挑戦する人



昨年末、タスマニアで開かれるアドベンチャーレース、「マーク・ウェーバー・ピュア・タスマニア・チャレンジ」を取材した。

「マーク・ウェーバー・ピュア・タスマニア・チャレンジ」は国際舞台で活躍するオーストラリアのF1レーサー、マーク・ウェーバーがレースのオフシーズン中に自身の肉体と精神の限界にチャレンジしたいという欲求を叶えつつ、病と闘うオーストラリアの子供たちのための慈善基金募集をしようと2003年よりスタートしたアドベンチャーレースだ。彼の思いに多くの一般市民、セレブリティー、企業そしてタスマニア政府が賛同し、今日タスマニアを代表するイベントになりつつある。

この過酷なレースは4人一組のチーム(12チームまで参加可)が、ラン、マウンテンバイク、ラフティング、ローリング、カヤック、そしてクロスカントリートレッキングによって世界遺産登録地域を含むタスマニアの大自然の中を約600km、6日間にわたり繰り広げる。

当初、僕の取材対象はマーク・ウェバーを中心とした世界で活躍するアスリートたちだったが、知らず知らずのうちに(いやもちろん故意に)女性だけの4人で結成されたチーム・キャドベリーに焦点を合わせていた。

このチームには本当に驚かされた。
大学の研究員、プロのモデル、OLなど彼女たちはプロのアスリートではなく、完全な一般人だ。
シャーベット上の雨が叩き付ける約60kmの山道をオリンピックのサイクリストが足を吊らせ、目に涙を浮かべながらペダルを漕ぐ横を、彼女たちは歌をうたいながら追い抜き、荒れ狂うホワイトウォーターに翻弄される他のチームを横目に12チーム中1位でラフティングを終え、暗闇の凍える海上で唯一聞こえた音はシーカヤックの上でオールがしぶきを上げる音と、彼女たちの笑い声だけだった。
プロも度肝を抜かされた彼女たちの強さの秘訣は底抜けの明るさと、自分たちを信じる力だった。
困難に立ち向かい挑戦する名も無き彼女たちの姿はセレブリティーたちを抑え、2006年度のこのレースの話題をかっさらってしまった。




僕がいつも楽しみにしているブログがある。
ねねさんのテキストとれもんさんの写真で綴る「蒼いみかん」だ。
バラの花、レースの刺繍、香水、料理、食器、アンティークなどの素材と美しく幻想的なれもんさんの写真に彩られるねねさんのブログは、僕のような粗野な男にはとても場違いに思えるのだが、美をいうものを追求する言葉の裏側からひしひしと伝わる、とてつもなく骨太のメッセージと、人生、社会、人間に対する彼女の静かで情熱的な挑戦は僕の心を引きつけてやまないのだ。
彼女のブログを見るたびに挑戦することの大切さを、そして捉えなければならない物事の本質ということを、僕は考えてしまう。
ねねさんは、静かに、知的に、しなやかに、そしてゆるぎなく挑戦する人の一人だ。

もう一人。
以前も僕のブログで紹介させてもらったが、昨日NATUREAさんのブログを見て僕は嬉しい驚きを感じた。
今までに彼が紹介してきた写真は、とても完成度の高い日本の美だ。
彼の写真を見るたびに僕は日本の美というものを再認識し、彼に宿る日本男児の魂に写真を通して触れていた。
そしてなによりも、彼の写真からはいつも挑戦を感じるのだ。
もちろん、僕や自然に対する挑戦ではない。
彼の写真は、武士のように自分自身の感情の極みに挑戦しているように思えてならないのだ。
今回彼がアップした女体は今までの彼のイメージとまったく違うものだ。
しかし、同時に今まで彼が追い求めてきたのとまったく同質のものがそこにあり、その変らぬ態度に、僕はいたく感動してしまった。

そして、忘れてならないのは「写真家・相原正明のつれづれフォトブログ」相原さん。
僕は自分の写真に懸ける情熱には1%の嘘も無いと思っているが、相原さんを前にすると自信が揺らぐ。
挑戦というよりも、むしろ戦いという言葉のほうが相原さんにはふさわしいだろう。
相原さんの写真には、女体こそ撮らないが(撮ってるかも?)美しいと彼が感じるもの、後世に残しておかなければいけないものへのメッセージが痛烈に、怨念のように漂っているし、本物を見分ける嗅覚のある人は決してそれを見逃さないだろう。
これほどまで挑戦し続けないと世界では通用しないのかという焦りと、やはりこんなふうに挑戦し続ければいつかは世界で認められるかもしれないという希望が、相原さんと会うたび、僕の心の中で交差する。

僕は挑戦する人が好きであり、挑戦する人から感動をもらい、挑戦する人から多くを学ぶ。

以下はねねさんのテキストにあった言葉だ。
僕の心の引き出しの中に、大切に保管しておこう。

「審美眼とは本物と偽物の区別が付き、自分の意思でドアを開く事の出来る人を指すと私は思っている」

「既に開かれたドアの中へ入りたがる群れを無視し、
自己の琴線に触れる物だけを上手く選択する事の出来るアンテナを持ってる人なのだ」

「それは万物、芸術、人間が表現する全ての微かな偽りを察知出来る能力だ。写真もその延長線上に在るだろう」





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by somashiona | 2007-05-07 00:58 | デジタル

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