やっぱりブッシュウォーキングでしょ




ほんの2週間の滞在ですっかり東京化された僕は経済戦争の最前線で機関銃を持つ兵士のような気分でオーストラリアに向かう飛行機の座席に収まっていた。
メルボルンの空港までは確実にそういう気分だったが、ホバートに向かうヴァージンエアラインに乗り込むと乗客の人たちのムードもがらりと変わり(服装や会話がめちゃローカルになる)、なんだか僕の鎧も軽くなってきた。
そして飛行機の窓からタスマニアの大地が見えたとき、僕はなぜかホッとした。
僕にとってよその国であるこの地を見て本当に心からホッとしてしまった。
知らないうちにここが僕の家になっていたようだ。






タスマニアに戻った翌日から立て続けに入っていたヘビーな仕事を無事終了させ、翌週子供たちと会った。
ソーマは僕の顔を見ると、涙ぐんだ。

久々の父と子の再会を喜び合い、何をして過ごすのがこの喜びにふさわしいか彼らと話し合った結果ブッシュウォーキング(ハイキング)に行く事になった。
目指すはマウントウェリントン、車で約15分の場所だ。
標高1270mのこの山、ホバートに帰るとやはりこの山に触れたくなる。
富士山を見ると日本に帰ってきたと実感するのと似ている。

マウントウェリントンには無数のトラック(ハイキングコース)があるので子供たちが地図を見てどのコースを歩くのか決める。
この日は天気も良くちょっと長い時間歩きたい気分だったので、オルガンパイプ・トラックから頂上へ抜けるコースに挑戦する事になった。






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出発の時の彼らは元気一杯、ウキウキ気分。
それは僕もまったく同じだ。






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このトラックに入るとすぐに大きな岩の洗礼を受ける。
1、2年前はぐらぐらする足場と急斜面から見える風景にビビっていた子供たちも今じゃヘッチャラ。
先頭を歩くリーダーのソーマがコースに危険な岩があるとすぐに僕やシオナに伝える事になっている。






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僕たちが歩くトラックの右手には玄武岩でできたマウントウェリントンの岩肌がカーテンのように覆い被さる。
この玄武岩の柱状節理がパイプオルガンのように見えるのでオルガンパイプ・トラックと呼ばれるのでは、と勝手に想像している。






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春のホバート、天気がよくても風は冷たい。
すれ違う人たちは皆本格的装備で歩いているが、僕たちは軽装だ。
僕のバックパックの中には最低限のモノしか入っていないが(全員の防寒具、雨具、地図、スナック、ライター、水など)それでも結構ずっしりくる。
途中から雪に覆われたトラックを歩くはめになった。
傾斜が強くて、普通の靴ではかなり滑る。
トラックのすぐ下は危険な谷間、足を滑らせて落ちると深刻な事態になると子供でも一目で分かる。
引き返したいか、と二人に尋ねると行けるところまで行きたいと答えた。
足下が雪の場所は普通に歩く3、4倍の時間がかかる。
途中天候が急変して吹雪になったら引き返すのも簡単じゃないだろう。
父親としては悩むところだが、自然を相手に100%の安全などありえない。
終始ニコニコ笑顔の自然体験なんてつまらない。
ここは彼らにしんどい体験を味わってもらう事にした。






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こういう場所では二人とも基本的に愚痴を言わないが、シオナが手が冷たくて感覚がないと言いはじめた。
ポケットに入っていた僕の手袋を支給する。
シオナはハッピー。






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まだ折り返しの頂上にすらたどり着いていないが、子供たちの笑い声はいつしかなくなり、親子三人無言で歩き続ける。
途中、休憩をしてナッツやドライフルーツを食べるとき、彼らは少しへばり気味だった。






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僕は久々のホバートの風景を楽しむ。
骨のようなデッドツリーや岩の表面を彩る地衣類を見るとなぜだか心が和む。
青空を背景に春の太陽に照らされるそれらの木はまるでスタジオで組んだライティングのように完璧な光と影のバランスだ。
昔、スタジオアシスタントの手伝いをしていたとき、いいライティングを覚えたいのなら風景写真を撮るべきだ、と教わった。
人を撮る以外まったく興味がなかったので、実践しなかったが今は少し分かる。
自然が作り出すライティングは人間の想像力を遥かに越えると思う。






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頂上を目指し上にいくにしたがって温度は下がり、斜面は傾斜を増すが、トラックがやっと歩きやすい道になり、マウントウェリントンのシンボルである巨大な塔が見えると僕たちは安堵した。
三人で喜び合ったのもつかの間、頂上付近は風を遮るものがなく、寒さでいてもたってもいられない。
雨具で風から身を守り、違うコースで下山する。
駐車した車に戻るまで3時間半の道のりだった。






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冒険を成し遂げたことを喜び合い、家に帰るとグランパ(おじいちゃん)の遺影に向かってそのことを報告した。
よく見ると、ユーカリの葉に穴をあけ、小さな花で飾り付けをしたものがグランパの写真の横に添えてあった。
僕はこの子たちがいてくれて本当に幸運だと思った。












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by somashiona | 2008-12-10 12:56 | デジタル

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