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在外日本人、日本のドラマにご用心



海外に住む涙腺ゆるゆる日本人ブロガーから出来るだけ触れないでほしいといわれている話題がある。
ことあるごとにそのタブーなお話を思い出しては目を潤ませる僕、もうこれ以上我慢出来ない。


その話題とはテレビドラマ化された『Dr.コトー診療所』のことだ。
なぁ〜んだ、そんなのもうかなり前の話じゃん、と日本の方々はいうだろう。
しかしここはタスマニア、インターネットが使えるようになったのも、つい3年前の話だ。(これはウソです)
昨年、タスマニアに住む友人が「面白いから観てごらん」と僕にビデオテープを貸してくれた。
ちなみに僕はテレビドラマにはまったく興味のない男。
まったく期待せずにビデオデッキのスウィッチを入れ、その結果、食べ物もろくに食べず、数日間ぶっ通しで2003年版、特別編2004年版を観てしまうはめになった。カーペットの上にはティッシュペーパーの残骸が散乱し、バケツ3杯分の涙を流したせいで部屋の湿度は上がっていた。
この感動を誰かに伝えたくて、周りにいるオージーたちに目を潤ませながら話の筋を説明するのだが、だれもノッてきてくれない。
おそらくドラマが英語に訳されても彼らはさほど感動しないのではないか?
僕が感動し涙を流した一番の理由はドラマ全編を通して日本人の心の美しさが緻密に描かれているからだ。
ドラマを見ていて僕は子供の頃に周りにいた大人たち、おじいちゃん、おばあちゃん、近所のおじちゃん、おばちゃんたちのことを思い出した。みんな素朴で近所の人たちと家族のように関わっていた。
そしてつい数週間前、待望の2006年版が手に入った。
今回はもう、前もって泣くと分かっていたので充分(泣く)準備をしてからソファーに座った。
そして予想通り僕の涙腺はダムの欠壊状態。
2006年度版では生まれながらの漁師、時任三郎演じる原 剛利が医者を夢見て有名私立進学校へ通うことになった息子、 富岡涼演じる 原 剛洋の学費を稼ぐため、自分の身体の一部である船を売り、生まれ育った小さな島を出て慣れない土木作業員をするエピソードで目がナイヤガラの滝状態になった。
ドラマを見終わった後も僕はしばらく考え込んでしまっていた。


僕の父親は公務員として退職まで働いた。
父がその仕事を愛していたかといえば、たぶんそうでもなかった、というしかない。
地道にこつこつと働き家族を養った。
僕の家庭はもちろん裕福ではなかったがそんな父のおかげで経済的困難に陥ったことがない。
お金がないために自分の進路を諦めざるを得ないという経験をしたこともない。
恵まれた話だ。
そして今の自分を見てみる。
写真に出会ってから、僕はこのことだけを考え、追いかけて生きてきた。
自由業なのでいい時もあれば、しんどい期間が続く時もある。
次のステップに進む為に博打(キャリア的)をしなくてはならない時も多い。
もし子供たちに、何か特別なチャンスが巡ってきたとき、僕はどれだけのことを彼らにしてあげられるか?
たぶん何もしてあげられない。
自分のことだけ考えて生きてきた、彼らの為に何一つ自分を犠牲にしていない、と気づき驚いた。
珍しく、心を許せる人たちにこの思いを打ち明けた。
オージーの友人たちのほとんどはこう言った。
「お金じゃない、自分の道を突き進んでいく父の姿を見せることが最高の教育だ。そういう姿を見て育った子供は自分の夢を実現するため奨学金などを得て前に進む人間になる」
日本人の友人たちのほとんどがこう言った。
「そうだね。大事な場面で何もしてあげられないのはちょっと甲斐性がないよね。家族がいるってことは自分だけの人生じゃないからね。夢も大事だけど安全策をとったほうがいいよねぇ」
オージーのこういう考え方は結婚生活に反映されることが多い。
自分の幸せを優先する結果、50%のカップルが離婚という結末を迎える。
僕もその一人だ。
日本人のこういう考え方は人生の冒険のチャンスを摘み、フラストレーションと諦めという十字架を背負い生きていく結果になることが多い。
僕はそのどちらの考え方もある意味正しいし、またどちらも危険があると思う。
どちらかを選択しなければ前に進めない時、選ぶのはどちらか?
それが問題だ。
両方を選べるといいのだが、時は僕の都合に合わせてくれない。
ある日本人の友人は僕にこう言った。
「私は両親から欲しいものは全て与えられた。でも一緒に過ごす時間は与えられなかった」
僕は子供たちの母親と離婚したせいで子供たちとは週末しか一緒に過ごせない。彼らと会っている時は200%全力を尽くすが、それでも本音を言うともっと一緒の時間が欲しい。
ある人はこう言ってくれた。
「マナブさん、この仕事で一流を目指すならタスマニアにいてはダメだよ。数年間都会で頑張って、安定した基盤を作ってから子供たちとの生活を考えてはどうかね。そのときはもっと子供たちに色々してあげられるでしょう」
別にブログで愚痴るつもりはない。(ホントに)
人生ってどうしてもっとシンプルに物事が進まないのだろう、と思っているだけだ。



やりがいがあり、充実した仕事。
生活の心配がなく、少しだけ贅沢が出来るだけの安定的収入。
子供たちとの愛が溢れる満ち足りた時間。
心許し、尊敬しあえる伴侶。
精神的・肉体的に満たされたプライベートな時間。
自然に触れることが出来る環境。


「二頭追うものは一頭を得ず」という人もいるが、僕が今まで出会った人生の達人たちには、前向きに努力をし、これら全てを手に入れている人たちがたくさんいる。
そう、諦めてはいけない。
考えろ。
Think, think! (くまのプーさん)



先々週、忙しくてまともに外を歩けなかった。(ブログも一週間更新出来ず)
子供たちとの土曜日、台風が去った後のような部屋の中を整理しているとあっという間に午後4時。
どうしても自然に触れたくて、家から車で10分、ファーンツリーのトラックへ子供たちとでかけた 。
すぐに小雨が降り出したが、構わない。
一時間ちょっとのウォーキングで僕も子供たちも充分リフレッシュ出来た。
やはり、自然の力は偉大。
そして10分でそんな場所にたどり着けるホバートを心から愛しく思った。






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森の中、あまりの暗さの為、超手振れ写真のオンパレード、おまけに今夜は眠たくて眠たくて、半分目をつぶりながらの雑なRAW現像。
そんな日もあるさ、と大目に見てね!






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by somashiona | 2008-06-30 19:45 | ソーマとシオナ

O型だけど、B型。



安っぽいビニールのカヴァーにはたくさんの擦り傷がつき、もう色あせてしまった僕の母子手帳にはハッキリとこう書いてある。



コンドウ マナブ
昭和○○年 4月 ○○日 生まれ
性別  男
血液型 B型



大学時代、ありとあらゆるバイトをやった。
ピークの時は友人となんちゃって有限会社を立ち上げ、その他3つのバイトを掛け持ち、月収も30万以上あった。
冗談抜きで、朝から晩まで働き詰め。
大学など行っている場合じゃない。(本末転倒)
辛かったのは地下鉄の終電が終わり、高圧電流が切られた後、地下鉄が走るルートを延々と歩き、トンネルの中のひび割れをチェックする仕事だ。
朝から昼までひとつ、そして昼から夕方までひとつ、さらに夕方から夜までもうひとつバイトをやった後の仕事だったので、もうフラフラだった。


とにかく短期間でお金が欲しかった。
使いみちは僕の夢だったオートバイでの日本一周だ。
出発の予定日まであと2ヶ月というところから資金を貯めはじめた。
これがやりたくて時間稼ぎの為に大学に行ったようなものだ、必ずお金を貯めて旅に出なければならない。
いつもどんなバイトがお金になるか、ウサギさんのように耳を立てていた。
本当かウソか分からないが、解剖用の献体を大学病院の地下にあるアルコールのプールに沈めるバイトかバキュームカーの清掃作業が一日で一番稼げるバイトだと、当時周りの誰もが言っていた。
今の若者はバキュームカーってなに?と言うかもしれない。
実際そのバイトの経験者は僕の周りには誰も居なかったので、限りなくデマに近い話だ。


ある日、人体実験の被験者にならないか、という話が舞い込んで来た。
よくよく話を聞くと、ある会社が開発した血液の分離器マシーンを試すため、その実験台になってほしいとのことだった。
ほとんどの友人たちは、とんでもない、という顔で断ったが、バイト料を聞いた僕は目が完全に¥マークになっていたので喜んで血液センターへ行った。
友人たちからは、「あいつ、とうとう自分の血まで売るようになったよ」と言われていたようだが、僕にはそんなこと関係なかった。
「このバイトはね、バイト代だけじゃなくあなたの血液をしっかり調べ上げて、もし異常があったら知らせてあげるというおまけ付きですからね。血液型は何?」と綺麗なお姉さんに言われ「チューは付いてないの?」と言いかけたがマジメ君を装って「B型です」とにっこり笑って答えた。
たくさん血を採られ、ちょっと貧血気味になりながらも、第一日目の実験台を無事に終え、翌週も第二回目の実験台になるため再び血液センターに行った。
僕の頭の中はあの綺麗なお姉ちゃんと何を話そうかということで一杯だった。
心の中で何度も仮想カンヴァセーション、いわゆるロールプレーイングを繰り返していたが、血液センターに行くと綺麗なお姉さんは僕の顔を見るなり「マナブさん、あなたB型だって言いましたけど、違いましたよ」と言って笑った。
僕も笑いながら「何を言ってるんですか、母子手帳にハッキリとB型と書いてあるし、なんてたって僕の行動は全て典型的なB型なのですから間違いないですよ。新しい血液ロボット、ちょっと問題ありなんじゃないですか?」と僕も余裕しゃくしゃくで答え、あらかじめ練習しておいた会話を綺麗なお姉さんとはじめた。
第三回目、この日綺麗なお姉さんに勝負をかけよう!という僕の思いとは裏腹に綺麗なお姉さんは先生と呼ばれるハンサムな医師と一緒だった。
そしてハンサム君は僕に言った。「マナブさん、あなたの血液には何一つ異常はなかったのですが、B型というのは間違いです。あなたの血液は限りなくB型に近いO型でした。これはもう間違いのない結果です」


血液型なんてどうでもいいと思っていたが、まるで「あなたの両親は、実は本当の生みの親ではないのです」と言われたみたいなショックを受けた。
崖っぷちに追い込まれると威力を発揮するB型からコツコツタイプのO型へ。
マイペースな自由人から(B型)社交家タイプへ(O型)。
経済観念のないB型から金銭感覚が優れたO型へ。
知らず知らずのうちにB型の特性を自分の心の拠り所にしていたようで、それが違うと分かった時から自分の行動に自信が持てなくなった。
この発見のすぐ後にあった後期のテストはボロボロだった。
崖っぷちに追い込まれると威力を発揮するB型の得意技「The一夜漬け」がいつものように威力を発揮しなかったからだ。


あれから20年以上たったが、僕の性格は相変わらずB型の典型らしい。
きっと母子手帳にB型と書かれた瞬間にこの性格は決まってしまったのだろう。
ちなみにオーストラリア人に血液型はなに?と聞くと95%以上の人は「そんなこと知らないよ」と答える。
そして「こいつ何を訳の分からないこと言ってるんだ」とでも言いたげな、いぶかしげな顔をして僕をしげしげと見る。






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by somashiona | 2008-06-28 00:24 | デジタル

自分のブログを考え直す



昨日、 henry66のブログ「青い蝉」に初めてお邪魔し、とても衝撃を受けた。


僕がブログをはじめたそもそもの理由は子供たちの記録を残したい、僕がどういう人間だったのか子供たちがいつの日か分かるものを残したい、という思いからだった。
ブログのタイトルも最初は『ソーマとシオナ』の予定だった。
もちろん、日の目を見ずに埋もれている多くの写真を公開したい、という思いも強くあったが。
僕がどういう人間だったかを残したい、という点において、僕がブログをはじめた当初のテキストはかなり尖っていたような気がする。
ブログはとても個人的なメディアだ。
ブログを続けることは楽しいけれど、楽じゃない時もある。
貴重な時間を割いて無償で情報を発信し続けることに、疑問を感じる時すらある。
訪れてくれる人が増えれば増えるほど、本来必要のないある種のプレッシャーやサービス精神が芽生える。
そうすると他人を傷つける行為でない限り、せめてブログぐらいは自分の正直な意見や気持ちを残したいという基本的態度が少しずつ煩悩や我という黒い影によって曲げられる。


世の中、綺麗なもの、楽しいこと、おしゃれなこと、美味しいもの、そういった情報で溢れかえっている。
厳しい現実世界を生きる為にはそういうものに接していないと、人々はやってられないのだろう。
特に時間はないが少々のお金ならある、という人にとって、そういった楽しみは簡単に自分をストレスから解放する最善の方法なのかもしれない。
オーストラリアに移住してからの僕はそういった類いの楽しみをまったく楽しめなくなってしまった。
一番の原因は多分生活レベルの低さにあると思う。
時間もなれけば、お金もない僕にとって、そういった楽しみに触れる機会があると心の底で罪悪感さえ感じてしまう。
この罪悪感は豊かな生活を送っている人には理解出来ないだろう。
しかし、強がりをいう訳ではないが、そういった楽しみを味わえない理由のひとつに、僕の写真に対する態度がある。



僕にとって写真にのめり込む大きな理由のひとつは「本物」をじかに味わえることだ。
この「本物」はほとんどの場合、地味で静か、そして98%の哀しみと2%の喜びだ。
本物の人々の生活を見るたび、本物の人生にはハリウッド映画のような楽しく、華やかな出来事などほとんどない、というのがよくわかる。
人々は多くの夢を捨て、ひたすら現実に耐えて生きている。
心の中はいつも不平不満が渦巻いているが、人にあう時は最大限の賛辞を絞り出し、自分の生活に関しても出来うる限りポジティブに語ってみせる。
そして、彼らはいつだって、わずかな喜びや消えかけた愛にしがみついている。
人々に会い、写真を撮っているとき、その絶望やわずかな喜びがいつも僕の心を圧倒する。
僕はその本物をいったん自分のフィルターに通し、彼らの本物の姿ではなく、あくまでも僕が理解した範囲に過ぎない彼らの姿を精一杯写真に収めようと汗を流し、時には涙を流す。
昔、あれほど好きだった映画、最近は何を観ても感動出来ない。
僕は理由を知っている。
美しい女優さんの名演技を見ているより、隣に住むおばさんが疲れきった表情で煙草をふかしている姿の方が僕の心をつかむからだ。



自分の子供の写真をブログで公開すべきでない、と人から言われることがある。
その意味も親切で言ってくれている気持ちもよくわかる。
でも、僕がいつも感動を貰うのは、誰かの作ったドキュメンタリーや写真展、そしてブログなどで見せてくれた彼らのまっすぐなメッセージと作品からだ。
これらの感動によって、僕は今でも少しずつ成長出来るのだと信じている。
他の人から素晴らしいものを見せてもらっているのに、自分は何も正直に見せないのでは不公平ではないか?
正直者は馬鹿を見る?
何が善で何が悪か分からないこの世界、僕が唯一間違いなく伝えられるのは、僕の心の中だ。
もし、僕がこれに嘘をつき始めたら、僕は一体写真で何が表現出来るのだろう?
もし、彼らの撮った写真の顔にぼかしが入っていたら、彼らのメッセージは半減するし、間違いなく僕の心に響かない。
自分を明かさず他人のブログに平気で批判を書き込む行為がネットの世界では蔓延している。
これはネットという性質からでる問題だから仕方がないと人は言うが、ものの性質を語る前に道徳を考えられるのが人間ではないか?
フォトグラファーの子供に生まれてしまったソーマとシオナには、自分たちの姿がブログに出ることは観念しなさい、と言ってある。
僕について言えば、せっかく自分や子供たちの為にブログを書き、写真を公開しているのだから正直な気持ちを腹を決めて出していきたいと思っている。
それが惨めな姿でも構わない。
そうすることによって、ひょっとすると誰かの心に何かが残るかもしれないし。
henry66さん、これからもブログ続けてくださいね。






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写真は札幌に住んでいた時代に撮った静物写真。(十何年前)
仕事で収めた写真のひとつ。もちろんフィルム撮り。
先週、僕は珍しく物撮りの仕事に明け暮れた。
思えば、この静物写真が仕事で撮った初めての物撮りで、まったく訳が分からずトレーシングペーパーのテントを作って試行錯誤した記憶がある。
今日のテキストと関係がありますかって?
「初心忘れべからず」ってことで、、、はい。






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by somashiona | 2008-06-26 15:06 | 仕事

歯の妖精がやってくる!(ヤァ!ヤァ!ヤァ!)





「ダディ、ダディ!」
シオナが興奮気味に叫びながらソファーに座っていた僕の膝の上に飛び乗る。






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何か意味ありげな笑みを浮かべ、僕に向かって手を差し出した。






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「え、なにシオナ?なんか拾ったの?」とアフリカ南部ジンバブエの大統領選決選投票に関するテレビ番組にどっぷりと浸かっていた僕は片方の眉を上げ、定まらない目で彼女の手のひらを見た。






「ね、ねっ、ダディ、いいでしょ!可愛いでしょ、マイ トゥース!」
「マイ トゥースって、、、歯?」






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彼女の手のひらにはポツンと小さな白い歯が転がっていた。
トウモロコシのかけらのような小さくて白い歯。
生まれてからまだ6年しか働いていないその歯は早々とそのお役目を終えたらしい。






「シオナ、痛くないの?」
「う〜ん、うん、全然、痛くない」
「でも、ビックリしたでしょ?」
「いつも指で動かしてたから、ビックリなんてしない。あのねダディ、今夜はこの歯を枕の下に置いて寝るのよ。そうするとね、シオナが寝ている間にトゥース・フェリー(歯の妖精)がやって来て、この歯を2ドルと取りかえてくれるの。ダディ知ってた?」
「え、えぇ〜、誰がそう言ったの?」
「マミーよ!」
「マミー、50セントって言ってなかった?」
「ダディ、2ドルよ。それで、そのあとシオナは昨日よりもビッグガールになるの!」
そう言ってシオナは少し大人びた微笑みを僕に投げかけた。






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自分の身体の一部を失ったのに、とても得意顔。
前歯からのぞく小さな隙間さえ、なぜか誇らしげに見える。
そうか!何かを失うって、何かが新しくなることだったんだ。






髪の毛を失っても、そう思えるダディでありたいと思った。






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by somashiona | 2008-06-24 13:43 | ソーマとシオナ

6月の花嫁 最終回



ジューン・ブライドということでウェディングフォトを続けて見て頂いた。
ここで紹介したのはあくまでも僕の体験談だ。
ウェディングを専門に撮る方が見ればきっとコメディだろう。


コメディといえば、結婚式写真を僕に依頼したお客さんに写真をお渡しするとき、笑える写真を番外編で出来るだけ用意するようにしている。
ジャッキー・チェン映画の終わりで流れるNG集みたいなものだ。
しかし、これはあくまでも余力があればの話。
シリアスな写真というのは案外撮れるものだが、笑える写真を狙って撮るのは僕には難しい。
僕は人を愉快な気持ちにさせられるタイプの人間ではないし、自然発生的に湧き出た笑いをフレームに収められず、悔しい思いをすることも多々ある。


写真を趣味としない人たちが旅行などで友人たちと一緒に撮った写真を見る場面に出くわすことがある。
プリントした写真を手に取り、一枚、一枚順を追って見るとき、手がとまる場面は笑える写真であることが多い。
時にしげしげと写真を見てニヤリとし、ときに腹を抱えて笑う。
こういう写真にはどんな美しい風景写真も敵わない。
思い出の写真を見て大笑いする時、その人たちは間違いなくハッピーなのだ。
写真が誰かを幸せにしている瞬間だ。
僕の大好きな写真家エリオット・アーウィットの写真を見るたび、僕はクスッと笑ってしまう。
そんな写真を撮れる人になりたいが、こればっかりは修行して撮れるものではない。


#4のウェディングでは花嫁さんを撮りながら、何度も僕は吹き出してしまった。僕がお客さんを笑わすのではなく、お客さんが僕や周りの人たちを大いに笑わせてくれた。
6月の花嫁の締めはそんな「おてんば花嫁さん」のスナップでいこう。






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彼女、結婚式を前に間違いなく緊張していた。しかし天性の明るさは緊張と混じりあった結果、彼女をハイテンションな状態にしていたようだ。しっとりとした写真を撮りたい僕の思惑とは裏腹に女たちの部屋では常に奇声が飛び交う。






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牧師さんが二人の愛の試練について、神聖な言葉を続ける。
だが、牧師さんの発したある言葉が彼女の笑いのツボにハマってしまった。
笑ってはいけない場だと思えば思うほど肩が震える。
そして、とうとうはじけてしまった。






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そんな彼女の笑い声は参加した人たちにも徐々に伝染し、先ほどまで神妙な顔をしていた新郎や牧師さんまでも、つられてしまう。






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しかし、さすがは神に仕える牧師さん、言葉続く。






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誓いの言葉を言う彼女、笑いすぎたせいか、文字通り舌を噛む。
そんな彼女のかわいらしい姿を見る人たちは常に微笑みを浮かべ、会場からは笑い声が絶え間なく響く。






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彼女の身体の線を見て気がついた方もいると思うが、彼女、バリバリのアスリートだ。トライアスロンやアドベンチャースポーツ系にむちゃくちゃ強いらしい。
「タキシード姿の男性たちに囲まれた可憐な花を撮りますからねぇ〜」
「あ、、、花嫁さん、マッチョなポーズじゃなくて、、、か、可憐、、、」






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「それじゃ〜、今度は男性陣だけ。渋ぅ〜い写真でいきますよぉ〜」
「あ、そこのあなた!子供みたいな顔してピースサインを出さないで!」






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「はぁ〜い、みなさぁ〜ん、集合写真いきますよぉ〜」
「それぞれ好きなポーズで決めてくださいねぇ〜」
「やっぱりポーズは僕が考えまぁ〜す!」






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大人も子供も、集合写真を撮る前は身体を動かしてもらうとリラックスした顔になる。ジャンプ写真のいいところは僕の指示や号令に従う態度がここで出来ること、皆が一緒になって何かをやるという気持ちを作れること、笑いが生まれることにある。ウォーミングアップのつもりで撮るカットだが、お客さんはジャンプ写真のあがりを期待する。みんな楽しそうでしょ。






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「じゃあ次は、ちょっとセクシーポーズでいきましょーかー!」
「あ、あっ、ちょっとやりすぎでぇーす!」

ちなみにこの花嫁さん、海外から引き抜きがかかるほど優秀ながん細胞の研究者だ。
文武両道を兼ね備えた素晴らしいお嫁さん。
幸せな人生を送るに違いない。







ウェディングフォトシリーズ、お付き合いいただき、ありがとぉ〜!






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by somashiona | 2008-06-16 14:53 | 仕事

6月の花嫁#4 その四







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式から披露宴まで30分だけ時間がある。
オーストラリアでの一般的結婚式では、この時間が新郎新婦とグルームズマン(花婿付添人)・ブライズメイド(花嫁付添人)のポートレイト写真をセットアップして撮る時間だ。
結婚式写真を頼むお客さんはこのポートレイトを何よりも楽しみにしている。
この写真のために仕事を依頼すると言ってもいいほどだ。
この日は幸運なことに式場から徒歩5分の場所にビーチがある。
僕は朝、このビーチで綿密なプランを立てていた。
何パターンかの撮影のための立ち位置を決め、そこに木の枝や石を置いて、スムースに撮影が進むよう青写真を作っておいたのだ。
むふふ、ゴルゴはいつだって完璧に動くのさ。
皆もヒールや革靴でビーチまで歩くのだから、それなりの写真を期待しているはず。
そしてビーチにたどり着くと、僕は目の玉が飛び出し、愕然とした。
あ、あれぇ〜〜〜、ビーチが、、、ない、、、。
朝、僕が見た一面の美しい砂浜が、、、消えてしまっている、、、。
あらかじめ決めてあったポジションが全て水浸しだ、、、。
み、満ち潮、、、。
この日、カメラも一台壊れ、 既に動揺していた僕は足ががくがく震えだした。






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動揺を顔に出さないよう、最大限努力した。
とりあえず作り笑いを浮かべ、皆を一列に並べる。
ここでの撮影の残り時間はもう20分を切っている。
昆布だらけの砂浜で平凡な一列に並ぶグループ写真を撮りながら、横目で必死に周りを見て、次のショットのアイディアを探す。
ダメだ、頭が真っ白、、、。






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よし、岩だ!岩を使おう!






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くそぉ、イマジネーションが湧かない、、、。
僕が新郎ならどんな写真が欲しいか、、、。
美女に囲まれた写真!
よし、ノッてきたぞ!






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ファッション写真風だ!
どうだ、せいしょくしゃの意地を見たか!
と調子にノッてきたところで時間切れ、、、。






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いや、諦めちゃいけない!
いい写真のチャンスはどこにでもある!
と、会場に向かう途中も僕は戦闘モード。






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あまりの戦闘モードぶりに笑う彼女たち。






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ビーチでのグループショットの後はB&Bの裏庭で家族写真だ。
これに約20分時間をとってある。
家族写真の一番のポイントは、皆をきちんと時間通りに所定の場所に集めること。
僕はこの役割に神経を集中している暇がないので、あらかじめ新郎のベストマンにこの役を頼んでおいた。
ぜったい時間厳守だ、とかなりプレッシャーをかけておいただけあって、時間どおりに皆集まってくれていた。

家族写真でもうひとつ大切なことはどの組み合わせで撮るかあらかじめハッキリと決めておくこと。
娘とお母さん。娘だけの家族。娘の家族と新郎。娘と新郎の家族の女性陣だけ。新郎の家族と、、、。無数の組み合わせをあらかじめ紙に書き込み、誰かがそれをさっさとセッティングする。






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新郎、新婦のお父さん、新郎のお父さん。






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思いのほかスムースに家族写真が済んだので、ピーチで思う存分撮れなかった新郎新婦のポートレイトをこのガーデンで10分間撮った。
まずは新婦だけから。






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つづいて、結婚式写真では定番のショット。
結婚式定番写真は新郎新婦がこの先10年後、30年後も繰り返し見る写真だ。
奇をてらったポーズ、アングル、フィルター、加工、そして極端な広角レンズは時が経つと臭い写真になってしまうだけ。
時の流れに耐えられる、落ち着いた写真を撮りたいものだ。






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見つめあう定番ショット。






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最後は定番中の定番ショット。






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幸せを呼ぶブーケは新婦の親友の手にあった。
次は彼女の番か?
名刺を渡しておこう。






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そして、最後は披露宴パーティーの会場へ。
二人は拍手で出迎えられる。






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ガゼボ(簡易テントみたいなもの)で出来た会場。
ディフューズされた自然光がうっすらと室内に回って、とても綺麗だった。






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ゲストたちは皆、タスマニアの北の外れにはるばる車を走らせ来た人たちだが、疲れた顔も見せず、大いに盛り上がっていた。
さて、ここで。
夜光虫の君たち、この写真を見て好みのタイプの女性がどこにいるか、一瞬にして写真の隅から隅まで見渡したはずだ。さらに上をいく人はコンマ一秒のスピードでドレスからはみ出る胸元を発見したかもしれない。そう、これだ!この集中力で目の前に広がる被写体を見るのだ。この本能に従うスピードと正しい判断力は絞りは何がいいか、レンズはどれを使おうか、いい構図を探そう、といったのろまな思考を遥かに越える。技術的なことは家に帰ってからゆっくりと写真を見て反省すればいい。しかし本番では本能に従うのだ。それは自分が持っている潜在能力すら引き出してくれる。
カメラを持ったら考えない。Feel it! 感じるのだ。感じる達人になるのだ。(だから女性はいい写真が撮れる、汗)さあ、カメラに刻み込もう「エロ is Power」と。






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最後に僕は、遠くから二人にもう帰るという合図を送って、この場を後にした。






DVDディスクに焼いたカット数は500枚以上。
二人ともとても喜んでくれた。






今日のまとめ
・撮影がスムースに進むよう可能な限りプランを練ろう。
・予定通りに事が進まないのは写真も人生も同じだ。そんな時はそのことをさっさと忘れ、すぐに気分と頭を切り替え、次にすべきこと を考えよう。
・フォトグラファーが被写体を観察しているのと同じくらい、被写体はフォトグラファーの一挙一動を見ている。自分が動揺したり、不 機嫌になった場合は100%それが相手に伝わっていることを認識しよう。
・人物撮影はテンポ、リズムが大切だ。いい構図やロケーションが見つからないからといって撮影がとまると被写体の集中力やテンショ ンが下がる。そういう時は捨てる写真を撮り続け、その間に次のよりよいショットのためのアイディアを考えよう。
・いい構図、ロケーション、アイディアがとっさに頭に浮かばない時は自分の本能、欲望、ファンタジーに従おう。下手な小細工をする よりもストレートで強い写真が撮れる。(エロ is Power)
・撮影が終え、移動している最中、雑談中は被写体にとってはカメラを意識する時間ではないが、フォトグラファーはカメラを持ってい る限り、いつでも被写体を意識しよう。ポーズ写真とは違ったナチュラルな被写体の姿を捉える最良のチャンスだ。
・グループ写真、家族写真はいかに時間通りに皆を集め、あらかじめ決めておいた組み合わせ通りに撮影を進められるかにかかっている 撮影に集中出来るよう、その役をあらかじめ責任感の強い人に頼んでおこう。
・定番ショットは奇をてらったアプローチを避けよう。70歳のお年寄りが超広角レンズで撮ったショットを「すげぇ〜のう、クールじ ゃ!」とは決して言わないことを知っておこう。
・結婚式写真はスピードライト(フラッシュ)に頼る割合が相当高い。
 フラッシュの使い方は熟知しておこう。
 直接フラッシュの光を当てるか、バウンスするかは、またはカメラから離して撮るかは、その場の状況次第。
 バウンスは光が綺麗にまわり、露出も安定するので安易に使ってしまうテクニックだが、シャッタスピードを上げ、場明かりを殺して しまうと、その場にある柔らかい光と陰を台無しにし、退屈でフラットな写真を作ってしまうということを忘れてはいけない。    スピードライトを使う時はその場の光をいかに利用するかを常に考えよう。
・いい写真を撮ろうとどんなに努力しても、またいかにいい写真を撮ったとしても、その場にいる人たちに不快な思いをさせてしまった ら、その仕事は失敗だ。
 礼儀正しく、いつも笑顔で、しかし写真を撮る時はしっかりのその場を仕切ることを忘れてはいけない。








以上が結婚式写真のはじまりから、終わりまでの具体例だ。
もし誰かに結婚式写真を頼まれたのなら、いい機会なので是非受けてほしい。
どんなに簡単な撮影でも、依頼されて撮る行為は普段の撮影とは違うはず。
自分の写真を撮る時とはまったく違う種類の真剣モードになり、普段の撮影に対する自分の甘い姿勢とテクニックが浮き彫りになるはずだ。
これは自分の写真を見直すいい機会になる。
謝礼などを相手が用意してくれるなら受けるべきだ。
お金をもらった方がより真剣になる。
そして、そういうふうにして、プロになる人が増えてくると、僕はまた困ったことになる。


次回は最終回、番外編。
えぇ〜、まだやるのぉ〜、と言った人、一週間撮影禁止です。






注)このブログ写真講座はブログ用のネタなので、あまり真に受けないようご注意ください。






ranking bannerなんだ結局は「エロ is Power」ってことじゃん、オヤジはオヤジってことじゃん、と思った人は「カンフーパンダ」(昨夜子供たちと観に行った、かなりgood)を観てポチッと反省しましょう!







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by somashiona | 2008-06-14 10:46 | 仕事

6月の花嫁#4 その三





フォトブログ写真講座、前回あれほど真剣に解説したにも関わらず、結局皆さんの心に残っている教訓が「エロ is Power」だと事実にショックを隠せない僕。
(もう皆さん、そういうこと、好きなんだからぁ)


書く人がエロだからか?
読む人がエロだからか?
それが問題だ。



めげずに今日も写真講座、いきまっせ!






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花嫁の準備が整い、ダディと記念撮影。
慌ただしい中、スピードライトをカメラから離し撮影する。




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いい瞬間はいつも、ポーズ写真の後に訪れる。






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散らかった、狭い部屋の中で式直前のポートレイトを撮る。
こういう状況では出来ることは限られるが、それでも最善を尽くそう。






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技術的、時間的に出来ることに限界がある時は、被写体のパワーでポートレイトをものにする努力をするしかない。






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同じ場所で、同じイメージの写真。
モノクロとカラー、両方おさえておくとお客さんに喜ばれる。






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新婦とブライドメイトのポートレイト。
この部屋がどんなに爆発していたか、この写真からは分からない。
ポートレイトは人数が多くなるほど難しくなる。
人数が多い時のポートレイトは一人一人の表情より全体の造形だ。
僕は造形美に弱いタイプのフォトグラファーなのでこういう写真ははっきり言って苦手。






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そう、こういう写真が僕の味だ、と自分で言ってしまう。






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まさに式にいく寸前の顔をフレームに収める。






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ベール越しの女性の顔、個人的に好きな状況だ。






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あの扉の外へ一歩出れば、違う人生がはじまる。






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そして、そんな娘を見つめる父の顔。
おっ、まずい、またうるうるしてきた。






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いよいよだ。お父さん、かなり緊張気味。






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ヴァージンロードを歩く前、父と娘、しばし見つめあう。






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野外での結婚式、特にタスマニアという島ではとてもお似合いだ。
日中、野外でのイベント写真撮影は露出に注意する。
特にタスマニアのように大きい雲が晴天の空を流れる環境では太陽が雲に隠れるたび露出が3ストップ(3段)以上簡単に変わる。
ファインダーを覗き、撮影している状態でも露出の変化に敏感に反応しよう。
晴天の野外撮影は顔に濃い陰が出来やすいので、通常スピードライトでフィルライトを当てるが(僕の場合はスピードライトの発光量をマイナス1.5ストップ前後位に固定してしまう)、フラッシュの光がその場の神聖な空気を乱し、参加者をイライラさせる場合もある。
その空気を感じたら、速やかにスピードライトのスウィッチを切り、RAW現像時に陰を起こす努力をしよう。






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これは結婚式写真だけではなく、イベントものを写すとき全てに言えることだが、撮影者が自分一人だからといってひとつのポイントだけで撮ってはいけない。自分はその場にいるので現場の全体像を掴んでいる、しかし、写真を見る人、特にその現場に行っていない人は全体の雰囲気がどういうものだったのかが一カ所からの撮影では伝わらない。
自分が仕事をしている現場がどう見えるのか、あらゆる角度からそれを伝える努力をしなければいけない。
しかしながら、イベントを追うとき、ベストポジションから離れ、イベントの進行から一時自分を切り離すのはリスクが伴う。
ここは勇気を持って、捨てるべき場面は捨てなくてはならない。
新婦たちが着替えをしていた部屋の鍵をあらかじめ借りていた僕は、疾風のごとく建物の2階に駆け上がった。






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下におりると、今度は池の石垣にへばりつき、違うアングルをおさえる。
このアングルから見える2階の窓がその前に写真を撮った場所。






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手作りの結婚式、BGMは友人の歌声だ。
思わず僕も一緒に歌いそうになったが、結婚式を台無しにしてしまう可能性があるのでやめにした。






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指輪交換の瞬間。
彼女の表情からその思いが伝わる。






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そしてキスを。
こんな場面を見ると僕も誰かにチューしたくなる。
この時はカメラにチューをしてその場をしのいだ。
指輪交換からキスまで、結婚式で撮り逃しては行けない場面のひとつだが、普通はこれを教会の中でやる。教会の中はフラッシュ禁止の場合が多い。
しかも教会はたいがい暗い。
一脚、三脚という手もあるが、一人で動き回る結婚式ではできるだけ邪魔なものを持ちたくないのが本音だ。
身軽さは写真に集中するためのとても大切な要素なので、何を持ち、何を切り捨てるか真剣に検討するべきだ。






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結婚の誓約書にベストマンがサインをする。






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そして、新郎新婦がサインをすると、二人は晴れて夫婦だ。






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式が終わる頃には飾り付けてあった花がほとんど倒れていたが、誰もそういうことは気にしない。
実はこのとき、僕はパニックに陥っていた。
カメラが一台潰れていることに気がついたのだ。
シャッタスピードが1/125秒以上になると正常に動かない。
結婚式写真の鉄則(に限らず仕事で写真を撮る場合)は必ずカメラのボディーを2台以上使うことだ。
フィルム時代は使うフィルムの感度の問題もあってボディーを2台以上使うのが当たり前だった。
スポーツを撮る時は必ず最低3台、首や肩にぶら下げていた。
デジタルになってから、ほとんどの撮影は1台で済むようになったが、それでも「もしも」に対して必ず保険をかけておかなくてはいけない。
カメラが壊れて写せませんでした、コンパクトフラッシュの画像が消えました、じゃ済まされない問題だ。
どんなに面倒でも、カメラは2台以上持っていこう。
一台が壊れていたことに気がつかなくても、最低限、もう一台のカメラに使える写真がある。
このカットはどオーバーになってしまったカットだったが、なんとかフォトショップで使えるカットに出来た。
フォトショップ様、様だ。






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式が終わり、新郎新婦はゲストたちからお祝いの言葉をかけられる。
こういう間違いなく周りがごちゃごちゃした状況ではメインの被写体を中心に闇雲にシャッターを切りたい衝動に駆られる。
ナショナルジオグラフィックマガジンなどで宗教的儀式や村のお祭りなどの写真を見ると、混沌としたカオスの中でフォトグラファーが美しい造形を見つけ出し、その場をの熱を語りながら、なおかつ写真的にも高い完成度を目指しているのがわかる。
こういう場面でフォトグラファーの技量が試されるのだ。
ごちゃごちゃした状況下においても、コンポジション的な美を探そう。






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式が終わった直後は参加者の顔にまだ式の興奮が残っている。
ゲストの姿をフレームに収める大切な場面だ。
手を抜いてはいけない。






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単なるスナップといわず、感情が伝わる写真を撮ろう。






今日のまとめ
・ポーズ写真を撮り終えたときの被写体を狙おう。
・技術的、環境的にいい写真が撮れそうもない時は、被写体のオーラにすがろう。
・グループ写真は造形美を意識しよう。
・大切な写真を撮り逃したら、お金をもらえないばかりか、一生恨まれて生きていかなければならないことを自覚しよう。       それが嫌なら、最善の準備をして撮影に臨もう。
・フラッシュの存在を感じさせない日中シンクロは確実に身につけておこう。
・カメラは必ず最低2台用意し、両方で撮影しよう。
・フォトグラファーはフォトショップに足を向けて眠らないようにしよう。
・他人のチューを見て、自分もその気になるのは間違っていると意識しよう。
・混沌とカオスの中でも造形美を意識しよう。
・カメラをバックにしまうまでは手を抜かない、気を抜かない。








え、写真講座、そろそろ飽きてきた?

その四に続く






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by somashiona | 2008-06-12 09:29 | 仕事

6月の花嫁#4 その二


石頭フォトグラファーburgさんより、その二を急ぐようにという催促と長文マジレスを頂いたので、今日は珍しく翌日アップを強行する。



カ、、、(スライドショーの擬音はもうやめ)




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新郎とベストマンのカットはおさえておかなければならない。
女性はメイク、ドレスなどの準備に時間がかかる。
ポートレイト系は男性グループを先に撮ろう。






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そうこうしているうちに、ゲストたちが続々とB&Bに到着する。
慌ただしくなる前にゲストたちの顔をフレームに収めておこう。
新郎新婦たちにとって、ゲストたちの姿は後々大切な記録写真になる。






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ゲストたちを撮る時、出来るだけ話をしよう。
新郎新婦たちの身内か、それとも仕事関係の仲間か、写真に収める優先順位を頭の中へ必死に叩き込む。とはいえ鬼のような顔になってはいけない。
おめでたい席だ。顔はいつでもにこやかに。






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ゲストたちが集まりだしたにも関わらず、新婦たちの部屋は準備がなかなか進んでいない。彼女たち、本気で焦りだす。






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新婦が主役と頭で分かっていても、美しい女性を発見したら本能でシャッターを切ろう。エロはいつだって創作意欲に結びつく最大の力だ。






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美女たちが着替え、メイクをする女の館では自分の姿を消そう。
バスムームの壁に張り付きながら鏡に写る彼女たちを撮っている僕はほとんど息を止めていた。
辛い仕事の中でいかに幸せを見つけ出すかが、仕事を長く続ける鍵になる。






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「ねえ、ねえ、このパフュームってとってもいい匂いだと思わない?」
化粧品の匂いが充満するバスルームの中で頭がボォ〜としていた僕は
「うん、とってもいい匂い」と思わず答えてしまい、皆が僕の存在に気がつき、笑った。






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新婦、いよいよウェディングドレスに着替え始めた。
このあと下着姿にいたるまで、僕はシャッターを切り続けたが、こういう場面で躊躇してはいけない。
ここにいる女性たちと同じく、自分もこの式を作る一人だと自覚すれば遠慮してその部屋から出ることもなく、出てほしいと言われることもない。
これはスポーツ、芸能、報道などあらゆる分野で言えることだ。
その場に自然と溶け込む、これが大切。
写真はその場にいなければ撮れないのだ。






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どうやってウェディングドレスの後ろを縛るのか、誰も分からない。
一同、焦りまくる。






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どうやら解決の糸口が見えてきたらしく、皆の顔から安堵の笑みがこぼれる。
こういうシーンは結婚式の思い出とともに彼女たちの記憶に残るだろう。
写真的に撮り逃すしてはいけない瞬間だと、本能的に気づかなくてはいけない。
大切な場面の写真は、フォトショップで少しいじる。






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結婚式写真を撮るとき必ず聞かれるのは、モノクロも撮ってくれるかどうかということだ。
それだけではなく、どれくらいフォトショップで加工してくれるかを聞かれることさえある。
ブライダルフォトグラファーがフォトショップを使うようになってから大げさな加工の写真が目につくようになった。
品のないセピア。だだコントラストを上げビビッドな色にしただけの写真。
悲しいかな、一般ピープルは大げさなフォトショップの作業を写真に加えれば加えるほど、喜ぶ傾向がある。
最近では何も加工をしないと、まるでフォトグラファーが手を抜いたように思われるほどだ。
僕は結婚式の一連の写真の中でポートレイトとして成り立つカットや印象的なカットに関してモノクロやフォトショップで加工し一連の写真と差別化する。
それでも、出来るだけ最小限の加工にとどめ、自分のテイストが残るよう心がけている。






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女たちの館では写真撮影会がはじまった。
マタギのように自分の存在を消し、撮影に徹しすぎたのか、皆プロフェッショナルなフォトグラファーを部屋の隅へ追いやり、ベストポジションを独占する。
こらぁ〜、どけなさぁ〜い!
だから、時間がないんだってば!






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一番嬉しそうに写真を撮っていたのは、やはり花嫁のお母さん。






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こちらのウェディングのしきたりでは、式がはじまるまで新郎と新婦は別々の場所で式を待ち、お互いの姿を見てはいけない、ということになっている。
新婦、窓の下にタキシードを来た新郎を見つける。
「うわぁ〜、彼ったら素敵、、、」






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「しぃ〜っ、見つかっちゃダメよ」






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「うふふふぅ〜!」

はい、はい、あなたたちは幸せ者です。
こういう時の女性って、本当にかわいらしい。






今日のまとめ
・男子をさっさと先に撮る。
・忙しくなる前にゲストと会話し、撮影の優先順位を探る。
・本気モードだけど顔はニコニコ。
・エロ is Power.
・女性のいい匂いに酔って自分を見失わない。
・その場に溶け込みすぎて撮影のベストポジションを一般ピープルに奪われない。
・すこしはカスタマーに媚びた画像処理をする。
・何気ないシーンが人々の心に焼き付くことを知る。
・伝統のしきたりを破った花嫁がいたら、証拠写真を撮っておく。

その三へ続く












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by somashiona | 2008-06-10 18:10 | 仕事

6月の花嫁#4 その一



オーストラリアに移住した最初の2ヶ月はクイーンズランド州のブリスベンに滞在した。
そのときに仲良くなった男性はブライダルフォトグラファーだった。
僕は雑誌の仕事をする前、日本やロスアンゼルスでなんどか結婚式の写真を撮った経験がある。
僕は結婚式写真をプロとしてメディアで活躍する前の前座の仕事のように考えていた。
結婚式の写真くらい撮れないと、プロじゃやっていけないと。
これは完全に間違った考えだ。


ブリスベンで出会った彼にオーストラリアのブライダルフォト事情を教わった。
こちらでは各都市にブライダルフォト専門雑誌がある。
かなり分厚く、印刷のクオリティーが高い雑誌だ。
雑誌をめくると写真をやっている人はきっと驚くだろう。
それはまさにヴォーグとナショナルジオグラフィックが混ざりあったような内容なのだ。
一級のファッション写真であり、ドキュメンタリーフォトグラフィック誌だ。
これから結婚をしようとするカップルはこういう雑誌を見て、お気に入りの写真を撮るフォトグラファーを見つける。
そして、彼や彼女に仕事を依頼するのだ。
そこでカリスマ的存在になったブライダルフォトグラファーはテレビコマーシャルでも宣伝するし、日本のみのもんたが出てくるような奥様番組に出演し、私が撮ればあなたはこんなに変身できる、みたいなショーまでしてしまう。


日本で雑誌中心の仕事をするようになってから結婚式の写真を撮ったことがなかった。
オーストラリアに来てからはごくごくたまに結婚式写真の依頼を受けるようになった。
自分で言うのもなんだが、雑誌の仕事をする前と今僕が撮る結婚式写真の出来は格段の差があると思う。
スポーツ系の写真を雑誌で撮っていたので、動く被写体に強くなったこと、そして何よりもフラッシュの使い方を覚えたことが大きい。
それでも僕が心から思うのは、いい結婚式写真を撮るのはとても難しいということだ。
ちなみにブリスベンの彼は結婚式写真を全てプログラムモードで撮っていた。
彼は僕に言った。「ああ、マナブ、僕は君にカメラの使い方から教えないといけないようだな。このダイヤルのAはどういう意味か言ってごらん」
「え、それってアパチャープライオリティー(絞り優先)でしょ。で、Sはもちろんシャッタープライオリティー」
「なんだ、知っているじゃない。でもこの僕がいつも使っているPの意味を君は知らないようだね。Pはね、プロフェッショナルモードといって、プロはこれで撮るのが一番安全なんだよ」
僕はプログラムモードで仕事をしたことが一度もないが、彼の言う意味も分からないでもない。プロの写真は失敗が許されない。マニュアルの設定でもたもたし、大切なシーンを逃すくらいなら、プログラムモードで60点の写真を撮った方がいいのだ。
僕は60点の写真など撮りたくはないが。


写真を愛する皆さんも、会社の先輩や後輩からこうお願いされることがあるだろう。
「佐々木課長、写真いつもブログで見てますよぉ。ホントお上手ですよねぇ。実は僕の結婚式で写真をお願いできないかと思って、、、」
「いやいや、田中君、僕はね、そのぉ、なんだよ、花や海を撮るのが専門で、同じ写真でも、ほら、ちょっとちがうのよ、、、」
「また、また、課長、ご謙遜を!」
こんな写真愛好家が結婚式写真で愛される写真オタクになるため、今日から数回にわけてフォトブログ結婚式写真講座を勝手に開講する。
僕が結婚式写真で学んだノウハウを皆さんに伝授したい。
前もって言っておくが、こんなことを偉そうに言うのはこれがなんちゃって写真講座だからだ。
僕が今まで経験した結婚式写真は合計で20回いくかどうかだ。
なので、自分でも何が結婚式写真で大切なのか、ぜんぜん分かっていない。(汗)
よく知らないことに関しては、人間、偉そうなうんちくを語れるものだ。


結婚式写真を撮るとき心がけること。
それは
1、記録としての写真を撮ること。しかし単なる記録写真ではなくドキュメンタリータッチに。知らない人が見ても、そこになんらかのストーリーを見いだせるようにする。
2、きちんとしたポートレイト写真を撮ること。
これはポートレイト写真のための時間をきちんと取ってセットアップした写真を撮る側面と、記録写真を撮る流れの中で光り輝く場面を見つけ、ポートレイト写真にしてしまう、という側面を同時に進行させなければならない。
3、結婚式に参加した人々をまったく抜きにしたイメージ写真を撮る。
多くの人が結婚式のプログラムや料理、指輪、などのクローズアップを結婚式写真で撮るだろう。しかし、それ以外にもその日見た空や雲、建物、草花、などを心象写真的に取り入れると写真を全体をまとめたとき単調じゃない楽しいアルバムが出来る。

もうお気づきかもしれないが、ブライダルフォトはスポーツ、ポートレイト、風景、物撮り、そして高いコミュニケーション能力といった写真の全てが要求される分野なのだ。
だから僕は苦手。


今回は1つの結婚式をはじまりから終わりまで追って、結婚式写真を解説する。(なんて、あらたまって言うと、自分で笑ってしまう)
スライドショーを見ていると思って聞いてほしい。






カシャ。(スライドショーの音)




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この時の現場は僕の住むホバートから遥か遠い、タスマニア北部の先端に位置する海岸のB&B(旅館)だった。
大切なこと、その一。現場に着いたらその場に自分の目が慣れる前に自分の第一印象をフレームに収めておく。これが写真を受け取る人たちのその場に対する第一印象であるかもしれないからだ。お客さんと精神的に共有できるカットを最初の掴みにしたいところ。






カシャ。




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この結婚式に関しては新郎と一度打ち合わせをしたのみで、新婦の顔すら僕は知らなかった。結婚式は新婦が主役。新婦とブライドメイトが準備をする部屋を教えられドアを開けたが、誰が新婦なのか僕には分からなかった。
やるべきことが山積みの彼女たちも自分たちのことで頭がいっぱい。
自己紹介をした後はカシャカシャと撮りはじめず、しばらく様子を観察し、それぞれの人たちのキャラを掴む。






カシャ。




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新婦の親友が新婦のメイクを担当していた。






カシャ。




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ドアがノックされ男性が入ってくる。深刻な顔で何やら説明がはじまる。
このあたりから、この式は家族や友人たちが手作りで行なうものだということに気がつく。それをひとつのテーマとしてフレームに収める必要あり。






カシャ。(だんだんこのカシャが面倒になってきた)




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一度、新婦たちの部屋を出てB&B全体をぶらつく。
新郎が披露宴のパーティの準備をしていた。






クシャ。




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B&Bの裏庭で池を発見。ポートレイトのロケーションで使えそう。
どの位置から撮るといい写真が撮れるか、事前にアングルを決めておく。
どのタイミングでどうやって被写体をここに連れてくるべきかも考えておく。
ついでにイメージカットも一枚。






メチャ。




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純白のウェディングドレスが誰もいない部屋で静かに佇んでいた。
こういう写真はおさえておかないと。
とにかく、式がはじまる前は会場や各部屋をくまなくチェックし、絵になるもの、物語になるものを探す。






カチャ。




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天候が変わってきた。
ちょっと重たいイメージカットも有効に使おう。






モチャ。




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イメージショットは撮って出しだけではなく、フォトショップ等の加工を前提に考えて撮っておこう。このカットはRAW現像で少し工夫。






その二につづく






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by somashiona | 2008-06-09 14:59 | 仕事

6月の花嫁#3



海外に住んでいると様々なお国柄の結婚式を体験できるが、その中でも特に興味深いのが国際結婚だ。
これは正に異文化融合の瞬間だ。
国際結婚を見るたび、こうやって世界はひとつになっていくのだ、という実感を持つ。


日本人同士の結婚でさえゴールまでは山あり谷ありなのだから、国際結婚をするカップルの道のりはパリ・ダカールラリーくらい過酷だ。


僕の友人であるオーストラリア人のD君は聡明な日本人女性に恋をした。
とてもしっかりした彼女が育った家庭環境は超がつくほど純日本風で、古来日本から受け継いだ家族の鏡のようだった。
そして、家長制度がいまだにしっかりと機能している純日本風な彼女の家族はD君にとって高い、高い壁となって立ちはだかった。


「マナブさん、オトウサンにテガミをカキマシタ、チェックしてください」
彼女と出会ってから日本語を猛勉強してるD君は日本語で僕に尋ねた。
小学校6年生レベルのきちんとした文字で書かれた手紙を見て、僕は感動した。
彼の心が500%詰まっていた。


しかし、どんなに待っても手紙の返事は返ってこない。


「マナブさん、オトウサンに会いにイキマス。ナンテ言ったらイイデショウ?」
「そぉ〜だなぁ、やっぱり定番は、「お父さん、娘さんを僕にください」じゃないかなぁ」
Musume san o boku ni、、、ノートにメモし始めるD君。
「ねえ、D君、彼女のお父さんってどんな人なの?」
「アノデスネ、会社のシャチョーさんデ空手の先生デ、、、」
「おい、おい、D君、それならまずは護身術を習うことからはじめなきゃ!」


D君は彼女の両親が住む町へ1年間に4回飛んだ。
日本へ行くたび、すぐにタスマニアへ帰ってきた。
毎回、門前払いを食っていたのだ。
肩を落とした青い目の青年が、一人とぼとぼとその小さな島を歩く。
感傷に浸っていたいところだが、外国人などほとんどいないその島では目立ちすぎ。
彼女の家族に迷惑がかかる。
すぐにタスマニアへ帰らざるをえなかった。
3回目のチャレンジ、彼女のお母さんとおばあちゃんがお父さんに内緒でD君と会った。
このままでは娘は好きななった男と駆け落ちする、顔も見たことがない男と娘が駆け落ちするのは心配でたまらない、親よりも好きな人が出来たんじゃ、もうしょうがない、というのが理由だったそうだ。
お母さんとおばあちゃん、D君に会うとすぐに彼のことが好きになった。
そしてその日から、お母さんとおばあちゃんのダブルでお父さんの説得がはじまった。
お父さん、ガイジンの男と言えばお父さんの住む町でときどき見かける筋肉もりもりした入れ墨の腕でチューインガムをくちゃくちゃしながら大声で話す某合衆国の兵隊さんのイメージが強かったらしい。
お母さん、おばあちゃん、娘たちの総攻撃にあったお父さんはついにD君と会う決意をした。
会う前の夜、今までD君がお父さんに当てて送った未開封の手紙をあわてて読んだ。


お父さんの目の前に表れたのは、しっかりとスーツを着込んだ、細身の、清潔感漂う青い目をした英国風青年だった。
お父さん、ついに腹を決めた。

一度腹を決めてしまうと、お父さん、日本男児の誠意を見せるため出来うる限りのことをした。
とにかく、真心込めてD君やD君の家族と接した。


結婚式はD君が生まれ育った場所にあるとても、とても小さな教会で行なわれた。
新郎新婦の衣装からテーブルの飾り付けまで、全てが友人や家族たちによる、手作りの結婚式だ。
披露宴もまた、タイムテーブルがなく、司会進行役もいず、多くの人たちが彼や彼女たちの幸せを語る温かいものだった。
お父さん、日本から大勢の人たちをタスマニアに連れてきてくれた。
全てのスピーチは日本語訳、英語訳され皆がスピーチに笑い、泣いた。


僕はこの日、不覚にも写真を撮りながら涙を流してしまった。
花嫁さんのお父さんのスピーチで僕の涙腺が壊れてしまったのだ。
お父さん、まるで武士が戦いに臨むような清々しさと迷いのないオーラを漂わせながらマイクに向かった。
僕はその歩く姿を見ているだけで、もう胸がいっぱいになっていた。
それまで騒がしかった会場もお父さんの姿を見てシーンとなる。
お父さん、会場を一瞥するとハッキリと会場隅々まで響く声でスピーチをはじめた。
なんと、英語のスピーチだった。
D君がお父さんに会うため、日本語を猛特訓したのと同様、お父さんも同じ気持ちでD君やD君の家族のために英語の100本ノックをしたに違いない。
自分の娘を貰ってもらう親としての感謝、これから世話をかけるであろう娘を温かく見守ってほしいという気持ち、2つの国の人間がひとつの家族になることへの感慨、僕はこんな素晴らしいスピーチをいままで聞いたことがなかった。
僕はこのとき、日本人という国民が持つ心の木目の細かさと感謝の心、そして武士道を誇りに思った。
周りにいたオージーたちも皆感動していた。
スピーチが終わると割れんばかりの拍手が会場に響いた。



あれから3年、もうすぐ僕は彼ら二人と新しく彼らの家族に加わった異文化融合の結晶である小さな赤ちゃんのファミリーポートレイトを撮る予定だ。










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教会に向かう花嫁、そして彼女を見つめるご両親。






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教会の中では皆が花嫁を待っている。ブライドメイトたちとこの階段を歩きはじめれば人生の新しい扉が開く。緊張のあまり?笑いが絶えない。






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式は厳かに進められ、胸いっぱいの感動で幕を閉じた。






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ここに集まった人たち皆が二人の人生を応援してくれる。






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大泣きした後、緊張から解放され、花嫁の表情がやわらいだ。
やっと念願が叶ったのだ。






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教会での式が終わり、披露宴のパーティーに向かう途中、ホテルのエレベーターの前で新郎新婦は新婦のお父さんとばったり出くわした。
お父さん、突然D君に手を差し出す。D君もしっかりとその手を握り返し、目を閉じた。お父さんとD君が無言の言葉を交わし、心をひとつにした瞬間だ。お父さんは大笑いをして青い目をした新しい息子を迎える。






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披露宴のパーティではスピーチする人たちのユーモアに誰もが大笑いしていたが、お父さんとお母さんはひたすら自分の娘を見つめていた。






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お父さんのスピーチがはじまった。
娘の肩が震え、D君は手を胸に当てた。
僕の目は涙で視界ゼロ状態、、、仕事、仕事と自分に言い聞かせるがコントロール不能。






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お父さんのスピーチが終わると割れんばかりの拍手が会場に響いた。
それとともに各テーブルでは白いハンカチが多くに人の顔の前で揺れている。
涙の大雨・洪水警報が出されてもおかしくない状態だった。






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こちらの結婚披露宴パーティーで新郎新婦が一番緊張する瞬間はきっと二人のダンスを披露する時だろう。
音楽が流れ、新郎が新婦の手を取り会場の中央に立つ。
会場にいる全ての人たちの視線が二人に注がれる。
多くのカップルはソシアルダンスのステップなど知らないので、この日のために特訓を積むはめになる。
この二人も上手くダンスが踊れるかとても気にしていた。
心配するまでもなく、二人は華麗にフロアーを舞った。







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音楽がワルツからロックンロールに変わるとハノーヴァー朝だった二人は現代っ子にもどり、得意のダンスを激しく踊りはじまる。






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それが合図だったかのように会場にいた人たちも一斉にフロアーに集まり、大ダンス大会がはじまる。






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熱気ムンムンのフロアーでは皆髪を振り乱し、ダンスに酔っていたが






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一番爆発していたのは、、、お父さんだったかもしれない。

めでたし、めでたし。






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by somashiona | 2008-06-07 12:50 | 人・ストーリー

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