6月の花嫁#4 その四







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式から披露宴まで30分だけ時間がある。
オーストラリアでの一般的結婚式では、この時間が新郎新婦とグルームズマン(花婿付添人)・ブライズメイド(花嫁付添人)のポートレイト写真をセットアップして撮る時間だ。
結婚式写真を頼むお客さんはこのポートレイトを何よりも楽しみにしている。
この写真のために仕事を依頼すると言ってもいいほどだ。
この日は幸運なことに式場から徒歩5分の場所にビーチがある。
僕は朝、このビーチで綿密なプランを立てていた。
何パターンかの撮影のための立ち位置を決め、そこに木の枝や石を置いて、スムースに撮影が進むよう青写真を作っておいたのだ。
むふふ、ゴルゴはいつだって完璧に動くのさ。
皆もヒールや革靴でビーチまで歩くのだから、それなりの写真を期待しているはず。
そしてビーチにたどり着くと、僕は目の玉が飛び出し、愕然とした。
あ、あれぇ〜〜〜、ビーチが、、、ない、、、。
朝、僕が見た一面の美しい砂浜が、、、消えてしまっている、、、。
あらかじめ決めてあったポジションが全て水浸しだ、、、。
み、満ち潮、、、。
この日、カメラも一台壊れ、 既に動揺していた僕は足ががくがく震えだした。






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動揺を顔に出さないよう、最大限努力した。
とりあえず作り笑いを浮かべ、皆を一列に並べる。
ここでの撮影の残り時間はもう20分を切っている。
昆布だらけの砂浜で平凡な一列に並ぶグループ写真を撮りながら、横目で必死に周りを見て、次のショットのアイディアを探す。
ダメだ、頭が真っ白、、、。






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よし、岩だ!岩を使おう!






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くそぉ、イマジネーションが湧かない、、、。
僕が新郎ならどんな写真が欲しいか、、、。
美女に囲まれた写真!
よし、ノッてきたぞ!






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ファッション写真風だ!
どうだ、せいしょくしゃの意地を見たか!
と調子にノッてきたところで時間切れ、、、。






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いや、諦めちゃいけない!
いい写真のチャンスはどこにでもある!
と、会場に向かう途中も僕は戦闘モード。






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あまりの戦闘モードぶりに笑う彼女たち。






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ビーチでのグループショットの後はB&Bの裏庭で家族写真だ。
これに約20分時間をとってある。
家族写真の一番のポイントは、皆をきちんと時間通りに所定の場所に集めること。
僕はこの役割に神経を集中している暇がないので、あらかじめ新郎のベストマンにこの役を頼んでおいた。
ぜったい時間厳守だ、とかなりプレッシャーをかけておいただけあって、時間どおりに皆集まってくれていた。

家族写真でもうひとつ大切なことはどの組み合わせで撮るかあらかじめハッキリと決めておくこと。
娘とお母さん。娘だけの家族。娘の家族と新郎。娘と新郎の家族の女性陣だけ。新郎の家族と、、、。無数の組み合わせをあらかじめ紙に書き込み、誰かがそれをさっさとセッティングする。






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新郎、新婦のお父さん、新郎のお父さん。






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思いのほかスムースに家族写真が済んだので、ピーチで思う存分撮れなかった新郎新婦のポートレイトをこのガーデンで10分間撮った。
まずは新婦だけから。






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つづいて、結婚式写真では定番のショット。
結婚式定番写真は新郎新婦がこの先10年後、30年後も繰り返し見る写真だ。
奇をてらったポーズ、アングル、フィルター、加工、そして極端な広角レンズは時が経つと臭い写真になってしまうだけ。
時の流れに耐えられる、落ち着いた写真を撮りたいものだ。






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見つめあう定番ショット。






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最後は定番中の定番ショット。






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幸せを呼ぶブーケは新婦の親友の手にあった。
次は彼女の番か?
名刺を渡しておこう。






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そして、最後は披露宴パーティーの会場へ。
二人は拍手で出迎えられる。






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ガゼボ(簡易テントみたいなもの)で出来た会場。
ディフューズされた自然光がうっすらと室内に回って、とても綺麗だった。






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ゲストたちは皆、タスマニアの北の外れにはるばる車を走らせ来た人たちだが、疲れた顔も見せず、大いに盛り上がっていた。
さて、ここで。
夜光虫の君たち、この写真を見て好みのタイプの女性がどこにいるか、一瞬にして写真の隅から隅まで見渡したはずだ。さらに上をいく人はコンマ一秒のスピードでドレスからはみ出る胸元を発見したかもしれない。そう、これだ!この集中力で目の前に広がる被写体を見るのだ。この本能に従うスピードと正しい判断力は絞りは何がいいか、レンズはどれを使おうか、いい構図を探そう、といったのろまな思考を遥かに越える。技術的なことは家に帰ってからゆっくりと写真を見て反省すればいい。しかし本番では本能に従うのだ。それは自分が持っている潜在能力すら引き出してくれる。
カメラを持ったら考えない。Feel it! 感じるのだ。感じる達人になるのだ。(だから女性はいい写真が撮れる、汗)さあ、カメラに刻み込もう「エロ is Power」と。






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最後に僕は、遠くから二人にもう帰るという合図を送って、この場を後にした。






DVDディスクに焼いたカット数は500枚以上。
二人ともとても喜んでくれた。






今日のまとめ
・撮影がスムースに進むよう可能な限りプランを練ろう。
・予定通りに事が進まないのは写真も人生も同じだ。そんな時はそのことをさっさと忘れ、すぐに気分と頭を切り替え、次にすべきこと を考えよう。
・フォトグラファーが被写体を観察しているのと同じくらい、被写体はフォトグラファーの一挙一動を見ている。自分が動揺したり、不 機嫌になった場合は100%それが相手に伝わっていることを認識しよう。
・人物撮影はテンポ、リズムが大切だ。いい構図やロケーションが見つからないからといって撮影がとまると被写体の集中力やテンショ ンが下がる。そういう時は捨てる写真を撮り続け、その間に次のよりよいショットのためのアイディアを考えよう。
・いい構図、ロケーション、アイディアがとっさに頭に浮かばない時は自分の本能、欲望、ファンタジーに従おう。下手な小細工をする よりもストレートで強い写真が撮れる。(エロ is Power)
・撮影が終え、移動している最中、雑談中は被写体にとってはカメラを意識する時間ではないが、フォトグラファーはカメラを持ってい る限り、いつでも被写体を意識しよう。ポーズ写真とは違ったナチュラルな被写体の姿を捉える最良のチャンスだ。
・グループ写真、家族写真はいかに時間通りに皆を集め、あらかじめ決めておいた組み合わせ通りに撮影を進められるかにかかっている 撮影に集中出来るよう、その役をあらかじめ責任感の強い人に頼んでおこう。
・定番ショットは奇をてらったアプローチを避けよう。70歳のお年寄りが超広角レンズで撮ったショットを「すげぇ〜のう、クールじ ゃ!」とは決して言わないことを知っておこう。
・結婚式写真はスピードライト(フラッシュ)に頼る割合が相当高い。
 フラッシュの使い方は熟知しておこう。
 直接フラッシュの光を当てるか、バウンスするかは、またはカメラから離して撮るかは、その場の状況次第。
 バウンスは光が綺麗にまわり、露出も安定するので安易に使ってしまうテクニックだが、シャッタスピードを上げ、場明かりを殺して しまうと、その場にある柔らかい光と陰を台無しにし、退屈でフラットな写真を作ってしまうということを忘れてはいけない。    スピードライトを使う時はその場の光をいかに利用するかを常に考えよう。
・いい写真を撮ろうとどんなに努力しても、またいかにいい写真を撮ったとしても、その場にいる人たちに不快な思いをさせてしまった ら、その仕事は失敗だ。
 礼儀正しく、いつも笑顔で、しかし写真を撮る時はしっかりのその場を仕切ることを忘れてはいけない。








以上が結婚式写真のはじまりから、終わりまでの具体例だ。
もし誰かに結婚式写真を頼まれたのなら、いい機会なので是非受けてほしい。
どんなに簡単な撮影でも、依頼されて撮る行為は普段の撮影とは違うはず。
自分の写真を撮る時とはまったく違う種類の真剣モードになり、普段の撮影に対する自分の甘い姿勢とテクニックが浮き彫りになるはずだ。
これは自分の写真を見直すいい機会になる。
謝礼などを相手が用意してくれるなら受けるべきだ。
お金をもらった方がより真剣になる。
そして、そういうふうにして、プロになる人が増えてくると、僕はまた困ったことになる。


次回は最終回、番外編。
えぇ〜、まだやるのぉ〜、と言った人、一週間撮影禁止です。






注)このブログ写真講座はブログ用のネタなので、あまり真に受けないようご注意ください。






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by somashiona | 2008-06-14 10:46 | 仕事

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