<   2008年 02月 ( 9 )   > この月の画像一覧

二人のため、世界はあるの(セブンマイルビーチ編)




僕はビーチで撮るポートレイトが好きだ。
どんな天候であれ、こんなすばらしいスタジオはなかなかそこらにはないと思う。


僕のお客様である新婚さんお二人とビーチへ行った。
車から降りた瞬間から辺りに潮の匂いが漂い、僕はすぐに写真を撮り始める。
頭の中に撮りたい絵はあるが、たくさんシャッターを切っておいたほうが、
モデルさんが早い段階でカメラ慣れする。
それに、シャッターチャンスはどこにあるかわからない。

ビーチへ出たとたん、花嫁さんが声を上げた。
「わぁ〜すごい、どうして誰もいないのぉ〜?」

「本日はお二人のためにビーチを貸し切りにしました」
と言ったか、言わないかは憶えていないが、タスマニアのビーチにはなんせ人がいない。
もう、フォトグラファーのためにあるビーチだ。
いや、違った、いつだって、愛する二人のために世界はあるのだ。






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私事だが、先日突然僕のマック君が逝ってしまった。
買ってまだ3年もたっていない、、、。
ディスクの中のデータは全滅、、、何一つ救えず、、、。
こういう事が起こりえると頭ではわかっていたが、「そうそう、他の誰かに起こるんだよねぇ」という態度で生きている僕はデータのバックアップというものをとっていなかった。
仕事以外の多くの写真、自分のプロジェクトのためリサーチしていた多くの情報とネタ、今までに出した請求書、領収証、写真を撮らせてもらった方々の情報と連絡先、メディアに関わる方々の連絡先と情報、すべてのメールアドレスとドキュメント、、、もう泣いている。号泣だ。
パソコンなしでは仕事が機能しないので大金を出して直しに出し、ソフトをインストールし直す。
皆さん、データのバックアップはマメにしよう!

まだ自分のパソコンが手元に戻っていず、今日は違うパソコンでブログの更新だ。
コメントの返事、ちょっと待ってちょ〜だいね。

このブログを見た僕の友人、知人の皆さんへ
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でないと、永遠に連絡が取れないよぉ〜!

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by somashiona | 2008-02-26 16:57 | 仕事

愛、あなたと二人(マウントウェリントン編)



タスマニア、ホバートでウェディング写真と言えば、街の中心部にある港にて手をつなぐ二人が色とりどりのヨットを背景にパチリ、または捕鯨全盛期(1835~1836年)に建てられたサンドストーン(砂岩)造りの旧倉庫が立ち並ぶサラマンカプレイスにて石畳の上で愛し合う二人がブチュ(チュ)、というパターンが多い。

しかし今回、この二人のリクエストは森、山、丘だった。
確かに街の中よりこのロケーションのほうがタスマニアしている。
だがここに住む僕たちがこういったロケーションに行く時は、それなりの服を着、それなりのシューズを履く。
今回、僕のお客様はウェディングドレスにスーツだ。
しかも撮影は午後3時から7時まで。
おまけに森、山、丘の他、僕はどうしてもビーチでの絵が欲しかった。
約4時間で丘、山、ビーチをこなさないといけない。
それぞれのロケーションで絵になる場所に行き着くには車から降りた後、かなり歩いてもらう必要がある。

しかしこのような条件を短時間で満たしてしまうのがホバートの素晴らしいところ。
この小さな島にはおいしいロケーションが凝縮されているのだ。

という訳で本日は、「愛、あなたと二人」。
二人と言いながら僕が写しているのはもっぱら新婦さん。
だって、美しいんだもん!
しょ〜がないよねぇ〜!








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by somashiona | 2008-02-23 11:49 | 仕事

あの丘でウェディング




昨年末、日本の新婚さんカップルから撮影の依頼が来た。
タスマニアの自然を背景にウェディングフォトを撮って欲しいと。


日本からのメディアやビジネス絡みでない一般の方からの依頼、はじめてのことで僕はとても嬉しかった。
タスマニアの自然を背景に、、、すぐに僕の頭に浮かんだロケーションは、そう、僕のお気に入りの、あの丘だ

「この丘」

「その丘」



一度あの丘できちんとしたポートレイトを撮ってみたかった。
これはまたとないチャンス。
僕はすぐにこの依頼を受けた。


新しい人生を歩みだす二人の記念碑的写真をタスマニアで。
心して撮らせてもらった。
こういう写真に僕の余計なテキストはいらないと思う。
愛し合う二人を見ていて、僕は胸が熱くなった。
そんな感じが写真から伝わればいいと思う。









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by somashiona | 2008-02-22 12:28 | 仕事

フリーランスフォトグラファー三者会談



先日、マシュー、ピーターそして僕を含めたタスマニア・フリーランス・フォトグラファーの三者会談がサラマンカプレイスのとあるパブで行なわれた。
彼らは黒ビール、ゲコの僕はストローを隠せばビールに見えるジンジャエールで乾杯だ。
まあ三者会談と言ってもただ単に世間話と情報交換なのだが、、、。




マシューはオーストラリアの全国紙「The Australian」をメインに、そしてピーターも全国紙「The Age」をメインに仕事をするフォトグラファーだ。
タスマニアのニュース写真のほとんどはこのふたりから全国、全世界に発信される。


マシューの話しは以前僕のブログの「ここで」
そしてピーターのことは「ここで」、触れているので興味があったら覗いて欲しい。



今回の三者会談のメイントピックスはマシューがバンコクで参加した写真家デイヴィッド・アラン・ハーヴィーと同じく写真家ジェームス・ナクトウェイのワークショップの報告だ。(カタカナが多すぎるなぁ、、、)
このふたりの写真家は世界のフォトジャーナリズムの頂点に立つ人間。
その達人から直接写真の手ほどきを受けるのだ、どんなことを学んだのかマシューに聴講料を払ってでも聞きたい。



約一週間のワークショップ、「オォ〜メ〜ン、こんなにハードな写真生活は今まで送ったことがなかったよ」とマシューは話しをはじめた。


参加者は約20人、ほとんど全てがプロフェッショナルなフォトグラファー。
「ニューヨーク・タイムズ」をはじめ世界のメディアで活躍し、数々の賞を受賞している面々だ。
参加者全員が完全に写真気違い、写真に人生をかけている者ばかりだ。
早朝からデイヴィッド・アラン・ハーヴィー、ジェームス・ナクトウェイの講義がはじまる。
講義の後、その日の課題が与えられ、昼過ぎから与えられた課題にそった写真を撮りに各々が街にくり出す。
町中を歩き回り、足が棒になった後、ホテルの部屋に戻り、夕食後の写真発表会に向けてフォトショップで写真を処理し、スライドショーを作る。
参加者各々がその日に撮った写真はホテルのプールサイドにある真っ白な巨大な壁にスライドショーとして写し出される。
「自分の写真がね、これほどまでにクソミソに批評されたこと、今まで一度もなかったよ、、、」とマシューは僕とピーターの顔を見て言った。
メディアの一線で働き、十分なキャリアのあるフォトグラファーたちがライバルたちのその日に撮ったホヤホヤの写真を徹底的に考え、どうあるべきかを、どうすればもっと強い写真になるのかを議論しあう。
それはもう、僕のような小心者は考えただけでオシッコちびってしまう。
横で話を聞いていたピーターはもうすでにパンツを濡らしていたかもしれない。



このワークショップでマシューが学んだ一番大切なことは、欲しいイメージが手に入るまで、諦めず、とことん撮ることだ。
言ってしまえば簡単なことだが、それをとことんやる人間は少ない。
彼らは欲しいイメージを手に入れるため、時にはカメラを持たず、何週間も被写体が心を開くまで、国境の監視人がパスポートを見せなくても自分を通してくれるまで、密入国する秘密のルートを教えてもらうまで、と辛抱強くそういった人々と接する。
どうやら忍耐ぬきに写真は語れないようだ。



マシューは彼が今回驚いたことの一つに、いまだライカで仕事をする第一線のフォトグラファーが多いことをあげていた。
デジタル時代の今は、ライカM8だ。
しかもそういったフォトグラファーのほとんどがカメラボディ−1台に35mmレンズ(35mm換算で)というパターン。

僕がデイヴィッド・アラン・ハーヴィーの写真で衝撃を受けたのは、あの動きのあるイメージをライカで撮っていると知った時だった。
ワークショップに参加したあるベテランフォトグラファーもライカでニューヨーク・タイムズの仕事をしていた。
新聞の仕事をライカで、、、?
新聞の仕事は何が起こっても対応できるよう17−35mm/f2.8、28−70mm/f2.8、70−200mm/f2.8というのが標準装備。
どんな現場でもほとんどのフォトグラファーはこれに近い装備で仕事をしている。
それをライカ1台と35mmレンズだけで勝負するなんて、本当に信じられない話だ。
デイヴィッド・アラン・ハーヴィーに関しては絞りも大体いつも同じ位置にセットしているらしい。
開放値だ。これも信じられない、、、難しすぎる、、、。
一台のカメラと1本のレンズで勝負する最大の理由は「シンプルイズベスト」、もうこれに尽きるらしい。
見ることに神経を注ぐ。最高の一瞬を逃さない。
シンプルであればあるほど、的中率が上がるという。


スポーツ写真、水中写真、接写の世界、そのシンプル装備では対応できない分野は山ほどあるが、この「シンプルイズベスト」は写真を撮るという行為の本質を改めて考え直してしまう言葉だ。


いつも上手く撮れなかったとき、もっといいレンズがあれば、、、もっと高性能なカメラがあれば、、、とついつい考えてしまうが、本当は今ある機材で十分すぎるほどいい写真が撮れるはずなのだ。
いい眼と腕があればの話しだが、、、。



フォトジャーナリズム的写真のテクニカルな部分をフリーランサー同士で語る時によく出る話題がフラッシュ(スピードライト)のことだ。
できるだけフラッシュを使わないで写真を撮ることにこだわるフォトグラファーが多い反面、難しい光りの状況で撮影を余儀なくされるフォトジャーナリズムの場合、欲しいイメージを手に入れることができるかどうかがフラッシュの使いこなしいかんで決まることが多々ある。
しかも一流のフォトグラファーはフラッシュを使っているにも関わらず、写真にこのフラッシュの光りをまったく感じさせない。
僕がプロとしてスポーツ雑誌で働きはじめたとき、自分の技量のなさを一番感じたのがフラッシュの技術だった。
アマチュアで写真を撮っている時にフラッシュを駆使しなくてはならない状況などほとんど出てこなかったので、これに関しては教科書通りの知識しか持ち合わせていなかった。



このフラッシュ、今でも悩みの種だ。
ありとあらゆることを試した。
ブラジルさんがブログで紹介しているオムニバウンスを使って弱めの光りを当てるのが長い間僕のパターンになっていたが、ここ一年くらいはそれを考え直し、ストレートの光を当て写真に芯を持たすようにしている。
(ブラジルさんはフラッシュの使い方がとても上手い)
しかし、どうしても色が不自然。アンバー系のフィルターをフラッシュにつけても不自然。
この話しを今回の三者会談で話すとマシューはニヤリと笑い僕に言った。
「マナブ、今回のワークショップで仕入れた情報なんだけど、、、」



あ、どうしようかなぁ〜、言おうかなぁ〜、もったいないなぁ〜、誰にも言わないんなら教えてもいいけどブログっていろんな人が見てるからなぁ〜、、、。
(引っぱり過ぎ?)



スピードライトの達人たち、なんと発光パネルにバンドエイドを貼付けているらしい。
バンドエイドのあの色が一番人肌とマッチすると言うのだ。
で、あのガーゼがついている部分はどうする?
フラッシュの発光パネルは中央から一番強い光りが出る。
発光パネルにガーゼがついたままバンドエイドを張ると一番強い光りがいい感じでディフューズされるのだ。なのでガーゼもついたままでOK!
ちょうど昨日は肌の露出が多いダンサーたちを撮影する仕事が入っていた。
この必殺バンドエイド・フラッシュをさっそく試してみた。
好みもあるだろうが、僕はとても好きだった。
フラッシュを使う場合は場明かり(Ambient Light)をどれくらい取り入れるかが悩みどころ。主要被写体をフラッシュの光りがギリギリ止められるくらいがいいが、周りの状況に左右されるのでこれといった法則はない。
経験と勘が頼りだ。




こんな話しをしていると本当にきりがないので、そろそろおしまいにしょう。
この三者会談、まだまだ面白い話題がたくさんあるので、いつかまた続きを話すことにする。
ご期待を!








こんな話題にマッチする写真がないので、テキストとまったく関係のないコンデジ写真を一枚。



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デビッド・アラン・ハービー David Alan Harvey
http://www.magnumphotos.co.jp/ws_photographer/dah/index.html


ジェームス・ナクトウェイ James Nachtwey
http://www.youtube.com/watch?v=uP4Zat6xSrM&feature=related
http://www.faheykleingallery.com/featured_artists/nachtwey/nachtwey_frames.htm




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by somashiona | 2008-02-20 23:46 | デジタル

Sorryと言える国民




昨年とても驚いたことの一つはオーストラリアの政権が変わったことだ。






前首相ジョン・ハワードは1996 – 2007の4期首相を務めた。これはオーストラリア建国史上初の快挙だ。2004年の4期目の選挙の時は僕もオーストラリア生活に充分慣れていたせいか、人々の関心の度合いや各党の色が見え、色々な人たちと選挙の話しで盛り上がった。こちらの人は若者からお年寄りまで政治の話しが大好きだ。「関心ありません」などと言おうものならその人の人格とインテリジェンス自体が否定される。この3期目の選挙はイラクへの派兵が焦点となっていた。僕の知る限り、ほとんどのオージーたちがアメリカと足並みを揃えたとこにとても怒っていた。僕はこれでジョン・ハワードもおしまいだな、と思っていた。しかし、蓋を開けるとジョン・ハワード率いる自由党の圧勝で、彼の4期目が決まった。ジョン・ハワード政権になってから、オーストラリアは空前絶後好景気だ。新しいレストランやカフェが増え、街を走るクルマも新車が多くなり、人々はショッピングに忙しい。あやふやな理由で他の国を侵略し、自利のために罪もない人々の命を奪い、「正義」という言葉を使いさせすれば、何をやっても許されるという風潮にある意味、オージーは賛同したのだ。これに僕はとてもガッカリした。「オージーたちよ、君たちもやはりそうか、、、自分の財布の中身のほうが大事なんだね、、、」という思い出いっぱいだった。実際、僕と同じ気持ちを抱いたオージーも多かったようだ。悔し涙を流す友人もいた。






しかし昨年の選挙は違った。国民のアンケートでは「ジョン・ハワードはとてもよくやっている、彼が首相になって以来オーストラリアはすべてが上手くいっている」と言う声が多数だったが、「で、これからもそれが続くの?また同じことの繰り返し?」という気持ちが国民の中に沸々とわきあがった。政治には保守的といわれるオージーが変化を求めたのだ。
オーストラリアでは州の選挙はいつも労働党が圧勝する。労働党は人々の生活に密着した政策を打ち出す。なので各州の知事、政権は労働党が握る。しかしオーストラリア全体の政治はジョン・ハワード率いる自由党だ。オーストラリア経済、外交、そういった大きなことは木を見て森を見ない労働党には任せられないという気持ちが強いのだろう。しかし、2007年12月3日にオーストラリア労働党党首を務めるケビン・ラッドが第26代首相に就任した。






ケビン・ラッドはこの選挙でオーストラリアの『盗まれた世代』に謝罪するという公約を掲げていた。








盗まれた世代(英:The Stolen Generation)とは、オーストラリア政府や教会によって家族から引き離されたオーストラリア・アボリジニとトレス海峡諸島の混血の子供たちを指すために用いられる言葉である。1869年から公式的には1969年までの間、様々な州法などにより、アボリジニの親権は否定され、子供たちは強制収容所や孤児院などの施設に送られた。「盗まれた世代」は、1997年に刊行された検事総長の報告書 "Bringing Them Home"によって、オーストラリアで一般的に注目されるようになった。「盗まれた世代」の問題が実際にあったのか、またどの程度の規模だったのかは、いまだに議論が続けられている。
『ウィキペディア(Wikipedia)』から抜粋








昨日、ケビン・ラッドはこの盗まれた世代の人たちに公式に謝罪した。
この様子は生放送でオーストラリア中に流され、公園で、街頭で、広場で巨大スクリーンが設置され、各家庭のテレビの前はもちろん、多くの人たちがこの歴史的瞬間を見守った。






この演説の中でケビン・ラッドは「We say sorry」という言葉を何度も口にした。
街中、国中に「Sorry」というTシャツ、プラカード、大地に書かれた巨大文字が溢れていた。
一日にあれほど「Sorry」という言葉を目にし、耳にしたことは今まで一度もない。






僕たちの歴史は多かれ少なかれ、先住民族たちの犠牲に成り立っている。
ネイティブアメリカン、アボリジニ、イヌイット、インディオ、アイヌ、、、。
時計は巻き戻せないが、この「ごめんね」の一言がどれほど多くの人々の心のわだかまりを軽くし、人と人との距離を短くするか。
非を認めた途端、保証問題等それに関わる事柄をすべて公式に見直さなければいけない。大変なことだがそれによって今まで膠着していた問題が大きく前進するだろう。
とても前向きな形で。






日本も公式に謝罪しなければいけないことが山積みのはずだ。
ちゃんと謝れる人と人は付き合いたいと思うだろう。
今の日本に必要なのは潔さだと海外から見ているとよく思う。
潔さは日本人の得意技だったはずだ。
なにも切腹しろと言っている訳ではない。






昨日、この「Sorry」の言葉が流れるたび、人々は涙を流し、抱擁しあった。
アボリジニの人たちだけじゃない、白人もアジア人も大人も子供も。
一つの国が「Sorry」という言葉のもとに心を共にし、温かく、優しくなれた一日だった。
この感動の余波は「盗まれた世代」の問題だけにとどまらないだろう。
こういう感動を政治が国民に与えられるのだということを、特に若い世代の人たちの心に長く定着するだろう。






日本人はなんでもすぐに「Sorry」と言ってしまう癖のある民族だ。
僕はこの国に来てからこの言葉を口にしないように心がけている。
この国では「Sorry」は軽い言葉でない。
この言葉を口にすると全ての責任を取らなければいけないのだ。
しかし、本当に謝罪しなければいけないことが起こったとき、素直に、心を込めて言えるようにしたい、「Sorry」と。









写真はジョン・ハワードでもケビン・ラッドでもなく、グリーン党ボブ・ブラウンの選挙ポスターだ。


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選挙のポスターは壁や道路沿いでよく見かけるものだが、ボブ・ブラウンに関しては人々の庭の中で見ることが多い。
やはり彼の顔は緑の中がよく似合う。






選挙ポスターといえば、タスマニアでは「これって逆効果だろう、、、」と思わずつぶやいてしまうような、渋いものも時々見かける。




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今回もコンデジショットだ。






昨日、この「Sorry」の話題に包まれている間中、僕の頭の中はトレーシー・チャプマンの『Baby Can I hold you』が流れていた。
何度も何度も。




Sorry
Is all that you can't say
Years gone by and still
Words don't come easily
Like sorry like sorry …♬








ranking banner私は一日に最低10回以上は「ごめんなさい」と言っている美しい人間だ、
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by somashiona | 2008-02-14 10:42 | デジタル

Kuruma de cloud  (クルマ デ クモ)




一週間のうちどれくらいの頻度で仕事じゃない写真を撮っているだろうか?
一眼レフを持ち出し、本気で。
平均すると0.3回くらいかもしれない。
いや、それ以下だろう。
特に今年に入ってからは、ほとんど自分の写真を撮っていない。
時間に余裕がない生活を送っていることに加え、追いかけるべきモノが今は明確じゃないからだ。

しかし、僕のポケットはほとんどいつも大きく膨らんでいる。
小さなデジカメが入っているのだ。
別に特別写したいものがあってカメラをポケットに入れている訳じゃない。
目の前で何か事件、事故、またはもの凄くフォトジェニックな出来事が起こったとき、カメラを持っていなかったばかりにそれを逃すのが怖いからだ。
LAでフォトジャーナリズムのクラスをとっていた時、Mr.ドイチャック先生は僕たち生徒に向かってこう言った。

「いいかい君たち、フォトジャーナリストを目指す者たるや、常いかなる時もカメラ一台、そして最低でもTri-X3本は持ち歩きなさい。もう一つ注意することは、カメラの中のフィルムは現像する直前まで使い切っちゃいけないということ。何か起こった時、とっさに写せるよう、最後の5コマくらい残しておくんだ。何かに備えるのが、フォトジャーナリストなのだよ」

その言葉が解けない呪文のように僕の脳の奥に定着し、僕はいつだってその言いつけを守った。
でも残念ながら、僕を世界の写真家にしてくれる何かが起こったためしは今まで一度もない。
そんな訳で、一眼レフのフィルムカメラから小振りなレンジファインダーへ、そしてデジカメ一眼に移行し、今ではコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)をポケットに入れるのみとなった。
僕のコンデジ、不満は山ほどあるが一番の不満はマニュアルフォーカスがついていないことだ。とっさに何かを撮りたい時、特に動いている人を撮る場合、、、。
おっと、話しを戻そう。

このコンデジ、1GBのカードを入れるとJPEGの一番良いクオリティでもかなりの枚数が撮れる。
1、2ヶ月に一度1GBのカードにたまったデータをハードディスクに落とし、時間に余裕があれば撮った写真を見る。
一眼レフで撮った写真はほとんどの場合、シャッタースピードや絞り値まで覚えているのに、このコンデジで撮った写真は撮った写真を見てもいつどこで撮ったか、そればかりか本当に自分が撮ったのかすら思い出せない。
ひどい話しだ。
寝ている間に蚊に刺された部分をボリボリと掻いている状態に似ている。
ほとんどの写真がクルマの運転中、マウンテンバイクから、そして散歩の途中に撮ったものだ。
こういった自分が半ば無意識に撮った写真はとても興味深い。
すべて狙った写真じゃない。
構図も露出もほとんど考えていない。
どんな理由か覚えていないが、何か感じるものがあったから撮ったのだろう。
いや、もしかすると信号待ちの暇つぶしだったかもしれない。
しかし、結果的に、こういった写真から写真行為の本質みたいなものがうかがえる。
日々の何気ない記録。
ありきたりの日にありきたりの道で撮った、どうということのない写真。
ここにこそ本物が映っている気がする。本物の日常が。
そして同時に素の自分も映っている。
気負いのない、ナチュラルな状態の自分。
自分の撮った写真をじっくりと見るという行為は、自分を探す行為だと僕は思う。
写真は撮る前にじっくりと観察することが大切だが、撮った後にもじっくりと観察すべきものだ。
露出や構図やピントの話しではない。
シャッターを押した理由を写真の隅々から探すのだ。


今回の無意識ショットを眺めていると驚くほど雲の写真が多かった。
僕はやはり雲が好きなのだ。
なぜだろう?

ということで、今日はクルマから撮った雲の写真を何枚かアップする。
題して『Kuruma de cloud』、日本語、スパニッシュ、英語混合?
(混合と入力すると、すぐに金剛力士と変換されてしまうのはなぜだろう、、、)
昔、写真家のアラーキーこと荒木 経惟氏が出版した写真集?に『 クルマ ド トーキョー』というのがあったと思う。
クルマの中から撮影した東京の街を一冊にまとめたものだった気がする。
とにかくタイトルはその真似で失礼!



これからも度々ポケット・コンデジ写真をアップしたいと思っている。








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ranking banner私も毎日カメラを持ち歩いているけど、だからといってスゴい写真が撮れた訳でもないなぁ、、、と思った人はポチッとよろしく!







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by somashiona | 2008-02-12 17:28 | デジタル

ヨハン、相原さんとご対面!




クレイドルマウンテン・ウィルダネス・ギャラリーのドアが開く時間が近づいていた。
久しぶりの山の中でヨハンはとても幸せそう。
きっと一日中山の中を歩き、木々の間から覗く青空を見上げ、苔むした木肌に触れ、鳥たちの鳴き声に耳をすませていたかっただろう。
しかし、この日の僕のスケジュールはタイトだった。
この後、相原さんにヨハンを紹介し、相原さんの写真を見てからヨハンをシェフィールドに連れて帰り、そこからホバートに帰らなければならない。
翌日は早朝から仕事だ。
ヨハンにもうギャラリーに行く時間だということを告げた後も彼は三脚の前からしばらく動かなかった。
突然耳が遠くなった訳じゃないことは分かっている。







ギャラリーに入るとヨハンはすぐにトイレを探す。
中に入ると用をたす訳ではなく、鏡の前でクシを使って丹念に髪型を整えはじめた。

「ヨハン、言っておくけど相原さんは男だよ」僕はニヤリとして言った。
「わかっとるよ。男だろうが女だろうが第一印象というものはとても大切なのだよ」とヨハン鏡に映る自分の顔を見つめながら言う。
「『陽のあたる場所』のモンゴメリー・クリフトみたいだから大丈夫だよ」
ヨハンはやっと鏡から視線を外し、僕の顔を見た。
「お、お、古い映画を知っとるな。あれはいい映画じゃったよ」
「だって、ジョニー・デップとか言っても分かんないでしょう?」
「なんだって?ジョニービーグッド?激しい音楽は好かんのじゃよ、、、」
「違うったら、、、」

そんな会話を終えて、僕たちはトイレを出た。








相原さんは満面の笑みで僕たちを迎えてくれた。
受付の女性を交えてしばしジョークを言いあった後、さっそく相原さんの写真を展示している場所へと僕たちは向かった。






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相原さんは作品について丁寧にヨハンに説明してくれている。
僕は少し距離を置いてその様子を見ていた。
相原さんはタスマニアの夏の日差しを120%浴びたようで、肌の色が日本人離れしていた。
相原さんで露出を合わせるとヨハンの顔が飛んでしまい、ヨハンで合わせると相原さんの顔には白い歯しか見えない。
ちなみに白い眼は笑うとなくなってしまうのだ。


僕は自分の大好きな友人を、まだ面識のない他の自分の大好きな友人に会わせる瞬間が好きだ。
そういう時はわざとその二人から少し距離を置く。
そしてその二人が会話を交わすのを見ていると、何か価値のあることを成し遂げたような妙な満足感に満たされるのだ。
僕がそれぞれの友人から受けた価値ある影響をこの二人も分かち合うかもしれないと考えると、縁結びの神様になったような気がする。
縁結びと言っても今回のケースは恋愛に発展することはないだろうが。






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僕の日本人の友人はもちろん、どんなオージーの友人を相原さんに引き合わせても、相原さんは飾らず、気さくに話しをしてくれる。
あの超人懐っこい笑顔で。






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ヨハンもやはり、いつものように控えめに、しかしジョークを飛ばすのを忘れず、相原さんに接している。






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ギャラリーを出る前に相原さんはヨハンを撮影したいといい、ヨハンは快くそれに応じていた。
相原さんが自然を前にシャッターを切るのは何度も見てきたが、人を撮る場面を見たことがなかったので、僕はとても興味深くその様子を眺めた。
カメラマンがよく言う「いいよぉ〜、その表情!」「最高だね、今のスマイル!」「前にもモデルやってたでしょ〜!」みたいな歯の浮く台詞は一言も言わず、いつものように会話を楽しむ延長で撮る。
カメラで顔を見えないが、その時は金剛力士にはなっていないようだった。
まあ、金剛力士モードで撮ったらモデルさんがチビッちゃうだろう。
僕は今まで3回くらいパンツを濡らした。







ウィルダネス・ギャラリーの別室で展示している他の写真家の作品をヨハンと二人で鑑賞している時、突然彼の叫び声が聞こえた。
「マ、マナブぅ〜、ヘ、ヘルプぅ〜!」






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驚いて振り返ると、ヨハンは一人で訳の分からないことをやっていた。
その様子を呆然と見ていた僕に、「ほれ、シャッターチャンスじゃろ。早く撮らんか!」と言った。
ちなみにヨハンの手をかじっている?のはまだ絶滅を信じない人が多いタスマニアンタイガー。
本物を見つけたら、一生遊んで暮らせる。
詳しいことは映画『タスマニア物語』を観ていただきたい。
若い薬師丸ひろ子に会える。








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相原さんと別れた後、ヨハンはスゴぶる機嫌が良かった。
そして5分走るたびに車を止めてくれ、といいシャッターを切りまくっていた。
まるでカーチェイスのある映画を見た後のツッパリ野郎の運転のように、K-1を観戦した後の攻撃的な中学生のように。
相原さんの写真を見て感化されたのだろう。
その気持ち、よく分かる。








ヨハンにサヨナラを言ってホバートに戻る車の中、僕の頭に、ヨハンの家で見た光景が浮かび続けていた。
ヨハンの食卓に小包から取り出したばかりのカレンダーが置いてあった。
今ドイツにいる娘さんから送られたものだ。
クリスマスプレゼントだったのかもしれない。
そのカレンダーには黄色いポストイットが張られ、娘さんの手書きでこう書いてあった。






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「これを見て思ったの。これって、お父さんが思い描く、この世の極楽じゃないかって。そう、もちろんここはあなたの生まれ故郷スイスよ!」








ヨハン、この世に極楽なんてあるのかな?
人間生きている間、それを夢見るだけで終わるのかな?
でも、小さな幸せはあるよね?
それは、生きている限り溢れているよね。





おわり








今回のヨハンおじいさんシリーズはひとまずおしまい。
我慢強く読んでくれた方、ありがとうね。
今度彼に会ったときは、また「ヨハンおじいさんの唄」をお送りします!


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by somashiona | 2008-02-09 20:23 | 人・ストーリー

ヨハン、相原さんに会いに行く旅




いよいよヨハンの相原さんに会いに行く旅がはじまった。
旅と言っても日帰りのドライブなのだが、ヨハンにとってはちょっとした旅だ。








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今回はヨハン、デジカメ一台、レンズ2本、フィルムのカメラ一台、ビデオカメラ1台、三脚一本と総力戦の装備だった。
歩くヨドバシカメラと呼ばれる(僕が勝手に呼んでいる)相原さんのフル装備を一度見てしまうと大概のことには驚かないが、なんせご高齢で、ポキっと折れてしまいそうなほど細身のヨハンがこれらの機材を持つ姿を見ると、そんなにたくさん持っていくのヤメようよ、、、という言葉が喉元まで出かかる。








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彼を見ていてつくづく思ったが、写真を撮る人間というのは撮影になるとなぜ豹変するのだろうか?








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いつも笑顔のヨハンだが、一度機材を手にするともうハンターだ。








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たくさんの病気を抱えているはずなのに、足取りが軽い。


蝶のように舞い、蜂のように刺している。


もともとシリアスな登山家だっただけあって、クレイドルマウンテンでは少し危険に思える沢の中も機材を背負ってぐんぐん進む。
僕が追いつけなくなるほどだ。


もちろん、撮影中は完全に自分の世界に入っているので、終始無言。








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話しかけると怖い顔で睨まれる。









金剛力士様の経験がなかったら、怖じ気づいて一人で下山していたところだ。
かといって放っておくと、彼の姿をすぐに見失う。
岩や影と同化してしまうのだ。








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カメレオン的な素質もある。








僕は僕で自分の写真を撮りたかったのだがどうしても集中できなかった。








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カラーでとってもダメ、モノクロにしても何かノラない、しまいには手持ち無沙汰さに自分の影を撮る始末だ。

そう、世界遺産の自然の中で僕が撮りたかったのは、やはりヨハンなのだ。









今回の旅で僕は2度、間違いなくヨハンを怒らせてしまった。
朝、ヨハンの家を出る時、彼はオレンジ色の大きな水筒にお湯を注いでいた。
「それ、どうするの?」と聞くと「マナブはコーヒーが好きだから、山の中で飲みたいだろう」と彼は答えた。
ただでさえもカメラ機材をたくさん用意しているヨハンにこれ以上重たい荷物を持たせたくないし、僕も撮影のときはできるだけ身軽でいたい。
そして何よりも数日間おいしいコーヒーを飲んでいなかった僕の頭の中は、カプチーノ、カプチーノという単語がこだまし続けている。
インスタントコーヒーではなく、クレイドルマウンテン・ロッジでとびきり美味しいカプチーノにありつきたかった。

「せっかくの美しい大自然の中で、わざわざレストランの中に入り、金を払ってコーヒーを飲むだなんて、わしにはとても理解できん!」とヨハンは語気を強めた。
僕はちょっと驚いてしまい、とりあえず「そうだねヨハン、その通りだ」と言ってはみたものの、心の中のカプチーノ、カプチーノの声は消えない。
でも、せっかくのドライブでヨハンをガッカリさせたくなかった。

2度目は朝クレイドルに到着した時、昼ご飯の話しになった。
僕は相原さんとヨハンの3人で食事をしながら話したかったし、3日間お世話になったお礼としてヨハンに美味しいものを御馳走したかったのだ。
「レストランがあるから大丈夫だよ」と彼に言うと、また怖い顔になってしまった。
「わしに任せるつもりはないか?」とヨハンが言うので、「はい、わかりました。全てお任せします」と僕は答えた。









山の中をしばし歩き、休憩することにした。
ヨハンのリュックサックからは色々なものが登場し、彼が全てを用意してくれた。








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彼が言っていたことは本当だった。
美しい自然の中で腰を下ろし、鳥や虫や川のせせらぎを聞きながら飲むインスタントコーヒーの味は高価なイタリア製のエスプレッソマシーンで入れたカプチーノの味を遥かに越えていた。
昼食も然りだ。
ヨハンのリュックサックから大きなジャムの空き瓶に入った煮込んだリンゴにゴハンが混ざった冷たい食べ物が出てきた。
ヨハンは朝早く起きてこれを準備していたのだ。
味は言葉では形容しがたいものだったが、味のことなどどうでもいい栄養がたっぷり詰まっていた。








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そして何よりも、満足そうにコーヒーを飲むヨハンを見ていると、彼の言う通りにして良かったと思えた。
ヨハン、家の中にいるときと顔が全然違う。
この人は暗い家の中じゃなくて、こういう場所にいるべき人なのだと思った。








僕もいずれヨハンの年齢になる。
今のように好きな場所に、好きな時に行けなくなるだろう。
そのとき、僕は今のように一人なのだろうか?
自分がありたい状況に身を置いているのだろうか?
どんな状況でも幸せを感じることができるよう、今から自分を磨かなくてはならない。








昔、大人の人たちは「年寄りの言うことは聞くもんだ」という台詞をよく言った。
いま、年寄りの言うことに耳を傾ける人が僕を含めてどれだけいるだろうか?


でも、今回ヨハンを見ていて僕は思った。

「年寄りの言うことは聞くものだ」と。








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by somashiona | 2008-02-05 19:52 | 人・ストーリー

はりきるヨハン




結局、ヨハンの家に2泊3日した。
でも仕事の都合で朝5時に家を出て、夜遅くに彼の家に戻るという動きになり、彼と会話らしい会話を交わすことができずにいた。


それでも彼は僕が家に戻るまで寝ずに僕を待ち、いつものように暖めたお皿に彼の手料理を載せたあと、僕がガツガツを食べるのをにこやかに見守ってくれた。


ヨハンの家に泊まるときはいつも、僕が彼より早く起きる。
彼が寝坊助という訳でも、僕がニワトリと言う訳でもなく、ただ単に彼の住むシェフィールドの美しい朝の光りを逃したくなかったからだ。








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しかし今回の3日目の朝は話が違っていた。
前日の仕事が予想以上にハードだったため、朝6時半まで僕の目が覚めなかったこともあるが、仮に僕が朝5時に起きたとしてもヨハンのはりきりには負けていただろう。


朝から部屋のあちらこちらをうろちょろ。
立ったり、しゃごんだり、ジャンプしたり、這いつくばったりしながら、部屋中の引き出しを開け、棚の上の覗き、本棚から本を引っぱりだしている。
まるで10年前に隠したへそくりでも探しているかのようだ。


随分前から写真好きのヨハンに写真家相原さんの話しをしていた。
そしていつか相原さんの写真展にヨハンを連れて行って、相原さんを紹介すると約束していたのだ。


3日目の朝、ヨハンがはりきっていたのは
1. クレイドルマウンテンまでドライブできるから。(車の免許を持っていないヨハンにとって彼の住む小さな町が彼の世界。そこを出ることは彼にとって冒険なのだ)
2. クレイドルマウンテンで大好きなブッシュウォーキングをし、そこで新しいカメラとレンズを使ってたくさん写真が撮れるから。
3. そして何よりも、クレイドルマウンテン・ウィルダネス・ギャラリーで相原さんの写真を見て、相原さんとお話ができるから。








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彼と朝食を食べる時、相変わらずの彼の几帳面さに僕は思わず笑ってしまった。
彼は身の回りにあるものを必ず綺麗に揃え、並べる人だが、朝の薬も例外なくシリアルの横に綺麗に並べてあった。
それをスプーンに乗せ一つずつ頬張る。
森の小動物が美味しい木の実を食べているみたいだ。
でも、僕はあることに気がついた。


「ヨハン、薬、前より増えていない?」
「いや、いや、ばれてしまったか、、、新しいカメラやレンズが増えたばかりではなく、病気もまた一つ増えてしまったのだよ。」








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Chronic Fatigue Syndrome(慢性疲労症候群)という病気にかかっていると診断されたらしい。
微熱、頭痛、関節痛、身体及び思考力両方の激しい疲労、特に彼の場合は気をぬくと食事中であろうと寝てしまう。
そのため、大好きな音楽鑑賞も、木工工芸制作もできず、ただ毎日をけだるく過ごし、寝てしまうということの繰り返しらしい。
それで彼の家から生活の匂いが消え去っていたのだ。
そう言えば、ちょっとの隙に彼は度々眠りに落ちていた。
気の毒なヨハン、新しいカメラとレンズは自分を奮い立たすための投資だったに違いない。








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バスルールから彼の鼻歌が流れる。
知らない曲だが、アルプスのフォークダンス系だろう。
アルプスの少女ハイジで流れてくる類いの曲だ。
彼の故郷スイスの曲だろうか?
電気剃刀でひげを剃る音はアルプスの草原を花から花へと飛び回るミツバチの羽音のようだった。








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「マナブ、一つ頼みがあるんじゃが」とヨハン。

「いいよ3つまでは」と僕が笑う。

「髪を少し切ってくれないか」

「スキンヘッドになっても構わないのなら、いいよ。」と言い彼の顔を見たが、彼は何かを決意した男のように真っ直ぐに僕を見据えていた。

「もうしっかりと髪に油も付けて男前だから大丈夫だよ。すこし年とって痩せているけど、シャツをスウェットパンツの中に入れたマーロンブランドみたいじゃない。どうして髪を今切る必要があるの?」

まだ寝ぼけ眼の僕は、正直いって朝からめんどくさいことをしたくなかったのだ。

「マナブ、君の大切な人に今日は会うんじゃ。敬意を持って接したいのじゃよ。もう一度聞くが、髪を切ってくれんか?」

僕は目頭が熱くなっていた。

「いくらだって切ってあげるよ、ヨハン」と言って僕はハサミを手にした。

「スキンヘッドは困るよ、マナブ、、、」

ヨハンはか細い声で言った。











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(やはりオーストラリアですから、、、汗)








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by somashiona | 2008-02-03 21:52 | 人・ストーリー

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