<   2009年 08月 ( 8 )   > この月の画像一覧

ギャビーは妊婦  後編



フィルが仕事から帰ってきて、彼と一緒に家の中に簡易スタジオを作った。
その間、ギャビーは撮影の後みんなで食べる夕食の支度をしている。
オーブンからはレモンソースでマリネードされたチキンが焼けるいい匂いが漂う。

僕のストロボセットを見ながら、「凄い、こんなのはじめて見た」とフィルは感嘆の声を上げ、その度に彼の飲む赤ワインのグラスが空になる。
それを見る僕とギャビーは無言で目を合わせ、クスッと笑う。

今回の撮影の目玉は二人のヌードだ。
ギャビーのヌードは以前にも撮ったことがあるし、僕たちは兄妹のような関係だからヌードには何の抵抗もないが、フィルは違う。
自分の全裸をプロのフォトグラファーに撮られたことなど今まで一度もない。
ライトスタンドを組み立てるたびはしゃぐフィルはかなり緊張しているはずだ。
彼の落ち着かない気持ちがその言動の端はしに現れるので、僕とギャビーは目を合わせ笑ってしまうが、もちろんそのことはフィルに言わない。
これは今までの僕の経験ではっきりと言えるが、女性は一度カメラの前で服を脱いでしまうと恥ずかしさよりも、徐々にフォトグラファーに挑む姿勢になってくるが、男性は違う。
男性は最後まで恥ずかしがる。
やはり、女性の方が強いのだ。








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今回はライトボックスを付けたストロボ一灯を壁にバウンスさせ、出来るだけ柔らかい光をまわし、絞りをf8中心で撮るようにセッティングした。

「撮影を始めるよ」と僕が言うとフィルがズボンを脱ぎはじめようとするので、あわてて止めた。
まずは服を着た写真でウォーミングアップだ。
テストシュートのモデルをフィルにやってもらったので、彼はレンズを向けられることに徐々に慣れ、笑顔がいつもの彼のものに戻りつつあった。
テストシューティングだと彼には言ったが、フォトグラファーが被写体にかける催眠術はこの時点でもうはじまっている。
というよりむしろ、フォトグラファーが被写体に会った時点でその仕事ははじまっているのだ。
シャッターを切るという行為は撮影全体のもう後半の作業だ。








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今回の撮影は黒バックで限りなくシンプルな絵を作ろうとギャビーと話し合っていたが、僕は何か一つだけギミックが欲しかった。
裸体に花一輪、これで行こうとギャビーと決めた。
僕の好きなスタイルだ。

ヌードを撮りはじめる時間になったとき、フィルはもの凄い勢いで服を脱いだ。
人前で裸になったとき、手に何か持っているだけでかなり本人は気分がまぎれる。
最初はギャビーが持つ予定の花をフィルに持たせると、彼はその黄色い花で股間を隠し、黒バックの前に立った。
その姿があまりにも面白く、僕たち3人は大笑いし、フィルの緊張が一気に解けた。
ギャビーが花を持ったときにフィルが悲しそうな顔をしたので、彼にも何か持ってもらおうと思った。
黒いバックに肌の色と黄色い花、これを崩す色は入れたくない。
台所にあったバナナの束に目がいった。
一本もぎ取り、フィルに持ってもらった。
もちろん、股間の前で。
バナナの先が下を向いていたので、元気なバナナが良いな、と彼に言うと、バナナの先を上に向け、またみんなで笑った。
結局、このバナナのおかげで、最後まで笑いながらの楽しい撮影になった。
写真を受けとった彼らも、ゴッドファーザーとしての初仕事を無事終えた僕も、大満足だった。


おわり








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by somashiona | 2009-08-30 07:24 | 人・ストーリー

ギャビーは妊婦  前編




「私が妊娠したら、大きいお腹の写真、絶対撮ってね。約束よ」とギャビーに言われたのは随分前のことだ。
その後、6年くらいの年月があっという間に過ぎ去った。
今の幸せを掴むまで、辛い時間もたくさん味わったけれど、彼女はいつだって不屈の精神で前に向かっていった。
そして、ついに約束を果たす日がやって来たのだ。
予定日まであと2週間とちょっと、大きなお腹を撮るには最高の時期。

赤ちゃんが生まれたら、その子のゴッドファーザーになって欲しい、と彼女から言われた。
ゴッドファーザーと言えば、マーロン・ブランドかアル・パチーノ、そーだよな、ゴッドファーザーは僕だよな、、、。
「もちろんなるよ」と答えたものの、僕はその意味を分かっていなかった。
ゴッドファーザーにはマフィアなどシンジケートの大ボスという意味もあるが、名付け親、教父、洗礼親、後見人などという意味もあるらしい。
難しいことは分からないが、とにかく、生まれてくる子にとって、大切な人になるわけだ。
まだ生まれていないが、その大切な人としての初仕事がギャビーの大きなお腹を撮ること。
心してシャッターを切ろう。

彼女のパートナーであるフィルが仕事から帰ってくる前にスナップショット風の写真を撮り、フィルが帰ってきてからはストロボを使ったスタジオ風の写真を撮ることにした。

裸の写真がほとんどだったので(それがどんなに美しくとも)ブログでは発表できないが、その一部を僕の大切な思い出としてブログに残したいと思う。

はじめて母になろうとする時期の女性は美しい。
妊娠という男性には決して経験できない特別な時間を過ごす女性は神々しく見える。
自分のお腹の中にもう一人人間が入っているなんて、こんなことがあっていいのだろうか。
僕はソーマとシオナの出産に立ち会ったが、二回とも「神様、僕を男に生んでくれてありがとう」と声に出して言ってしまった。
僕にはあんなこと、無理だ、、、。
そのことを出産経験のある女性に言うと、あんな素晴らしいことを経験できない男性は可哀想だ、と言われた。
もし僕が女性で、もうすぐ出産を控えているとしたら、怖くて、怖くて夜寝られないと思うが、どういう訳かはじめて出産する女性は、その瞬間を怖さよりも楽しみにしている人の方が多い。
やはり、男性より女性の方が強いのだ。
それ以外考えられない。

ギャビーは大きなお腹を抱えてつい最近まで3ヶ月間もペルーのまわりにある、僕なら完全に高山病で苦しむような高度の山の中でトレッキングをし、ピラニアがいるかもしれないアマゾンの川で泳いでいた。
そしてホバートに戻ってからも、大きなボックパックにパソコンや仕事の道具を詰め、マウンテンバイクで自分のオフィスに通っていた。
お願いだから自転車だけはヤメてくれ、と僕は彼女の父親にでもなったような気持ちで頼み込み、ようやく車で通勤してくれるようになった。
これを強いと言わずしてなんと言おう?

今、ギャビーの写真を選ぶのに苦労している。
妊婦の写真といえば裸以外考えられない。
あの美しい妊婦の身体さえもブログに載せられないルールには少しがっかりしてしまう。
もし妊娠中の女性がいたのなら、プロにきちんと撮っておいてもらうことをお勧めする。
これはウェディングドレスを着ている写真以上に残す価値のある写真なのだから。


つづく。












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by somashiona | 2009-08-28 18:15 | 人・ストーリー

怒ったり、笑ったり




霧雨降る林の中を散歩していると、雨足が強くなって来た。
僕のカッパに当たる大粒の雨の、あのパラパラというプラスティック製の尖った音が周辺の音をかき消す。
ランニングーシューズから染込んでくる雨水が不快に思いはじめた頃、屋根のある建物を発見したので、雨宿りをしようと思った。

建物に近づくにつれ、雨宿りの気分が失せていく。
静かな林の中で、もの言わずひっそりと佇む建物は落書きで覆いつくされていたからだ。
まるで輪姦され、山の中に置き去りにされた女性を見るような気持ちになった。
僕は街の中に溢れる落書きに強い不快感を持っている。
大切に手入れされた古い建物の塀や壁にスプレーで書き付けられた文字や絵を見ると、たとえそれがレベルの高い絵であっても、この家の持ち主が感じるであろう気持ちに心から同情し、そして沸々と怒りが沸き起こる。
何か大切なこと、綺麗なことを考えたいと思っている時、自分がいる公共の施設や乗り物にあの独特の落書きが溢れていると、思考はネガティブな方へ向かってしまう。








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雨宿りはやめにして、歩き続けた。
ランニングーシューズの中がじゃぶじゃぶしてきたので、泥が入ろうが、水たまりがあろうが、もう構わず歩き続けた。

林を抜けて住宅街を歩いていると黄色い車の後ろ姿が目に入った。
もの凄く古いタイプのトヨタだ。








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僕は黄色い車を見るとパブロフの犬のようにカメラを向ける習性がある。
写真は被写体が自分の目に入り、「あ、いい!」と思った時、それがどんなポジションであれ、まわりがどうであれ、その第一印象をまずは一枚撮っておくべきだと僕は思っている。
一枚撮ってからベストな構図や瞬間を詰めていけばいい。
特に人を撮る場合、「あ、いい!」と思った瞬間が後にも先にもベストな瞬間で、それを撮らなかったばかりに後々後悔する経験を過去に何度もした。(今も)
雨に濡れる古いトヨタを自分の写真にしようと一歩立ち位置を変えた途端、僕は笑ってしまった。
車は半分しかなく、自転車を止めるチェーンで電信柱につなぎ止められていた。








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散歩をしながら、どうでもいいようなことに怒ったり、笑ったり、平和な雨の一日だった。
















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by somashiona | 2009-08-20 09:43 | デジタル

シオナは8歳




8月の8日は僕の母の誕生日、そして翌日の9日はシオナのバースディ。
母は72歳、シオナは8歳になった。

おめでとうの電話を母親にかけたとき、一番のプレゼントはソーマとシオナの顔をブログで見ること、難しい写真の話じゃなくて子供たちの話をブログにもっと載せて欲しい、と頼まれた。
ナショジオ、伝説のフォトグラファーの話も母には通用しなかった、、、(涙)。


数週間前から8歳の誕生日が来る日を指折り数えていたシオナへのプレゼントは僕を悩ませた。
ソーマはいつも夢中になっているもの、好きなことがあるのでプレゼントを選びやすい。
でも、シオナにはそういう具体的なものがないので、毎年誕生日とクリスマスのプレゼントには頭を悩ませる。
今年はシオナと一日中街を歩いて、欲しいものを自分で決めてもらう、という方法をとった。
週末はたいてい海や山で過ごす僕たち親子が街で時間を過ごすのはとても珍しいことだ。
途中、ドーナッツを買って食べたり、カフェでミルクシェイクを飲んだり、ちょっとしたデート気分。

「今一番何が欲しいの?」とシオナに聞くと「うぅ〜ん、、、」としばらく考え込んで「イングリッシュ・ディクショナリー」(英語辞典)と嬉しそうに答えた。
新しく覚えた言葉を自分の単語専用ノートに書き込むことに彼女は今情熱を注いでいるらしい。
なので、いつでも持ち歩ける小さなディクショナリーが欲しいとシオナは言うのだ。
今学校で使っている辞書を徹底的に使いこなせるようにさせたいので、辞書、ましてや電子辞書などは絶対に買わないで欲しい、とシオナの母親から事前に注意を受けていた。
そのことをシオナに言うと、「じゃあ、ブックライトが欲しい、あっ、それと、そのライトで寝る時に読む本も買っていい?」と彼女はニコニコして僕を見つめる。
第二第三候補はもう心に決めてあったようだ。
ブックライトはすぐに欲しいものを見つけ、本屋さんで1時間ほどかけて欲しい本を2冊選んだシオナは十分にハッピーだったが、父親の僕としては、なんだかあまりにも現実的で夢のないプレゼントのような気がしてどうも気分がスッキリしない。
結局、アートショップでペインティングセットも買い足すことにした。


9日の誕生日は日曜日だった。
久しぶりに僕たち親子は4人揃って楽しい時間を過ごした。
子供たちの家から車で30分くらい走ったところにある街のレストランへ誕生日の食事をしに出かけた。
食事をしているとき、何を想ったのかシオナは「私が何歳の時まで私たちはこうやってみんなで食事をしていたの?」と突然母親に訊ねた。
罪のない彼女の質問に僕と子供たちの母親は驚いて一瞬お互いの顔を見合わせた。
僕たちは幸せになる為の最善の方法として離婚を選んだが、それでもやっぱり、こういう時は胸が痛くなる。
でも、それを聞かずにはいられないくらい、4人での外食の時間がシオナには楽しかったのだろう。


シオナの母親はアプリコットの写真をもとにして作ったクッションをシオナにプレゼントした。
これは彼女のビジネスの新しい商品となる試作品1号だ。
(宣伝:デジタルのデータを送ってくれたらクッションのオーダー受けるそうです)
シオナ、大喜び。

ソーマは裁縫をはじめたいと思っていたシオナの為に、アンティークショップを探しまわって裁縫道具を入れる木箱を見つけた。
その木箱の中に基本的な裁縫道具を入れ、シオナにプレゼント。
シオナ、大喜び。

二人のプレゼントを見て、僕は自分の努力の足りなさをちょっと反省してしまった。


その夜は第一回目のマミー裁縫教室が開催され、しばし盛り上がった後、針で指を刺してしまうという、裁縫のお決まりの洗礼をシオナは受けた。
血の出た指先をしばらく口の中に入れていたが、それでもシオナは幸せそうだった。
口の中に微かに広がる血の、あの鉄っぽい味覚を味わうたび、彼女は8歳の誕生日を思い出すのかもしれない。












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by somashiona | 2009-08-17 21:05 | ソーマとシオナ

ライトルーム アドベンチャー 2008 イン タスマニア 最終回



イベント最終日の13日は参加者全員がホバートに戻り、写真のオークションに出席しなければならない。
しかし、早朝ならまだ撮影のチャンスが残っている。
この日、相原氏は「クレイドルマウンテンの撮影の穴場にご招待しましょう」とブルース氏とマキ女史に声をかけていた。
早朝の撮影、もちろん日の出前の起床だ。
凍える寒さの中、真っ暗闇のボタングラスの湿原を光のハンター3人は三脚を抱え、黙々と歩いた。
空が青色から紫、そしてオレンジへと刻一刻と変化する。
美しい光に湿原が覆われると、誰かが号令をかけるわけでもなく、皆が一斉に撮影を始めた。
美しいクレイドルマウンテンの風景にレンズを向ける彼らの影はまるでフィルムの早回しのように目に見えて角度を変えてゆく。
三人のトップフォトグラファーが同じ場所で時間と追いかけっこをしているが、レンズを向ける方向は不思議と三者三様だ。
自然美という舞台で三人はまったく違う踊りを繰り広げる。
その個性こそ、世界を舞台に戦う最高の武器なのだろう。
朝の時間はあっという間に過ぎてしまった。








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今回のアドビシステム ライトルームアドベンチャーは多くのスポンサーが協力してくれた。タスマニア観光局も大きなスポンサーのひとつ。
今回、最高の撮影フィールドを提供してくれたタスマニアに対して何かの形で恩返しを、と考えたアドビシステム ライトルームアドベンチャーは、参加したフォトグラファーの写真をオークションにかけ、その売り上げ全額を正体不明の病気で絶滅が危惧されるタスマニアデビル保護の為の基金に寄付することにした。

午後7時、観光大臣の挨拶ではじまったこのチャリティーオークションにはとてもたくさんの人たちが集まった。
世界トップクラスの写真家の作品を手に入れようと、皆目を輝かせていた。
各フォトグラファーはお気に入りの写真を10点から15点エプソンのA3+サイズのペーパーにプリントアウトし、それをオークションへ提供した。
最低落札価格は5ドルからはじまる。
どの作品に人気が集まるか、一目瞭然だ。
これは多くの写真家にとっても新鮮な経験だったらしく、ある意味緊張した面持ちでオークションの成り行きを見守っていたフォトグラファーも少なくない。
写真をやっていない一般の人たちが写真を見る目は、ある意味厳しい。
クオリティがどうのこうの、レンズがどうのこうのというふうには作品を見ないからだ。
そこに何が写っているか、それがすべてだ。
綺麗か、笑えるか、インパクトがあるか、印象的か、そういう単純で純粋な要素が人々の判断基準であり、それはまぎれもなく良い写真の大切な要素なのだ。

オークションが終わった後、タスマニアを舞台に寝る間も惜しんで戦った戦士たちはリラックスしきって杯を交わしていた。
オークションの売り上げは8000ドル(オーストラリアドル)、誰もがハッピーな夜だった。

アドビシステム・ライトルーム・アドベンチャー、次はどの国を舞台に、どんな顔ぶれのフォトグラファーが集められるのか?

写真は世界の言語だ。
次回も日本から素晴らしいフォトグラファーが参加し、世界のフォトグラファーたちの高い技術やモチベーションを大いに学んで欲しい。
外の空気は予想以上に張りつめたもので、心も身体もリフレッシュされるはずだ。









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おわり









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取材を終えた直後に書いたものを久しぶりに読み返すと、自分がどんなにラッキーだったかを痛感する。
写真を愛する人たちの誰もが、もっといい写真を撮れるようになりたい、といつだって願っているはずだ。
写真に王道はないだろう。
どんなことでもそうだろうが、写真もたくさんの経験、知識、失敗、情熱、こだわりを要求される分野だ。
写真に王道はないかもしれないが、世界をフィールドに走り続け、素晴らしい作品を発表するフォトグラファーたちからはいつも同じ種類のオーラを感じる。
それは決して写真のテクニック本や写真教室が教えてくれる種類のものではない。
それは一口では言い表わせないものであり、それを見たからといって次の日から自分もマネできるというタイプのものでない。
この取材で僕が得たことは、実はなかなか人に上手く伝えられないものなのだけど、きっと写真に夢中なあなたはなんとなく僕が言わんとすることを感じて頂けたと思う。
これは、僕にとって本当に「とっておきの話」(くどい)で、それをブログで話してしまう心の広さには、まったく自分でも泣けてしまう。

(ピシっ!バシッ!、、、ごめんなさい、言い過ぎでした)


いい機材でなければ撮れない写真や、撮れない分野というのは確かにある。
でも、その前に、滝に打たれ修行をする必要はないにしても、自分が撮ろうとするテーマや被写体に対して真剣に向かっていく態度みたいなものは、やはりきちんと考えてみるべきだと思う。
テクニックを越えて写真に写ってしまうものは、結局は、その辺のことなのだという気がするからだ。

6回にわたる今回のシリーズ、最後まで付き合ってくれてありがとう。
いつも誰かに話したい、話したいと思っていたことをブログで発表できて、かなりスッキリしました。
(トイレのあの後の気持ち?)

















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by somashiona | 2009-08-09 22:30 | 仕事

ライトルーム アドベンチャー 2008 イン タスマニア Vol.5





一日ブルース氏と時間を共に過ごしただけで、実に多くのことを学んだ。
僕はスポーツ雑誌で仕事をしていたフォトグラファーなので両目を開けながら写真を撮るクセがある。
ブルース氏はそんな僕を見て片目を閉じるべきだとアドバイスしてくれた。

「片目を閉じることによってファインダーから見える世界を限りなく一次元の世界に近づけるんだ。開けている方の目も薄目を開ける形にし、まつげの隙間から被写体を見ることによってコントラスト、光の濃淡を見極めるのだよ。レンズの目になるということだ。出来上がるプリントのイメージで被写体を見るのだ。」

アンリ・カルティエ・ブレッソンに憧れ、ライカから写真をはじめたと教えてくれた彼はニコンD3に最新のナノコーティングのズームレンズを3本という装備で撮影をしていた。もちろんカメラバックの中には予備のボディーが2台にラジオスレーブを付けたニコンのスピードライトも2台用意してある。
ブルース氏はメカニカル的なことに強いフォトグラファーであり、新しい機材にどんどん挑戦する。
D3がどんなに素晴らしいカメラか、ナノコーティングのレンズがいかにシャープかを語る氏はカメラファンそのものだ。

フィルム時代を長く経験し、デジタル時代に入った今、ブルース氏の写真が変化したかどうかを聞いてみた。

「デジタルの変化は君も知っての通りここ数年目を見張るものがあるね。私たちフォトグラファーにとってデジタルの恩恵は計り知れないものがあるよ。クオリティも充分高いし私はデジタルに充分満足している。ただひとつ忘れてはいけないと思っていることがあるがね。」

「どういうことでしょう?」と僕。

「過去、数々のフォトグラファーが素晴らしい写真をものにしてきた一番の理由は何だと思う?それはズバリ『Anxiety』(心配・不安)だよ。アサイメントを与えられ、あらゆる角度から手を尽くす。これでもか、これでもか、とシャッターを切り、いくつかの手応えを感じる。デジタルならプレヴュー画面を見て手応えのあったショットを確認すればそこで仕事が終わるだろう。フィルムの時代はそれが出来ないから心配で、不安で仕方がないんだ。それでまた何度も、何度もシャッターを切る。じつはその後で切ったシャッターの中に後世に語り継がれる写真が生まれることが多いのだよ。いい写真を生み出す一番の秘訣は、これで終わり、と思わないことなんだ。わかるかい?」








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その夜、ホテルのワークルームではその日ブルース氏が撮った写真がどのようにマックのモニターに現れるのか、僕は楽しみでブルース氏の横に張り付いていた。
雨にぬれたクレイドルマウンテン周辺の自然がモニターに浮かび上がると、僕は思わず唸ってしまった。
ブルース氏がその日どういうカットを撮ったのか楽しみにしているのは僕だけではない。

ブルース氏の肩越しにオーストラリアのフォトグラファーが言った、「素晴らしい写真じゃないか、ブルース。どんなフォトショップの処理をしたんだい?」

ブルース氏は「おい、おい、これはまだRAWファイルだよ」と笑う。

そう、ブルース氏の写真はどれを見ても撮った時点で完成されている。
プロなのだから当たり前、と言いたいところだが実はそうでない。
プロの撮ったカットには捨てる写真もたくさん存在するのが一般的だ。
ブルース氏の写真を見る限り、露出、フォーカス、構図の全てがどの写真も良く、捨ててもいいような写真が見当たらないのだ。
一緒に歩いていて、時折どうしてこんな所にレンズを向けているのだろうか?と思うことが度々あった。
モニターに現れた写真に「こんな所」と思わせる写真など一枚もない。
「こんな所」が「素晴らしい所」として再現されている。
そんな完成された数々の写真の中からベストショットを注意深く選ぶ。
そして選んだカットに対して、かなりの時間をフォトショップに費やす。
プリント段階ではなおさらだ。

「写真はね、結局人間の目のようには写らないのだよ。私はフォトショップで、自分が見た世界を再現しようとしているだけだ。プリントはモニター以上に目で見えたものとの誤差が生じる。だからそれを調整する為にはフォトショップの作業は欠かせないのだよ」

参加したフォトグラファーたちは自分のプリントを終えると、やはりブルース氏に見てもらいたがる。
そしてブルース氏の遠慮深いが実に的を得たアドバイスに皆真剣に耳を傾ける。
写真に対して妥協を許さないブルース氏だが、いい写真を見ると思わず顔がほころぶ。

本当に写真が好きなのだ。








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by somashiona | 2009-08-06 08:47 | 仕事

ライトルーム アドベンチャー 2008 イン タスマニア Vol.4




翌日、約束どおり日の出前に起床し、ホテルのロビーに10分早く向かった。
ブルースさんはすでにそこに来ていた。

クレイドルマウンテンとパソコンに入力し、グーグルで画像を探せばほとんどの場合、ダブ湖から顔を覗かせるクレイドルマウンテンの写真が出てくるはずだ。
まだ薄暗い早朝、ダブ湖に向かう途中の車の中でブルースさんは周りの景色を見ては「おお、なんて美しいんだ」と何度も感嘆の声を上げた。
感動するたびに車をとめ、そのロケーションを覚え書きのように軽くスナップ写真を撮ってはポケットに入ったGPSを取り出し何か入力する。
彼は撮影場所やいいロケーションを見つけると必ずこのGSPに場所を入力し、いつでもその場所をグーグルアースなどの地図で確認できるようにしているという。
今回のイベントでブルース氏は単独行動が多かった。
まるでタスマニアという島を熟知しているかのごとく、この地を自由に動き回っていた。
このことについて尋ねると、彼はこう答えた。

「ナショナルジオグラフィックの仕事はアサイメントを貰うとすぐにその土地や風俗、関連する情報の収集をフォトグラファーが一人で進めなければならない。撮影前に取材する土地の情報をいかに収集できるかが結果を大きく作用するのだよ。そういう習慣が身に付いているので今回タスマニアに来る前に何を写すべきか自分なりの情報収集はすでにすませてある。撮影すべきほとんどの場所はすでにグーグルアース等のサテライトで下見している。今は本当に便利になったよ。私は中国を多く取材しているが、初めて中国に行った時はまだあの国にひとつしかネオンサインというものがない時代だったからね。」

ダブ湖に到着するとあるポイントを指差し、「ほとんどの人たちが多分ここで写真を撮るだろう?」と僕に尋ねた。

「そうです」と答えると彼はそのポイントを素通りし、湖を見下ろす右側のトラックを登りはじめた。

僕は黙って彼について行く。
あるポイントで彼が歩みを止めると、「ここだ」といって三脚を立てはじめた。
もの凄いスピードで辺り一面を切り取っていく。
ひとしきり撮り終えて次のポイントに移動と思いきや、レンズの遥か向こうにそびえる山を見つめたきり動かない。

彼は無言で山を見つめる。

僕もしばらく無言で彼を見つめる。

そして「何を待っているのですか?」と我慢できずに僕は彼に聞いてしまう。

「あの山の稜線上に木が並んでいるのが見えるかい?その横を雲が渦を巻いて流れているのだけど、それがどうしても私の欲しい形になってくれないのだよ」

「でもブルースさん、湖のほとりのボートハウスも撮影したいと言ってましたね。もうそろそろ移動しないと天候が崩れそうですよ」

するとブルース氏は僕を見つめて柔らかく言った。

「いいんだよ。これ以上先に進まなくてもいい。私はここでいいショットが撮れる気がするんだ。いいかい、あそこも撮りたい、ここも撮りたいと忙しく動き回って70点の写真をたくさん持ち帰るより100点満点の一枚を撮ることが大切なんだよ。たとえ一週間に1枚の100点満点写真しか撮れなかったとしても、それをコンスタントに続けると1年でかなりの量の自信作を撮ることになる。そういう写真を撮らないと長く仕事を続けられるフォトグラファーになれないのだよ」

100点満点の写真。

彼に一番聞きたかったこと、それは長く写真に関わっている僕が聞くのも恥ずかしい質問だが、やはり永遠のテーマである「どうすればいい写真が撮れるか?」だ。

僕は思い切ってブルース氏にその質問を投げかけてみた。

彼はしばし考え、それは難しい質問だと言った。

あえて言うのなら、1)計画、2)好奇心、3)掘り出し物を見つける才能ではないだろうか、と答えた。
しかし、いい写真とは何か?その問題が残る。

「自分にとってのいい写真は結局自分にしか判断できないものだ。人の意見によってそれが揺らぐのなら、それはまだ君の写真ではないだろう。自分にとって本当にいい写真とは撮った後に最高に気分が良くなる写真だ。どうしてなのかは説明がつかない、でもシャッターを押した後顔が自然とほころび、最高の気分になる、そういう写真だ。君はそれを感じる時があるだろうし、感じたら素直にそれを認めなくてはならない。それこそが君だけのものだ。君の中から本当に出てきたものだ。それが君にとっていい写真だ。君だってそんな気分になったことが幾度もあるだろう?」

「いい気分か、、、」と呟く僕に、「トイレに入って、大きいほうを終えた後の気分だよ」と言ってブルース氏は笑った。












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by somashiona | 2009-08-04 18:58 | 仕事

ライトルーム アドベンチャー 2008 イン タスマニア Vol.3










この夜、フォトグラファーたちが次々と相原氏の写真展に足を運んだ。
一番熱心に作品を鑑賞し、相原氏に多くの質問を浴びせていたのは伝説のフォトグラファー、ブルース・デイル氏だった。
相原氏も堪能な英語で身振り手振りを加え説明する。
世界で活躍する為に英語力は不可欠だ。
この日、二人の間で同じ電波を発する者同士が分かりあえる友情が芽生えたように思える。








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写真展の会場からワークルームに戻ると各フォトグラファーたちがその日の画像を処理していた。
2台用意されている大型のエプソンプリンタは順番待ちの列が出来ている。
撮影し、データの処理を終え、プリントする。
全てのワークフローがここで行われる。
それぞれのフォトグラファーがもつ画像処理のテクニックを全てここで見ることが出来る。
注意深く選択したカットを最終的に仕上げるまで、各フォトグラファーは僕の予想以上に時間をかけていた。
特にプリント段階のチェックは暗室で納得がいくまで何枚もプリントを行うそれとさほど変わらないほどのこだわりを各フォトグラファーたちは見せていた。
どんな機材でどう撮ろうと、画像処理に時間をかけようがかけまいが、プリントがファイナルワークだからそのクオリティにこだわるのだ。








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タングステンライトやハロゲンライトのもとでのプリントチェックに納得がいかないブルース氏はトイレに駆け込んだ。
お腹の調子が悪くなったわけではない。トイレは、女性が化粧の調子を確認する場所、そこにはたいてい鏡の前に蛍光灯がある。
プリントの調子を確認したいのなら、蛍光灯の光が一番だ。
ブルース氏は相原氏に意見を聞きたいと言った。
トップフォトグラファー二人はこうしてトイレの中に消えた。
ピグメントインクでプリントされたブルース氏のテストプリントのクオリティに相原氏は驚愕した。
完璧なプリント。
しかし、ブルース氏は緑のトーンが嘘くさい、とまだ納得がいかない様子。
こだわり続け仕事をしてきた長年の態度、どんなに疲れていても、今更変わるものではない。

このイベント全ての日程を通して一番早く起き、一番長く撮影をし、一番遅くまでワークルームで働いていたのは一番の年長者で、フォトグラファーとしてのキャリアも一番長いブルース・デイル氏に他ならなかった。
伝説のフォトグラファーの名称はたゆまない努力の賜物だったということをしっかりと僕はこの目で見た。

翌日、僕はこの伝説のフォトグラファーと一日を共にする約束を取り付けることが出来た。
彼から何を学べるのか、子供のように浮き浮きしながらその夜、僕はベッドに入った。








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by somashiona | 2009-08-02 20:43 | 仕事

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