パイレーツとアガペーの愛



こんにちは。
僕の名前はパイレーツ。
今日はね、僕の話しなんだ。
あっ、それからね、母ちゃんの名前はサリーナっていうんだよ。


(おっと、いけない。犬の話しになると無意識にこの語り口調になってしまう)


今回の旅、僕にとっての小さな驚きは、このパイレーツの存在だった。
彼と過ごした3日間、僕は少なからず彼から感銘を受けた。

先に正直に話しておこう。
僕は動物が嫌いだ。
動物に躊躇なく触れることができないのだ。
なぜって、理由はたくさんあるのだが、一番先に頭に浮かぶのは衛生面の問題だ。
あのふさふさした体毛の中にどれだけの微生物がいるのか、と考えるとどうしてもストレートに触れないのだ。顔を舐めなめしてもらうだなんて、もちろん論外。
それと危険性。
スティーブン・キングの『グリーン・マイル』を読んだことがあるだろうか?
もしくはトム・ハンクスが演じる映画版を観たことがあるだろうか?
あの物語の中で何年も信頼しあい、共に過ごしてきた愛犬が、突然息子に襲いかかり、その顔にむごたらしい傷を与えてしまうというエピソードがある。
動物を見ると、彼らがいつ突然牙を剥いて僕に襲いかかって来るのだろうと、いつも心の中で考えてしまい、僕は100%リラックスできない。
もう一つだけとても小さなことを言うのなら、全ての洋服にまんべんなく付いてしまう、あの動物の毛が我慢ならない。
そう、僕は小心者で、神経質。
『アニー・ホール』のウッディー・アレンみたいな奴だと思ってもらいたい。

サリーナの家に到着すると、僕を見て興奮したパイレーツが、わん、わん、と僕の身体に飛び跳ねた。じめじめしたローズベリーの、舗装されていないサリーナの家の前はいつだって泥だらけ。僕は見る見るうちに泥だらけになった。
サリーナの家のソファーに腰を下ろすと3分間で僕の黒いフリースはパイレーツの毛だらけになるだけではなく、食事をしていても、コーヒーを飲んでいても、常に彼の毛と格闘しなくてはならなくなった。

僕は子どもの頃から常に家で犬を飼っていたが、あの頃は犬の毛がどうのこうのと考えたこともなかった。もちろん、顔を舐められても平気。一体、いつから苦手になったのだろう?

しかし、そんな僕の動物嫌いも、パイレーツと共に時間を過ごすうちに、少しずつ変っていった。

僕は彼が僕と同じ小心者だとすぐに見抜いた。
どんなに粋がったところで、僕が少しでも怖い顔をすると伏し目がちになり、レンズを向けると彼はすぐに居心地悪そうに目をそらす。
どこか僕に似ている。




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甘えん坊で、いつでもサリーナにすり寄り、彼女に構ってもらえなくなると、今度は僕にすり寄ってくる。僕は最初もちろんイヤだったが、そのうち彼が僕にすり寄って来るのを待つようになり、来なければ僕が彼を呼ぶようになった。

サリーナが仕事中は、パイレーツ、決して彼女の邪魔をしない。彼女がパイレーツを呼ぶ瞬間をただひたすらじっと待つのだ。
呼ばれると、全身で喜びを表現し、自分のすべてを出し切って甘える。




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サリーナがプライベートな話しで集中力を必要とする時は、誰一人彼女の邪魔をしないよう見張り、彼女が大声で笑えば、パイレーツもつられて笑う。(欠伸か?)





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お客さんが来れば自分も会話に加わろうと、健気な努力までする。




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そう彼は健気なのだ。
彼と語り合った訳ではないので、彼の物語を僕は語ることができないが、でも彼が全身で健気なのが、僕にはよく分かる。
健気さとは見返りを期待しない、アガペーの愛だ。
(キリスト教における神学概念。神の人間にたいする見返りを期待しない無償の愛)
僕はそのことに痛く感動した。そんな健気な奴、ここ数年、彼以外には会ったことがなかった。

僕がサリーナから与えられたベッド代わりのソファーはパイレーツがこの家で最も気に入っている安らぎの場所だ。そんな彼の特等席に東洋の男が突然やってきて、挨拶もなしでその場所を占拠している。
なのに彼、文句も言わない。(心も広い)

最初の夜、ソファーの上で僕にすり寄って寝るパイレーツに僕の足下で寝てくれるよう頼んだ。具合の悪い僕の顔を彼が何度も心配そうに覗いていたのを僕は覚えている。
二日目の夜は僕と並んで寝た。彼の寝息が僕の顔にかかるのを感じた。
三日目の夜、僕は彼を抱きしめて寝ていた。

ポールが酔っぱらって夜中にやってきて、僕を寝かせないよう悪さをしたとき、パイレーツは自ら犠牲になってポールの気を僕から逸らしてくれた。
酔っぱらったポールにさんざんオモチャにされた後のパイレーツのうんざりした顔、僕は忘れはしない。鏡で見た訳じゃないけど、僕もきっと同じ顔をしていたはずだ。




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最後の日の夜、僕は寝る前に彼に向かってあらたまって話しをした。
「パイレーツ、色々とお世話になったね。僕は明日の朝早くここを出るんだよ。僕は君のことが大好きになったよ。わかってるよね。」

僕の顔を真っ直ぐに見つめる彼の顔が、僕には、すこしだけ寂しげに見えた。




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さあみんな、僕の話しはこれでおしまいさ。
今日のストーリーをワルテルと小説家の馳星周さんに捧げたいってマナブさんは言うんだけど、僕には何のことだかさっぱりわからないんだ。
きっと犬だから。
でも、みんなはマナブさんがどうしてそうするのか、わかるよね!






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<皆さんに質問>
最近ブログの調子が悪いんです。
下の「ミックとエマ」でアップした写真、僕のパソコンでは4枚ほど「?」のブルーのアイコンが表示され見ることが出来ないのです。
その他の記事も見えない写真が何点かあります。
皆さんのパソコンではアップした写真が全て見えていますか?







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by somashiona | 2007-06-05 00:48 | 人・ストーリー

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