線路はつづくよ何処までも #2




列車を使った一人旅は物思いへの旅だ。
そんな時の心の動きをまっすぐ写真で表現できたらどんなに気持ちがいいだろう。
そういう写真を撮りたいのに、上手く出来ない自分にもどかしさを感じる。
これは技術の問題ではない。
たぶん写真に対して、自分の思いに対して、素直になりきれないのが問題なのだろう。


自分の感情と写真がリンクした時の快感を知った者はいつまでもそれを追い求めるに違いない。
本物の恋が喜びよりも苦しみめいているのに似ている。








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友人の50歳の男性とこんな会話をした。

「で、どう最近は。仕事も恋愛も上手くいってる?」と僕。
「彼女と暮らしてもう5年経つんだ。難しい僕の性格を受け入れてくれる女性で彼女がそばにいてくれて僕は本当に感謝しているんだ」と言って彼はエスプレッソを飲む。

「そうだよね。彼女と暮らすようになってから君は本当に明るくなったし、仕事も上向きになったよね」と言い僕はラテを飲んだ。

「そうなんだ、僕は幸せ者だ。でもね、マナブ、こんなに幸せなのに僕は心のどこかであの時の感覚を求めているんだ」

「あの時の感覚って?」と僕は彼を見つめる。

「昔ね、まだ30代だった頃僕はとんでもない女性に恋をしたんだ。我がままで、気持ちにムラがあって、いつも問題を抱えて、ほとんどビッチ(悪女)と言ってもいいくらの女だったのに、、、彼女、とんでもなくスイートだったよ」

「すごくセクシーだったでしょ、きっと?」と笑う僕。

「そりゃもう」と言って彼は続けた
「とにかくあの頃僕は彼女に振り回され続けた。朝から晩まで彼女のことばかりを考えていたよ。もちろん、仕事なんて手がつかずボスのオフィスに何度も呼ばれた。でも僕は彼女と離れたくなかった、、、いや、早く離れないと自分がダメになるといつも自分に言い聞かせていた。そしてある朝、いつも僕が先に起きるのに彼女がベッドにいないんだ。彼女の洋服もサムもいなくなってる」

「サムって誰?」と僕は口を挟んだ。

「ああ、彼女が可愛がっていた猫だよ。そしてそれっきり僕は彼女に会っていないんだ。今一緒に住んでいるSと出会うまで僕は抜け殻だった。あのビッチと違ってSはね、穏やかで、優しくて、いつも安定しているから、僕は何の心配もせず毎日暮らしていける。なのにね、自分の心がいつも何を求めているのか、僕は知っているんだ。あのビッチ、さんざん酷い目にあったけど、でもね、僕はあんなに誰かを愛したことがなかったんだよ。あんなに必死で誰かのために生きたのは初めてなんだ。僕はあの時の感覚が恋しくてたまらないのさ、、、。もちろんSのことだって愛している、これは本当だ。ああ、わかっている、僕は酷い奴だよね」

「そんなことないよ。誰だって少なからずそういう思いを抱えて今の連れ合いと生活していると思うよ」僕は他に言いようがない。

「それにしても、こういう思いを抱えながら人生を終えるのかなぁ。死ぬ前にもう一度、身を焦がす恋をしたいと思うのは罪なことなのかなぁ?実際にそんなチャンスが目の前に現れても、僕はそれに飛びつかないだろうけど、、、」彼は溜息をもらしてエスプレッソを飲み干した。







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小さいけれど、頭の片隅に張り付いて離れない思いを誰もが一つや二つ持っているだろう。
そういった些細で目立たない思いが実はその人の行動や人生に多大な影響を及ぼしていることがある。
ポートレイトを撮るため誰かと長い時間を一緒に過ごし、話が深いところに入っていくとその人を支配している小さな思いを発見することがある。
ほとんどの場合、その思いがどれだけその人を支配しているか当の本人はまったく気がついていない。

物思いの旅をしていると自分を支配している小さな思いに近づきそうになるが、その影を見たとたん、それは車窓から見る風景のようにあっという間にどこかへ飛んでいってしまう。

車内販売のワゴンに乗った缶コーヒーを一本買い、雨にぬれた景色を再び眺め続ける。







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by somashiona | 2008-11-30 09:13 | デジタル

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