赤いバス







冬の朝、あたりはまだ霧に包まれている。
ほどんど車の走らない、町外れの道路沿いに、レンガ作りの大きな廃屋があった。
窓ガラスは見事にみな割られ、壁の一部にはよく見かけるがどれも皆同じに見えるスプレーペイントが吹きつけられている。
悪ガキどもは人の目から隠れる場所なら何処へでも出没し、片足を上げマーキングする犬のように落書きをする。
見捨てられた廃屋は誰かが再び自分に関心を寄せてくれたことを嬉しく思っただろうか?
それとも、放っておいてくれ、このまま静かに朽ちさせてくれ、と思っただろうか?
窓ガラスが破られ、落書きをされているものの、レンガ作りの壁や屋根はまだしっかりとし、建物全体としては威風堂々たるものだ。
まるで苦しい時代をプライドを持って生き抜いた老人のように。
なぜこの建物にはこんなにも威厳があるのだろう?
まったく手入れされず、伸びっぱなしの雑草をかき分けて僕は建物の裏手に回った。
朝の尖った空気が僕の頬やカメラを持つ手を冷やし、朝露でブーツやチノパンツの裾が濡れる。
建物の裏手には真っ赤なバスが一台止まっていた。
レンガの建物にピッタリと寄り添うように。
僕はこの建物の心臓を見てしまったような気がした。
バスは窓のどこにも被害がなく、ボディのどこにも落書きはされていない。
地面や建物の壁から赤や青の無数の血管がバスにつながり、その血流によって赤く輝いているようだ。
何もかもが霧に濡れ、くすんだ色が支配するその朝に真っ赤なバスは神々しくもあった。
数枚シャッターを切って、静かにその場を離れた。












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by somashiona | 2012-07-18 18:26 | デジタル

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