ヒツジザンマイ 羊の毛刈り#1







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早朝から道草を食い過ぎた結果、羊の毛刈りがはじまる7時半には間に合わず、罪悪感を感じながらジュリアンに教えられたシェアリング・シェッド(Shearing Shed)(羊の毛刈りをするための専用の小屋)の大きく白いドアの前に立った。
微かに羊の鳴き声らしきものが中から聞こえてくるが、人の気配は感じられなかった。
たぶんこの小屋の奥のほうで作業をしているのだろう。
重いドアが地面の石か何かに突っ掛っているようで、思うように開かず、ドタバタと大きな音を立てて足で蹴飛ばしながらこじ開けると、僕のすぐ目の前、2メートルくらいのところで数人の男女が仕事の手を止め、何事かという顔で僕を見つめていた。
マズイ、嫌な空気だ、、、。
筋金入りのファーマーたちの中に、背の小さいアジア人がカメラを首に一台、肩に一台ぶら下げて立っている姿はなんとも心もとない絵だ。

「グッドモーニン、皆さん。ジュリアンから聞いていると思いますが、今日は写真を撮らせてもらいたくてここにやって来たんです。前から羊の毛刈りを見るのが夢で、今日はとても興奮しているんですよ。羊の毛刈りはもっともオーストラリアらしい仕事の一つですよね。あなた達が一所懸命働く姿をぜひ写真に撮らせてください。かまいませんか?あっ、僕の名前はマナブ、先日ジュリアンのホテルの撮影をさせてもらったフォトグラファーです」と一気に口を開く。

彼らはお互いの顔をちょっとの間見つめあい、それから僕の顔を見て微かに頷いた。
今まで、仕事でも、プライベートのプロジェクトでも、ファーマーたちを随分撮った。
彼らは街の中で暮らす、僕がよく知っているタイプのオージーとはまったく違う。
そうやってステレオタイプに決めつけてはいけないと思うかもしれないが、今までの経験で僕はそれを学んだ。
彼らはある意味とてもシャイで、心を開くまでかなり時間がかかる。
あまりにも丁寧に接し、色々と話しかけると煙たがられ、だからと言ってジョークのひとつも言わず黙り込んでいると能なしのタコだと思われ相手にされない。
この小屋の中には5人の人たちが働いている。
最初は邪魔にならないよう彼らの仕事を静かに観察し、誰がキーマンで、誰がムードメーカーで、彼らがお互いどういう関係なのか予想しなくてはいけない。
朝の小屋の中は薄暗く、フラッシュを使いたいところだが、彼らの注意を僕に向けたくない。
この日はできるだけフラッシュを使わずに、ISOを上げて静かに撮ることに決めた。
(遅刻した負い目がそうさせたのかもしれないが、、、)

彼らはプロフェッショナルな羊の毛刈りのチームであり、またファーマー(農夫)でもある。
羊の毛を刈るのが専門のシェアラー(Shearer)が二人。
刈った羊の毛であるフリースを折り畳むウール・ローラー(Wool Roller)が一人。
刈った羊の毛のランクを選別するウール・クラッサー(Wool Classer)(羊毛評価鑑定者)が一人。
そして、刈った毛を運んだり、床に落ちた羊毛を綺麗にしたり、その他もろもろこの小屋の中でのさまざまな作業をするシェッド・ハンド(Shed Hand)が二人だ。
このチームのリーダーはウール・クラッサーのデイビッド。
このチームはデイビッドが組織したチームで、農場主からの依頼でタスマニア中のファームをまわり、羊の毛を刈る。
例えば、ジュリアンの農場には4000頭の羊がいるが、これらを年3回に分けて毛刈りをするらしい。
一度の毛刈りは5日間から7日間かけ、ひとつのファームで仕事をする。
朝7時半にはじまり午前9時半に30分休憩、お昼の12時にランチタイムで1時間休憩、そして午後3時にアフタヌーンティーで30分休憩。このように4つのセッションに分けて彼らは働く。
これはデイビッドのチームに限らず、オーストラリア中どのプロフェッショナルなチームも同じだ。
なぜならそれがこの産業で決められたルールだからだ。
雇い主は彼らへの報酬もこの産業が決めた金額を支払はなくてはならない。
基本的に時給だ。








彼らの作業の流れを説明することにする。










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二人のシェアラーがそれぞれに羊の毛を刈る。










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シェッド・ハンドたちがその羊毛を運び、また細かい切れ端を床からかき集める。










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1頭分の羊からとれた羊毛であるフリースをウールテーブルという格子状の専用テーブルの上に一気に広げる。
これがなかなか職人芸で、真似しようとしてもこうはいかない。かなりのスキルが要る。
フリースをウールテーブルの上に乗せるときは、かならず白くきれいな面を下にする。
そうしないと次に乗せるフリースが汚れてしまう。
羊の毛はかなり油分でしっとりしていて、少し触っただけで手が油っぽくなる。
ウール・ローラーの女性はこれが手には最高のハンドクリームだと言っていた。










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1頭の羊から驚くほどのフリースがとれる。










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ゴッドハンドを持つウール・クラッサーのデイビッドの出番だ。
色や形状はもちろん、羊の毛一本が何ミクロンか指先の感覚だけで判断してランク分けし、それぞれのランクの袋に入れる。
これぞまさに職人芸、どうやって分かるの?と聞くと、それぞれミクロン別のサンプルセットみたいなものがあって、資格を取る前は四六時中それを触っていたそうだ。
ゴツゴツした手のなに、指先の感覚は半端じゃない。
「デイビッド、それって女性の体を触るときにも役立つの?」と聞くと「もちろんさ」といってウィンクした。










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ウール・ローラーと共に羊毛の汚れた部分や異物が絡まった部分を取り除き










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フリースを折りたたんでいく。










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折りたたんだフリースを専用のコンプレッサーの中に入れ










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約180kgになったらウール専用の白い袋に梱包する。










つづく(To be continued)

















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by somashiona | 2012-05-28 23:20 | デジタル

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