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オーストラリアン・ラブラドゥードル、「ワラタ通信」第二弾




M.Sさん、そしてT.Iさんへ

「ワラタ通信第2弾」
ワラタ、誕生63日目。

2010年、8月12日、前日からのひどい土砂降りのためこの日の撮影は無理ではないかとポールとメールのやり取りをしていました。
実際、午前2時を過ぎても雨脚が強かったので、半分は延期のつもりで僕はベッドの上の枕に顔をうずめていました。
午前4時半、カーテンの外の雨音は止んでいました。
外に出てみるとまだ真っ暗なので空模様はわからなかったけれど、とりあえず雨は降っていないのは確かです。
午前5時に出発することにしました。
この日はワラタだけでなく、TLBC(タスマニアン・ラブラドゥードルズ・ブリーディング・センター)の外観も朝の綺麗な光で撮影したかったので、朝の8時には現地に到着したのですが、あいにく今にも雨が降り出しそうなどんよりと重い雲に空は覆われ、思惑は外れてしまいました。

昨日の大雨の中、ポールと家族の人たちは夜中の12時までかかって濡れた子犬たちの体を拭きクレートに収めたということで、ワラタを含めた全ての子犬たちは廃車になったワゴン車の中にあるワンコホテルの中にいました。








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すべての子犬たちををクレートから再び犬小屋へ移し、その後約70匹分の餌を作り、次にその餌を与えるために広い敷地内をを4輪バギー車や徒歩でまわり、全ての犬小屋の掃除をし、生まれたばかりの子犬たちの体を入念にチェックし、テザートレーニング期間中の犬たちを一匹、一匹リードにつなげ、、、朝からポールにくっついてその仕事ぶりを見ていたのですが、予想以上のハードワークに僕は驚いてしまいました。
ブリーダー、決して楽な仕事じゃありません。
もちろん、ポールだけでそれらの仕事をこなすのは到底無理なので、奥さんのリズ、娘さんのリサ、そしてスタッフ2人も忙しく働いています。








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通常生まれてから12~18週の子犬たちはテザートレーニング(リードにつなげられることに慣れるトレーニング)を受けます。
海外に行く子犬たちは少し早めの8週目からこのトレーニングをはじめます。
ワラタは今約9週目でちょうどこのトレーニングの最中。
約2週間ぶりに逢う彼の姿が前より一回り大きくなり、子犬の成長の速さにあらためて驚かされました。
前回のワラタはベイビー、今回のワラタは坊やになりつつあるという印象を早くも受けてしまいました。
そして、彼は前回よりさらに元気です。








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今回は生まれたばかりの子犬たちもポールたちから見せてもらいました。
小さくて、可愛くて、どの子たちも壊れそうなくらい繊細でした。
ワラタや兄弟たちが生まれた時の写真をポールから送ってもらったので、今回添付します。
生まれたばかりの子犬たちはお母さんのミルクが必要なので他の犬達とは別の大きな犬舎の中でそれぞれにお母さんと一緒で過ごしています。
ポールいわく、犬は僕たちが思う以上に生命力が強いらしいのですが、生まれたての子供たちはやはり細心の注意が必要、ポールやスタッフがこの子たちにかける時間は特別に長かったです。








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この日はワラタにとって特別なことが起こった日です。
それは兄妹の一人(一匹)ペニー(メス)が飼い主のもとへ行ってしまう日だったからで
す。
兄妹のなかではこのTLBCを去る第一号です。
もちろん、ペニーとワラタの思い出のツーショットを撮りました。
飼い主のペトラさんにもこのショットは送ります。
ペニーを迎えに来たペトラさんの嬉しくてたまらない表情を見ているとこちらまで嬉しくなっちゃいます。
ポールやスタッフからラブラドゥードルと生活を共にするにあたっての心得、基本知識、しつけ、注意点など指導を受けます。
ペトラさんは真剣に話を聞いていました。
我が家のアプリコットもそうですが、はじめてワンコを家に迎え入れる日のことは絶対に忘れることができない色鮮やかな思い出として記憶に残ることでしょう。
この日からワンコと一緒のすばらしい日々がはじまるのですから。








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今回はお母さんのサマー、お父さんのサムと会う時間が殆どありませんでした。
サムとサマーを見たのはスタッフの一人が掃除に来た時だけです。
お父さんのサムは勇ましいライオンのような印象を前回受けたので、今回スタッフと接触するサムを見て僕は少し驚きました。
すごく人懐っこいのです。
スタッフにおもいっきり甘えていました。
でも、彼はベッタリと甘えるのではなく、何かイタズラを考えながら人に接近する節があるようです。
スタッフの男性がサムにかまうのをやめ、掃除をし始めると、サムは密かにスタッフの男性におしっこをかけたのです。
僕は思わず笑ってしまいました。
人も犬も見かけで判断してはいけないようです。








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今回、ワラタをどんなふうに撮ろうか、どんな写真が撮れるのか、正直言って僕は少し心配でした。
子犬は止まってくれないし、僕が常に地面にへばりついていないとまともなアングルの写真は撮れないし、はたして前回を超える写真、前回と違った写真が撮れるかどうか、僕はとても心配でした。
でも、ワラタは前回と全く違った表情を僕にたくさん見せてくれました。
忙しいポールも撮影のためにたくさん時間をさいてくれました。
僕たちはワラタを連れてだだっ広いポールの土地の中を散歩しました。
TLBCを離れる前にこれほどまでに人と接触する子犬はいないよ、とポールは笑います。
実際、できるだけ早いうちにたくさんの人間、他の犬、生き物に触れることや、散歩も人気のない自然の中より、できるだけ街の中でするように心がけたほうが、犬にとってとても大切なトレーニングであるソーシャライジング・トレーニング(社会に適応するトレーニング)になるそうで、そうすることにより犬たちがこの世界のことをより早く理解し、自分も社会の一員として生きる心構えが持てるようになるのだそうです。
僕たちとの散歩、ワラタはかなり喜んでいたようです。
ただ問題は、ワラタは僕のことがとても好きらしく、写真を撮るためポールの足元に置くと、遠くでカメラを構える僕に向かって、まるで黒い弾丸のように、一目散に駆けて来るのです。
なので、なかなか写真を撮ることができません。(泣笑)








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ワラタの身体検査。
前回44日目のワラタは体重は2.44kg、体長は尻尾を入れず約32cm、高さは(ちゃんと立ってくれず測定不能)たぶん24cmくらいでした。
そして63日目の今回は、、、
体重3.97kg、体長は尻尾を入れず約40cm、高さは約37cmくらいでした。
すごいでしょ!








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ということで、ワラタ通信第二回目、ワラタに会えば会うほど別れが辛くなる予感がし、ちょっと複雑な思いです。苦笑

最後の撮影は2日間をかけ行う予定です。
まだ税関のほうから受け入れの連絡が来ていないようで、次の撮影日がいつになるのか未定です。
僕のスケジュールがワラタの旅立ちの日と重ならないよう、僕も心から祈っています。
やっぱりワラタがタスマニアを離れる瞬間は見届けたいですものね。

今回も写真の一部を送ります。
楽しんでください。


マナブ


















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ワラタ、2回目の撮影はある意味、1回目より緊張した。
撮影の時はいつも100%全力をつくすので、2回目にできることなどもう何も残っていない気がするのだ。
一回目の「ワラタ通信」のあと、M.Sさん、T.Iさんが自分たちの写真を送ってくれた。
そこに写しだされた犬写真は素晴らしいものだった。
もう皆さんもよく知っているとは思うが、犬を飼っている人には写真好きな人が多く、犬に対する愛の大きさと比例して、彼らはとてもいい写真を撮る。
自分の犬の撮るべきシーンを知り尽くしているいるのだから、他の誰にも撮れないような愛ある写真をしっかりと撮ることが出来る。
撮影を依頼された僕は、そんな人達が「やっぱりプロは違うなぁ~」と思わず言ってしまう写真を撮らなければいけない。
これは一口で言うと、プレッシャーだ。泣笑
愛犬家たちが「うん、うん、それなんだよねぇ」と頷くシーンを理解し、捉えるには時間がなさすぎる。
そうなると、僕が出来ることはテクニック的な部分で勝負すること、そして、本当はタスマニアに来てワラタの成長の様子を見たいに違いない彼らに変わって、ワラタを取り巻く環境を十分に見せてあげること、この辺に焦点を当てるしかない。
第一回目の撮影で一番苦労したことは、ワラタと同じカメラ目線で写真を撮るためにはカメラのレンズが常に地面から30cm以内の高さでなければいけなく、おまけに子犬たちは常に動き回っている。
止まっていてもレンズを向けると一目散に僕に向かって走ってくる。
一番簡単なのは望遠レンズを使うこと、しかしストリートでのスナップショットを撮る人ならわかると思うが、望遠レンズで人を撮ると自然なシーンを簡単に切り取れるが、撮影者と被写体の距離が離れていると写真にとって大切な息遣いや手触りがなくなるのだ。
まるで地面に寝転がって、まるで目の前のワラタを見ているような気持ちになってもらうには、実際に地面に寝転がって目の前でワラタを撮るしかないのだ。
僕のレンズはワラタのヨダレでベチョベチョになってしまった。
ワラタの撮影で学んだこと、それは人を撮るときも、犬を撮るときも、同じ気持で臨むべきだということ。
根拠のない精神論的な話に聞こえるかもしれないが、人の撮影と同じように、相手を尊重し、つねにリスペクトする態度で臨めば、相手もそれに応えてくれる、たとえそれがワンコであっても、というような確信をシャッターをきる度に僕はつかんでいった。








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つづく(次は最終回よ!)
















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by somashiona | 2010-10-31 21:40 | 仕事

オーストラリアン・ラブラドゥードル、「ワラタ通信」第一弾




最近、今までに一度も経験がなかったタイプの撮影依頼をメールで受けた。
依頼主は日本の関東在住のかたでメールの内容は次のようなものだった。








はじめまして。
M.Sと申します。
私は関東の◯◯◯というところでパートナーと犬(バーニーズマウンテンドッグ)の3人で暮らしている者です。
マナブさん(とお呼びしてもいいでしょうか?)に犬の撮影をお願いしたくメールいたしました。
マナブさんのブログ「タスマニアで生きる人たち」は馳さんのブログで知りました。
今回縁があってタスマニアにある「Tasmanian Labradoodles Breeding Centre」(タスマニアン・ラブラドゥードルズ・ブリーディング・センター)からオーストラリアンラブラドゥードルを迎えることになりました。
(もしかしたらアプリコットもこちらの犬舎の出身ですか?)
そのコ(一応「ワラタ(仮名)」と命名しました)は6月11日に生まれて、ようやく一ヶ月が過ぎたところです。
私たちのもとに来るまで(9月の初めころの予定です)待っていてもいいのですが、ワラタの2ヶ月間の成長を少しでも共有したいと思うのです。
というのも今一緒に暮らしている犬(名前は「R」といいます)がそうだったのです。
 
Rのお母さん犬の「妊娠~出産~育児~巣立ち」の様子をお母さん犬のお宅が毎日ブログで知らせてくださいました。
Rが何番目に生まれたか、お母さんのおっぱいをどんな風にのんでいたか、何番目に階段を降りれるようになったか、
お母さんと別れるときはどんな風だったのか・・・etc  
ブログで垣間見た2ヶ月間のRも私たちの思い出になっています。
ワラタがやってくるまでの2ヶ月間はほんの一瞬ですが、成長を共有し私たちの思い出にしたいのです。
 
どうかワラタたちの様子を撮影していただけないでしょうか?
兄弟でじゃれ合っている様子や、お母さんに甘えている様子、巣立ちの時の様子を教えていただけないでしょうか?
マナブさんがソーマ君やシオナちゃんを写したあの眼でラブラドゥードル親子を撮影していただきたいのです。
どうかよろしくお願いいたします。

M.S








このメールでも触れているが、ソーマとシオナの愛犬アプリコットはタスマニアン・ラブラドゥードルズ・ブリーディング・センター(Tasmanian Labradoodles Breeding Centre)出身で、ブリーダーのポールさんと奥さんのリズさんとは一度面識がある。
オーストラリアン・ラブラドゥードルのブリーダーとしては最大級の規模を誇るということで、一度きちんと撮影しておきたい場所でもあった。
その後、依頼者のM.Sさんとメールで具体的な話を進め、依頼を受けることにした。

さて、今回の主役は生まれたばかりの子犬、オーストラリアン・ラブラドゥードルのワラタくんだ。
名前のワラタ(Waratah)はタスマニアン・ワラタというオーストラリア産の花の名前から来ている。
ワラタの日本語名は「笑太」、文字通り笑えてしまう。
僕が受ける撮影依頼の80%は人物に絡む撮影だ。
人物が絡まないものとしては雑誌や新聞などで使うレストラン紹介の店内撮影やフードフォト、そしてアート作品や絵画の複写、スポーツイベントではヨットや車など、依頼を受けるたび内心冷や汗をかくのだが、今回の犬の撮影依頼は僕には初めてのことで、冷や汗は、もうナイヤガラの滝状態だった。
7月の頭から9月のはじめまで約3回から4回に分けてワラタを追いかけることになった。
撮影場所となるタスマニアン・ラブラドゥードルズ・ブリーディング・センターへは僕の住むホバートから車で片道約2時間半。
ポールさんやリズさんのスケジュールにもよるだろうが、一度現場に出向いたら少なくても500枚から1000枚の写真は撮りたい。
一回平均700枚だったとして、3回から4回分、ワラタを語るためのワンパターンではないイメージをどれくらい撮れるのかが問題だ?
同じような写真を繰り返し撮り、それをお見せするわけにはいかない。
ほとんどが野外での撮影と予想されるので写真の出来、不出来は天候にも左右される。
ちょうどこの時期、他の仕事の予定もびっしり詰まっていてロケハン等をする余裕がない。
撮影の作戦を考えなくてはいけないのだが、犬写真といえばアプリコットの写真くらいしか経験がないのでこれといった案も思い浮かばない。
軽井沢の馳星周さんのところでワルテルとソーラを撮ったときは、まったく思うような写真が撮れず、完全な負け戦になってしまった苦い経験もある。(完全にトラウマになっている)(ワルテルとソーラが僕と話せると思い込んでいたところが敗因だった)
撮影の時、僕が自分にかけるいつもの呪文を唱えた。
「僕がこれから写真を撮る相手を僕はずっと以前から大好きで、相手も僕とまったく同じ気持なのだ」と。

今回ブログで紹介するのは僕が依頼主であるM.SさんとパートナーのT.Iさんへ宛てたメールだ。
撮影をするたびごとに僕が見たこと、感じたこと、ワラタの様子、ワラタを取り巻く環境など、何枚かのサンプル写真を添えて送ったこのメールを僕たちは「ワラタ通信」と名づけた。
僕がメールを送るたびにM.Sさん、T.Iさんから届く返信には犬と共に暮らす人の愛が満ち溢れていた。
プライバシーの問題もあるので彼らからの返信メールをブログで公開するわけにはいかないが、彼らとコミュニケーションを深めるにつれて、僕はワラタがワンコであることを時々忘れた。
まるで海外からの養子縁組に関わっているような錯覚に陥るのである。
でも、これはただの錯覚ではなく、ワラタを待つお二人と一匹にとってはまさに家族の一員を迎え入れようとしている大切な瞬間なのだ。
それを考えれば考えるほど、撮影にも熱が入った。









ワラタ通信 第一弾


M.Sさん、T.Iさん、こんにちは。
第一回目のワラタ通信です。

2010年7月24日の土曜日は雨が降ったり、止んだりの肌寒い一日でした。
Tasmanian Labradoodles Breeding Centre(今後TLBCと省略します)の敷地へ入るやいなや、興奮したワンちゃんたちに取り囲まれ、ジーンズを引っ張られたり、ジャケットを引っ掻かれたり、あたり一帯が犬の鳴き声で包まれた広大な土地で唖然としていると、ポールさんが笑顔いっぱいで現れました。








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TLBCはの敷地はとても広く、犬たちはカテゴリーによって別々の犬舎で生活しているよいうです。
ワラタが毎日生活している犬舎は白い壁に赤い屋根の子犬住宅棟、向かって一番左側です。
ポールに案内されて僕は子犬たちがいる柵の中に入りました。
柵の中には白3匹、黒4匹、そして茶1匹、合わせて8匹の子犬たちがいました。








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ここでポールに今日一番大切な質問、ワラタはどの子?
あそこの黒い子、とポールは指を指すのだけど、、、。
黒い子の2匹はメスで2匹はオス。
ワラタはオスなのでまずはオチンチンを探す。
ワラタともう一匹のオスとの違いは目のまわり。
ワラタの目のまわりは微妙のグレーがかっています。
それが僕にとっては大きな目印で唯一の手がかり。(といってもとても分かりにくいのですが)








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この子犬たち、僕が柵の中に入ると一斉に寄ってきて、ジーンズ、ジャケットを噛じり、スニーカーの紐を引っ張ります。
まるでアマゾン川のボートから落ちたドジな男に群がるピラニアのようです。
ダブルノットで結んだスニーカーの両足の紐も3分で見事にほどけてしまいます。
カメラを構える暇など、まったくなしです。
どうやって彼らを撮ればいいのか訳がわからず、とにかく雨の中、柵の中でじっとこの子たちの行動を眺めていました。
この子たちは寄ると触ると取っ組み合いです。
ときどき噛まれた場所が痛かったのかキャンキャンいいながら逃げまわり、ときどきは誰もいない柵の隅で一人静にエネルギーを補充しています。
この子たちを見ていると、こんなに小さいのに、すでにそれぞれの性格のようなものが表れているようです。
やんちゃな子、シャイな子、人間(僕から離れようとしない子)、僕から微妙に距離を置く子、あまり動かない子、動きっぱなしの子。
ワラタはとても元気な子です。
そして人懐っこい子です。








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ポールはこの子たちを手のひらや膝の上に乗せてお腹、耳、手足を撫ぜてあげます。
この動作は子犬たちとのコミュニケーションをとる上でポールがとても大切だと思っていることです。
このとき、ある子犬は手足をばたつかせますが、ワラタは100%相手(人間)に身を委ね、気持よさそうに目を細めます。








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柵の中にワラタのお母さん、白い毛並みのサマーが入ってきました。
たぶん中型に属するラブラドゥードルだと思います。
このサマーが実に素晴らしいのです。
ほんとうに、本当に人懐っこく、もう好きなならずにいられない犬です。
サマーと接した人たちはサマーの生んだ子犬たちを欲しがるのだとポールが言っていました。。
その子供たちもきっとサマーのようにラブリーな犬になるだろうから。
どうやらワラタはサマーの遺伝子をたっぷり受け継いでいるようです。








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柵の中は木のクズがタップリと敷きつけられています。
これは子供たちが遊ぶオーストラリアの公園も同じです。
安全で清潔だからです。
こういうところにブリーダーの気配りを感じます。
ワラタ、黒い毛並み、しかも雨降りだったので木くずがたくさん体についていますが、撮影のためにそれをキレイにするというようなことはしませんでした。
できるだけ自然のままに、普段の様子を写すよう心がけました。








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柵からワラタを出し、母親のサマーとの写真撮影を試みました。
僕が近くにいるとサマーはすぐに僕と遊ぼうとするのでポールにお願いし、できるだけサマーとワラタが自然に接する状況を作りました。
やはり母と息子、二人で行動する様子は幸せそのもの。
ワラタが芝生に横たわるサマーのミルクを吸っている間、サマーは気持よさそうに寝てしまいました。
母と息子のツーショット、いい感じに撮れたと思います。








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ポールもサマーやワラタに混じってもらい一緒に撮りましたが、サマーやワラタに向けるポールに視線から愛情がこぼれ落ちていました。








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ライオンのような勇ましい姿の犬はワラタのお父さん、サムです。
ワラタを近づけることは出来ませんでした。
安全第一です。








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この後、ワラタの身体検査をしました。
体重は2.44kg、体長は尻尾を入れず約32cm、高さは(ちゃんと立ってくれず測定不能)たぶん24cmくらい。








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身体検査のあとポールの息子さんがワラタを抱いていたのですが、疲れたワラタは見事に爆睡。
その寝顔の可愛こと。








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柵に戻ると、再び兄弟たちと走りまわったいました。








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この日の撮影を終え、僕が家に帰る時、サマーが広い敷地の端にあるゲートまで僕を見送ってくれました。
本当に心優しいお母さんです。








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こんなことをM.Sさん、T.Iさんに言うと悔しがるかもしれませんが、ワラタは本当に、殺人的に可愛らしかったです。
約2週間後にまたワラタに会うのが今から楽しみです。
今回、仕事では初めての子犬撮影でしたが、いい写真が撮れていて安心しました。
次回はどんな写真が撮れるか、楽しみです。
ワラタが日本に発つ前日、ポールはワラタや他の子犬たちをロンセストンという街に連れて行き、人間たちの中を歩かせる訓練をする予定です。
そしてお風呂に入り綺麗な体で旅立ちます。
ポールと話し合った結果、この様子を撮るためには僕もロンセストンに宿泊しなければならないようです。


今後の撮影に関してご意見、質問、アドバイス等ありましたら、ぜひお聞かせください。


では、約2週間後の第2弾をお楽しみに。


マナブ



つづく
















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by somashiona | 2010-10-29 00:47 | 仕事

ポップコーン中毒



僕はいつも何かの中毒状態だ。
テトリス中毒はいまだに続いている。
最新の中毒は、もう自分で自分が嫌になっちゃうくらい、ポップコーン中毒。










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ダイエット中にどうしてもお菓子類が食べたい時、なにがいいか色々と検討をかさね、ポップコーンならさほど身体に負担はないだろうという結論に至った。
ポップコーンといってもすでに出来上がっているものではなく、爆裂種を乾燥させた粒をフライパンなどで炒るタイプだ。










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このポップコーンのいい点は
①一袋375gでたったの1ドル80セント。この一袋で超山盛りの(一日で食べきるのは無理な量)ポップコーンが出来上がる。実に低価格で庶民の味方。
②油や塩の質や量を自分で加減できる。
③できたてホヤホヤ、熱々のポップコーンは美味しい。
④フライパンの中で跳ね上がるポップコーンの音と、家の中に広がる匂いがたまらなくいい。
軽い気持ちで食べ始めたポップコーン、すでに3ヶ月以上、ほぼ毎日食べ続けている。
最初はパターを使って、できたポップコーンにシロップやキャラメルソースをかけていたが、さすがにこれじゃダイエットもなにもないだろうと、涙ながらに諦めた。
油も色々と試したが、オリーブオイルが一番軽くて美味しいと分かった。
塩は粗めのシーソルトがいい。
たくさんかければかけるほど美味しいが、血圧もそれに比例して上がりそう。
クッキーなどを自分で作ってみると、使うバターや砂糖の量の多さにビビってしまうが、ポップコーンでも美味しいと感じられる塩の量はかなり多い。
それを考えると、市販のポテトチップス系のお菓子に使われている塩の量もきっと半端じゃないのだろう。
一日、大きなステンレスのボール満杯にして3つくらい食べるので、摂取している塩分の量もかなりマズいことになっている。










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ああ、どうして僕はすぐ何かにハマってしまうのだろう。
真夜中に起きて、気づいたらポップコーンを食べていた、というところまではまだきていないが、いい加減にやめないと病気になりそうな気がしてきている。
映画やドラマの中で禁酒中のアル中男や女がムシャクシャした夜に台所の棚に隠してあったバーボンのボトルを探しだし、ついつい飲んでしまうというシーンを見て、禁酒しているのにどうしてそんな所に酒を置いておくのさ、と一人突っ込みをいれたものだが、そんな僕も台所の棚の中には4,5袋のポップコーンが万が一に備えて隠されている。
食べたい時にポップコーンを切らしていた時のことを考えただけで発作を起こしそうになるからだ。
これを中毒と言わずして、なんと言おう。
やれ、やれ、まったく、自分で自分が情けない、、、。










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買い物にいくと必ずポップコーンのように買ってしまうものはまだある。
代表選手はこれ、ホールトマトの缶だ。
スーパーにいくとあらゆるブランドのホールトマトの缶が売っているが、僕はこの「ラ ジーナ」が一番好きだ。
しかもトマトがまるごとタイプじゃなく、ホールトマトがダイス状に細かく切られているタイプがいい。
パスタにしろ、スープにしろ、何かとトマトソースベースのものが好物な僕のキッチンには決して切らすことが許されないアイテムの一つというわけだ。
そういうアイテムはまだ他にもあるのだけど、今日はたまたまテーブルの上にあったので記念に写真に収めることにした。


中毒といえば、最近、まるで血に飢えた吸血鬼のように肉が食べたくてしかたない。
ステーキ、でっかいステーキ、これじゃないと心は満たされない。










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昔は血がサラの上に滲んでいるようなレアやミディアムレアのステーキを食べられなかったが、近頃はレアに近い方が好みだ。
あの柔らかさがいい。
どうしてこんなにステーキが食べたくなるのか、謎だ。
もしかしたらダイエットのリバウンド期に入ったのだろうか、、、?










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僕の家の近くにはヒルストリート・グロッサリーという、ホバートの高級グロッサリーブームの火付け役となったお店がある。
普通のスーパーより少し商品の値段は高いが、お店においてあるものは確かにいいものが多い。
このグロッサリーで売られているオリジナルソーセージが美味しいと何人かの友人に勧められた。
僕は基本的に加工食品を避けるようにしている。
とくに大きなスーパーマーケットで売られているソーセージなど、どんな肉が混ざっているのかわかったものじゃない。
ヒルストリート・グロッサリーは大丈夫だから、と言われると、訳もなく納得してしまうような信頼感がこのお店にはある。
そんなわけで、ここのソーセージもハマってる。汗










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中毒といえば、最近子供たちは完全に料理にハマっている。
暇さえあればクッキングブックをひろげ、兄妹で何が美味しそうか、何が食べたいか、話し合っている。
これは僕の遺伝子と何か関係があるのだろうか、、、?
そうだとすると、彼らも将来、何かの中毒と戦い続けるハメになる。










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by somashiona | 2010-10-25 23:59 | ソーマとシオナ

男友だち




以前もブログで書いたが、今年日本に帰ったとき僕の体重は72kgになってしまった。
これは自己新記録。
タスマニアに戻ってから8kg落とし、ここ数カ月は63〜64kgの間を行ったり、来たりしている。
今は思いっきりなんでもパクパク食べているが、8kg落とすまでは、涙ながらの食事制限とエクササイズを強行した。
油コテコテの中華料理や山盛りのアイスクリームが食べたくなったとき、僕はある男の顔を思い出し、「彼をぎゃふんと言わせるまでは絶対食べないぞ」と自分に言い聞かせた。










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実家のある札幌に帰ると必ず僕は歯科医の友人に歯を見てもらう。
大人になってからはじめて僕の歯を抜いたのも彼だ。
彼とは高校を出たあと、札幌代々木ゼミナールで知り合った。
メンズクラブという中学時代から愛読していたファッション雑誌にも札幌のおしゃれ人間として度々登場した彼は僕より1歳年上で、大きな声では言いたくないが、高校時代を田舎で過ごした僕にとってはジェラシーたっぶりの目で見る存在だった。
当時全身をニコルというブランドで固めていた彼を僕はニコル先輩と呼んでいた。
周りの人達からも常に一目置かれていた彼とはじめて会話を交わした時の記憶は今でも鮮明だ。

「あの〜、ニコル先輩、ちょっといいですか?」
「ああ、いいよ。えぇ〜と君はマナブっていったっけ?」
「はいそうです。あのぉ、唐突ですがニコル先輩はどんな音楽を聞くんですか?」

彼のイメージとしてエスビス・コステロ、ジルベルト、コルトレーン、そんなアーティストを僕はいつも思い浮かべていた。
ああ、ジャズやクラッシックの知らないアーティストの名前が出てきたらどうしよう、、、そこで会話が途切れちゃうじゃないか、、、。
そんな心配をしながらニコル先輩に質問したのだ

「う〜ん、そうだなぁ〜、音楽ねぇ、、、」
悩む顔がまた渋い。
くそぉ〜、都会で高校時代を過ごした奴っているのは、どうして僕たちとこんなに違うんだろう、、、と思いながら彼の答えを待った。
「いろんなジャンルを聞くけど、一番好きなのは、、、松山千春かなぁ」
僕はあっけにとられて彼の顔を見つめ、それから吹き出してしまった。
十勝の池田町で中学時代を過ごした僕も松山千春の大ファン(札幌では内緒にしていたが)。
その松山千春ショック以来、僕たちはとても仲のいい友達になった。
まだ十代の時の話だ。

僕たちくらいの年齢になると(40代)男同士で差し向かいになっても楽しい話題がどんどん出てくるわけでないし、抱えてる会社や個人的な悩みなどは余程のことがなければ友達にもそうそう話さないだろう。
しかし十代の頃は違う。
自分の頭に浮かんだことは思考プロセスの深いところに届く前に、とにかく次から次へと口から吐き出され、自分のことを全て相手にさらけ出す。
たぶんそうすることで自分を確認し、自分を理解する相手をひとりでも多く見つけることで、この社会での自分の居場所を見つけようとやっきになる時期なのだろう。
そういう禅問答のようなことを十代の頃にとことんやりあった友人とは数年ぶりに会ってもほんの数分で会っていない間に積もった雪が溶け、顔を出した地面がかつて自分が泥んこになったものと違わないことを知り、ホッとする。

彼とは本当にふだん連絡をとり合わない。
2年ぶり、3年ぶりに話すみたいなことがちょくちょくあるが、間違いなく固い絆で結ばれている。
彼と僕がやっていることはまったく違うのだが、彼と僕には生き方に対する共通した考え方がある。
多くの男達は十代の頃宣言した「オレはこうやって生きていくんだよ」といった類のことを年をとるごとに曲げに曲げ、しまいには「オレ、そんなこと言ってたっけ?」とシラをきってみせる。
世の中のことなんてまったく知らない十代の頃の人生観なんて、世の中の荒波に揉まれたら、跡形もなく消えてしまうさ、とそれが当たり前のように多くの男達は言う。
でも、本当だろうか?
人間が一度持ったコアな部分での「オレはこう生きる」という考え方は、そんなに簡単に消え去るものなのだろうか?
若い頃に感じたものごとは、意外と本質をついている気がする。
三つ子の魂で基本的な性格を身につけ、思春期で悩み、世の中にイラつき、女の子を追いかけはじめ、くだらないことから大切なことまで好きなだけ考え、悩み抜ける十代後半から20代前半に持った「どう生きたいか」「どんな人間になりたいか」は決して青臭い考えではないと思う。
キレイごとだけでは生きていけないとオヤジたちはいう。
そう、キレイごとを押し通すのは大変な犠牲と労力を必要とするから。
彼、ニコル先輩と逢うたび、十代の頃宣言した「オレはこうやって生きていくんだよ」が変わっていないことに心から安心する。
そして、もし僕の「オレはこうやって生きていくんだよ」が変わってしまったと彼が感じたとしたら、もしくは僕自身が認めてしまったら、きっと僕は彼に会いにくくなると思う。

幸運なことに、僕の十代から続いている決して数が多いとは言えない友人たちは常に努力している人たちで、彼ら、彼女たちと会って話をするたび、僕は刺激や影響を受け、ああ、自分も止まっているわけにはいかない、と思ってしまう。

ニコル先輩は社会的に安定した地位を築いても決してそこにとどまらない。
もっといい地位、もっといい収入、人が自分をどう見るか、そんなことに彼はちっとも関心がない。
彼の関心は常に、自分の正直な心が何をやりたがっているのか、そこにある。

彼が新しく開業した「さくらさくデンタルクリニック」を僕は今年はじめて訪れた。
札幌地下鉄円山公園駅の真上にあるクリニックは彼らしくおしゃれだ。
親切で美人のスタッフに歯を見てもらい、ばっちりキレイにしてもらった。
診療時間が終わり、スタッフが帰ったあと彼にこのクリニックが出来るまでの話を聞いた。
自分の家を立てた友人の家にはじめてお邪魔するときや、ビジネスをはじめた友人のオフィスに訪れるときの感覚が僕は大好きだ。
友人の成し遂げたことを心から誇らしく思い、本当に嬉しくなる。
その日、彼と一緒にクリニックをでる前に着替えをする彼の体を見て僕は驚いた。
「くそっ、忙しい、忙しいと言いながら、めちゃ身体鍛えてるじゃん!」
72kgでカメラを持って走るたびに上下に揺れる自分のお腹を憎らしく思っていた時だけに、なおさら焦った。
そしてこのとき、オーストラリアに帰ったらすぐに体を鍛えようと心に誓った。










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彼のクリニックで歯科医として働くもう一人の友人Y君と居酒屋で合流した。
このY君とは大学時代からの友人だ。
もし僕がY君に出会っていなかったら、今この世にソーマとシオナは存在していなかったと思う。
Y君の当時のガールフレンドが僕にソーマやシオナの母親を紹介してくれたのだ。
人生、次の曲がり角に出るまで、その先は分からないものだ。
彼も僕の人生に多大な影響を与えてくれた大切な友人の一人。
こんな昔ながらの男友達と居酒屋であーでもない、こーでもないとやり、その後は真夜中の大ビリアード大会。










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大学時代、僕たちは嫌になるほどビリヤードをして過ごした。
といっても、ポケットやスヌーカーではなく、四つ玉という赤いポール2つ、白いポール2つで競いあうとても地味なゲームなのだが。

この夜、僕は本当に楽しかった。
まるで学生時代に逆戻りした感覚。
その感覚に戻るためにどうしてももう一つだけ欲しいものがあった。
それはタバコ。
僕は禁煙してもう5年以上経つがこの夜久しぶりに吸ったタバコはなかなか、いや、かなり、いや、強烈に美味しかった。
調子にのって、5本ほど吸ってしまった。
(もちろん、その後は吸っていない)
ビリヤードの台を照らすライトの下に揺れる紫の煙越しに彼らの顔を眺める。
キューが鋭く白い手玉を突き、青いチョークの粉が舞い散る。
遊びなのに、馬鹿みたいに真剣になるところも、あの頃と同じ。
年に一度、こんな夜があると、人生はとてもいいものだと、心から思えるのに。










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by somashiona | 2010-10-20 22:51 | 人・ストーリー

ラザニア世界選手権、タスマニア、ホバート地区予選









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虹の向こうサンディーベイへ向かう車の中、僕と子供たちは無言だった。
お互い口には出さないが、心の中は今日行われるラザニア世界選手権、タスマニア、ホバート地区予選(僕たちが勝手にそう呼んでいるだけです)のことで一杯だったからだ。

会場はスコット宅。
ホバートに2件の寿司ショップ、1件の寿司ケータリング会社、そして以前紹介したカフェ、Next Doorを持つ、食にかなりのこだわりを持つ男だ。

審査員には和食の匠であるMr.ケン氏と第二子出産予定を3週間後に控えるその妻カナ、そして九州からわざわざこの選手権のために駆けつけたグルメの女王カナの母を招いた。
この日、ラザニアを食する子供たちにも投票権はある。
子供たちの意見は時としてグルメな大人たちよりもストレートで残酷だ。


スコット・チーム VS マナブ・チームのバトル。


実を言うと、マナブ・チームがラザニアを作るのは今日で2度目。
1度目が大失敗だっただけに、今日の選手権をソーマはかなり心配していた。
ダディのマナブは選手権の3日前、ラザニア・クイーンのギャビー宅を訪れ、彼女のレシピを内密に教えてもらったので、心に余裕がある。
実力を十分に発揮できるよう、ナイフは勿論、ラザニア専用の陶器、フライパン、鍋、まな板にいたるまで、自分たちが知り尽くした道具をスコット宅に持ち込んだ。

ラザニアは基本的にとてもシンプルな料理だ。
トマトソースとホワイトソース、そしてラザニア用のパスタがあればそれでOK。
なので勝負を左右するのはどんなトマトソースを作るか、どれだけのレイヤー(パスタの層)にするかなど、力の入れどころが絞られることになる。










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スコット・チームが素早くトマト・ソースを仕上げる。
スコットのパートナーであるMs.トモコは料理の達人、ソーマにプレッシャーがかかる。
スコット・チームに今回のラザニアの名前を尋ねると、彼は自信たっぷりにこう応えた、な、なんと「ワラビー・ラザニア」。
マズイっ、これはマズい、九州から招いたグルメ女王、カナの母を意識した作戦だ。
ワラビーの肉を食べたことがある日本人など、いったいどれだけいるだろうか?
ワラビーというのはカンガルーをひと回り小さくしたような動物で、タスマニアにはそれはもういたるところにいる。
肉屋さんは勿論、スーパーの肉売り場でも時々買うとが出来る。
トマトソースとの相性がいいことで有名だ。
それに比べ、マナブ・チームはごく普通のビーフ・ミンス。
ホールトマトの缶、トマト・ピューレを使うところはスコット・チームも僕たちも同じだが、彼らはそれにチリ・ソースを加え僕たちのトマトソースに差をつける。














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スコットが僕たちのラザニアの名前を聞く。
「ベジタブル・ラザニア」とソーマは少し小声で応える。
トマトソースにはガーリック、オニオン、キャロット、バジル、イタリアンハーブが入り、それとは別のレイヤーにズッキーニ、ほうれん草、ブロッコリーの野菜レイヤーを加えるのだ。
まあ、言ってみれば、、、極めてシンプルなんです、はい。










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ホワイトソースはお互いに時間を節約するために大きな鍋に共同で使えるよう大量に作ることにした。
こんなにバターを入れてしまっていいのだろうか、と思える量のバターにカットしたチェダーチーズをたっぷり入れる。次の日からかなり真剣にエクササイズしないと怖くなるカロリーだ。










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僕は写真を撮ることに忙しいので、ほとんどの作業はソーマにお任せ。
Ms.トモコはラザニア作りの手伝いをしつつ、合間にガーリックブレッド作りもする。










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途中、スコット・チームのメンバーである娘さんたちもソーマの手伝いをしてくれる。やさしいなぁ。










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僕たちのラザニアは5レイヤー(5層)になった。
最後のレイヤーの上にホワイトソースをかけ、その上にパルメザンチーズをふりかける。










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オーブンの管理はこの家の主であるスコットに任せた。
し、しかし、オーブンから出てきた僕たちのラザニアを見て絶句、真っ黒焦げ、、、。
「いやぁ〜、ごめん、ごめん、マナブたちのラザニアをオーブンの一番上に入れていたのを忘れてたよ!」とスコット。
うぎゃ〜、嘘だ〜、忘れていたなんて、絶対陰謀だ、罠だ〜、わざとに決まってる〜、と騒ぎ立てるマナブ・チーム。










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そんな声を聞き、笑いながら皿に盛り付けするスコット。
ソーマは終始真剣そのもの。











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さっそくみんなで試食会、緊張の瞬間だ。
ジャッジをくだす子供たちだって真剣。
そして、スコットの娘スィアがお皿から顔を上げ、僕の顔を見てニコリと笑う、「いいたくないけど、これはマナブ・チームの勝ちね」そしてスコットも「うん、たしかに美味い、ベジタブルがとても利いている」。
もちろん、ワラビー・ラザニアも絶品で僕的には甲乙つけ難いが、ウィナー(勝者)になったソーマはご機嫌。
一つのお皿の上に2種類のラザニア、サラダ、ガーリックブレッド、もうお腹ははち切れんばかりでした。
ご馳走さま!










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by somashiona | 2010-10-17 21:43 | ソーマとシオナ

ヨハンに会いに 後編











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ヨハンの家に泊まったときは、できるだけ早起きしてシェフィールドの朝を撮るようにしている。
一般的に老人は早起きだと言われているが、ヨハンが僕より先に起きているのをまだ見たことがない。
「寝れる」ということは「体力がある」ということ、僕はそう受け取っている。
ヨハンがこの小さな町に住み着いたのは、シェフィールドがマウントローランド山の麓にたたずんでいるからだ。
この山はいつ見ても惚れ惚れするほど自信たっぷりに立っている。
山にもオスやメスの性別があるとしたなら、この山は筋肉質で無精髭をはやした寡黙な大男という感じだろう。
シェフィールドに来たのなら、まずはこの山を撮らないと。










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肌に刺さるような冷たい朝の空気を吸いながら、斜めに差しこむ朝の光がドラマチックなうちにできるだけシャッターを切り、ヨハンの家に戻る。
彼はいつものように薬をテーブルの上に並べ、いつものようにオレンジ色のポットのお湯をかけたポリッジ(オートミール)を食べている。










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僕の朝ごはんは毎週、時には毎日違う。
きっちりおかずを作ってごはんを食べる時もあるし、パンやシリアルですませる時もある。
ヨハンのこの簡素な朝の儀式は、何十年も変わることなく繰り返されてきたに違いない宗教的な神聖さと威厳がある。
彼が全てを食べ終えるまで話しかけるべきではなく、少し距離をおいた場所から彼を眺めているべきだとさえ僕に思わせる。
ヨハンのこの朝の絵は、オーストラリアで一人孤独に生きるお年寄りたちの典型的な姿ではないかという気がする。










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この日もヨハンの家の中は寒い。
「寒いね、ヨハン」
ひょっとしたらヒーターをつけてくれるのではという希望を込めて僕が言うと
「今年は例年に比べ、ものすごく暖かいんじゃ。ほら見てご覧、マウントローランドの上に一つも雪が残っとろんじゃろ」とヨハンがこたえる。


僕とヨハンの間では話が途切れても平気だ。
他の誰かと二人きりでいるとき、5分以上話が途切れると、僕は何か話さなくっちゃと目の前の沈黙を破るのにやっきになるが、ヨハンと一緒にいると彼にはそういう時間が必要だという気がする。
マグカップを手に少し曇った窓ガラス越しからマウントローランドを静かに眺めるヨハン。
声には出さないけれど、ヨハンの心のなかでは今日も山との会話が弾んでいるのだろう。
もう山には登れない彼だが、ヨハンの家の中では常に山と関わるものを目にする。
アルプスの山々が印刷されたグラスやカップのコースター、ヨーロッパの山々から届けられた絵葉書、テーブルの上には古い山の雑誌が開かれている。
高所における高山病の記事など今更読んでも仕方がないのに、、、。
彼に数々の喜びや厳しさを教えてくれた山。
いつでもそこにいるがその懐へはもう入ることの出来ない山。
山はヨハンにとって長年の友人なのだろうか、それとも崇める神なのだろうか?

「ヨハン、今日はどこかへ写真を撮りに行こうよ、どう?」

「わしは別に構わんよ」とこたえるヨハンの顔には明らかに笑顔が広がるが、彼は平静を装うとする。

「どこに行きたい、ヨハン?」

ヨハンは運転免許を持っていない。
公共の交通機関がまったく発達していないこの土地で車の運転ができないということは、誰かに依存して生きるか、それとも極端に狭い範囲にとどまって生きるかを意味する。
誇り高いヨハン、他人に依存するくらいなら不自由をすすんで選ぶだろう。
しかし、自然を愛し、写真を愛するヨハンにとってそれはさぞかし辛いに違いない。

「デボンポートはどうじゃろう?」とヨハン。

デボンポートはヨハンの住むシェフィールドから車で北へ約40分のバス海峡に面した港町だ。

「え、どうしてデボンポートなの?山に行って写真を撮りたいんじゃないの?」彼のリクエストは僕には少し意外だった。

「わしはね、海が見たいんじゃ」と僕をまっすぐ見つめヨハンがこたえる。

「山男が海を見たいの?」と少しからかうように僕が笑うと、「妻がいても若く美しい女性に目移りするのが男というもんじゃろ」とヨハンは言って突然マグカップのコーヒーでうがいをはじめたかと思うと、リビングルームに飛んでいき、カメラやビデオカメラのチェックをはじめた。










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デボンポートではヨハンの指示通りに車を走らせ、灯台の下に車を止めた。
車から降りるとヨハンはすぐに戦闘モード、いいポジョションを求めて灯台の周りを歩き回っている。










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海に面する高い崖の上に灯台は立っているため、その姿をファインダーに収めようとすると、どこから撮っても背景は空ばかりで絵にならない。
崖の下から灯台を見上げるかたちで写真を撮るため、僕はヨハンに見つからないようゆっくりと崖を降りた。










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ヨハンはまだ僕に気がついていない。










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レンズをあちらこちらに向け、構図を探していると崖の上に立つヨハンが見えた。

「お~い、ヨハン。危ないからこっちに来ちゃダメだよー!」と僕はヨハンに向かって叫んだ。

「はははは~」と声高らかに笑うヨハン。
嫌な予感はしたが、まあ、僕のいるところまでは来ないだろうとたかをくくって、僕はまた撮影をはじめた。










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次の僕のファインダーの中でヨハンを発見したときは明らかに前より僕に近づいている。
自分の歩くラインを見極める顔は真剣そのもの。
僕でも少し怖いと思うような大きな岩の段差をヨハンは慎重に、しかし大胆に降りてくる。










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「お~い、ヨハン、ダメだったら、来ちゃダメだよ。1メートルの岩からだってもし落ちちゃったら大変なことになるんだから!ねえ、お願いだからもう降りてこないでー!何かあったら全部僕の責任なんだからさー!」

多くのお年寄りが介護抜きでは生きていけなくなるきっかけとして転倒が挙げられる事が多い。
子供なら毎日お約束のように転び、膝やおでこに絆創膏を貼って次の日はけろりとしているだろうが、お年寄りにとって一度の転倒が車椅子生活に直結してしまったりするのだ。
歩けなくなると介護が必要となる。
介護が必要となると自分の意志だけでは出来ないことがたくさん出てくる。
もちろん運動量もぐっと減り、身体も心もどんどん衰弱へ向かう。










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必死の説得にもかかわらず、ヨハンは我が道を進み、僕のいる場所までたどり着くと怒る僕に向かってべろべろばーをしてみせる。










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そしてまた鬼の形相に戻って撮影を始める。
まったく、、、。

「まったく、、、」と言いながらも僕には彼の気持ちがよくわかる。
いや、僕だけじゃないだろう。
写真を撮る者なら被写体を目の前にし、押えきれなくなる自分の衝動というものを何度も経験しているはずだ。
この衝動に駆られファインダーを覗いているひとときは頭の中に雑念などない。
ある意味、瞑想状態といってもいい。
なので撮影のあとは、撮った写真の出来はさておき、何か満足した気持ちで満たされる。
これは若者も、ヨハンのようなおじいちゃんもまったく一緒だと思う。
ヨハンの年齢でこういうふうに熱くなれるものを持ち続けられるのはとても幸運だ。
本当に好きだと言えるものがある人は、意外と少ないのだ。










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「Dignity of risk」という言葉がある。
僕はこの言葉がとても好きだ。
直訳すると「危険の尊厳」だが、これじゃなんだかわからないだろう。
守ることは親切であるが、その人から自由、喜び、達成感、可能性を奪う凶悪にもなりえる。
成人で、行動の結果起こり得る危険の可能性を予期できる人に対して、それは危険だ、やめておいた方が身のためだというのはその人の尊厳を尊重していないことになる。
80歳の老人に「タバコを吸うのは健康に悪いからよせ」「夕食にマクドナルドなど食べるべきでない」と言ってもしかたない。
好きなように、好きなことをさせてあげるべきなのだ。

という訳で、ヨハンが崖を降り、夢中で写真を撮る権利を僕は奪うことが出来ないと僕なりに判断し、もう彼の好きなようにさせた。










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写真を撮っていると彼は眩しい光でも見てしまったかのように、なんども顔をしかめ、苦しそうな顔をした。
ヨハンにどうしたの?と聞くと、ここ数カ月、目が痛み、じっと何かを見つめるということがとても辛いのだという。
それなら、もう写真を撮るのはよそう、車に戻ってドライブをしよう、と僕が言うと、「いかん!わしはここで写真を撮るんじゃ!まだ満足のいく写真が撮れてないんじゃ!」となかば叫ぶようにヨハンは言った。
この時のヨハンの顔を見たら、相原さんの金剛力士も真っ青だっただろう。
写真にかける意気込みは老若男女、プロ、アマを問わず、人を豹変させるらしい。










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向こうの岩の上からの方がいい写真が撮れると言って、またヨハンは危ない岩の上を歩き出す。
僕も腹を決めて、先回りしたり、戻ったりしながら彼の気持ちが向かう方へと足を進めた。
岩の一つ一つの安定度合いを手や足で慎重に確かめ、黙々と進むヨハン。
昨夜スライドで見た若きヨハンの姿と重なり合う。
絶壁にぶら下がる若いヨハン、山の頂上から満足気に下界を見下ろす若きヨハン、僕の目頭が熱くなってヨハンの姿がにじむと、目の前のヨハンと若き日のヨハンの姿が重なり、滲み、過去と現在を行ったり来たりする。
ああ、僕たちはどうして老いていくのだろう、当たり前のことなのに、納得できない、生まれてきた者が味あわなくてはいけない現実の意味を考えてしまう。










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彼のひび割れたしわくちゃの手は必死に岩の皺を捕まえるが、よく見ると彼の顔はとても穏やかで満ち足りて、家の中にいるときの彼の顔とはまったく違うではないか。
写真を撮っているときは、僕のことなどまったく眼中に無いヨハン。
それこそフォトグラファーというものだ。










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シェフィールドに帰ると、町のギャラリーでお茶を飲んでからこの町を出なさい、とヨハンがいう。
町の自称アーティストたちが運営するギャラリーでヨハンもそのメンバーの一人だ。
都会ならこんなスペースを自由自在に使えるなんて、なんとも羨ましく思うだろう。
娯楽の少ない僻地にはこういうギャラリーが意外と多い。
何かを創造するときに使う脳と、食欲、睡眠欲、性欲などで働く脳の場所は同じだと聞いたことがある。
田舎に住む、ある種の人たちにとって、創造できる場所はパブや教会と同じくらい大切な場所なのだろう。
ヨハンが僕をこのギャラリーに連れて行きたかったのは、ここがヨハンにとって唯一の人々とつながる場所であり、この場所でヨハンという人間が認められていることを知って欲しかったのかもしれない。
ギャラリーの壁画、ピンクのドレスを着た女性の横に立つ兵隊さんはヨハンがモデルなのだと自慢するが、全然似てないじゃないか!










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ギャラリーで絵を描く人と話をし、インスタントコーヒーを飲みながら町のアーティスト作品を一通り見て、最後に患っているというヨハンの目をじっくり見せてもらった。
確かに、目の周りが赤くなっている。

「次に会うときは、目の周り、何色になっているかな?」と僕が冗談交じりでいうと「たぶん真っ黒じゃろ、わしはパンダが好きだし」と相変わらず真面目な顔を装ってヨハンはこたえた。

シェフィールドの町を背に、世界遺産クレイドル・マウンテン方面へ向かう道で車を走らせながら、僕はヨハンのことを考え続けた。










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おわり




















<過去のヨハンのおはなし>

「ヨハンのおもてなし」

「増えてる薬」

「音楽は神聖な儀式」

「ヨハンのいる時間」






「ヨハンじいさんの情熱」

「はりきるヨハン」

「ヨハン、相原さんに会いに行く旅」

「ヨハン、相原さんとご対面!」





「ヨハンおじいさんの唄 – 1」

「ヨハンおじいさんの唄 – 2」

「ヨハンおじいさんの唄−3」

「ヨハンおじいさんの唄-4」

「ヨハンおじいさんの唄-5」

「ヨハンおじいさんの唄-最終回」



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by somashiona | 2010-10-11 20:31 | 人・ストーリー

ヨハンに会いに 前編




寒い、寒い7月のある日、数日間自由な時間ができた。
しばらく家の中で缶詰状態になっていたので、無性にどこか遠いところへ行きたかった。
「そうだ、ヨハンじいさんに会いに行こう!」お昼はもうすでにまわっていたが、車に寝袋や歯磨きセットを詰め込んだ。
もちろん、カメラも。

ヨハンの家に行くには車を時速110キロで走らせても4時間はかかる。
途中でコーヒーを飲んだり、写真を撮れば片道5、6時間コース、日常の面倒なことをひとときの間忘れるには丁度いいドライブだ。
家を出る時、ヨハンに電話をしたが、繋がらなかった。
車を約2時間走らせた地点でもう一度電話したが、やはり繋がらなかった。
これが僕と同世代の友人たちへの電話なら、まだ仕事かなとか、どこか旅行にでも行ってるのかなとか、不安要素などまったくないが、高齢で一人暮らしのヨハンが電話に出ないときはいつも様々な不安要素が頭をよぎる。
友人のことを思うとき、同時に死の可能性を考えてしまう。
僕にとってそういう友人はまだヨハンしかいないが、僕が60代、70代になったときは、きっとそれが日常的なものになるのだろう。

ヨハンが住むシェフィールまであと1時間という場所でもう一度電話をすると、やっとヨハンがつかまった。
今日泊まってもいいかと聞くと、君はいつだってウェルカムだ、と彼は答えた。
ヨハンの声を聞いてやっと安心したせいか、急に写真が撮りたくなった。
結局2時間近く寄り道をし、ヨハンの家についたときにはもう夜空に星がまたたいていた。










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ドアをノックすると、ヨハンが満面の笑みを浮かべ僕を迎えてくれる。
まるで自分の実家に帰ってきたような気持ちになる。
家の中はいい匂いが漂っていた。
いつものように、ヨハンが僕のために夕食を準備してくれているのだ。
キッチンの中を忙しそうに行ったり来たりするヨハン。
男が何かに集中しているとき、特にヨハンのような職人さんが何かを作るのに集中しているときはあまり話しかけるべきではない。
男は一度に二つのことをできないように出来ているのだ。
料理を作るヨハンを静かに眺める。
大きな鍋のかなで美味しそうに茹で上がったチキンをヨハンは細かく切り刻み始める。
以前ならそんなことをするとせっかくのキチンの食感が台無しになってしまうよ、と思ったに違いない、しかし今はそれが物をうまく噛めないヨハンの工夫だということがよくわかる。










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高齢者問題は今僕の最大の関心事だ。
一年間をかけて老人介護の勉強をし、この7月に資格をとった。
今まで僕が美味しい物を作ってあげるとヨハンに提案するたび断られていた理由がやっと分かったし、彼が直面しているであろう身体的、精神的な困難は以前より少しは理解できるはずだ。

ヨハンの家の中は相変わらず寒い。
彼の家にお邪魔してからまだダウンジャケットとマフラーを脱ぐことができないどころか、体温がどんどん下がっていくのがわかる。
鼻や耳が冷たくなり、鼻水が出てくるのは僕だけでなく、チキンを刻むヨハンの鼻からもときどき鼻水がチキンに滴り落ちる。
僕は心のなかで「大丈夫、そんなことで死にはしない。大丈夫、多分この後もう一度加熱するからバクテリアは死んでしまうに決まってる」と呪文のように自分に言い聞かせる。










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料理をするヨハンの手、指、関節は赤く腫れ上がり、ところどころ皮膚が割れ、血が滲んでいる。
さぞかし痛いだろう。

食事の準備ができた。
いつものように温めて置いてあるプレートとナプキンを膝の上に乗せ、テレビを見ながら椅子に座って食べる。
大量に作ったからお替わりするようにとすすめられ、最低一回はお替りしようと僕はまた自分に言い聞かす。










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「何かニュースはないの、ヨハン?」と彼に尋ねると、「う〜ん、そうだなぁ、、、ああ、そういえば誕生日が終わったばかりだよ」と彼が答える。

「この国の男性の平均寿命は79歳、わしもとうとう79歳、ということはだね、わしはやっと人生を全うし、これからは幸運にもまだ生きていけるということに感謝しながら生きていく毎日なのだよ。おまけの人生じゃ。わしは幸せもんさ」とヨハンは笑う。

「そっか、おめでとうヨハン。とりあえず100歳を目標に頑張ろうよ」
「ははは、勘弁してくれ。あと20年間も女性を追いかけるのは楽じゃないよ」とニヤリと笑うヨハン。










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リビングルームにはマウントしたスライドフィルムが大きなライトテーブルの上に並べられている。

「ヨハン、いったい何をしてるの?写真展でもやろうっていうの?」

「いや、いや、過去の写真を整理しようと思って写真を引っ張り出してきたんじゃが、あまりの量の多さに手間取ってな、まったく終わる気配がないのじゃよ」とヨハン。

「ねえ、ヨハン、めんどくさいことお願いするようだけど、写真見せてよ。今晩はヨハンの作品の数々をじっくりスライドで鑑賞しようよ」と僕はウキウキ気分。

「そうか、見たいのか、うん、どうしてもというのなら、私は構わんよ」とヨハンも嬉しそう。
「そうと決まれば、さっそく準備にかかろう」とヨハンはすぐにソファから立ち上がり、スライド用の白いスクリーンを広げる。
「わかった、じゃあ、僕が食器を洗うからね」と僕はキッチンへ向かう。










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食器を洗っていると知らない間に僕の背後に立っていたヨハンは僕にこう聞いた。
「マナブ、君はひょっとしていつもお湯で食器を洗っているのかね?」

「うん、そうだよ。できるだけ熱湯で洗うようにしているよ。そのほうが油汚れが落ちやすいし、乾くのも早いでしょう」と僕。

「マナブ、申し訳ないけれど、水で洗ってくれんかのう。それがわしの家のやりかたなのだよ」

そういえば、ヨハンはコーヒーやお茶に使うお湯も一度やかんで沸騰させると、すぐにそれを保温ポッドに入れ、そのお湯を一日中使う。

電気代を節約しているのだ。
そのことを悟った僕の顔を見て、「そうさ、マナブよ、そういう暮らしができないと、君がわしの歳になったとき、君はすぐに破産してしまうよ。今から節約することを覚えんとな」と言って彼はひび割れた手を僕の肩の上においた。

年をとると血の循環が悪くなり手足が異常に冷える。
皮膚は薄く乾燥し、薄い紙のようにちょっとしたことで破れてしまう。
一度手足の皮膚が破れてしまうとその傷は僕たちのようにすぐには回復しない。
糖尿病を患っていれば、その小さな傷が致命傷になり足の切断や、死に至ることもある。
少しでも電気代を節約するために、暖房をつけない寒い部屋で冷たい水を使い食器を洗うヨハン。
同じことを続ければ、僕の手だってすぐに荒れてしまうだろう。
でも、一番大切なことはヨハンがやりたいようにやること。
何を選び、どう生きるかはヨハンの自由だ。
それが彼の手を腫れ上がらせ、ひび割れさせたとしても、他人がとやかく口をはさむことではないのだ。










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スライドショーのすべりだしはかなりいい感じだった。
一枚一枚の写真に対しヨハンの丁寧な解説がある。
90%の写真は風景写真で、山に関係するものだ。
彼がどんなに山を愛しているか、写真からその熱が伝わる。
愛するものを撮るその行為は、それがポートレイトであれ、風景であれ、物撮りであれ、必ず伝わってくるものがある。
驚いたのは彼が断崖絶壁をロープを使って登る貴重な写真があったことだ。
彼が本格的なクライマーだと話には聞いていたが、こうやって実際にすごい写真を見せられると、やっぱりダダものじゃなかったんだ、という僕のフィーリングを再確認することになる。
彼は最終的には断崖絶壁で杭が抜け、10数メールの落下し首、背骨などのひどい骨折で山には二度と登れない体になった。










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カシャ、カシャと写真を切り替えるたびに、ヨハンは饒舌になる。
たまには手で犬や蝶々の影を作るサービスまでやってくれる。
ありがちな、子供たちがよくやりそうな冗談だけど、僕は笑いをこらえきれない。
楽しく進んでいたスライドショーだが、プロジェクター(映写機)から煙が上がってきた。
どうやらプロジェクターの中のファンベルトが切れてしまったらしく、電球の熱が上がり過ぎてしまったようだ。










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こういう事態に対し、職人でメカニックのヨハンはあやふやに対処することができない。
直すまでとことん原因と戦う。
それはゲストの僕がいようといまいと、退屈しようがしまいが関係ない。
とことんやるのだ。
結局、その夜ヨハンは永遠とプロジェクターと格闘し、僕はお客さん用のベッドの上に寝袋を広げて午後11時前に深い眠りに落ちた。










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by somashiona | 2010-10-08 23:24 | 人・ストーリー

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