないのか、違う仕事をしたいと思わないか、今まで何台のヴァイオリンを所有したか、目指すヴァイオリニストはいるのか、どうして指揮者によって演奏が変わるのか、良い指揮者は何が違うのか、小澤征爾はなぜ凄いのか、クラッシック音楽はどう楽しめばいいのか、、、etc.

コミュニケーションはボールを相手から自分へ、自分から相手へというキャッチボールであるべきなのに、彼女にとって僕はボールを一方的にどんどん吐き出してくるバッティングセンターのマシーンのように感じただろう。

数週間後、ヨーロッパに帰った彼女から2枚のCDが送られてきた。
彼女が演奏するオーケストラのCDだった。
僕は最近、好んでクラッシックを聴くが、いつもただ漠然と、そのメロディが心地良いかどうか、自分の心に響くかどうか、もっと正直に言えば、バスタブに浸かってくつろいでいるとき、ストレッチング、ドライブをしているときのBGMとして聴いている傾向がある。
思わず細かな部分まで聴き入ってしまうのはグレン・グールドのピアノだけかもしれない。
彼女と話をしていて強く感じたこと、それはクラッシック音楽の聴き方、捉え方、理解の仕方、演奏者としての表現の仕方、そういったものがすべて僕が思う写真の見方、捉え方、理解の仕方、フォトグラファーとしての表現の仕方ととても似通っているということだった。
彼女の音楽の聴き方は、「ウォーリーをさがせ!」のように隅々まで余すことなく聴き、詩を読むかのように楽譜の中の行間を読む。
大切な事はその音楽が持つストーリーを深く理解すること、と彼女は僕に教えてくれた。
ストーリーを理解できる自分でいること、そしてそれを正確に表現できる技量を持っていること。

送られたCDの中に入っていた曲、シェーンベルクの「浄められた夜」についてのストーリーを彼女はこの曲を聴くヒントとして簡単に説明してくれた。

男女が雲ひとつない月夜に静かな森の中を歩いている
女は苦しげにこう言う
わたしは身ごもっています、でもそれはあなたの子供ではありません
わたしは酷い過ちを犯してしまったのです
女はとぼとぼ歩いて行く、空を見上げた彼女の暗い瞳が月の光でいっぱいになる
男はひとり語りはじめる
君のお腹の中の子供を重荷だと思わないで
君はその子を僕の子として産んで欲しい
二人は明るく高い夜空の中を歩いて行く


このストーリーと共に「浄められた夜」を聴く。
どの部分が月の輝を表現しているのか、森の中の雰囲気を感じるか、女が告白するときの声はヴァイオリンか、心の動揺が感じ取れるか、男の寛容で穏やかな声はどの楽器か、彼の愛で包まれた言葉を聞いたときの彼女の喜びはたぶんここかもしれない、、、と。
もう「浄められた夜」はBGMになり得ない。
こういう世界を日々追求している音楽家という人たち、まさに芸術家だと思った。
写真も同じだ、ただ撮っているだけではいけない。
偶然が運んでくれるものも含め、いいストーリーを創り上げなければ。
久しぶりに自分自身が浄められた気がした。










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写真はマウントフィールド・ナショナルパークから
テキストとは無関係です


































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で、どうしてそのヴァイオリニストの写真は出てこないのか?なんでパッとしない湖の写真なのか?という突っ込みは無しでお願いします。笑



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by somashiona | 2012-03-08 10:53 | 人・ストーリー

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