6月の花嫁#2



ロスアンジェルスで写真を学んでいたときの最初の仕事はブライダルフォトのアシスタントだった。
60歳すぎの禿げたイラン人ブライダルフォトグラファーのお手伝いだ。



その頃の僕はまだお金をもらって写真を撮るということのプレッシャーなどまったく理解していなかったので、イラン人フォトグラファーの撮影技術より、イスラム式の結婚式、ユダヤ式の結婚式など今まで見た事のない世界を目の当たりにしたカルチャーショックの方が大きかった。
ときにはパーティで出された本格的ケバッブをつまみ食いし、怒られさえすることもあった。



今、あのイラン人ブライダルフォトグラファーの記憶を懸命に辿っているのだが、グリップスタイルのストロボを被写体に当てる事と彼のカメラバックを持つのがメインの仕事だった僕には、彼のテカテカな後頭部がストロボの発光とともに美しく光った事くらいしか覚えていない。
写真のフレームが縦位置・横位置かによってフラッシュの位置を変えられるフレームを彼はカメラに付けていた。
これは被写体の後ろに出来る陰を綺麗に出すためのものだ。
使っていたレンズは全て単レンズだったのでポジションが変わるたびにレンズを替え、フレームが変わるたびにフラッシュの位置を変え、ニコンFM2にモタードライブを付けた2台のカメラの絞りやシャッタスピード、そしてフォーカスをひっきりなしにくるくると回していた。
彼はシャッターを切る前に、そういった全てのことをしなければならないが、カメラを構えた時にはそれらの動作がほぼ終了している。
相変わらず気づくのが遅い僕だが、彼はきっとブライダルフォトの達人だったに違いない。



そういえば、僕は彼にひとつ質問をした。
フラッシュのセッティングについてだ。
その頃の僕にとってフラッシュはまだ未知の写真機材だった。
オートやTTLにセッティングしてもオーバー・アンダーな写真が出来てしまうし、なんと言っても「フラッシュで撮りました」とあからさまに公言しているような写真ばかりでどうしてもフラッシュを使う気になれない。
彼は「フラッシュのセッティングは全てマニュアルだ」と素っ気なく答えた。
オートもTTLも使った事がないと。
僕は心の中で「そんな事やってられる訳ないじゃん、こんなに被写体の距離がめまぐるしく変わる状況で、、、」と正直そう思った。



あれからかなりの年月が経った今も、フラッシュはなかなか納得のいかない僕の課題のひとつだ。
アドビライトルームアドベンチャー取材の時、伝説のフォトグラファー、ブルース・デールさんに僕は同じ質問をした。
「ナショジオのフォトグラファーはフラッシュのセッティングをどうしているのですか?」と。
「私は50%以上がマニュアルだね。フラッシュの性能は驚く程よくなっているが、それでも僕の知る限り、他のフォトグラファーたちもマニュアルセッティングで撮影している人が多いよ。なんと言っても、確実だからね」
「マジかよ、、、」思わず日本語が僕の口をついて出た。



話を結婚式にもどそう。






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結婚式の写真を撮っているとき僕が一番好きなのは、花嫁さんの父親がウェディングドレスを着た娘と腕を組み、ヴァージンロードを新郎に向かって歩いていく瞬間だ。
どの父親の顔にも「ついにこの時が来たかぁ、、、」という感慨深さが溢れている。






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娘の方もこの瞬間だけは新郎の事より、ダディーを思っているように見える。
最後のダディーガールになりきるのだ。






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そして手揉みしながら新婦が現れるのを待つ新郎は、たぶんこれっぽっちもダディーの心中など察していないだろう。






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彼は美しい花嫁さんの姿に見とれるだけだ。






あぁ〜あ、僕のシオナにもいつかこんな日がやってくるのか、、、。
ダメだ、誰にもやらん!












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by somashiona | 2008-06-05 11:44 | デジタル

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