カメラマンとフォトグラファー



「そんな小さなこと、どうだっていいじゃない」と言われそうだが、どうしても耳にするたび、口にするたび引っかかる言葉ある。

「カメラマン」という言葉だ。

日本ではフォトグラファーのことを「カメラマン」という。
それはもう、そのものズバリ、カメラを持った男だ。
女性だったら、カメラウーマンと言うべきであろう。
もちろんこの「カメラマン」という言葉は日本語英語だ。
いや、「cameraman」と言う英語は実際存在するが、それは映画やテレビの撮影技師を言う。
いや待てよ、アメリカでは映画を撮る人のことを「cinematographer」と言っていたし、映画のクレジットではたいがいDP(Director of Photography、何人かいるシネマトグラファーの総責任者のような人)という言い方で表現されている。

べつに日本人のなかで通じるのであれば、それでいいではないか、という人もいるだろう。
実際それでいいのだが、ちょっと想像してみて欲しい。
動物園で隣にいる家族連れの子供がライオンを指差し「パパ、あれはなんていう動物?」と聞く。
パパは「あれはタイガーっていうんだよ」と答える。
僕はきっと心の中で「近いんだけど、それりゃあちょっと違うでしょう、、、」とある種のフラストレーションを感じるに違いない。
実際、ここに住んでいていつも感じるフラストレーションは日本が世界に誇る「酒」と「カラオケ」だ。
英語の発音では「ke」は「ケ」でなく「キ」だ。
例えば鍵の「key」は「キー」、猿は「monkey」で「モンキー」。
だから自称かなりの日本通を名のるオージーでも「ワァ〜タシハァ、サキィガ、ダァ〜イスキ〜デェ〜ス」ということになる。
ここにきたときはその度に、「サキって何だ?」と聞き、「アァ〜ナタハ、ニホォ〜ンジィ〜ンナノニ、サキヲシラナァ〜インデスカァ〜」とまるでお猿さんを見るような顔で僕を見る。
「カラオケ」は「カラオキ」だ。
もしあなたの友人のオージーが「今晩、カラオキに行きましょう」と言ったら、あなたは思わず「カ・ラ・オ・ケ」と突然教師の顔になって訂正するだろう。

僕にとって「カメラマン」と「フォトグラファー」とはそういう違和感に満ちた言葉なのだ。

それではカタカナ英語ではなく日本語で言えばいいだろう、と思うかもしれない。
「photographer」は辞書を引けば「写真を撮る人」もしくは「(職業としての)写真家」となっている。

日本に帰国して自己紹介をする時、「はじめまして、写真を撮る人のマナブです」とはちょっといいたくない。
かといって、僕にとって「写真家」という言葉は職業カメラマン的なニュアンスよりむしろ写真展を何度もやっていて、写真集も数冊出版し、いくつかのギャラリーがオリジナルプリントを持っているという人でないと使えない言葉というイメージがあるのだ。
「写真家のマナブです」いつか堂々と言ってみたい、憧れの言葉だ。
僕の思う写真家のニュアンスを英語圏で伝えるとすれば、「アーティスト」という言葉になるだろう。
ここでは友人たちに「マナブはフォトグラファーというよりむしろアーティストだ」というお褒めの言葉をたまに頂くが、僕はその言葉に思い切り赤面してしまう。
「アーティスト」日本語に訳せば「芸術家」だ。
僕には恐れ多い言葉だ。

話しはどんどん逸れていくが、僕はアート(芸術)という側面を全面的に出す写真があまり好きではない。
これはとても上手く説明できないのだけど、写真を知れば知るほど、写真は写真であって、絵画や彫刻、そしてパフォーマンスなどと同じ芸術にもなり得るが、悪いけど、一緒にしないで欲しい、などと考えてしまう傾向にある。
実際、写真史に名を残すマスター・オブ・ピース的な写真は新聞、雑誌、その他のドキュメント的目的で撮影されたものが多いと思う。
それが時を越えて多くの人を感動させ、残り続けるのは、やはり写真の本質的な強さと特徴は記録という目的にあるからではないか。
こんなにもビデオカメラが小型化し、あらゆる場面を動画で簡単に捉られるようになった今でさえ、世界を震わすイメージは一枚の写真ということが多いのもその証明だろう。

ここオーストラリアでは「はじめまして、フォトグラファーのマナブです」が一番しっくりくる。
そう、僕はこの職業カメラマンというニュアンスの響きが好きなのだ。
アーティストというよりも、職業カメラマンでありたい。
でも、日本に行ったとき、僕は一体どう自分の職業を紹介すべきなのか?

「カメラマン」→ 僕の心がこれは間違いだと言う。
「フォトグラファー」→ カッコつけているみたいだ。
「写真家」→ まだ自分が憧れている状態。
「芸術家」→ 笑われるのがオチ。

誰か助けてください。


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「はぁ〜い、写真撮るよぉ〜。おめめつぶらないでねぇ〜」
「ねえ、ねえ、マナブの仕事って何?」
「僕かい?、僕はえぇ〜とフォトグラファーだよ」
姉のスィア、もういろんなことが理解できる。




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「ほら、ほら、怖がらなくていいんダヨォ〜、ニッコリ笑えるかなぁ〜」
「ねえ、ねえ、マナブは何やってる人?」
「僕かい?えっへん、僕はアーティストさ。アーティストのマナブって呼んでもいいんだよ」
妹のマーリ、まだあまり細かいことは分からない。






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by somashiona | 2007-05-09 00:56 | デジタル

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