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トラベルジャーナリスト




トラベルジャーナリストの
寺田直子さんはブログで僕を見つけ、コンタクトをとってくれた。
東京で初めて会い、1時間ほどお茶を飲み、次にオーストラリアのパースで彼女と会った。
直子さんとのはじめての仕事。
ほとんどお互いのことを知らず、いきなり2週間の取材旅行だ。

数々の有名写真家と仕事をしている直子さん。
仕事にとても厳しい人だという前評判も聞いていた。
初日で嫌われたら残りの13日間をどうやってしのぐか、、、車での移動距離は半端じゃない。
気の効いたジョーク、歌、手品、最悪の事態に備えておく必要があるかもしれない、、、といろいろ考えていたがまったくの取り越し苦労だった。

取材で出会う人たちから、いつももの凄い影響を受ける。
何か特別優れたこと、他にないもの、偉業、悪事、そんなこと成し遂げた人たちだから取材の対象になる。
ある意味影響を受けて当たり前だ。
これがこの仕事が好きな理由の一つでもある。
しかし、今回の2週間の取材で一番インパクトが強かったのは他でもない毎日一緒にいた直子さんだった。
世界各地60カ国以上を取材し、年間150日をホテルで過ごす人。
実は僕、今まで7カ国ほどしか行ったことがない。
その7カ国の経験だけでも素晴らしい経験をたくさんした。
直子さんが今まで味わった経験は想像を絶する。
聞きたいことは山ほどある。(友人はいつも僕のことを質問魔と呼ぶ)
ウェスターンオーストラリアだけで2000kmの距離を直子さんと車の中で過ごした。
その間、ありとあらゆるテーマについて僕たちは話をした。
文学、漫画、映画、絵画、ホスピタリティ、写真、ビジネス、ファッション、食、ワイン、マナー、社交術、政治、各国の話、ホテル業、珍体験、珍事件、タスマニアそしてテレフォンセックスの話にいたるまで2週間で本を50冊くらい読んだ気分だった。
驚いたことに、写真の細かい話以外僕が彼女より知っている分野が何一つなかった。
たしかに僕がものを知らなすぎるという問題もあるのだが、本当にどんな分野の話も太刀打ちできなかった。
完全にノックアウト。
まるでちょっとエッチなことも経験し、人生を知りはじめたと思っている中学生と会社の女社長さんが会話を交わしているようなものだ。
だが彼女と僕の実際の年齢差はさほどない。
彼女と話していると自分が送ってきた人生のぬるさ加減を認めざるを得ないのだが、それでいて彼女は僕を落ち込ませる訳でなく、自分はもっと成長できる、もっといい仕事、意義のあることができるんだ、という気持ちにさせてくれる。

一緒にいて驚くことはそれだけでない。
40度を超える暑さの中、早朝から夜中まで仕事、仕事なのだが彼女は超タフ。
これでもか!というくらい仕事をする。
いつでも、どこでも仕事をする。
飛行機の中でも一瞬で熟睡し、たくさん食べて、飲んで、また仕事する。
高級ホテルのオーナーと会話を楽しみ、こてこての農夫とも冗談をいい合える。
フリーランスで生きてきた人の強さをしみじみと感じた。

もし彼女が宗教団体(ハッピートラベラーズ教)をはじめたら、僕は間違いなく信者になるだろう。
彼女の口癖は「大丈夫、なんとかなる」。

よっしゃ、明日も頑張ろ!






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アヘンケシ収穫作業を僕が撮影している間、直子さんはインタヴューをする。
どんなに事前に知識を詰め込んでも実際現場で見て実感しなければ記事に説得力がでない、と直子さんは言っていた。










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ウェスターン・オーストラリアからタスマニアのホバート空港にたどり着く。
へろへろに疲れていたのだが(僕は)空港で荷物を待つ間、直子さんはすでに戦闘態勢に入っていた。
彼女はジャーナリストではなく、戦士です。(あ、あとが恐い)








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by somashiona | 2009-04-29 11:44 | 仕事

オン アサイメント (後半)








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2回目の撮影は1月の最終週。
東京から取材でオーストラリアを訪れているトラベルジャーナリストの寺田直子さんと一緒だ。
前回は咲き乱れるケシの花の撮影。
そして今回はハーベスト、そう収穫の絵がメインだ。






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今回の取材でキーマンだったフィールドオペレーションマネージャーでるリックのインタヴュー写真をタスマニア・アルカロイズ社の会議室で撮った後ケシ畑で収穫の撮影を予定していたが、その確認を現場のスタッフと電話でとりあうリックの様子がなんだかおかしい。
実はこの日、タスマニアでは珍しい猛暑だった。
ちょうどメルボルで大規模なブッシュファイヤーが起こり、多くの人たちの命が奪われたあの時。
ケシの収穫は完全に乾燥した状態で行なわれる。
もしも現場で火の気が発生したら炎はあっという間にケシ畑を焼き尽くすだろう。
万が一に備えてこの日は夜間にケシの収穫をするという決定を会社はくだした。
タスマニア・アルカロイズ社創業以来はじめてのことらしい。






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夜間の収穫、、、え、収穫の写真、どうやって撮るの、、、?
血の気が引いた。








収穫の撮影はフィールドオフィサーのクリスが担当してくれた。
作業は午後7時開始、クリスとは午後6時に待ち合わせた。
サマータイム期間中の12月は完全に日が落ちるのが8時過ぎ。
大丈夫だ、諦めるな、きっといい写真が撮れる、、、と自分に言い聞かす。






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僕の頭の中では夕暮れ時の光が一面に広がるケシ畑を黄金色に染め、その中に働く人たちが黒いシルエットで浮かび上がる、、、そんなイメージがポカポカと浮かんでいたが現場についた時は黄金色の光は既に消えかかろうとしていた。
しかも作業がはじまる兆しはまったくなし、、、。
まずい、まずい、、、と思いつつも顔は笑顔でこの畑を持つ農家のおじちゃん、ケシを刈り取る機械を操作するオペレーターのお父さんと会話した。






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農家のおじちゃんの顔が素晴らしく、彼の顔でこの現場のワンシーンは確実に確保できるぞ、と心の中でつぶやきつつ、その他にこの場でどれだけ違う種類の写真を撮ることが可能なのか作戦を練り、その順番を頭の中で組み立てる。
それにしても、辺りが暗くなるのが妙に早い、、、気のせいか、、、。
その場にいた皆が空を見上げはじめた。
「まずいなぁ、、、来るぞ、、、」クリスが呟く。






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東の空を眺めると雨のカーテンを垂らす巨大な雨雲が接近していた。
「おいクリス、どうする?やるのか、それとも中止か?」とオペレーターのお父さん。
ち、中止って、、、もう僕の心の中は既に土砂降り。
収穫の写真を撮るチャンスはこの日だけだ。
黄金色の写真どころか、辺りはどんどん暗くなるし、まだなにも収穫作業の写真は撮っていないし、、、もし雨が降って中止になったらまわりのケシを引きちぎって口の中に詰め込んでやろうと心に決めていた。
その時「いや、大丈夫だ。もちこたえるよ」と空を見上げ農家のおじちゃんが言った。
大地とともに生きる彼の勘は天気予報より当てになる。
皆は彼の言葉を信じて作業をはじめることにした。






撮影の時間はあっという間に過ぎた。
こういう時の撮影は「やめろ」と言われなければいつまでもやり続けるくらいの勢いがあるのだが、いかんせんすぐに辺りは暗くなり撮影を終了せざるを得なかった。
イメージしていた写真は撮れなかったが、最大限出来ることはやった。
この時点で何ヶ月かにわたって関わってきたケシの撮影が完全に終了した。






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雑誌に掲載するための写真を約50カットほど選び寺田直子さんに送った。
どの写真が使われるかは僕にも直子さんにも分からない。
雑誌のグラビア担当者が決めるからだ。
数ヶ月後にはじめて雑誌を見たとき、「そうかぁ〜、なるほどなぁ〜」と呟く。
餅は餅屋で雑誌を作る人は何が読者の心掴むのか僕たちフォトグラファーより知っている。
収穫の写真は使われないかもしれないと思っていたがたっぷりと使われていた。
自分の仕事が形となって残るのがこの仕事の素晴らしいところ。
印刷された自分の仕事を見るとやはりある種の満足感に包まれる。
もちろん反省、後悔、落ち込み、恥ずかしさ、自分の仕事の能力に対して思うところはたくさんあるのだが、それが次の仕事のレベルを上げる踏み台になる。
久しぶりの日本の媒体の仕事、多いに楽しんだ。
この機会を作ってくれた寺田直子さんと週刊文春の方々、そして取材協力をしてくれた人たちへ感謝したい。






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注)
英語圏で雑誌などの記事のための仕事をアサイメントといいます。
ちなみに今回のタイトル「オン アサイメント」(On Assignment)はナショナルジオグラフィック誌の真似っこざるです。
掲載記事を担当したフォトグラファーやライターの裏話を紹介するコーナーで、僕はこの「オン アサイメント」を毎回楽しみにしています。

注)
タスマニアで収穫されたオピウム(アヘン)は精製され医薬品となり、そのほとんどはアメリカ、ヨーロッパへ輸出されます。鎮痛剤タイラノール、頭痛持ちの僕が常用しているニューロフェンなどにはタスマニア産のオピウムが入っているそうです。

注)ぜんぜん関係ありませんが、逮捕されたSMAPの草なぎさん、可哀想です。日本の皆さん、それくらいの行動、笑って見逃す度量を持ちましょう。責めるべき人間はもっとたくさん日本にいるのですから。













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by somashiona | 2009-04-27 08:24 | 仕事

オン アサイメント (前半)




トラベルジャーナリストの寺田直子さんと2008年の夏にはじめて東京でお会いした。
そのときにタスマニアのポピー(ケシ)産業の取材の段取りをつける宿題をもらった。






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麻薬であるアヘンの原材料となるケシの花が夏のタスマニアではいたる所で咲き乱れるが、実はタスマニアに住む人たちもこのアヘンケシについての情報を持っていない。
タスマニアのケシの取材は難しいとよくジャーナリストたちから聞いていたのでこの取材の鍵を握るキーマンを人づてで探した。
タスマニア・アルカロイズ社がタスマニアのケシ産業の大半を押さえていると知っていたのでこの会社に取材を断られるとこの仕事は無くなってしまう。
なので注意深く人づての紹介を探った。
タスマニアは小さな島だ。
何かアクションを起こそうとする時は人脈がものを言う。
知り合いからの紹介、これが何事についても手っ取り早く安心。
しかしこの作戦は失敗に終わった。
僕の友人、知人だれもタスマニアのケシ産業と接点がなかった。
しかたなく正攻法でタスマニア・アルカロイズ社に取材を申し込むことにした。

取材を申し込む時、自分が何者で、いつ、どこで、どんな取材をし、どんな内容の記事を書き、どんな媒体で掲載するのかをハッキリと相手方に伝えないと断られてしまう。
できるだけ取材される側にもメリットがあることを強調しなければならない。
この時は週刊文春で掲載することが決まっていたので、この雑誌の発行部数や社会的影響力も説明した。
サーキュレーション(発行部数)が週に50万部という数字に先方は驚いた。
タスマニアの人口は約48万人、この人口よりも多い発行部数、、、。

どんな取材をしたいか力説するためにはこの産業のことをある程度知り、その中の何を取材したいのかということを明確に相手に伝えないといけない。
そのためにはネゴシエイトするまえに事前のリサーチが必要だ。

今の時代、農、林、水産業を語る時科学の知識抜きでは話が前に進まない。
ケシ産業でとれたアヘンはモルヒネやテバインなどに精製される。
この小さな島からとれるケシが世界のシェアの40%を占めるに至までには並々ならぬ科学的挑戦があった。
学者たちが書いた科学的資料を1ヶ月読みあさった。
専門用語が多く、ただでさえ不得意な英語読解に時間がかかった。
大体のことが飲み込めたときは自分でアヘンを抽出したい欲望にかられた。(冗談です)






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12月に第一回目の撮影を行った。
ケシの花が咲き乱れる写真が一番欲しいものだったがただそれだけでは弱いということは十分に分かっていたので、それ以上の何かをどれだけ撮れるか、プレッシャーで胃が痛み、頭はくらくらしていた。
はじめて訪れたタスマニア・アルカロイズ社は予想通り超厳重な警備体制。
それをなんとか撮影したかったのだがまったく許されなかった。
一枚の写真が彼らが今まで築き上げて来た顧客への信頼を壊してしまう可能性があるからだ。
ケシ畑はタスマニア・アルカロイズ社の12人のフィールドオフィサーが管理している。
この人たちの同行なしでの撮影は許されない。

フィールドオフィサーの中で一番若い25歳のディランが僕に同行してくれた。
タスマニア大学でアグリカルチャーサイエンシーを学んだ優秀な好青年だ。
一人のフィールドオフィサーが約50のケシ栽培農家を担当している。
ランドクルーザーで各農家をまわり、適切なアドバイスを農家に与える。
昨年一年で彼がこのランクルを運転した距離は110,000kmだといって彼は笑った。
撮影を許可された時間は2時間。
この一回の撮影で充分なページを作れるだけの写真を手に入れたい。
きれいなライティングをしている時間などないので、右手にトランスミッターをつけたカメラ、左手にフラッシュという方法で出来るだけたくさんのカットをとるよう努力した。






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ディランに頼み、子供のいる若いケシ栽培農家に手当たり次第連絡してもらった。
以前タスマニアのケシ畑の中を農家の子供たちが走り回るのを見た時ショックを受けたことがある。
そんなことがあっていいのか、、、と思った。
違法にケシを栽培する国では裸の子供たちをケシ畑の中で走らせる、という話を聞いたことがある。
ケシの実には事前にナイフで切り身をいれ、そこから白い樹液が流れる。
暑い日差しの中で走り回る子供たちの身体は汗とその白い液にまみれ、大人たちがそれをへらですくう。その白い液がアヘンだ。
合法的にケシを栽培するタスマニアのケシ畑を無邪気な子供たちが走る。
ジャガイモやタマネギを栽培する農家の子供が自分の家の畑で遊ぶのと同じことと言えばそれまでだが、それでもこれはオーストラリアで一番治安のいいタスマニアだからこそ許されることだろう。
絶対に撮りたかった絵だった。






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(つづく)

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by somashiona | 2009-04-24 18:58 | 仕事

家族が増えた!




「ダディ、4月18日は絶対に空けておいてね。仕事も入れちゃダメだよ」
1ヶ月以上も前からソーマに言われていた。
普段お願いごとを滅多にしない子だけに、彼に何か頼み事をされるとイヤとは言えない、、、というか、今回はお願いされなくてもその日は空けておくつもりだった。
なぜなら、ソーマと同じくらい僕がその日を楽しみにしていたからだ。

18日の朝、彼らの家につくとソーマが玄関に飛んできて僕に抱きついた。
顔には満面の笑み。
もう待ちどうしくてしかたがない、といったふうだ。
シオナはいつもと変わらない様子で朝食のシリアルを食べていた。
「ドキドキしないの?」と聞くと「全然平気」と答える。
なんだこいつ、父親よりクールじゃないか、、、。
彼らのマミーはどうだろう、、、?うん、珍しく興奮気味。
ソーマ、シオナ、マミー、そして僕という久しぶりに勢揃いした豪華オリジナルメンバーで車に乗り込み、目的地へ向かった。
そこは彼らの住むニューノーフォークから車で約1時間半の場所だ。
子供たちと彼らの母親は6週間前に一度訪れているが、僕は今回はじめて。

目的地へ着くとあの声が聞こえてきた。






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僕たちの姿を見た彼らはワン、ワン、キャン、キャンもう大騒ぎ。
ドック・ブリーダーを訪れるのは初めての経験だったので、ワンちゃんたちの多さに僕は驚いてしまった。
しかし、子供たちも母親もたくさんのワンちゃんたちには眼もくれず、このあたりにいるはずのブリーダーを探しはじめた。
なぜなら、今日は子供たちやマミーが6週間待った1匹のワンちゃんを迎えに来たからだ。






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ブリーダーのピーターが一匹のパピー(子犬)を連れて来た。
生後10週間目のオーストラリアン・ラブラドゥードル。
名前はもう決まっている。
「ヘロォ〜、エイプリコット、ハウア〜ユ〜!」
と言いながら子犬に近づく子供たちや母親の声が普段より3オクターブ高い。
エイプリコット、いや日本語の発音でいこう、エイプリコットはアプリコットのこと。
子供たちが苦労して決めたこの子犬の名前だ。
ちなみにアプリコットは女の子。

ピーターがアプリコットを地面に置いた。
子供たちの眼が輝く。
待ちこがれたアプリコットに触れる。
しかし、、、






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アプリコットがしっぽを振りながらソーマやシオナに飛び跳ねてくるが、子供たちはどう反応していいのか分からない。
甘えてくるアプリコットに思わず身をよじり身体を背けてしまう彼らを見て僕は目が点になってしまった。
な、何だ、大丈夫かこいつら、、、。
そんなソーマとシオナを横目に黒猫のタンゴ君が余裕でアプリコットと挨拶をかわす。






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ピーターは笑いながら子供たちに近づき、レクチャーをはじめてくれた。
レッスン1は優しいスキンシップの方法だ。
やさしいスキンシップは僕の得意技だが、ここはピーターに任せることにした。






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アプリコットのお腹を上に向けて寝かせ、グッドガールと小さな声で囁きながら耳、お腹、手足をさすってあげる。
クールだったシオナの口元はもう緩みっぱなしだ。






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次にリード使って歩かせる方法。
これには僕たち全員が驚いた。
リードをつけると犬は自然に歩き出すものだと信じ込んでいたからだ。
リードをつけて歩き出そうとするとアプリコットはイヤ、イヤと言わんばかりに頭を振り、まったく歩き出そうとしない。
その鼻先にチキンの骨をちらつかせ、アプリコットを誘導するピーター。
僕たちの眼からはパラパラと鱗が落ちていた。







そもそも数ヶ月前にシオナが言い出したらしい、犬を飼いたいと。
僕は子供のときに2匹の犬を飼っていた経験がある。
雑種のタローとマルチーズのラナ。
なので犬のいる生活の良さや子供たちに与えるいい影響は知っているつもりだった。
しかし、彼らの母親にそれとなく提案しても答えはいつも「冗談じゃない」だった。
「頻繁に旅行に出るのに、そのときは誰が面倒を見るの?」
僕の今の環境では犬は無理なので、飼うとしたら子供たちの住む家だ。
なので彼らの母親に無責任な話を押し付けるわけにはいかない。
ちなみに彼らの母親は一度も犬を飼ったことがないのだ。
シオナが欲しいと言い続け、ソーマが本やインターネットで犬のことを調べはじめた。
マミーも一緒に犬の情報を見ているうちにだんだんと話にノッてきた。
マミーが犬を飼うことに反対する大きな理由は抜け落ちる犬の毛が苦手だからだ。
そんなこと一度愛犬を手に入れたらちっとも気にならなくなると僕は知っているが、愛犬を手に入れたことがない人にとっては赤ちゃんのウンチが気にならない母親同様、理解に苦しむことらしい。
動物アレルギーをもつ夫のための盲導犬を作って欲しい、それがオーストラリアでラブラドゥードルが誕生したきっかけだ。
名前の通りラブラドール・レトリーバとプードルがもとになっているらしい。
(厳密には親犬種として6犬種の血統が認められている)
僕はまったく知らなかったのだが、このラブラドゥードル、オーストラリアで今もっとも人気のある犬といわれている。
ラブラドゥードルの存在を知った子供たちの母親は犬を飼うことを具体的に考えはじめた。
幸運にもオーストラリアで一番大きいラブラドゥードルのブリーダーがタスマニアにいるということを知り、彼女は子供たちとそこを訪れた。
その時出会ったのが生後4週間だったアプリコット。
ソーマ、シオナ、そしてマミー、一瞬でアプリコットに恋をしてしまった。
それ以来、子供たちの家ではラブラドゥードルや犬全般に関する勉強、情報収集を毎日欠かさず行なっている。
家族の一員になるのなら徹底的に愛してあげたい、という思いと同時に家族の一員として責任感のある犬になって欲しいと考えているからだ。
言い出しっぺはシオナだったが、情報収集のスペシャリスト、ソーマも、あれほどまで反対していたマミーもアプリコットを迎えにいく日にはすっかり犬大好き人間になっていた。
ピーターや奥さんのリズからさらに詳しいアドバイスを受けた後、これからアプリコットが暮らすことになる子供たちの家へと僕らは車を走らせた。






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子供たちが住む家のバックヤードでアプリコットはしっぽを振り走り回った。
ソーマもシオナも最近まれに見ぬほどの極上な笑顔。
子供たち、ブリーダーから指示された通りの餌をアプリコットに与える。
小さな身体のどこにそんなパワーがあるのか、一瞬で餌をたいらげてしまう姿を見て皆大はしゃぎ。
そして、「これで足りているのかなぁ、もっと食べたいんじゃない?」とシオナが言うと、「太り過ぎはアプリコットの健康に良くないって本に書いていたじゃない。それ以上食べさせたらダメだよ!」とソーマ。
「そういえば、まだ水をあげていなかったわねぇ」とマミー。
初の餌タイムから白熱した論議が繰り広げられる。






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甘えてくるアプリコットにビビっていたのは最初だけ。
ソーマ、アプリコットにこれからはじめるトレーニングのことを真剣に説明している。






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そして飽きることなくピーターに教えてもらったリードをつけて歩く練習を繰り返す。






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アプリコットが家にくる前にソーマとシオナが固く約束し合ったこと、それは、、、
•アプリコットをとりあって喧嘩しない。
•大きい声を出したり、アプリコットを興奮させるようなことをしない。
•遊んだら必ず眠らせる時間を作る。
•餌をあげた後は必ず外へ連れて行き、根気よくトイレを教える。

その中で一番難しいことはアプリコットを休ませ、眠る時間を作ってあげることだと思っていたが、僕やマミーがそれを言う前に自分たちでその時間を作っていた。
でも、やっぱりアプリコットのそばにいたいので、、、






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こんなふうに自分たちもアプリコットになりきって時間を過ごす。

前日、興奮のあまり睡眠時間が少なかったソーマとシオナ。
アプリコットが初めて来た家で、一人で寝るのは心配だというソーマとシオナの主張をマミーは受け入れ、マミーの寝室でみんな一緒に寝るということで話がまとまった。
子供たちの強い要望でこの日僕は彼らの家に泊まることになった。
僕が寝るのはシオナの部屋の小さなベッドだ。
壁にたくさん貼ってあるバレリーナのポスターはシオナの憧れ。
カーテンから漏れる月明かりでそれらを眺めているうちに、僕はあっさりと眠りに落ちた。






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翌朝、ドアの向こうでは子供たちがバタバタと廊下を走る音がかなり早い時間から聞こえはじめ、やれやれと言いながら僕はベッドから立ち上がったが、アプリコットがしっぽを振っているのを見た途端、寝ぼけ顔に笑顔が広がるのを抑えきれなかった。






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ソーマとシオナはさっそくリードをつけて歩くトレーニングをはじめている。






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昨日同様、バックヤードで遊び回り






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水を与え






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ごく親しい友達にしか教えない家を囲っている樹々の中にある秘密の隠れ家にもアプリコットを招き入れ






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トランポリンの上でアプリコットを休ませるシオナの表情には愛情が溢れていた。







アプリコット、散歩に初挑戦!
リードをつけて歩く練習を家の中でたっぷりとしたソーマとシオナはアプリコットの堂々とした歩きっぷりを信じて疑っていなかったが、通りを走る車の音、近所から聞こえる犬の泣き声に怯えアプリコットはひぃ〜ん、ひぃ〜んと僕が画像処理に追われ泣いているときと同じ声を出している。
ソーマがアプリコットの鼻先にいい匂いのする食べ物をつけ、やっと彼女は歩き出した。
樹々はタスマニアの秋の夕日でオレンジ色に染まっている。
日没まで最後の数十分の輝きだ。






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週末、子供たちと別れる時、少し長めのハグとキスをするのだか、これからはその儀式にアプリコットが仲間入りだ。
当然、「タスマニアで生きる人たち」のレギュラーメンバーになる。
皆さん、よろしくね!
ワルテル、ソーラ、ライバルは君たちだぁ〜、ワン、ワン!






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by somashiona | 2009-04-20 23:09 | ソーマとシオナ

イーリング・セール



ベンドー、ストラッパー、オークショニアー、トレイナー、ジョッキー、バイアー、エイジェント、、、、いったい僕が何の話をしているかこの単語から想像つくだろうか?

昨年末依頼された仕事のひとつにイーリング・セール(yearling sale)の撮影があった。
電話の向こうでイーリングという言葉を聞いたときは何のことやらさっぱり分からなかったが、競馬の世界でイーリングとは生まれた翌年の1月1日から一年未満の馬のことらしい。
イーリング・セールとはその馬のオークションのことなのだ。
「この世界のことを知っているか?」と聞かれた時、まったく知識のない世界だったので「ええ、少しは」みたいなフォトグラファーがよく使うハッタリを言う勇気はさすがになかった。
そこで最低限知っておくべきテクニカルターム(専門用語)を素直に教えてもらった時に聞いたのがベンドー(売り主)、ストラッパー(競走馬の手入れをする人)、オークショニアー(競売人)といった言葉だった。
この仕事をやっていて面白いのは知らない世界に触れることが出来ること。
でも、知らない世界を知っている人に見せる写真を撮るのはやはり難しいことだ。


仕事の現場はタスマニアの北の都、ロンセストンだ。
ホバートから車で3時間くらいの距離。
この日は新しく買ったレンズ2本をはじめて仕事で使う日でもあった。
知らない世界、新しいレンズと不安材料を二つ抱えての仕事だった。
オークションの会場に到着し、仕事を依頼された会社の責任者と軽くミーティングし、撮影をはじめてすぐにちょっとした問題が発生した。
そこにいた人たちの立場や関係がまったく見えないのだ。
誰が売りたい人か、誰が買いたい人か、誰が馬の面倒を見て、どの馬が今回のオークションの目玉なのかといったことが僕にはまったく見えてこないのだ。
写真は眼に映る光景を絵になるようにデザインするだけでは説得力が出ない。
その場に流れる力関係や感情の動き、そして何よりその場を見ていない人に端的にその場のことを説明できるようなストーリーがそこにないと面白くも何ともない。
この日僕が与えられた時間は5時間。
5時間でギャラを払うお客さんが満足する写真をものにしないといけない。
こういうときは闇雲に撮らず、まずはじっくりと観察するに限る。
落ち着け、落ち着くんだ、と自分に言い聞かし、目の前で繰り広げられる光景を客観視できるよう努める。

オージーたちはどんな分野の仕事でも割と常に笑顔だが、このオークション会場はピリピリとした空気で包まれていた。
お金と時間と愛情を注ぎ育て上げた愛馬たちに値段がつく日。
その値段も半端な金額ではない。






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ストラッパーたちが自分たちの馬の手綱をひき、バイアーたちの前を歩かせる。
僕にはどの馬もまったく同じに見えるのだがもの凄い金額を出し将来勝てる馬、いい種馬になれる馬を選ぶ人たちの眼はとても厳しい。






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毛並み、歩き方、筋肉のつき方、目星をつけた馬をあらゆる角度から観察する。






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オークションの会場脇には大きなパビリオンが二つあり、その中ではバイヤーたちの前に姿を見せる前の馬たちが控え、ストラッパーたちが彼らの身体を丹念にブラッシングしている。






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少しでも高い値段で売れるよう願う一方で、毎日接してきた可愛い馬たちをお嫁に出す親の心境だろう。






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ほとんどのストラッパーたちたちは無言で馬たちと会話しているようだった。












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オークション会場へ戻ると競りがどんどん白熱してきていた。






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オークションは競売人の力量で提示金額が左右されるらしい。
バイヤーの物欲を煽るトークを畳み掛けるように会場一杯に響かせる。






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競売人の横には馬を出展しているベンドーたちがいる。
その表情はまるで胃潰瘍を患っている患者さんのようだ。
実際胃の痛い思いをしてオークションの成り行きを眺めているに違いない。

バイヤーたちが手を上げる瞬間を撮ろうとするのだが僕は一度としてその瞬間をファインダーに収めることが出来なかった。
彼らのジェスチャーを手を上げるのではなく、指を一本あげるかどうかくらいの小さな動きだ。
その一瞬を競売人たちは見逃さないのだから、プロというのは凄いものだと思う。






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仕事で使う前に何度か練習したつもりだが、やはり買ったばかりのレンズは手に馴染まない。
いつも使っているレンズとほんの少しの違いなのだが、そのほんの少しに致命的遅れが出てしまう。
多くのいい瞬間を逃してしまった。
手振れ補正機能付きのレンズをはじめて使ったが、動く被写体をいつも狙う僕にとってこの機能はあまり効果を発揮しないということが分かった。
買う前に考えるべきだった。

反省すべきことが多い撮影だったが、収めた写真をクライアントはとても喜んでくれた。
次回はオークションでなく競馬を撮ってみたい。
タスマニア最大の競馬はこのオークションの数日後に同じロンセストンで開催されるロンセストン・カップだ。
美しい女性たちがドレスアップしてその美を競う。
それを見るため多くの若い男性がロンセストン・カップに訪れるらしい。
ロンセストン・カップを撮りたい僕の動機もどちらかといえば馬よりドレスアップした女性たちかもしれない。












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by somashiona | 2009-04-11 17:32 | 仕事

テトリス中毒




仕事がデジタル化してから撮影の後の仕事時間が爆発的に増えた。
長い期間にわたってまとまった仕事を複数すると撮影という行為で100%燃え尽きてしまう。
しかし、そうは言っていられない。
その燃え尽きた身体を引きずってパソコンと対峙し、自らの頬に平手打ちを放って何千枚もの写真を一枚一枚眺め、涙を流しながら出来るだけ多くの写真を排除したあと、残りの写真の中から悩みに悩み抜いて必要な写真を選ばなければならない。
仕事に前半戦と後半戦があるなら撮影が前半戦で画像処理が後半戦だ。
僕は前半戦は好きだが後半戦は苦手なタイプ。
僕にとって後半戦は孤独との戦い、我慢大会、神経衰弱だ。
朝起きてから夜ベッドに倒れ込む直前までまでパソコンとにらめっこ。
ジャンクなスナックが恋しくなり、普段は一日2杯までと制限しているコーヒーも3倍は軽くいく。
煙草をやめたのがせめてもの救いだ。
もし今も煙草を吸っていたら、間違いなく一日3箱コースだろう。

もう半年以上経つと思うが、僕は「あること」をしなければこの孤独な作業に打ち込めない人間になってしまった。
その「あること」とは、、、テトリスだ。






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そう、あの色とりどりの何種類かの形のブロックが画面の上から下へと落ち、ブロックの形をきっちり合わせ隙間を埋めていくゲームだ。
どうして今ごろになってテトリスなのか僕には分からない。
深く考えずにゲームをパソコンにダウンロードしたのが運のつきだ。
僕は基本的に反コンピュータゲーム、反テレビゲーム派で子供たちにもゲームをするとシッポがはえてくるからヤメた方がいい、と教え込んでいるくらいだ。
しかし、そんな僕も今や孤独で苦手な画像処理作業に入る前、どうしてもテトリスで頭をウォーミングアップしなければ前に進めないのだ。
そのテトリス、最近はだんだんとエスカレートしてきているのを自分でも認識している。
デスクトップにテトリスを置こうものならすぐに誘惑の悪魔が現れるのでいくつかのフォルダーを開かなければゲームを始められないようにしているのだが、それでもそのいくつかのフォルダーをせっせ、せっせと開いてしまう。
朝のテトリスに加え、食事を済まし再びパソコンに向かう前にテトリス、何本かの電話をし画像を見る前にテトリス、メールを数本出した後にテトリス、5時間おきにテトリス、3時間おきにテトリス、、、と症状が悪化してきた。
貴重な時間をゲームに捧げるだけでも後ろめたいのだが、ゲームのスコアの善し悪しが精神的足かせとなり、仕事の内容にも反映するようになってきた。
スコアがいい日は頭の回転も速く、画像選びに迷いがない。
コントラストやホワイトバランスの選択も一発で決まる。
しかしテトリスのスコアが悪い日は画像処理にかかる前から自分の判断に自信が持てない。
マジェンタを増やすべきなのか黄色をもっとのせるべきなのかといった判断がいつまでたっても出来ず、カーテンの隙間から漏れる光のせいにしてみたり、パソコンの画面にうっすらとついたホコリに怒りを感じ何度も拭き取ったりしてみる。
なので700枚近い画像を処理しなくていけない日だというのに3、4枚の画像を処理するのに1時間くらいイライラしながら格闘するなんてこともざらだ。
そして、そのイライラが募るとまたテトリスに逃避し、あっという間に30、40分が過ぎ、そのあと自己嫌悪に苛まれる。
テトリスの影響はパソコンから離れたときですら出てきている。
恐ろしい話だが外で人と会って話をしている時、話の内容がつまらなかったり、疲れがたまって集中力を欠きはじめると話をしている人の顔の前をあのテトリスのピンクやグリーンのブロックが次から次へと落下するのだ。
話し相手を前に僕の心は完全にその場を離れ、ひたすらテトリスのブロックを眼で追いかけてしまう。
僕の顔を見ている人は僕の眼球が上から下へ行ったり来たりしているのがわかるだろう。

そんなある日、僕はインターネットであるニュースを見た。
イギリスのオックスフォード大学の研究結果だ。
な、なんとテトリスはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の影響を減らすのに役立つ可能性があると彼らは報告したのだ。
この研究の目的はトラウマによるフラッシュバックの影響を弱めるための実験だったそうだ。
その結果、テトリスをした人たちはトラウマの記憶が蘇るフラッシュバックがテトリスをしなかった人たちより弱かったらしい。


なんだ、そうだったのか!
僕はテトリスでストレスを解消しようとしていたんだ!
確かに撮影をした後はフラッシュバックのオンパレードだ。
「ああぁ、どうしてあのシーンを逃してしまったんだろう、、、」
「う、うぅ、、、この時フラッシュを使ってしまったけどスゴくいい自然光が射していたじゃないか、、、」
「どうしてあの時もっと気の効いた言葉をかけられなかったんだろう、、、そうすればもっといい雰囲気を作れたのに、、、」
撮影を終るたびにこういった後悔と反省の大波、小波が僕の心に押し寄せる。
これをトラウマと言わずになんと言おうか!
そうか、僕はただ自己防衛本能に従っていたんだ。
よぉ〜し、今日も自己ベスト更新目指してがんばろ!
オーイェ〜!
皆さんもテトリスいかが?




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ゆりかもめ線の特等席に何人もの子供たちが座りたがっていたが一緒にいた下町のイケメンburgさんに眼つけてもらったおかげで僕たちは難なく陣取ることが出来た。(ひどい大人)

しかし、何度目を擦っても目の前に繰り広げられる光景が僕にはテトリスのブロックにしか見えない。






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相原さんの素晴らしいお話のときですら僕の心の中は「あぁ〜っ、相原さんがテトリスのブロックに挟まれるぅ〜」だった。






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by somashiona | 2009-04-07 13:00 | デジタル

サリー・マンとラリー・クラーク




最近、僕が撮る写真の中で平均点が高いのは子供たちを被写体にしたときだ。
理由は分かっている。
子供たちを見る時、自分の子供を見るように彼らを見ることが出来るからだ。
自分の子供と接するように彼らと接することが出来るので被写体のとの距離が近い。
自分の奥さんが妊娠すると世の中にはこんなに妊婦さんが歩いているのか、とはじめて気がつくように自分に関わること、関心があることは他の被写体よりよく見えるものだ。
こういうものにレンズを向けるのは深みのある写真を撮るための近道だろう。
そういう意味では写真を撮る人は関心事が多ければ多いほどただきれいに見えるだけではない写真を撮るチャンスが増えるのかもしれない。
しかし、僕のように狭い視野でしか物事を考えられない人間にとって興味の対象を広げるのは苦しい修行以外の何ものでもない。


ソーマがはじめてこの世に誕生した時、ソーマの母親は僕にサリー・マンの写真集をプレゼントしてくれた。






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サリー・マンはアメリカ、ヴァージニアの田舎で子供たちと幸せに暮らす素敵な女性だ。
彼女は自分の身近な人たち、特に自分の子供たちをモノクロの写真で記録していった。
ただ、普通の記録写真とちょっと違うところは8x10の大判カメラを使ってそれをやったところだ。






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コンパクトカメラと一眼レフ、デジカメと銀塩、使うカメラによって写真は大きく変わる。
写真芸術は恐ろしいほど道具に左右されるのだ。
8x10の大判カメラという一枚撮るのにイヤになるくらい時間がかかるカメラであのちょこまか動く子供たちをフィルムに収めるという行為は神懸かり的行為に他ならない。
それはサリー・マンの努力だけでなく、モデルになる子供たちの深い理解と協力というコラボレーションとして成り立ったはずだ。
大人が真剣に撮る時、子供もそれを察知し、それに応えようとすることを僕は知っている。
家族写真という分野の写真でサリー・マンの作品以上に美しい写真を僕はまだ見たことがない。






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子供たちを撮るという意味でサリー・マンと好対照の写真家はたぶんラリー・クラークだと思う。
サリー・マン同様、ラリー・クラークも子供たちを被写体にした写真家として伝説的存在だ。
1960年代、ラリー・クラークはアメリカの片田舎でドラッグ、セックス、アルコールそして暴力にまみれた若者たちの生活を自分も仲間の一人として彼らの中に入り、その様子を記録した写真集「タルサ」を発表した。
それは衝撃的な写真界デヴューだった。
その後、写真集「ティーンエイジ・ラスト」では十代の性を写し、映画監督としても何本か作品を世に出している。
彼は本物の不良だ。もうかなり年をとっているが永遠の不良少年なのだ。
ライカにフィルムを詰め込み、常に自然光を使って荒々しく、しかし繊細に切り取られた彼の作品たちは彼の生き方そのものだ。
彼は十代の少年少女の姿に自分自身を見ている。
彼が追いかけている被写体が自分そのものなのだから他の人には絶対に真似できない写真が撮れる。

彼がインタヴューで残した印象的な言葉がある。

「写真家について最大の問題は、いい写真家はいっぱいいるけど、彼らには写真に撮るべきものが何もないってことだね。それが俺の違うところさ。それがどんなにばかばかしくても、俺には写真を撮るべき経験があった。ほとんどの連中はそういう経験がぜんぜんないんだ。みんなどうしていいのかわからないのさ」

ーーー「デジャ=ヴュ」第13号からの抜粋 ーーー






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美しいサリー・マンの写真も、過激で生々しいラリー・クラークの写真も作品に登場する子供や少年少女が裸であることが多い。
裸であるどころか、ラリー・クラークの写真に登場する少年少女は腕に針を突き刺し、レンズの前でセックスしている。
サリー・マンの作品に登場する子供たちがミッキーマウスやスパイダーマンのTシャツを着ていたとしたらたぶん今日まで語り継がれる写真にはならなかったし、ラリー・クラークが倫理的なことを考える人間だったなら少年少女は彼を仲間として自分たちの生活には招き入れなかっただろう。
結果的に今僕たちはかけがえのない素晴らしい作品を見ることが出来る。
裸でカメラの前に立ちたくない、という意思をサリー・マンの子供たちが示した時、彼女はきっぱりと彼らの裸体を撮ることを止めてしまった。
ラリー・クラークはご老体だが相変わらずニューヨークで少年少女とスケートボードで遊んでいる。
彼の「ティーンエイジ・ラスト」に出てくる作品で車のシートにペニスをたてて横たわる少年と、そのペニスをにぎって少年にキスをしている少女の写真がある。
この写真が発表された当時は相当スキャンダラスだったに違いない。
しかし、永い時を経た今この写真を見るといやらしさどころか、青春の美しく、ピュアーで壊れやすい一瞬の輝きがみごとにフィルムに定着されているのが分かる。
今を生きる子供たちの美しい姿を10年後、100年後に生きる人たちが写真を通して見ることはもはや不可能なのだろうか?






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伝説の写真家と僕のスナップショットを比較しちゃイヤよぉ〜ん!








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by somashiona | 2009-04-04 16:11 | 写真家

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