こころの歌




シドニーの空港を出発したのは夜の11時頃だった。
いつものことだが出発直前まで荷造りに振り回され、寝不足だ。
まあ、成田までゆっくりと寝ればいいさ、と思っていたが、ぎゅうぎゅう詰めの機内で僕の横に座ったのはメルボルンに住む超綺麗なお嬢さんで、僕はなぜかまったくリラックスできなかった。
お嬢さんは夜中まで機内の映画に夢中で、僕は全く寝付けず、ひたすら本を読んでいた。
夜中の2時くらいに、お嬢さんが映画のスイッチを切って眠りにつくと、僕の右肩に彼女の頭が寄りかかり、シャンプーのコマーシャルに出て来るような長く艶のあるストレートの髪が那智の滝のように僕の右腕に降り注いだ。
おかげで僕はカチコチになり、なおさら眠れない。(一応言っておくが、カチコチだったのは体の一部分の話ではないので、誤解のないように)
しばらくたって、やっと僕に睡魔が襲って来たとき、耳の中の鼓膜が振動するようなキリキリ、カリカリという鋭い音が響き渡った。
いったいどこからこの音がやって来るのかとキョロキョロしたのもつかの間、その音の出所はすぐに分かった。
僕の肩に頭を乗せた超綺麗なお嬢さんの激しい歯ぎしりだった。


朝、ほとんど寝ずに機内食を食べていると、初めての日本旅行でどれだけワクワクしているかという話をとろけるような笑顔で彼女は僕にしてくれた。
僕は機嫌が悪いどころか、満面の笑み。
そのとき誰かが僕を見たら、鼻の下が確実に30cmは伸びていたと言うに違いない。



早朝、成田に着くと、そのまま神田まで行き、来年の1月に仕事をする会社のスタッフたちに会った。
ミーティングや会食が夕方まで続き、僕は眠たくて倒れそうだった。
鼻の下はもう伸びてはいず、眉間にしわが寄りっぱなし。
真剣に話を聞いている顔だと思ってくれていたのならいいが。


夜、ヘロヘロになって品川のホテルのベッドに倒れ込む。
ホテルは僕のお気に入り、東横イン。
寝る前にどうしてもお風呂に入りたかった。
少しぬるめのお風呂に30分ほどつかり、こころも体も軽くなる。
部屋の空間の80%を占めているベッドに横たわり、壁の上の方に器用に取り付けられているテレビのスイッチをつける。
いくつかのチャンネルを行ったり来たりしているうちに青いドレスを着た女性たちが大きなスタジオの中で日本の童謡を歌っている番組に、僕は釘付けになった。
日本の秋にまつわる数々の名曲を彼女たちは合唱している。
昔なら絶対に観なかった種類の番組だが、久しぶりの日本初日の夜だったこともあり、僕のハートのつぼを見事に捉えてしまった。
この番組に見入ってしまったのは、祖国への郷愁だけが理由ではない。
音大で鍛えに鍛えられた(たぶん)、まるで楽器の音のように正確なその歌唱力が僕の心をがっちりとらえた。
この合唱は女子だけでなく、男子部門もあり、また男女混合もある。
男性の力強い歌声もいいし、女性との組み合わせはまたさらに幅が広がる。
番組が終わり「BS日本・こころの歌 月曜夜9時 おたのしみに」というテロップが出ると、「うん、たのしみにしてる」と声に出して答えてしまった。
その夜は歯ぎしりの音もなく、ぐっすりと寝ることができた。












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by somashiona | 2012-11-07 21:20 | デジタル

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