愛しあう木たち



タスマニアの森に入り写真を撮っているとあっという間に時間が過ぎる。
ファインダーの中に表示される露出が極端にアンダーになっていると気づいたとき、森はすでに夜の顔へと化粧直しをはじめている。
つい先ほどまで木々の間から差し込むコントラストの高い光に悩まされていたにもかかわらず。


日が沈むと、森は突然冷気に包まれる。
カメラを持つ手がかじかみ、身体が震えだした頃、頭の中はようやく現実を取り戻す。
いったい僕はどの辺りまで来たのだろうか?
この場を引き返し、森を抜け、自分の車に戻るまでどれくらい時間がかかるのだろうか?


写欲から解放されるのもこの瞬間だ。
そして薄暗くなった森の中で木々たちが自分を見つめていると気がつくのも写欲から解放された後。
おかしなもので、写欲から解放されたとたん見えてくるものがある。
撮影のときはテクニカル的なことを考えないよう心がけるが、それでも心と重なりきれない煩悩が見るべきものを見えなくしてしまっているらしい。
自分が森たちの世界に勝手に上がり込み、礼儀知らずに辺り構わずレンズを向けていたことに気がつき、少し後ろめたさすら感じる。


薄暗くなった森を気持ちを新たに、もう一度見渡してみる。
あんなに騒々しかった虫の音も鳥の鳴き声ももはや聞こえない。
微かな風に葉や枝がうごめき、囁きあう声が聞こえるだけだ。
森の木々は僕に言う、「さあ、子供たちはもう静かにする時間ですよ」。
永い時を生きてきた彼らにすれば僕など子供同然だ。
もう大人の時間、子供たちはさっさとベッドにもぐり込まないといけない。
湿った地面を踏みしめる足音が、いつの間にか妖艶なタンゴのリズムに変わっていた。
僕の目の前では、愛し合う木たちが情熱のダンスを踊る。












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(注)この写真はイメージです。
  「まだ日は沈んでないじゃん!」という突っ込みはなしよ。






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by somashiona | 2008-05-21 13:24 | デジタル

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