ナショナル・ペニー・ファージング・チャンピオンシップ
先日、ある方にタスマニアのアンティークショップについてのメールを書いていて、エバンデールという町のことを思い出した。
エバンデールはタスマニアの北の都、ロンセストン空港の近くにある。
通りに並ぶ建物の多くは1800年代のジョージアン様式、小さいがとても美しい町だ。
アートに力を入れている町で、年に一度行われるアートコンテスト、グローバープライズはタスマニアだけでなくオーストラリア中のシリアスなアーティストが獲りたい賞の一つ。
レストラン、アンティークショップもこんな田舎町に不釣り合いなほどハイセンスだ。
しかし、エバンデールの名物はなんと言ってもこの自転車。
誰しも一度はテレビや雑誌などで見たことがあるだろうこの古い自転車、名前をご存知だろうか?
正直言って、僕はこの町を訪れるまで知らなかった。
ペニー・ファージングというのだ。
こんなレトロな小さい町で、美しい女性がひらひらとこのペニー・ファージングに乗っていると、どこまでもそのあとを追いかけ、この町に骨を埋めようかとしまいには考えてしまいそうだが、この町の名物、「ナショナル・ペニー・ファージング・チャンピオンシップ」は決してそんな懐古主義的でユーモラスな催し物ではない。
老いも若きもこのレースに参加するものたち、皆半端じゃなく真剣なのだ。
このペニー・ファージング、フレームは鉄製なのでかなりの重量、しかもサドルの位置はビビってしまうほど高い。
そして、決定的なのは、、、ブレーキがないこと。
なので、このレースを見るまではきっとそんなにはスピードが出ないものと思っていた。
しかし、、、
参加した選手たちはもの凄いスピードで通りを突っ走る。
一瞬、ツールドフランスを見ているのかと勘違いしたが、この自転車を見て我にかえった。
アポイントメント無しで取材を申し込み、快くプレスパスをいただいた。(これが田舎のいいところ)
コースの脇にあるヘイ(干し草)の前でカメラを構えていると係の人たちが「危ないぞ、危ないぞ」とさかんに言っていたのを鼻で笑っていたが、僕は目の前を走り去るペニー・ファージングを見て、自分の態度を深く反省した。
これは、本当に危ないのだ。
この手のスポーツ写真は僕の分野ではないが、シャッタースピードを遅くして動きを表現することくらいは最低限しなければならない。
しかし、この表現に固執してしまうと気づいたときには同じような写真のオンパレードになってしまう可能性もある。
そういうときはその場から離れ、まったくタイプの違うものを撮るよう心がける。
そうすると町の人たちがレトロな衣装で歩いていることに気がついた。
この町、なかなかやるじゃないか。
好きになっちゃいそう。
レースは様々なカテゴリーで行われる。
スプリント、障害物競走、団体戦、ファミリーレース、スラローム、年長者の部、少年少女の部、レースに参加する者も応援する者も皆本気だ。
いったい何が僕にそう思わせるのか、どんな種目をみても、どんな出し物を見ても、どの人の顔を見ても、清々しい気持ちにさせられる。
激しいバトルの末、結局個人総合優勝をしたのは南オーストラリアから参加した24歳の青年だった。
ナショナル・ペニー・ファージング・チャンピオンシップは毎年2月に行われる。
いつか、日本男児や大和撫子が着物を着て走る姿も見てみたい。
雑誌オーストラリアン・サイクリストより
雑誌のテキストはギャビー
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by somashiona | 2010-04-19 23:52 | 仕事