お湯の蛇口と水の蛇口



バスルームの洗面台の前でふと考える、熱いお湯が出る蛇口をひねるか、それとも冷たい水が出る蛇口を先にひねるべきか?
普段はそんなことを考えず、無意識に行う行為なのだが、この日はそこで数秒止まってしまった。
通勤で普段は使わないバスにその日たまたま乗り、そのバスがテロリストの仕掛けた爆弾で爆発し両足を失った。
大晦日のパーティに参加し、カウントダウンの時にたまたま隣にいた男性とハグし、その後人生をともに歩むことになった。
そんな類の話をよく聞く。
本人が無意識に行なった選択がその後の人生を変えるのだ。
宿命は生まれた時から決められたもので自分では変えられないが、運命は自分の力で運ぶことができる、君は宿命と運命のどちらを信じる、と若い時に誰かに言われた。
僕は迷わず「運命」だと答えた。
でも、この年になると宿命というのも確かにあるのではないかと思う時がある。
そして、そう感じるたびに、「いかん、それを信じちゃダメだ。自分で何とかするんだ!」と自分を叱る。


人生、選ばなくてはいけないことがあまりにも多すぎる気がするが、実際日々の小さな選択はどっちに転んでもさほどその後の生き方に影響を及ぼさないだろう。
でも、ここ一番、この選択によってその後の人生が大きく変わるという場面に遭遇することがある。
理想は、これから心を決めようと思っている選択がそういう類の大切な決断なのだと分かることだ。

人生を共にするのだと心に決めていた恋人と別れたこと。
サラリーマンをやめたこと。
写真をはじめたこと。
オーストラリアの女性と結婚したこと。
海外で生きるようになったこと。

すべて、どれが欠けても今のこの僕の状況はないのだが、それを決めたとき、そんな事になるとはこれっぽっちも思っていなかった。
僕にとってはどれもお湯を出すのか、水を出すのかくらいの選択だった。
たぶん、先見の明がないのだろう。

僕たちは(というか僕は)偉大な人物の話を自分の都合のいいように解釈しがちだ。
僕をいつも勇気づけつのはスティーブ・ジョブズが2005年にアメリカのスタンフォード大学の卒業式で行ったあの有名なスピーチだ。
特に、そのなかで彼が話した「点と点をつなげること」がお気に入り。
彼はこう言う。

将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。運命、カルマ…、何にせよ我々は何かを信じないとやっていけないのです。私はこのやり方で後悔したことはありません。むしろ、今になって大きな差をもたらしてくれたと思います。


僕の人生は蛇行運転。
石橋を叩くように着実に人生を歩み、人としても、社会的にも、経済的にも立派な人間に成長し続ける友人たちに会うたび、自分の歩いてきた道が正しかったのかと、突然言いようない不安にかられる。
そんな時、僕の点と点がつながる日を思い描く。
どの点も必死に取り組んできたし、そこから学ぶことはたくさんあった。

さあ、今日もお湯の蛇口をひねるか、水のほうなのか、小さな選択が待っている。
まあ、やけどをしても、冷たさで手がかじかんでも、生きている限りいずれは元に戻るのだから自分の心と感に忠実に従おう。












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by somashiona | 2012-09-18 11:09 | デジタル

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