独りでいる人



独りでいる人を見ると、親しみと共感を覚える。
なぜか?
きっと僕も独りでいる人だからだろう。
正直いって、これは良いことではない。
でも、快適なのだ。

もちろん友人たちとバカ話しをする時間、ライター、デザイナー、スタイリストたちと一緒に仕事を仕上げる時間、
そして僕の母、妹、子供たちと過ごす時間は幸せと喜びに溢れている。

それでも、僕は独りでいることを好む傾向にある。

映画館には一人で行きたい。
カフェでコーヒーを飲むときは一人が良い。
旅は何と言っても一人旅。



プライベートなことを話してしまうが、僕は3年前に前妻と別れた。

それまでの他の人との付き合いはほとんど家族ぐるみ、別れた後は彼らとも疎遠になった。
その時期、ツアーガイドの仕事も辞めてしまい、失業中。
タスマニアの小さな日本人コミュニティの中に哀しみを背負って入るわけにはいかなかったので、
しばらくの間はここに住む日本人からも距離を置いた。
心を開いて話しができるオージーの友人もこの時はいなかった。
日本にいる家族や友人に電話で泣き言をいうだなんて僕の自尊心が許さない。
海外の小さな島で、僕は独ぼっちになってしまった。


タスマニアで独ぼっちになって、はじめて僕がどんなにオーストラリア人の前妻に依存していたのかが分かった。
東京に住んでいたときは僕が貨車を引っぱる機関車のような気持ちで働いていたけれど、ここでは僕は貨車になっていたのだ。
住む場所を見つける、電話線を引く、お役所の面倒な書類を理解する、それまで彼女に任せていた日常の煩わしいことが一気に僕に降り掛かってきた。
来た手紙がダイレクトメールなのか、重要な知らせなのかを理解するのに時間が過ぎていく毎日。
掛かってくる電話が仕事の依頼なのか、それとも新しい携帯電話購入の勧誘なのか、理解するまで冷や汗をかきながら受話器を耳に強く押し付ける毎日。
もともと温厚な性格なのだが、この時期、何かにつけてイライラしていた。
オーストラリアでの生活はすでに2年経っていたが、僕の海外生活は本当の意味で、ここからがスタートだったと思う。


きちんとしたデータを見たわけではないが、オーストラリアの離婚率は50%近く、もしくは50%以上といわれている。
結婚した人たちの半分は僕と似たり寄ったりの経験をしているのだ。
オーストラリアは離婚後の、特に子供を抱える女性を経済的に支援する社会の制度が確立されている。女性の働く環境も日本に比べると開けていると思う。
そして離婚を経験した人が人生の敗者だという観念がほとんどない。
なので自分たちの結婚生活を冷静に査定し、そこに愛や情熱がなく、人生において目指す方向に食い違いが出て来ると、別の道を歩む、という選択を50%のカップルがする。
夫婦に子供がいた場合、たいていは母親が親権を得、法律によって最低限2週間に一度は父親が子供に会い、時間を共に過ごすことが義務付けられている。

前妻はもちろん今でも素敵な女性で、お互いに敬意を持って接し、毎週末彼女の絵の話題、僕の写真のこと、そして何よりも子供たちのことについて前向きな意見を交換している。



オーストラリア人の新しい恋人を見つけるためのパワーにはいつも圧倒される。
40代はもちろん、50代、60代、70代であっても新しい出会いを求めて、精力的に外へ出て行く。
40歳シングルの娘と60歳シングルの母親の会話を聞いて笑ったことがある。
娘が母に今欲しいものは何かと尋ねると、母は新しい恋人を見つけ、夢見るようなセックスをしたい、と真顔で答えた。

僕が独りになってからもう3年、腹を割って何でも話しができる友人ができ、自分の居場所がハッキリとし、オーストラリアの社会というものが最近見え始めてきた。
と同時に最近友人たちに会うたび、同じ話題で僕は攻められはじめている。
彼らは僕の顔を見るたび、「最近浮いた話しはないのか?」「早く恋人を見つけないとダメだ」攻撃する。
オーストラリアでは「独りでいることは悪」と考える傾向が強くある。
意外に思うかもしれないが、ここではインターネットの出会い系サイトに登録し、出会いを求める人がたくさんいる。
決してこそこそした暗いイメージのものではなく、顔写真と自分のプロフィールを公開し、少しでも多くの人と出会い、その中から自分の理想に近い人を選ぼうというものだ。
明るく、美人、ハンサム、社交的、そんなこういったサイトとはまったく縁のなさそうな人もたくさん登録し、より良い出会いを求めている。
僕の友人たちもこういったサイトに自分のプロフィールを登録するよう盛んに僕に勧める。
ただでさえ英語の文章が苦手な僕がこんな方法で女性にアプローチをかけると逆効果になる、と僕が言い訳をすると、甘い恋の話しからエロティックな大人の話題まで代筆するから心配ない、と友人たちはニコリと笑う。
いよいよ崖っぷちに立ったらお願いするよ、と今のところ独りが好きな僕はこの話題から逃げている。




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by somashiona | 2007-05-08 11:19 |

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