羊をめぐる冒険



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もうすでに、何度かそこに足を運んでいるが、早朝にお気に入りの丘を訪ねたのは、その日が初めてだった。
子供と会わない日曜の朝。
やりたいことは山ほどあるが、やはり写真を撮りたい。
吹きさらしの冷たい風の中、身を屈めてしばし歩くと、黄金の光が天から降り注いだ。
牧草地の柵に張り巡らされたワイヤーが朝露の滴を受けたクモの巣のようにキラキラと光り輝き、目の前に続く轍はこの丘の向こうへと僕を誘った。




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朝のもっとも美しい光りの幕に包まれながらも、何を撮るべきか定まらず、いつものように僕はおろおろしながらファインダーを覗いていた。
するとその中に、二つの未確認物体が横切った。
ライオンか?!
そんなわけない。
ここはタスマニアだ。
羊か牛か、そうじゃなければワラビーかポッサムにきまってる。




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僕は未確認物体にフォーカスを合わせた。
彼らのレーダーも僕を察知したらしい。
耳がピンと張っている。
子羊だ。
食べるときなら、ラムと呼ぶ。




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僕を察知したのはこの子羊だけじゃないらしい。
お母さんも(理由はないがお父さんじゃないと思うし、ましては伯父さんじゃない)心配そうな顔で僕を見ている。




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お互いに安全だと確信できる充分な距離を置いて、僕たちはしばし見つめあった。
愛は生まれなかったが、強い好奇心が僕の心に沸き上がった。
風景写真を撮ることなど、もうすっかり忘れていた。




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そんな僕の気持ちに気づいたのか、丘の上に昇ったばかりの太陽に向かって、彼らは歩きはじめた。
あまりにも強い逆光のせいで、彼らを見失いそうになりながらも、僕は彼らの後を追った。




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かなり用心深く彼らの後を付けた。
気分は羊ストーカーだ。
ブレックファストの最中も僕の存在にまったく気づいていない。
ちなみに、この日の僕の朝食はパンケーキではなかった。




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「ねえ、ねえ、マミー、あそこで知らない人が僕たちのことを見てるよ!」




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ムシャ、ムシャ、「あっ、あれね、人間よ。ろくなもんじゃないから無視してなさい。私たちを柵から柵へと追い立てて、大きなトラックに詰め込む人間には注意が必要だけど、あの人、犬と一緒じゃないし、フランネルのチェックのシャツも着ていないでしょ?」




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「マ、マミー!あの人さっきより、ずっと近づいてるよ!僕なんだか怖いよ!」




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ムシャ、ムシャ、「あらっ、ホントね、、、それにあの人、小さな黒い箱から私たちのことを覗いているわね、、、あれ、何かしら、、、」




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「ちょっとアンタ!いい加減にしなさいよ!ひさびさに親子水入らずで日曜日の朝食を楽しんでるのが、アンタには分かんないの!いつもいつも群れの中で生活するのだって、楽じゃないのよ!いろいろとね、面倒なことがあるのよ!」




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「さあ、お前たち、ついてきなさい!どこか違うところに行きましょ!」




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いくつかの丘を越え、、、
ときに走り、そして時々立ち止まっては草をむしゃむしゃと食べ、、、




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この親子はかなりの距離を移動した。
羊ストーカーの僕は彼らの行き着く先が知りたくて、三脚を担ぎ、ひたすら彼らを追いかけた。




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向かった先には、羊の群れが彼らを待ち受けていた。




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群れの者たちの結束は僕の予想より遥か堅く、全員が怖い顔をして僕を睨みつけた。

皆さん、おじゃまして申し訳ありませんでした。
一礼して、僕は彼らに背を向けた。
羊の親子には悪いが、楽しい日曜の朝だった。









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by somashiona | 2007-07-29 09:42 | デジタル

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