朝焼けに、馬一頭






僕を泊めてくれた家の人はまだ熟睡しているはずなので、息を殺し、忍び足で外に出た。
午前5時、ただでさえ小さなこの田舎町は、暗闇の中で、この世に存在していることを誰にも知られたくないかのようだった。

この日、捕りたい獲物はハッキリとしていたが、どのポジションから狙うかは決めていない。
写真を撮る目的でよその町に宿泊した朝は、プランよりも感情で動きたがる自分の悪い癖を苦笑いする。
朝の光はすぐに逃げ去るのを知っているくせに。

朝の冷たい空気が肌に突き刺さる。
空がだんだんと赤くなりはじめ、自分のはく息が白く目の前に広がるのが見える。

誰かの視線を感じた。
遠くの牧場で何かが動いている。
馬だ。
一頭の馬が寒空の中で、身体から湯気を出している。
僕は馬に近づいた。
馬は僕からまだ目を外さない。
人を撮るときに時々感じる、「今、私を撮りなさい」のオーラがこの馬から立ちのぼっていた。
こういう感覚に逆らってはいけない。
一日のはじまりの獲物を、心を込めて、僕は撮った。






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Sheffield, Tasmania




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by somashiona | 2007-05-06 09:17 | デジタル

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