ソーマとシオナ Vol.4 合い言葉は「アドベンチャー」

子どもたちと僕の週末の合い言葉、それは「アドベンチャー」だ。
毎週末の僕たちの時間は彼らにとって遊びではなく、スリルと危険が待ち受けるアドベンチャーなのだ。

僕にとっての確固たる父親のイメージは、自分の父親からきたものではない。
もちろん、愛すべき父親だったが、アドベンチャーというタイプではなかったと思う。
僕の頭の中にある父親のイメージは昔々、テレビコマーシャルで観た「わんぱくでもいい、たくましく育って欲しい」というやつだ。
たしか、丸大ロースハムの宣伝だったと思う。
山の崖を必死に這い上がる息子の手を大きな手の父親ががっしりとつかみ上げるあのイメージだ。
父親たるもの、そうありたい。
しかし、実際の僕はタスマニアに来るまでは山を歩いたとこなど、ほとんどなく、色白で病弱だ。
丸大ロースハムのお父ちゃんとはほど遠い。

この日「ダディが本物のアドベンチャーを教えてあげるから、ついてこい!」と息まいて、夕方から30分の予定でマウント・ウェリントンのトラック(散策道)へ出かけた。
ホバートを見下ろすマウント・ウェリントンはこの街のランドマークであり、ボバート市民から愛されている山だ。
僕の家からも車で約15分ほどでいける場所で、山の中には無数のトラックがある。
事前に地図で調べておいたトラックはほぼ直線でそんなに急斜面もなく、途中までいって引き返せば、子供たちでも音を上げることなく歩け、暗くなる前には車にたどり着けるだろう、という腹づもりだった。
実際に歩いてみると、子供たちは予想よりも早く、しっかりと歩け、途中で引き返さないで最後まで歩こう、と計画を変更した。
目的地に到着した。
後は車を止めた場所まで来た道を引き返すだけ。
日が暮れる前に車に戻れるだろうかと、すこし不安になりながらトラックを歩いていると別のトラックが目に入った。
方向的には車に戻る近道のように思えた。
おまけに、おいで、おいで、と僕たちに手招きをしているようだ。
思いきってそのトラックに入ってしまったのが運のつき。
このまま行けばすぐに車の走る道路に出られるな、と最初は思ったが森の中の道はどんどん複雑になり、分かれ道に何度も遭遇し、気づいた時には引き返す道すら分からなくなってしまった。
「やばい、これはやばいぞぉ」とマジで思いはじめた。
子供たちはどんどん険しくなる道を見て、「ダディ、これって本当のアドベンチャーだねって」とニコニコしつつも、歩みが極端に遅くなってきた。
特にこのとき4歳のシオナは顕著だ。
このアドベンチャーをはじめたときは「危ないからゆっくり歩くんだよぉー」と優しく言っていたダディも、もうその頃は「止まるんじゃない!歩き続けるんだぁー!」と叫ぶ始末。
日も沈みはじめ、気温が急に下がってくる。
なのに僕らはジャケットも水もチョコレートも持っていない。
以前タスマニアでツアーガイドをやっていたときは、お客さんに「タスマニアはどこからでも簡単に自然の中に入っていけるけれど、甘く見ると危険な目にあうので、必ずきちんとした装備で出かけてください」とさんざん言っていたのは自分なのに、、、。
子供たちがシュンとなってきた頃、突然携帯電話が通じる場所に出た。
しかし、よりによってバッテリーの残量はあと少し。
この山に詳しい友人に、出てくれ、出てくれ、と神頼みしながら電話した。
電話に出てくれた!
電話先の彼女の手元にあるこの山のマップで誘導してもらいながら、やっとトラックから一般道に出れた。
あとは駐車場まで歩くだけ。
結局、3時間半のブッシュウォーキングになってしまった。
まさにアドベンチャー。
さすがに子供たちも疲れたようだけど、こんなに長く山の中を歩いたことがなかった彼らは、このアドベンチャーでブッシュウォークの自信がついたようだ。僕は僕でこの日以来、山に入るときは短い時間の散歩でも、必ず地図、防寒具、チョコレート、ビスケットなどの食料、そして水を持つことにしている。



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この後何が起こるのかまだ知らない余裕の笑顔。



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誰に教わったわけでもないのに、山に入ると子供たちは必ず杖になる木を探し出す。
これも人間の本能の一つなのだろうか?



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山の中はまさにフィールドアスレティック。



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ブッシュウォーキングでは大人は少しでも体力を消耗しないように歩くが、子供は常にジグザクに歩く。



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後半、さすがに彼らも疲れ気味。



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ソーマは気に入った風景を見つけると、なぜだかいつも僕に写真を撮るよう真顔でお願いする。それが僕の趣味でなくても、彼のリクエストに応えてちゃんと撮らないといけない。
ひょっとすると、将来彼は相原さんと肩を並べる男になるのか?(親ばか)



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日が沈むと山は一気に冷え込み、暗がりでデッドツリーたちがその存在をアピールしはじめる。

この後、本格的に道に迷ったのだが、さすがにパニックになっている最中は写真を撮っていない。

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by somashiona | 2007-04-27 10:36 | ソーマとシオナ

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