ああ、川の流れのように #1



思春期の頃、父や母が毎晩家の中で繰り広げるカラオケの練習が苦痛でしかたなかった。家の照明を落とし、歌う場所にスポットライトを当て、カラオケマシーンにマイクを通し大音量で歌うのだからカラオケの練習というよりむしろカラオケショー。
それが毎晩だったので、もう本当に堪えた。
けっして派手なことが嫌いな思春期の少年だった訳ではない。
思春期の僕にとって、彼らの選曲がなによりも頭痛の種だったのだ。
100%、バリバリの演歌。
もちろん、僕が大音量でディープパープルやレインボーを聞いているときは、父親は僕に、お願いだからその下品な音楽を止めてくれ、と懇願した。
あの頃、僕は本気で思ったものだ。
大人になっても演歌を聴く人間だけにはならないぞ、と。
演歌を聴く人間はクールじゃない大人。
それがあたかも人のレベルを決める基準の一つであるように考えていた。



そんな僕が最近日本の古い音楽をYouTubeで聞き始めている。
これには時々演歌も含む。
これをはじめたのは僕の大好きなブロガーであるシミズさんの影響なのだ。
シミズさんのブログでは和洋を問わず、一体どこで探してくるのか僕のツボにはまる懐かしい音楽を聴かせてくれる。
以前彼は 「知床旅情」の元唄である「オホーツクの舟唄」をYouTubeで観るよう勧めてくれた。
まだ若い倍賞千恵子が熱唱していた。実にいい。
そのとき僕は同時に加藤登紀子が歌う「知床旅情」を聴き、加藤登紀子と小椋圭がデュエットする「愛燦々」も聴いてしまうと、調子に乗って、今度は美空ひばりヴァージョンの「愛燦々」も聴きたくなった。
彼らの歌声に僕は少し震えてしまった。
海外に住んでいて、日本の心みたいな歌に触れると心がすぐに溶けてしまうという弱点があるのは自他ともに認めるのだが、それでも最近の電子音ピコピコの音楽に慣れてしまっている耳に、彼らの腹から出てくる音がとても魅力的に聞こえたのだ。
特に美空ひばりには驚いた。
彼女は凄い。(今頃驚くなって?)
僕の母親は美空ひばりの歌が得意だったが、それがトラウマになっていたのか彼女の歌を本気で聴いたことがなかった。
彼女の初期の頃の歌も亡くなる少し前の歌も、どれも手抜きなく、正真正銘の本物だ。
ふと我に帰ると、シミズさんのせいで(おかげで)僕は演歌を聴く大人になってしまっていた。
少年の頃の僕の基準ではもうダメおやじ。
相原さんやニューヨークのマキちゃんに勧められた演歌のジェロ君という追い風がすこしは言い訳になるかもしれないが、それでも僕は演歌を楽しむ自分に少し驚いている。



友人たちとブッシュウォーキングに行った時、美しい川の水面にしばし心奪われてしまった。
友人たちをほっぽり出し、しばし撮影に夢中になっていた僕の頭の中は、彼女のあの名曲が繰り返し流れていた。






f0137354_11144342.jpg







f0137354_1115973.jpg







f0137354_11153325.jpg







f0137354_11155236.jpg







Snug, Tasmania








ranking bannerマナブさん、それはね、年をとったっていうことよ、と思っている人はポチッとよろしく。







このブログへのご意見、ご感想がありましたらEメールにてtastas65*yahoo.co.jp
(*マークを@に変えてください)のアドレスにぜひお寄せください。
また、お仕事のご相談、依頼も大歓迎です!
ranking banner

by somashiona | 2008-05-08 10:40 | デジタル

<< previous page << ああ、川の流れのように #2 | 愛される写真オタクを目指す >> next page >>