グレッグとシープドッグ#4







午後から大仕事が待ち受けていた。
羊たちの大移動。






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トラックの荷台の上のピップはもうすでに仕事モード。
羊たちがいる牧草地の方角に向かって、じっと目を凝らしている。






今回はピップの他、もう一匹のシープドッグが加わる。
名前はメグ、シャープな印象を与えるそのシープドッグもやはりピップのようによく働くのだろう。












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トラックが動き出すとメグも羊たちの待つ牧草地の方角をじっと見つめるが、なんだかピップほどの迫力は感じない。
どことなく口元も緩んでいる気が、、、。












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と思って、彼女をじっくりと観察していると、まるでディズニーランドへ向かう車の中の子供たちのように、これから起こる楽しいを考えると胸がわくわくして落ち着いてなんていられない、という笑顔を浮かべている。
メグ、本当に大丈夫なんだろうか、、、。












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牧草地というのは遠目で見るとのっぺり真平らだが、実際にそこを車で走るとかなりでこぼこで、運転するグレッグの横の席に座る僕は何度も頭が天井へ付くくらい跳ね上げられた。
まるでパリ・ダカで疾走するミツビシパジェロの中のナビゲーターといった気分だ。






牧草地に散らばり黙々と草を食べる羊たちの姿が見えた。
車を一瞬停めると、ピップとメグが放たれた弓矢のようにまっすぐ羊たちに向かって走り、いつそんな相談をしたのか分からないが、ピップとメグは突然ふた手に分かれ、羊たちを挟み撃ちにする。
逃げ場を奪われた羊たちはトラックに向かって猛スピードで走ってくる。
羊の大波がクラックを取り巻き、ひとしきり過ぎっていったところで、グレッグはゆっくりとトラックを発信させる。
ピップとメグが先導する羊たちのお尻を、僕は感心して車のフロントガラス越しに眺める。
と、ここであることに気がついた。
僕がトラックに乗っている限り、この後も羊たちのお尻しか見えないということを。












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セクシー美女たちのハート型のお尻なら、それでも構わないのだが、、、。
目的地のシープシェッドまではまだかなり距離があるし、羊たちの足取りもかなり早いが、ここは車から降りて彼らの先回りをしながら撮るしかないだろう。
トラックから飛び降り、羊たちの前へ回ろうと僕が走りだしたとたん、せっかくまとまっていた羊たちが、またバラバラに散ってしまった。
その時のピップとメグの表情を僕は見ていないが、たぶん「まったく素人はこれだから、、、」とため息をついていたかもしれない。
トラックを運転するグレッグに向かって僕は「ごめんなさい」を意味する合掌のゼスチャーをしたが、このゼスチャーの意味を果たしてオーストラリア人のファーマーが理解するのだろうか?












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走る、走る、息を切らせてとにかく走る。
羊たちの話ではない。
走っているのは僕だ。
自分たちの進む方向に僕が立っていると羊たちは歩みを止め、そして右左へと必ず散っていく。
くそっ、忌々しい奴らだ、君たちにはガッツってものがないのか、臆病者めが、、、とぶつぶつ言っても仕方がない。
羊たちの群れが散るたび、苦労するのはピップ、メグ、そしてグレッグなのだ。
彼らに迷惑をかけてはいけない。
首にEos 7D+15-85mm+スピードライト、左肩にEos 40D+70-200mm、右肩に小さなカメラバック+50mm+20mm+スピードライトのバッテリーパック+カメラのバッテリー4本+8GBのCF6枚、4GB2枚、16GB1枚、スピードライトのスペアバッテリー12本、ポケットには財布、iPhone、車の鍵、家の鍵、コンドーム(いや、これは冗談)、、、そんなモノを身にまといながら、とにかく走る、走る、そして羊たちが通ると絵になるだろう場所で待ち構え、そこで数枚撮ってはまた走りに走って羊たちが来るのを待つ。
せめて靴はブーツではなく、ランニングシューズにしておくべきだった。
最近深刻な問題になりつつある両膝がギシギシと痛むが、神経質な僕も写真を撮っているときだけはアドレナリンが出ているのか痛みも寒さも空腹も気にならない。
牧草地を羊たちが移動している分にはピップやメグもほとんど羊の群れを乱さずに綺麗な形を保っていたが、一度牧場の柵を超え、道路に出ると話は大きく変わる。












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舗装されていない道路を羊たちが移動するさまは、まるで氾濫した河川から溢れ出た新たな水流の上にまとまって浮かぶ白い流木たちのようだ。
こんなことさえ起こらなかったら、今日もいつものように暖かい太陽の下でのんびりとできたろうに。
川の水に押し流される流木くんたちが水路を外れそうになると、ピップとメグが飛んでくる。












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狭い道を歩き、












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坂を登り、












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扉を開けて、












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ブロックリーエステイトの庭にもお邪魔し












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坂を下っていく












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僕にはとても可愛らしいピップとメグだが、羊たちにとっては余程の脅威なのだろう。
ピップに睨まれた羊たちは思わず数メートル後ずさりし、蛇に睨まれた蛙のように身動きできなくなる。
アルプスの少女ハイジのセントバーナードもシープドッグだしフランダースの犬もシープドッグらしいが、ピップやメグは彼らの優しいイメージとちょっと違う。
純粋なワーキングドックなのだ。












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シープシェッドが近づき、地形が少し複雑になったり、越える柵が多くなってくるとさすがにグレッグもせっせと働き出す。
ピップやメグたちへの指示はよく響く口笛。












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口笛をぴ、ぴぃ~っと鳴らすとピップやメグは突然方向転換をしたり、群れから遠くはなれてしまった一頭を見つけ、すかさず次の行動へ移す。
部下をたくさん持つ管理職のお父さんたちがこれを見たら、こんなふうに口笛一つで部下たちが的確な仕事をしてくれたらどんなにいいだろうと願うだろう。
僕は口笛が吹けないが、、、。












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ようやくシープシェッドにたどり着き、後は柵の中に追い詰めるだけ。
最初は大丈夫なんだろうか、と思っていたメグも睨みをきかせて羊たちを追い詰める。












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すごいなぁ、メグ、と思ったら、、、どや顔された。












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仕事を終え、充実した様子のピップとメグ。












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「すごいねぇ、まったく」と心から感心した僕が彼に言うが、表情ひとつ変えないグレッグ。
「どうしたら犬たちがこんなにきちんと仕事をするようになるの?」とグレッグに聞くと、「俺が教え込めば、そうなる」とまたしてもまったく表情を変えず答えてくれた。
そして帰り際、「今日写真に撮った犬たちの写真だが、俺にも少しわけてくれんかな?」とまた表情を変えずに僕に言った。












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つづく(To be continued)












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by somashiona | 2012-06-08 21:03 | デジタル

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