写真モードに変身!




僕の場合、写真を撮るときは写真撮るモードに変身する必要がある。

会計帳簿をつけながら、どうして今月は残高がこれだけなの?と首をひねっているとき、キャンプの前日にソファーに寝転がって明日の天気予報を見ているとき、子供たちに包丁の使い方を教えているとき、どれも真剣で集中しているのだが、写真モードのときの僕とはまったく違う。

本郷タケシや一文字隼人がショッカーと戦う前は、周りに誰もいなくても「変身っ!」と声に出して言い、それから腕を回して飛び上がるように、僕も「違う人」になる必要があるのだ。
(何の話しか分からない人、一番古い「仮面ライダー」を観てください)

僕の知り合いの素晴らしい写心をとる写真家はいつも頭にオレンジのヘッドランプを付けて撮影している。きっとあのランプが彼にとって写真モードに変身する為の道具なのだろうし、有名な風景写真家の方が撮影の時にはいつもバンダナをしているのも、もしかするとそれがその人にとっての写真モードの証なのかもしれない。
奈良で鹿の着ぐるみを着て撮影しているあの人は、もう完全に変身してしまっている。







午前3時30分、ベッドから抜け出し、熱いシャワーを浴びる。
写真機材と入れたてのエスプレッソを車に詰込み、闇の中へと走らせる。
車内では音楽をかけず、ラジオのスウィッチもオフだ。
昨夜からの雨がまだ続いている。
フロントガラスに当たる雨の音がBGMだ。
おおざっぱな方向だけを決め、あとはヘッドライトが照らし出す路面をひたすら凝視する。

しばらくすると、空にだんだんと青味が差してくる。
周りの景色がうっすらと見えてくると、途端に写真モード用のアンテナが動き出す。この日の朝日がどんなものかはまだ分からないが、朝のほんの短いゴージャスな瞬間に心がときめく何かをファインダーの中から覗いていたい。

車をゆっくりと走らせながら辺りの様子をうかがっているとき、たくさんの言葉やストーリーが頭の中を駆け巡る。その駆け巡ったものが感動的であったとき、僕ははじめて写真モードに変身できる。


変身しても見た目は同じなのだが、頭の中と、僕の目はまったく前と違う。
一度変身してしまうと、見るもの全てが感動的に見えるのだ。
とくに見慣れた、何の変哲もない日常的なものが突然光って見える。
これを僕は「感動フィルター」と呼ぶのだが、このフィルターを通してものを見ると足下の石ころ、雑草、頭上の電線、道路標識、もう全てが僕の撮る写真の中になくてはならない大切なキャストのように思える。
肉体的精神的にも顕著な変化が現れる。
体温が上がり、脈拍も上がる。
寒がりな僕だが、この時は寒さなど感じず、恐がりな僕だが、この時はどんなものにも向かっていける。
同時に精神的にはかなりエモーショナルになり、涙腺はゆるゆるだ。
シャッターを切る瞬間がある種のオーガズムだと思ってもらってもいいだろう。(あっ、失礼!)
たぶんある種のドラッグを体内で自己生産している状態なのかも知れない。
子供の頃、具合が悪くなって母親と病院に行くと、きまって「うぅ〜ん、自家中毒ですねぇ、、、」とお医者さんに言われたものだが、これもある意味、大人の自家中毒かもしれない。






f0137354_16371691.jpg







雨上がりの、もう何十回も車を走らせ一度も止まったことのない道路の路肩に車を寄せ、路面に反射する朝日に目を潤ませる。
眩しいからじゃない。
まるで生まれてはじめて朝日を見た人のように、「美しい、、、」と呟きながらシャッターを切る。






f0137354_1638226.jpg







そうかと思えば道端のフェンスからしたたる雨の滴を見て、なぜだか「もののあはれ」を感じてしまう。
「Oh, what a wonderful world、、、」頭の中はルイ・アームストロングだ。
「素晴らしい、、、」と呟きながらシャッターを切る。






f0137354_1639678.jpg







サッカーグラントにひっそりと立つサッカーゴールなどを見た時には、もう人ごととは思えない。「君はいつだって、そんなふうに一人で立ち続けているんだね、、、」と自分にまつわるあらゆる状況を無理矢理サッカーゴールにオーバーラップさせ「いいんだよ、それで、、、」と呟きながらシャッターを切る。


写真モードと感動フィルターさえあれば、被写体を選ばない。
ただ大切なことは一人で行動すること。
このトリップ状態を身近な人が見てしまうと、もう二度と会ってくれない可能性がある。

「こいつ、バカなこと言ってやがる」と思っているあなた。
あなたにも写真モードが必ずあるはず。
いい写真が撮れたときの精神状態をよぉ〜く思い出してみてほしい。
その状態を撮影のたびに、意図的に作れるようになれば、それはもう、写真モード!
さあ、声に出して言ってみよう「へぇ〜んしん、とぉ〜っ!」


(どてっ!)








ranking banner私も変身を体験したい、と思った人は、さあ、恥ずかしがらないで!声に出して言ってみよう!「へぇ〜んしん、ポチッ!」







このブログへのご意見、ご感想がありましたらEメールにてtastas65*yahoo.co.jp
(*マークを@に変えてください)のアドレスにぜひお寄せください。
また、お仕事のご相談、依頼も大歓迎です!
ranking banner

by somashiona | 2007-12-04 16:55

<< previous page << カナとイアン、そしてサム | フォーテスキューベイ#最終回 ... >> next page >>