策士策に溺れる




肩に受話器を挟み友達と会話しながら視線はテレビのソープオペラに注ぎ、手元では今晩の夕食で食べるラザニアのパスタ生地を重ねつつ、アイスクリームをカーペットに落とす子供をしかる。

女性は一度にたくさんのことをするのが得意で、男性は苦手だと言われている。
御多分にもれず、僕も大の苦手派だ。

しかし写真の仕事は予想以上にこういう能力が要求される。
そのせいもあるからなのか、僕は撮影の度に呆れるほど緊張する。
少しでもリラックスして撮影に臨みたいが故、事前に出来うる限りの準備をする。
備えあれば憂いなしだ。


雑誌や新聞の仕事はスピードが命だ。
ライト、レフ版、ハレ切り、スレーブ、etc、、、時間をかけてきちんと撮れば100%に近いものが出来ると分かっていてもクライアント、被写体、時間、そして予算がそれを許さない場合が多い。
なので最小限で最大限の効果が出る努力をする。
デザイナーもメイクも、そしてアシスタントすらもつけることが出来ない場合は一人ですべてをこなす。
お笑い芸人の役柄と、町医者のように、大丈夫私に任せておけば的態度をとる頼れる人の役も演じなければいけない。

被写体との関係を築き、彼らをリラックスさせるためもぺちゃくちゃとおしゃべりをする。
右の脳で笑いをとるためのネタを考えながら左の脳では昨夜考えておいたライティングのポジションを思い出し、光りの比率を設定して、メーターで露出を計る。
カメラのISO、ファイル、ホワイトバランス、コンパクトフラッシュ等全てがきちんと設定されているかチェックしつつ、被写体の話しに相づちを打ち、なおかつ髪型の乱れは?洋服のボタンのかけ間違いはないか?鼻くそ、目やには付いていないか?などをなにげに観察する。

5ページの予定だから扉は縦位置でタイトルが入るスペースを空けて、横位置の写真で違うパターンのものが最低でも6点は用意して、アップが4点、引きが4点、人物の顔が入らないイメージ的な写真が2点、そして最後は今回のストーリーを象徴する縦位置の写真が、、、あれっ、せっかくライトをセットしたのに雲が出てきたぞ、、、あらら、さっきよりすでに3stopも暗くなっている、、、。

自分で言うのもなんだが、僕のような鈍臭くて不器用な人間がよく今まで大きな失敗もなくやってこれたものだと感心してしまう。



しかし、この事前の策が現場で出来うる最高の仕事を阻害する要因になることもあるのだ。

風で飛ばされそうになるレフ版をブームに取り付けている時、目の前にある真っ白なビルディングが巨大なレフ版になり最高の光りをこちらに注いでくれていることに気がつかない。

アンバー系の色味を出すためにストロボにフィルターをかけている時、最高の西日が僕の肩越しに射していることに気がつかない。

撮影の現場がビルのネオンだらけで汚いとガッカリしているとき、レンズのピントを意図的にぼかしてもう一度ファインダーからそのネオンを見てみるとモネの絵のような色とりどりの綺麗な背景になることに気がつかない。

こういった例を挙げるときりがないのだが、要するに策に溺れてしまうのだ。

自然体で現場に臨み、状況をよく観察し、事前の策に固執せず、臨機応変に対応する。
まだ自分では出来ていないが、これが僕の理想とする撮影心得だ。

余談だが、上手く撮れた写真を振り返る時、考えず、感じて撮ったものが多い。
僕は普段から多くの人の色々なタイプの写真を穴が空く程よく見ているほうだと思う。
いい写真に巡り会うと、なぜその写真がいいのか、かなり真剣に考える。
そういう時間の積み重ねが、頭の中のデータベースに蓄積されて、本番で自分のフィルターを通して応用編として使われることになる。
しかしそれは、無意識にだ。
とっている最中に頭の中のデータファイルを検索していると、目の前のイメージはさっさとなくなってしまう。
水泳の選手はフォームにとことんこだわるだろうし、F1ドライバーも全てのコーナーのイメージトレーニングをイヤというほどするだろうが、実際のレースでそれを考えている余裕はないはずだ。

『燃えよドラゴン』で若い修行僧に向かいブルース・リーが言っている。
「Feel it!」
現場では五感を研ぎ澄まし、感じたい。
そのためにはやはり、レンズが自分の目のように、カメラが自分の手足のように考える前に動いていないといけないのだと思う。

みなさん、毎日カメラに触れていますか?
いつも持ち歩いていますよって?
甘い、甘い、今日からカメラを抱いてベッドに入りましょう。
寝る前にベッドの中ですることのある人は、カメラ君のレンズにキャップをして、ファインダーを黒い布で覆いましょうね。












写真はテキストとまったく関係ないのだが、
タスマニア、グレノーキーで行なわれたオーストラリア・ナショナル・マウンテンバイク・シリーズより。

しばらくマウンテンバイクに乗っていない。
乗りたくて、乗りたくて仕方ないのだけど、今は乗れない。(涙)
なので、写真で自分をなぐさめることにした。










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by somashiona | 2007-12-21 11:53 | デジタル

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