アンドレ・ケルテス




最近、このブログで写真家の話をしていない。
好きな写真家というのは、ある意味自分の進むべき道へ光を当ててくれる存在で、自分が信じる良い写真についての揺るぎないお手本だ。
僕の場合、好きな写真家は圧倒的に古い時代の人達が多い。
写真家が大判カメラから小型のカメラ(ライカ)を使って作品を作り始めた時代の写真が好きだ。
おそらく、大判カメラ特有のしっかりとした構図と小型カメラ特有の偶然性を引き寄せる力が混ざり合った写真だからだと思う。
古い時代の写真家の話をすると「昔はよかった」的な話をする年寄りのようで気がひける。
今だって素晴らしい写真家はたくさんいるのに、彼らのことを取り上げず、古い写真家にこだわるのは、自分の感覚が古いと認めているようで、気がひけるのだ。
でも、やはり、いいものはいいし、自分が求める写真も古き良き時代の写真にあるのは認めざるをえない。


今日はハンガリー、プタペスト生まれの写真家アンドレ・ケルテス(1894 - 1985)の話をしたい。
彼の写真を見るたび「ああ、なんて写真してるんだろう」と思う。
彼はスナップショットの名手だが、風景も人間も建物もドキュメンタリーもファッションもなんでも撮るオールラウンドのフォトグラファーだっとも言える。
彼が撮った写真の構図、イメージは多くの写真家の脳裏に焼き付き、あらゆる媒体で再生産されているので、似たような構図やイメージを写真や絵を皆さんも多く見ていることだろう。












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僕が彼の写真に惹かれるのは先にも少し触れた完璧な構図と写真ならではの偶然性、そしてそこに詩が流れている点だ。

まずはこの写真を見て欲しい。












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彼はある通りへ行くたび数枚写真を撮った。
美しい線、コンクリートの造形美、何もかもが彼の好みだが、何かが足りない。
ここに鳩がいればいいのに、と彼は想い続け、実際に鳩が飛んで来るのを待ったが、鳩さんたちもそう簡単には彼の願いを叶えてくれない。
そして、ある日、鳩が飛んできた。
一瞬の出来事だ。
ライカのシャッターを一枚だけ切った。
どんぴしゃり。
インタビューのかなで「アタナは辛抱強い人間か?」と聞かれ、「もちろん、そうでなければならない。この写真を撮るのに30年もかかったんだから」と笑いながら答えている。
彼の写真は写真を撮ることの態度について、多くを教えてくれる。



次の写真は彼がはじめてライカを手に入れた年に撮られた写真だ。












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彼はカメラを持って街中を歩くのが大好きな人間。
ある日、とある駅で降り、いつものようにスナップ写真を撮る。
どこを撮っても平凡な絵ばかりで、どうもしっくり来ないが一箇所だけ彼の心の何かを捉えた場所があり、後日、またここへ戻ってきた。
そして再び同じ場所でとった写真は彼の代表作の一枚になった。












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この写真について、多くの人が多くの意見を持っている。
高架橋の上を右から左へと偶然に走り去る蒸気機関車、場違いな場所で場違いなほどいい身なりの紳士がなにやら新聞紙に包まれた大きなものを運びだそうとしている。
その奥には子供を含め9人の人間がレイヤーをなしている。
説明しがたい奇妙さ、絶妙な構図、どこを切り取っても物語が生まれるが、どこを切り取ってもその物語がどこへ向かうのか分からない。
それ故に、多くの人の心を惹きつけ、脳裏に焼きつく写真なのだ。



彼は日常の何気ない風景をアートに変えてしまう。
そこには一瞬で計算してしまう絶妙な構図の作品もあれば、何度も繰り返し撮り続ける中でじっくりとものにしていく一枚もある。












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どれをとっても彼の作品には静寂と気品と詩がある。
彼をあつかったドキュメンタリーフィルムの最後で彼はこう語っている。

「我々の眼というのは単に被写体を映し出す装置に過ぎない。何を選び写しだすのかを決めるのは眼ではなく、我々の内側にあるものだ」


僕の一番のお気に入りの写真はたぶんこれだと思う。












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by somashiona | 2012-09-25 15:44 | 写真家

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