東京という名の欲望





オーストラリアに移住して8年が経とうとしている。
最近、やっとここの生き方に順応しはじめている気がしている。
僕の住むタスマニアと日本、その違いを一口で言い表わすことは難しいのだが、それでもあえてそれを言うのなら「何のために生きるのか」という部分があまりにも違いすぎる気がしてならない。
どんな国に住もうが僕たちは雨風をしのぐ屋根と壁のあるスペースを確保するためや、空腹を満たす食べ物のために最低限のお金を日々稼ぎださないといけない。
一昔前と比べると今のオーストラリア人の暮らしはかなり贅沢になっているらしいが、それでも生きるために最低限のお金さえあるのならあとは楽しくやればいいじゃん、というムードがここはいつも漂っている。(あくまでも個人的な感想だが)
日本人の平均貯蓄額をオーストラリア人に教えると皆本当に驚く。
そういう感覚に7年かけてやっと慣れ、もうどこへ行っても僕の価値観は変わらないだろう、という自信を持って東京へ行ったのだが、山手線で揺られているうちにそれら揺るぎない信念は穴の空いたバケツからこぼれる水のようにあっさりとどこかへ流れ出てしまった。

稼がなきゃ、、、ビジネスチャンスをつかまなきゃ、、、もっといい服を着なくっちゃ、、、もっと美味しいものを食べなくっちゃ、、、。
あれが欲しい、あそこへ行きたい、あれを見たい、あれも、これも、もっと、もっと、、、。

どうしてだろう、東京へ入ったとたんあらゆる欲望に煽られまくり、その結果それを解決すべく最も手っ取り早い手段のお金を稼ぐという行為を常に考え続けるはめになる。

東京は欲望の怪物だ。
それに飲み込まれるとすぐに彼の真っ赤な血液となり、彼の心臓から手足の先の毛細血管までもみくちゃにされながら流され続ける。
少しでも立ち止まろうものなら、白血球につかまってしまう。
自分のささやかな意見などに誰も耳を傾けてくれない。
ビルの巨大スクリーンに写し出された赤いドレスの女性が買いなさい、お店に向かいなさい、走りなさい、と笑いかけ、皆がそれに従い同じ方向へ向かう。
全経済活動だけでなく、世の中の流れそのものがまるで若者たちを中心に動いているかのようだ。
モノ、カネ、情報、全てが若者たちの心をつかもうと必死だ。
子供たちは早く若者になろうと背伸びをし夢のような美しい時を飛び越えてしまい、大人たちはいつまでも若者のままでいようと年相応でいることの素晴らしさを忘れ、尊厳を失う。
若者たちの関心に興味を失った人たちは多くの人たちが住む共同体から追い出され、価値のない人のような扱いを受ける。
同じ欲望を秘めた運命共同体の同胞たちはなぜか満員の電車の中のでは互いに目を合わそうとせず、誰しも携帯電話のボタンを押している。
同じ肌の色をした人たちのうねりは濁流の色だ。
すれ違う人たちは表情がなく、まるでクローン人間の林の中に迷い込んだよう。
僕は感傷的なことは考えず、ただただお金を稼ぐことに気持ちを集中する。
この街ではよほど強い自分を持っていないと群れの中の一頭の羊になってしまいそうだ。
何のために生きるかを忘れてしまいそうだ。






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濁流の中で息をしようとタスマニアに電話をし、子供たちの声を聞いた。

「ダディ、ジャパンからなの?マウントフジはそこから見えるの?本物のそばはもう食べた?どんな動物が歩いているの?ホバートのサラマンカマーケットよりたくさん人がいるの?いつ帰ってくるの?」

短い時間だったが、大都会の中で夢を見ているような気分だった。







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今まで何度も夢に見た丼もの、ラーメン、餃子などをへそから飛び出そうになるほど腹に詰め込み、写真物欲魔王の奴隷となった僕は信者が集まる新宿西口のメッカに向かった。
暗闇の中に真っ赤に輝くけばけばしいネオンサインを見た時、あの店のテーマソングがまるでコーランのように建物から流れるのを聞いたとき、アドレナリンが体内を駆け巡るのを感じる。
財布の中のポイントカードはまだ有効期限が切れていないだろうか、、、?
これか使えないとなるとエクスタシーが半減する。
各フロアーをくまなくチェックし、僕は我を忘れて写真用品を買いあさった。
もし僕がここに住んでいたら3ヶ月以内に禁治産者の宣告を受けるだろう。






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日本の旅シリーズはいったん終わります。
あまりにも面白いことがありすぎて、いつまでたってもこのシリーズが終わりそうもないからです。
日本での写真はまたときどき出しますが、次回からはまたタスマニアでの普通の生活写真に戻ります。
楽しみにしてくださいね。












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by somashiona | 2008-12-08 20:17 | デジタル

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