赤いキャミソール



時々、思い出す写真がある。
自分で撮った写真だ。
2月の頭、誰も人が歩かないような道路沿いに落ちていた赤いキャミソール。
朝の新鮮な光を浴びた場違いのキャミソール。
仕事を終えたホステスさんに早朝出くわした気分。
胸元についた白いファーと朝の日を浴びてキラキラ光るスパンコール。
どう考えても、クリスマス使用のキャミソールだ。


クリスマスの夜、若い娘がこのキャミソールを着て、誰も人など通らない川沿いの道路を歩いていた。
一人で?
ありえない、こんな場所、僕だって夜に一人で歩きたくない。
たぶん、男と一緒。
パーティの後で。
片手にはシャンペンのボトルを持っていたかもしれない。
編みあみの黒いストッキングに赤いヒールだったかもしれない。
唇もやはり赤いルージュで頭にはクリスマスパーティーで被るあの三角帽がまだ乗っかっていたかもしれない。
隣を歩く男は?
この近辺に住む同年代の若い男なら、おしゃれな格好などしていないだろう。
ジーンズにTシャツ、そしてせいぜい勝負革ジャン。いや、真夏に革ジャンはない。
年上の、たぶん40代前後の男が一緒だった気がする。
そこそこお金を持っていて、身なりもいい。
白いシャツの襟元についてしまった若い娘の赤いルージュを気にしていたかもしれない。
オーストラリアのクリスマスは真夏だ。
若い娘はキャミソールの下に黒いブラをしていたかもしれないし、下着は身につけていなかったかもしれない。
二人がここにたどり着いたときには、娘はもうかなり酔っていて、足元をふらふらさせながらジングルベルを口ずさみ、時折年上の男を上目遣いで見て、声を立てて笑ったかもしれない。
男の脳裏にはまだ幼い二人の子供たちと妻の顔がシャンペンの泡のように浮かんでは消える。
子供たちはサンタクロースを夢見てすやすやと眠っているが、妻はクリスマスディナーの片付けをせず、まだ散らかったままのダイニングテーブルに座っている。
夫に渡すはずのクリスマスプレゼントをじっと見つめながら。
男は、今夜、全てを清算しようと心に決めていた。
若い娘が男の決意を容易に受け入れることなどないことは男にも分かっていた。
この場所へ来たからには、もう後には戻れない。
ジェケットのポケットに入っている革紐を男は固く握りしめていた。


赤いキャミソールをファインダー越しに見つめながら、僕の頭の中では勝手にストーリーが展開していく。
いかにもありがちなやつ。
僕にとって写真は目に見える事柄の後ろにある物語を考えることでもある。
それはときに犯罪心理学のプロファイラーの真似ごとのようであったり、時には勝手な妄想だったりする。
どちらにしても、そういう気持ちを僕に起こさせる被写体に出会ったときは、かなり興奮する。












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by somashiona | 2012-07-20 19:51 | デジタル

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