コダクローム、最後の一本







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イーストマン・コダック社は世界で最初にカラーリバーサルフィルムを製造した会社だ。
その顔ともいえるコダクロームの製造の打ち切りが2009年6月22日に発表されたことを知り、胸を痛めたフォトグラファーが世界中にどれだけいたことだろう。
僕は東京で働いていたときFUJIFILMのRDPll(プロビア)とコダックのEPJ 320Tというタングステンフィルムを毎月平均300本使っていたが、やはりコダクローム64の黄色い箱には特別の思い入れがある。
ロサンゼルスの学校の先生もコダクロームの魅力について耳が痛くなるほど語っていたし、憧れのフォトグラファーがナショナルジオグラフィックのために撮った写真もほとんどの場合、コダクロームだった。
一般的なリバーサルフィルムのE6現像にたいしてコダクロームのK14現像は値段が高く、いつもたっぷりと待たされた。
それでも厚紙でしっかりマウントされたコダクロームの撮影済み写真をライトテーブルの上においてルーペで見ると、そのシャープネスや渋い発色に「う〜ん、やっぱりコダクロームは違う、、、」と唸ったものだ。

そんなコダクロームの工場で生産された最後の一本を使うことを許された写真家のドキュメンタリーを最近偶然見つけた。
ナショナルジオグラフィックのドキュメンタリーで、その主役となるフォトグラファーは写真界のモナリザと呼ばれるアフガニスタンの少女のポートレイトを撮ったスティーブ・マッカリーだ。
とても貴重な映像で、とても面白いドキュメンタリーなので日本ではもうとっくの昔に字幕か吹き替え付きで放映されているのかもしれないが、フィルム写真ファンもデジタルしか知らない世代の人にも大変興味深いないようだと思うのでぜひ観てほしい。






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ざっくりと、非常にざっくりとしたなんちゃって日本語訳を書いてみたのでこれを読んでから映像を見ると、大体話の内容がわかると思う。






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工場で生産されたコダクローム、最後の一本の撮影をアサイメントとして与えられたスティーブ。
しかし一体、最後の一本で彼は何を撮るのか?
伝説的なフィルムであるコダクロームの最終章、チャンスはたったの36枚だ。

75年間、プロ、アマを問わず、多くの人たちがコダクロームと熱く戯れた。
その豊かで高い色再現性と信じられないほどの耐久年数。
コダクロームが捧げてきた多くの素晴らしいことも、とうとう幕引きの時となった。
2009年、コダックはこのフィルムの生産中止を発表したのだ。
とうとうデジタルがフィムルに取って代わってしまった。
これといったイベントもファンファーレもなく、その歴史に幕を閉じようとしていたが、一人の男がコダクロームに何かを捧げる機会を与えられ、その仕事に同意のサインをした。
最後のコダクロームが欲しい、と彼はコダックにお願いした。

スティーブ・マッカリーの自己紹介
カレッジで写真を学び、新聞社で2年働いた後、数百本のコダクロームを持ちインドへと旅立った。
フリーランスのキャリアのはじまりだった。
ナショナルジオグラフィックのアサイメントを受けるようになり、以後数えられないほどの記事をカバーした。
僕のベストショットはたぶん、ほとんどコダクロームで撮影されたものだと思う。
コダクロームで撮られた写真のアーカイブが数えられないほどある。

コダクロームの説明。

コダクローム、最後の一本をカメラに入れるスティーブ。 

「カメラの中にコダクロームを入れるという行為を何千回、何万回も繰り返してきたよ。
それはもう、ほとんど生まれつき備わった習性のようにね。でも、これが最後だと思うと、何かたまらなく不思議な気持ちになる」

「今までこのコダクロームで数えられないほどのアサイメントをこなしてきたが、今回のアサイメントは、自分の為に、自分の気持ちに対して、写真が何かを語りかけてくれるようなものにしたいんだよ」

これは限られた写真家にしか与えられない贅沢なチャレンジだ。
このアサイメントには6週間しか時間がない。すぐに次の仕事が待ち受けているからだ。
どこで何を撮ろうとすべては彼次第。

「僕にとって写真の楽しみというのは、家のドアから外に飛び出して、てくてくと歩き、よく観察して、何かを発見すること」

まずは自分の住むニューヨークの街のご近所からはじめる。
デジタルカメラでスナップしながらポテンシャルのある写真を探す。
もし気に入った被写体があれば、それを今度はコダクロームで撮るのだ。

ワシントンスクエアパーク
チャイナタウン
コダクロームで撮るべき被写体を探しまくるが、納得のいくものが見つからない。
結局彼が住むニューヨークの何気ないスナップを撮るという案をリセットし、ニューヨークを象徴するような被写体を選ぶべきだという結論に達した。


ブルックリンブリッジに行ったがベストなポジションは閉鎖され、そこ以外だと写真として成り立たない。
タイムススクエアーへ行ったが、どう考えてもポストカードのような写真にしかなりそうもない。
ニューヨーク、グランドセントラル駅なら間違いないだろう。
コダクローム、最後の一本の限られた36コマを使う価値があるだろう。
結局、散々苦労した挙句、ニューヨークで撮った写真はここグランドセントラル駅で撮った一枚だけだった。
コダクローム最後の一本、残りは35コマだ。 


やがてニューヨークは雨模様となり、彼の望むようなストリートフォトを撮れる見込みがなくなってきた。
カフェで熱いコーヒーを飲み、体を温めてから、案を練り直す。

「ニューヨークに住む不特定多数の人々を狙うより、この街のアイコニック的な人物、例えば、ウッディ・アレン、アル・パチーノ、あるいはロバート・デ・ニーロなどのポートレイトがいいだろう」

ロバート・デ・ニーロがその案を承諾した。
デジタルカメラでテストシュートをする。
「これって、本当にコダクロームの最後の一本?本当に最後の一本なんだね?」とロバート・デ・ニーロも少し興奮気味。
ここで彼は36枚のうちの3枚を使う。

この後、スティーブは残りのフレームを埋める写真をポートレイトにすることに決めた。
そして、彼の写真の原点であるインドへ向かった。
「インドの大きな魅力の一つは色だ」とスティーブ。
ムンバイのスラム街へ。
デジタルカメラでポテンシャルのある被写体を探し、露出、構図、すべてを決めてから撮影する。
基本的に一人につき一枚の写真。
通常のポートレイトは、刻々と変化する表情を捉えるため何度もシャッターを切るが、この最後の一本はそんな訳にはいかない。
少しの手ぶれも許されないので三脚を使い、石の如く、不動の状態で取る。
ムンバイといえば、ボリウッド(インドのハリウッド)、ドル箱の映画産業の街。
「ニューヨークでロバート・デ・ニーロを撮ったのだから、ムンバイを象徴する人物として、やはりここではボリウッドスターを撮るべきだろう」

ムンバイでインドのアイコン的な俳優、女優を次々に撮っていくスティーブ。
「コダクロームは写真家に高い技術を要求するフィルムだ。露出、手ぶれ、シャープネス、表現力、すべてにおいて慎重にチャレンジしなければならない」
ここでスティーブは9枚の写真を撮る。

その後はムンバイから北へ、インドとパキスタンの国境付近、ラージャスターンへ飛ぶ。

「昔ながらの生活が営まれてきたこの地域も、文明の波に押され、近年、刻々と変化している。
失われていく人々の生活の記録。それは消え行くコダクロームに捧げるにはうってつけの被写体だ」


(この辺から疲れてきたのでほとんどの訳をすっ飛ばします。ごめん)


灼熱のインドで出来うる限りの撮影を終えた後、数カットだけをコダクロームに残し、スティーブはアメリカ、カンザス州にあるドウェインズ・フォト社へと飛んだ。
ここはコダクロームの現像を引き受けた最後の現像所だ。
6週間、約3万キロを旅しスティーブは最後のコダクローム、36枚の写真を撮り終えた。
そして、その最後の一本が今現像されようとしている。
コダクロームの現像には約40分かかる。
その間、スティーブは落ち着かない様子で仕上がりを待つ。
デジタルカメラ世代の人には、この気持、わからないだろう。
コダクローム現像の最後のステップはマウントだ。
フィルムのカット一コマ一コマを厚紙でマウントする作業だが、ここで紙詰まりを起こす。
なにせ、古い機械なので、何事にも時間がかかる。
とうとうコダクローム、最後の一本の現像が仕上がった。
ライトテーブルの上にマウントされた36枚の写真を乗せ、ルーペを使って一枚一枚丹念に露光された写真を見る。
「今決めたことなんだけど、デジタル写真はもうやめて、これからはコダクロームに戻ることにするよ」と半ば本気の冗談をいうスティーブ。
「一枚は自分の写真を撮っておきたかったんだよ」というセルフポートレイト。
ニューヨークを象徴するイエローキャブはコダクロームと同じ明るい黄色。
よく見ると、コダクローム64プロの記号、PKR-36とナンバープレートが変えてある。
「僕が見たもの、学んだことが写真に表れるんだ」とさらりと言う彼の言葉はずっしりと響く。

(最後は訳じゃなく、主観が入った説明になってしまった、、、あー、疲れた)






ナショナルジオグラフィック:コダクローム、最後の一本





コダクローム、最後の一本で撮れれた貴重な作品たちはスティーブ・マッカリーのウェブサイトで




ポール・サイモンも歌ってます 「僕のコダクローム」





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そうだよなぁ、昔はああやって、一枚一枚を大切に撮ったよなぁ、、、(しみじみ)。



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by somashiona | 2013-06-05 14:44 | 写真家

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