ヨハン、只今84歳
僕のブログを長い間みてくれている人たちから度々質問されることがある。
それは「ヨハンおじいさんは元気ですか?」という心優しい言葉だ。
ヨハンの住む壁画の街、シェフィールドでプロジェクトの撮影を行った際、久しぶりに彼の家に泊めてもらった。
久しく会っていない友人のことを考えるとき、頭の片隅で「生死」を意識してしまう人物は僕には数人しかいないのだが、ヨハンは悲しいかなその一人に入ってしまう。
実際、ヨハンに会うたび強く印象に残るのは、彼の健康状態が以前会った時よりも確実に悪くなっていることだ。
連絡していたよりも遅い時間に彼の家に到着し、ドアのベルを押すと、ヨハンはドアの隙間から顔を出し、「一体あなたはどなたかな?」と言う。
僕が驚いた顔をすると「うひゃひゃ、冗談じゃよ」とにんまりする。
ヨハン、洒落になっていません。
ヨハンの両足の能力は以前よりかなり弱まっていた。
そして食べ物を飲み込む能力もかなり低下しているようだった。
本人もそれを強く感じているようだったので「大丈夫だよヨハン、すぐに良くなるよ」と僕が言うと「いや、わしにできることは悪化する状況を遅くすることぐらいなんじゃよ」といつもは強気のヨハンが言うので、僕は少し悲しくなった。
でも、彼はきっと正しいのだと思う。
彼の年齢で高齢化による健康状態の悪化と戦うことは決して楽なことではない。
自分の健康状態を改善する努力を諦めてしまった人たちを、僕は老人ホームでたくさん見た。
じっとしているより少しでも歩いたほうがいいのに、そんなに砂糖や塩を摂り過ぎるべきじゃないのに、部屋にこもっていないで誰かとおしゃべりをした方がいいのに、、、いや、わかっている、僕たちでさえ簡単な事じゃないことを70歳、80歳を過ぎた人たちが自分にムチ打つのは難しいだろう。
しかし、そこはヨハン、彼は諦めていなかった。
彼の家を訪ねるとき、僕は出来る限り服を着込んで臨む。
彼はどんなに寒い日でもヒーターを付けず、鼻水をだらだらと垂れるのも気にせず生活をする。
一度「これって体に良くないよ、ヨハン」と彼に言ったことがあるが、「部屋を暖めるためのお金を使える身分じゃないのじゃよ」と彼は答えた。もちろん、胸を張って。
そんな彼なのに僕が寝るベットは必ず電気毛布で温めてくれる。
ヨハンはけちん坊ではないのだ。
足の悪化と戦うため、毎日朝と夜に必ずエクササイズをしているのだと、彼は言った。
そういえば、今まで見たことがなかったエクササイズマシーンがリビングルームの中央にどんっと置いてある。
「これで一体何をやるの?」と聞くと、待ってましたとばかりに「よし、今からわしのエクササイズを見せてやるわい」と張り切りはじめた。
噛む力、飲み込む力が低下すると、食べれられるものがとても限られる。
ましてヨハンのように一人暮らしの自炊生活だとなおさらだ。
オートミールが彼の主食であり、バナナやナッツ、その他オートミールに入れるものは細心の注意を払ってフォークで細かく砕く。
そこまでする必要があるのだろうか、とエクササイズのカッコイイ姿を見た後で僕は思うのだが、薬ひと粒を飲み込むのにかなり苦しんでいるヨハンを見て納得した。
数年前は一緒にハイキングをして、持参したランチをモリモリと食べていた彼なのに、、、。
寝る前に彼の寝室を覗くと、壁に手を置き、黙々とスクワットをしているではないか。
ベッドの上で入念なマッサージをするヨハン。
細くなった足の所々が内出血している。
「痛いのヨハン」と聞くと、彼は黙って頷く。
そんな彼を見ていると胸が締め付けられるのだが、数分後パジャマに着替えた彼はファイティングポーズをとって僕に挑んでくる。
「ヨハン、今晩は可愛い寝顔を撮ってあげるから覚悟しておいてね」と言うと、「よだれを垂らしていたら拭いてからにしてくれんか」と彼は答える。
彼の寝顔を見ながら、自分がどんなに甘えの中で毎日を過ごしているのか、つくづく考えた。
今年、ヨハンは84歳(自己申告)。
いつまでも人生の師でいてほしい。



















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by somashiona | 2014-12-10 14:31 | 人・ストーリー