6月の花嫁#4 その一



オーストラリアに移住した最初の2ヶ月はクイーンズランド州のブリスベンに滞在した。
そのときに仲良くなった男性はブライダルフォトグラファーだった。
僕は雑誌の仕事をする前、日本やロスアンゼルスでなんどか結婚式の写真を撮った経験がある。
僕は結婚式写真をプロとしてメディアで活躍する前の前座の仕事のように考えていた。
結婚式の写真くらい撮れないと、プロじゃやっていけないと。
これは完全に間違った考えだ。


ブリスベンで出会った彼にオーストラリアのブライダルフォト事情を教わった。
こちらでは各都市にブライダルフォト専門雑誌がある。
かなり分厚く、印刷のクオリティーが高い雑誌だ。
雑誌をめくると写真をやっている人はきっと驚くだろう。
それはまさにヴォーグとナショナルジオグラフィックが混ざりあったような内容なのだ。
一級のファッション写真であり、ドキュメンタリーフォトグラフィック誌だ。
これから結婚をしようとするカップルはこういう雑誌を見て、お気に入りの写真を撮るフォトグラファーを見つける。
そして、彼や彼女に仕事を依頼するのだ。
そこでカリスマ的存在になったブライダルフォトグラファーはテレビコマーシャルでも宣伝するし、日本のみのもんたが出てくるような奥様番組に出演し、私が撮ればあなたはこんなに変身できる、みたいなショーまでしてしまう。


日本で雑誌中心の仕事をするようになってから結婚式の写真を撮ったことがなかった。
オーストラリアに来てからはごくごくたまに結婚式写真の依頼を受けるようになった。
自分で言うのもなんだが、雑誌の仕事をする前と今僕が撮る結婚式写真の出来は格段の差があると思う。
スポーツ系の写真を雑誌で撮っていたので、動く被写体に強くなったこと、そして何よりもフラッシュの使い方を覚えたことが大きい。
それでも僕が心から思うのは、いい結婚式写真を撮るのはとても難しいということだ。
ちなみにブリスベンの彼は結婚式写真を全てプログラムモードで撮っていた。
彼は僕に言った。「ああ、マナブ、僕は君にカメラの使い方から教えないといけないようだな。このダイヤルのAはどういう意味か言ってごらん」
「え、それってアパチャープライオリティー(絞り優先)でしょ。で、Sはもちろんシャッタープライオリティー」
「なんだ、知っているじゃない。でもこの僕がいつも使っているPの意味を君は知らないようだね。Pはね、プロフェッショナルモードといって、プロはこれで撮るのが一番安全なんだよ」
僕はプログラムモードで仕事をしたことが一度もないが、彼の言う意味も分からないでもない。プロの写真は失敗が許されない。マニュアルの設定でもたもたし、大切なシーンを逃すくらいなら、プログラムモードで60点の写真を撮った方がいいのだ。
僕は60点の写真など撮りたくはないが。


写真を愛する皆さんも、会社の先輩や後輩からこうお願いされることがあるだろう。
「佐々木課長、写真いつもブログで見てますよぉ。ホントお上手ですよねぇ。実は僕の結婚式で写真をお願いできないかと思って、、、」
「いやいや、田中君、僕はね、そのぉ、なんだよ、花や海を撮るのが専門で、同じ写真でも、ほら、ちょっとちがうのよ、、、」
「また、また、課長、ご謙遜を!」
こんな写真愛好家が結婚式写真で愛される写真オタクになるため、今日から数回にわけてフォトブログ結婚式写真講座を勝手に開講する。
僕が結婚式写真で学んだノウハウを皆さんに伝授したい。
前もって言っておくが、こんなことを偉そうに言うのはこれがなんちゃって写真講座だからだ。
僕が今まで経験した結婚式写真は合計で20回いくかどうかだ。
なので、自分でも何が結婚式写真で大切なのか、ぜんぜん分かっていない。(汗)
よく知らないことに関しては、人間、偉そうなうんちくを語れるものだ。


結婚式写真を撮るとき心がけること。
それは
1、記録としての写真を撮ること。しかし単なる記録写真ではなくドキュメンタリータッチに。知らない人が見ても、そこになんらかのストーリーを見いだせるようにする。
2、きちんとしたポートレイト写真を撮ること。
これはポートレイト写真のための時間をきちんと取ってセットアップした写真を撮る側面と、記録写真を撮る流れの中で光り輝く場面を見つけ、ポートレイト写真にしてしまう、という側面を同時に進行させなければならない。
3、結婚式に参加した人々をまったく抜きにしたイメージ写真を撮る。
多くの人が結婚式のプログラムや料理、指輪、などのクローズアップを結婚式写真で撮るだろう。しかし、それ以外にもその日見た空や雲、建物、草花、などを心象写真的に取り入れると写真を全体をまとめたとき単調じゃない楽しいアルバムが出来る。

もうお気づきかもしれないが、ブライダルフォトはスポーツ、ポートレイト、風景、物撮り、そして高いコミュニケーション能力といった写真の全てが要求される分野なのだ。
だから僕は苦手。


今回は1つの結婚式をはじまりから終わりまで追って、結婚式写真を解説する。(なんて、あらたまって言うと、自分で笑ってしまう)
スライドショーを見ていると思って聞いてほしい。






カシャ。(スライドショーの音)




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この時の現場は僕の住むホバートから遥か遠い、タスマニア北部の先端に位置する海岸のB&B(旅館)だった。
大切なこと、その一。現場に着いたらその場に自分の目が慣れる前に自分の第一印象をフレームに収めておく。これが写真を受け取る人たちのその場に対する第一印象であるかもしれないからだ。お客さんと精神的に共有できるカットを最初の掴みにしたいところ。






カシャ。




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この結婚式に関しては新郎と一度打ち合わせをしたのみで、新婦の顔すら僕は知らなかった。結婚式は新婦が主役。新婦とブライドメイトが準備をする部屋を教えられドアを開けたが、誰が新婦なのか僕には分からなかった。
やるべきことが山積みの彼女たちも自分たちのことで頭がいっぱい。
自己紹介をした後はカシャカシャと撮りはじめず、しばらく様子を観察し、それぞれの人たちのキャラを掴む。






カシャ。




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新婦の親友が新婦のメイクを担当していた。






カシャ。




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ドアがノックされ男性が入ってくる。深刻な顔で何やら説明がはじまる。
このあたりから、この式は家族や友人たちが手作りで行なうものだということに気がつく。それをひとつのテーマとしてフレームに収める必要あり。






カシャ。(だんだんこのカシャが面倒になってきた)




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一度、新婦たちの部屋を出てB&B全体をぶらつく。
新郎が披露宴のパーティの準備をしていた。






クシャ。




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B&Bの裏庭で池を発見。ポートレイトのロケーションで使えそう。
どの位置から撮るといい写真が撮れるか、事前にアングルを決めておく。
どのタイミングでどうやって被写体をここに連れてくるべきかも考えておく。
ついでにイメージカットも一枚。






メチャ。




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純白のウェディングドレスが誰もいない部屋で静かに佇んでいた。
こういう写真はおさえておかないと。
とにかく、式がはじまる前は会場や各部屋をくまなくチェックし、絵になるもの、物語になるものを探す。






カチャ。




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天候が変わってきた。
ちょっと重たいイメージカットも有効に使おう。






モチャ。




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イメージショットは撮って出しだけではなく、フォトショップ等の加工を前提に考えて撮っておこう。このカットはRAW現像で少し工夫。






その二につづく






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by somashiona | 2008-06-09 14:59 | 仕事

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